睡眠障害

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睡眠障害
分類及び外部参照情報
ICD-10 F51, G47
ICD-9 307.4, 327, 780.5
DiseasesDB 26877
MedlinePlus 000800
eMedicine med/609
MeSH D012893
プロジェクト:病気Portal:医学と医療
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睡眠障害(すいみんしょうがい, : Sleep disorder)とは、人や動物における睡眠の規則における医学的な障害である。一部の睡眠障害は、正常な身体、精神、社会や感情の機能を妨げるほど深刻となる。長期的に持続し、著しい苦痛や機能の障害を伴っているものが精神疾患と診断される[1][2]。一部の睡眠障害においては、睡眠ポリグラフ検査が指示される。

入眠や、明らかな原因なく睡眠持続が難しい場合には、不眠症とみなされる[3]睡眠異常症英語版は、日中に眠気が高まり入眠する問題や睡眠持続における症状を伴い、睡眠障害に分類される。不眠症には、睡眠の維持の問題や、疲労感、注意力の減少、不快感といった症状が長期間にわたるという特徴がある。不眠症の診断のためには、これらの症状が4週間以上続いている必要がある。 『精神障害の診断と統計マニュアル』第4版(DSM-IV)は原発性不眠、身体や精神の障害に伴う不眠症、物質(薬物)の消費や乱用に伴う不眠症に分類している。不眠症を有する人は、しばしば不安や抑うつの進行につながるため健康へのよくない影響についての懸念がある。[4]

さらに睡眠障害は、過度に眠る過眠症として知られる状態を起こすことがある。精神、身体、あるいは薬物の乱用による二次性の睡眠障害の管理は、その基礎疾患に焦点を当てる必要がある。

種類[編集]

睡眠障害国際分類[編集]

睡眠障害の国際的な分類には以下の2つがある。

睡眠障害国際分類』(ICSD)[14]
アメリカ睡眠医学会によるもので睡眠障害に特化し、詳細な分類と、原因など症状の詳細な記述が用意されている。
疾病及び関連保健問題の国際統計分類』(ICD)
睡眠だけに限らない分類である。ICDの研究用診断基準においては、より分かりやすいものとしてICSDについて言及している[1]
世界保健機関によるものであり、F51.0非器質性不眠症、F51.1非器質性過眠症、F51.2非器質性睡眠・覚醒スケジュール障害、F51.3睡眠時遊行動症(夢遊病)、F51.4睡眠時驚愕症、F51.5悪夢、F51.8他の非器質性睡眠障害、特定不能のものしか用意されず、3ページにわたる診断基準のみの記載である。
精神障害の診断と統計マニュアル』(DSM)[2]
アメリカ精神医学会(APA)によるもので、精神障害を包括的に取り扱う。そのため睡眠薬を減量した離脱によって生じる不眠症だけでなく、そうしたことが原因となる気分障害などにも包括的に言及している。

ICSDによる睡眠障害の分類[編集]

睡眠障害国際分類 (ICSD) では、睡眠障害を大きく4つに分類している。

睡眠異常
睡眠自体が疾患であるものを指す。不眠症ナルコレプシー睡眠時無呼吸症候群睡眠相後退症候群など。
睡眠時随伴症
睡眠中に見られる異常な行動。夜驚症夜尿症睡眠麻痺周期性四肢運動睡眠関連摂食障害 (英: Nocturnal sleep related eating disorder) など。
医学・精神医学的睡眠障害
身体疾患精神病不安障害うつ病などに伴う不眠過眠
その他
未だ分類が正確になされていない、短時間睡眠者長時間睡眠者など。

不眠症の診断に用いられる検査[編集]

以下の検査が不眠症の診断に用いられる。

  • 睡眠日誌英語版: 1週間以上、2~4週間の睡眠パターンの追跡は、医師が診断するのに役立つ[8]。概日リズム障害においては症状把握のために欠かせない[12]
  • アクチグラフ英語版:睡眠覚醒パターンを検査する。通常1週間以上。アクチグラフは、動きを計測する腕時計サイズの手首に装着する装置である。睡眠日誌による記録が難しい場合に用いられる[12]
  • エプワース眠気尺度英語版:日中の眠気を評価するのに有効な質問表。こうした客観的な尺度は、診断補助のために可能な限り施行されるべきである[8]
  • 睡眠ポリグラフ検査: 睡眠時の呼吸を含めた脳や筋肉の活動を計測する。
  • 多睡眠潜伏検査英語版:泊りがけの睡眠ポリグラフの後に行われる日中の眠気の検査である。
  • メンタルヘルス検査:不眠症はうつ病や不安、他の精神障害の症状である可能性もあるため、精神状態の試験、精神の既往歴、また基本的な精神的な評価は、不眠症を訴える人の評価の一部となることがある[8]

診断と治療の原則[編集]

睡眠障害の治療は、非薬物療法と薬物療法に大別される[15]

治療は次のような睡眠障害の原因を特定し、原因の除去に努めるのが最重要である[16]。睡眠障害は、身体が原因である痛みや他の内科的な疾患、生理学的な原因である時差や生活習慣の変動や質の悪い睡眠衛生状態、心理学的な原因であるストレスや大きな生活の変化、精神医学的な障害やアルコール依存症、他に薬理学的な原因となるカフェインやアルコールまた他の医薬品や薬物による影響が原因となる[16]

おおよそ以下のような4つに分類される。

  • 精神療法/心理療法
  • 医薬品の投与および調整
  • 他の身体的な治療
  • リハビリと管理

これらの一般的な手法は、すべての睡眠障害の患者に十分ではない。むしろ特定の治療法の選択は、患者の診断、医学的また精神医学的な既往歴、好み、治療者の専門知識による。行動療法や精神療法や薬物療法には、互換性がないこともなく、治療の利益を最大化するために併用することもある。

精神、身体、あるいは薬物の乱用による二次性の睡眠障害の管理は、先にその基礎疾患や医薬品や薬物に焦点を当てる必要がある[8]。これはアルコールや、覚醒作用のあるカフェインタバコといった嗜好品だけでなく、処方薬も原因となる[8]。睡眠障害の原因となる喘息など呼吸器の治療薬が、不眠症の原因となることもあるし、不眠症に対して出された睡眠薬が過眠症や不眠症の原因となることもある[8]

睡眠衛生指導とは、睡眠衛生に対する情報提供であり不眠症の主となる治療法となる[8]。不眠症に対する睡眠薬による薬物療法は補助であり、十分かつ最小限に併用される必要がある[8]

睡眠衛生指導として有名なものに、2003年の厚生労働省研究班による「快適な睡眠のための7箇条」があり以下のような内容が含まれる[17]

  • 最適な睡眠時間は人により、年齢を重ねるとそれは減っていくこと。
  • 寝具や光や騒音といった睡眠環境を整える。
  • 睡眠前にリラックスできる生活習慣を取り入れる。
  • 無理に寝床につくとかえって目が覚めてしまったり熟睡感が減るので、眠くなってから寝床につくこと。
  • 夕食は軽めにし、夕食後のカフェインや寝酒に注意する。
  • 生活リズムが乱れないように注意し、起床後は光を採り入れ、眠い時には20~30分の昼寝にすること。

これは2014年には、「健康づくりのための睡眠指針2014」が公開され、科学的根拠が明らかな文書となっている[18]

概日リズム睡眠障害に対しては、生活に太陽光を採り入れたり、また逆に睡眠相が前進したり極端に遅れている場合には採り入れないようにサングラスをかけたりといった指導が主となる[12]。その補助として体の概日リズムにはたらきかけるために、高照度光療法や、睡眠相を調整する作用を持つホルモンのメラトニンや医薬品のラメルテオン(ロゼレム)が用いられる[12]

不眠症の原因が、睡眠時無呼吸症候群といった睡眠呼吸障害である場合には、逆に睡眠薬が症状を悪化させることに注意が必要である[8]

睡眠関連運動障害には、むずむず脚症候群周期性四肢運動障害英語版が含まれるが、診断には他の現行の病気や薬物の影響が除外されている必要があり、原因となる薬剤には、SSRI三環系といった抗うつ薬、リチウム、ドーパミン受容体の拮抗薬である抗精神病薬などがある[19]。またドーパミン受容体の拮抗薬である抗精神病薬は、遅発性ジスキネジアアカシジア(静座不能)といった物質誘発性の睡眠関連運動障害の原因ともなりうる[19]。不眠症の原因がむずむず脚症候群が原因である場合もある[8]。 それぞれの専門的な治療が必要である。

脚注[編集]

  1. ^ a b 世界保健機関 『ICD-10精神および行動の障害-DCR研究用診断基準』 新訂版、2008年、新訂、123頁。ISBN 978-4-260-00529-6世界保健機関 (1993) (pdf). The ICD-10 Classification of Mental and Behavioural Disorders:Diagnostic criteria for research (green book). World Health Organization. http://www.who.int/classifications/icd/en/GRNBOOK.pdf. 
  2. ^ a b アメリカ精神医学会 2004.
  3. ^ Hirshkowitz, Max (2004). “Chapter 10, Neuropsychiatric Aspects of Sleep and Sleep Disorders (pp 315-340)”. In Stuart C. Yudofsky and Robert E. Hales, editors (Google Books preview includes entire chapter 10). Essentials of neuropsychiatry and clinical neurosciences (4 ed.). Arlington, Virginia, USA: American Psychiatric Publishing. ISBN 978-1-58562-005-0. http://books.google.no/books?id=XKhu7yb3QtsC&pg=PA315&lpg=PA315&dq=%22Max+Hirshkowitz%22#v=onepage&q=%22Max%20Hirshkowitz%22&f=false 2009年12月6日閲覧. "...insomnia is a symptom. It is neither a disease nor a specific condition. (from p. 322)" 
  4. ^ a b Voderholzer, Ulrich; Guilleminault, Christian (2012). “Sleep disorders”. Neurobiology of Psychiatric Disorders. Handbook of Clinical Neurology. 106. pp. 527–40. doi:10.1016/B978-0-444-52002-9.00031-0. ISBN 978-0-444-52002-9. PMID 22608642. 
  5. ^ MESH68020920
  6. ^ Melinda Smith, M.A., Lawrence Robinson, Robert Segal, M.A. (September 2011). Sleep Disorders and Sleeping Problems. http://helpguide.org/life/sleep_disorders.htm. 
  7. ^ アレン・フランセス 2014, pp. 187-189.
  8. ^ a b c d e f g h i j k アメリカ睡眠医学会 2010, pp. 12-17、22-25.
  9. ^ アレン・フランセス 2014, pp. 191.
  10. ^ アメリカ精神医学会 2004, p. 625.
  11. ^ National Institute of Neurological Disorders and Stroke (June 27, 2011). NINDS Narcolepsy. http://www.ninds.nih.gov/disorders/narcolepsy/narcolepsy.htm. 
  12. ^ a b c d e f g h i アメリカ睡眠医学会 2010, pp. 60-68.
  13. ^ Thorpy, Michael J. "PARASOMNIACS." The International Classification of Sleep Disorders: Diagnostic and Coding Manual. Rochester: American Sleep Disorders Association, 1990. Print.
  14. ^ アメリカ睡眠医学会 2010.
  15. ^ 『睡眠学』 朝倉書店、2009年2月、442頁。ISBN 978-4254300901
  16. ^ a b 大川匡子 「非薬物療法」『睡眠学』 朝倉書店、2009年2月、443-447頁。ISBN 978-4254300901
  17. ^ 厚生労働省 (2003年3月). “健康づくりのための睡眠指針検討会報告書平成15年3月”. 厚生労働省. 2014年3月15日閲覧。
  18. ^ 厚生労働省健康局 2014.
  19. ^ a b アメリカ睡眠医学会 2010, pp. 189-196.

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]