摂食障害

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摂食障害
分類及び外部参照情報
ICD-10 F50.
ICD-9 307.5
MeSH D001068

摂食障害(せっしょくしょうがい、eating disorder)は、精神疾患の一種である。近年では嚥下障害等の機能的な摂食障害との区別をつけるため、中枢性摂食異常症とも呼ばれる。厚生労働省の特定疾患(難病)に指定されている。


目次

[編集] 概要

患者の極端な食事制限や、過度な量の食事の摂取などを伴い、それによって患者の健康に様々な問題が引き起こされる。主に拒食症過食症の総称である。人間関係の問題などの心理的ストレスに対する耐性不足や、社会適応性の未発達、コミュニケーションの不全などが原因とされている。依存症の一種である。

摂食障害は大きく拒食症過食症に分類される。拒食と過食は相反するもののように捉えがちだが、拒食症から過食症に移行するケースが約60~70%見られたり、「極端なやせ願望」あるいは「肥満恐怖」などが共通し、病気のステージが異なるだけの同一疾患と考えられている。

よって拒食症過食症を区別する指標は、基本的には正常最低限体重を維持しているかどうかのみである。

一定時間に渡り、食べ物を口に入れ咀嚼し、飲み込まずにビニール袋などに吐き捨てるという行動を繰り返すチューイング(噛み吐き・噛み砕き)と呼ばれる行為も存在する。一見、拒食とも過食とも取られる行為で、特定不能の摂食障害の一部にまとめられる。

[編集] 症状

症状は、拒食症過食症などのタイプによっても異なり、また同じ拒食症・過食症などでも、患者によって症状は多様である。

拒食症では極端な食物制限が中核となる。食事を食べているところを他人に見られたがらない場合も多い。その他、体重を減らそうとして運動をするなどの過活動がみられることもある。拒食によって体重低下が進んだ結果、異常な低体重となり、女性の場合は月経が停止する事もある。この時期でも本人はいたって元気な様子を見せ、病識が無い場合が多い。

拒食症の無茶喰い・排出型や過食症などでは、短時間に多量の食べ物を摂取する過食行為がみられる。自己誘発嘔吐や下剤乱用などの行為を伴うことも多い。自己誘発嘔吐によって、カリウムなどの電解質が失われ不整脈を呈する場合や、食道-胃接合部が裂けて出血することもある。また自己誘発嘔吐を繰り返すことにより、咽頭に爪による潰瘍を生じたり、利き手の指や手の甲に胼胝(タコ)ができたり(いわゆる“吐きダコ”)することもある。摂食障害の存在を周囲に隠したいため、人前では食品を食べてみせ、直後にトイレに行き、食べたものを全て吐くといった行動をとる患者もいる。

摂食行動以外にも、抑うつ症状や自傷行為・アルコール乱用、社交不安障害強迫性障害などの不安障害人格障害による精神症状を合併することも多い。

拒食、過食ともに内科的疾患(嘔吐や下剤乱用による電解質代謝異常脱水消化管の損傷や、痩せや栄養失調による感染症貧血むくみ・脳萎縮・骨粗鬆症等、過食による肥満や糖尿病など)を併発することもある。

救急医療の現場へは、意識障害、マロリー・ワイス症候群急性膵炎様症状、急性胃拡張、胃穿孔、痙攣発作テタニー脱水不整脈うっ血性心不全、肺塞栓、自然気胸、などの身体症状、あるいはリストカットオーバードース(薬物の大量服用)などの自殺企図で受診することが多い[1]

[編集] 分類

DSM-IV-TRによる基準は以下の通りである。


2013年発表予定のDSM-5では、特定不能の摂食障害の一部にまとめられていた「むちゃ食い障害」が、新たに独立した病型となっている。神経性無食欲症では、診断基準の必須項目から無月経という条件がなくなり、神経性大食症の下位病型分類が無くなっている[3]

[編集] 対処

拒食と過食は周期的に繰り返される場合が多く、心療内科医精神科医など医師や心理カウンセラーの心理的なカウンセリングを受けることが有効であることもある。しかし専門性の高い医師は多くはないのが現状であり、治療は長期化する傾向にある。 拒食や過食の食行動異常が注目されやすいが、その背景にあるの問題を解決しないと摂食障害は完治しないこともある。背景の問題解決には周囲の協力が必要である。

精神療法としては、行動療法、認知療法、対人関係療法、家族療法などがある。栄養リハビリテーションも必要である。

薬物療法については、過食症に対して、米国ではSSRIフルオキセチン(日本では未認可)、国内ではフルボキサミン(商品名ルボックス・デプロメール)、パロキセチン(パキシル)、セルトラリン(ジェイゾロフト)の投与による治療が広く行われている。これらの抗うつ薬は、理論上は脳の摂食中枢に作用し食欲をコントロールする作用があるとされているが、意思による食行動を止めるには限界があり、食行動に直接働きかけるという意味では日本で承認されている薬剤はない。薬は合併症として生じた抑うつや強迫症状などを改善する目的や、精神療法や行動療法への導入を容易にするなどの目的で用いられることが多い[4]

拒食症患者の場合、体重や低栄養が回復すると抑うつも改善する傾向があり、体重回復を待ち薬物療法が必要か見極める必要がある。栄養状態が悪く抑うつ的な患者は薬物の副作用が出やすいとされる[5]

[編集] 原因

摂食障害になる心理学的背景として以下のような説がある。

  1. との不良な関係、2~5歳児期の人格基礎形成期に欲求5段階の安全安心の欲求、愛情や所属の欲求が満たされず、間脳視床下部食欲中枢に障害が起きているという説
  2. 対人関係の恐怖からの代償行動説
  3. 女性性の拒否」による代償行動説
  4. 肥満への恐怖からのダイエット・ハイ説
  5. ストレス説(結婚生活のストレスや複雑人間関係、深いトラウマ含む)
  6. 遺伝


[編集] 社会

「痩せ」を賞賛する社会風潮も、摂食障害が増えている一要因である。日本の女子高校生を対象にした調査では、全体の約9割が 「今より痩せていなくてはならない」と答え、痩せているほうがより良いとする社会風潮の影響を受けていることがわかった。

世界的には、2005年に拒食症で死去したモデルのアナ・カロリナ・レストンの事件を境に、 “痩せ過ぎモデル”が与える社会影響などの議論が各国で加熱した。 4か国代表会議に参加したスペインイタリアは「痩せ=美しい」という誤った美の観念を与える危険性があると、 一定のBMI値に満たないモデルのランウェイ出場を禁止。大手アパレルメーカーも政府のガイドラインに従う意向を表明した。

アメリカファッション協議会は、「拒食症をはじめとする複雑な摂食障害はファッション業界のみの責任ではない。 しかしキャンペーンで摂食障害の認知と意識向上に協力することはできる」と述べた[6]

患者本人の会、親の会など各都道府県に独自の自助グループが多数存在する。

[編集] 統計

有病率は女性が約9割と圧倒的に多く、男性は全体の5~10%程度である。工業先進国に極端に多く、発展途上国、旧共産諸国などにはほとんど見られない。 日本では2~3%と言われているが、心療内科や精神科での治療に抵抗がある者が多く、未治療者も含めるとそれを大幅に上まわるとされる。2002年に行われた、中学・高校・大学生を対象とした大規模なある実態調査では、女子学生の50人に1人が拒食症、25人に1人が過食症、10人に1人がその予備軍であった。この10年間に拒食症は2倍、過食症は3倍に増加している[7]

思春期・青年期女性の有病率は拒食症が約0.1~0.2%、過食症が約1~3%であるとみられている。発症後は慢性に経過するか寛解と再発を繰り返すことが多い[8]。一般に中流以上の家庭、両親・または片方の親が高学歴など社会的地位の高い家庭の女子に多く見られる[9]。家庭は社会的には機能していても内情は不全のケースも多い。

アメリカでは、摂食障害を持つ女性が100万人~500万人、男性が約100万人いると推定される。また年に5万人が摂食障害によって命を失っているという[10]。女子大生の4~5%が摂食障害だとされている。

[編集] 脚注

  1. ^ 山岡昌之 『摂食障害をめぐる諸問題 ―救急医療への期待』 2010年1月
  2. ^ American Psychiatric Association 『DSM-IV-TR 精神疾患の分類と診断の手引』〈医学書院〉2003年8月
  3. ^ 『精神科治療学』 第25巻08号 〈星和書店〉2010年08月
  4. ^ 『こころの科学』 No.116〈日本評論社〉2004年7月
  5. ^ 佐藤光源 監修『米国精神医学会治療ガイドラインクイックリファレンス』〈医学書院〉2006年
  6. ^ AFP BB News
  7. ^ 烏丸御池中井クリニック 『摂食障害について』
  8. ^ 厚生労働省 e-ヘルスネット『摂食障害:神経性食欲不振症と神経性過食症』
  9. ^ 高木洲一郎,浜中禎子 『拒食症・過食症の治し方がわかる本』〈主婦と生活社〉2001年
  10. ^ 矢部武 『アメリカ病』(新潮新書)2003年

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

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