スウェーデンの医療

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
スウェーデンの人口ピラミッド

スウェーデン医療(Healthcare in Sweden)はユニバーサルヘルスケア制度が存在し、ランスティングごとの地方分権制となっている[1]。財政はノルディックモデルの高福祉高負担国家をとっており、保健支出はGDPの9%を占め[2][1]、主に税金を原資として中央政府および県レベルで課税している。多くは公営だがプライベート医療機関も存在する。

スウェーデンは高齢化社会が進んでおり、65 歳以上が人口の18%ほど、80歳以上の後期高齢者では人口の5.2%を占める[2]

医療制度[編集]

スウェーデンの県(ランスティング)

医療制度は、中央政府、ランスティング、コミューンの3レベルに分かれて管理されている[2][3]。スウェーデンは20のランスティングに分かれている。ランスティングは公選制議会であり、4年ごとに国政選挙と同一日に投票が行われる。

  • 中央政府は政策、診療ガイドライン、保健医療のアジェンダを決定する。保健・社会政策省は、中央政府の定めた目標にしたがって下位レベルの行政を監督し、認可・許諾・サービスの評価などを行う。
  • 県レベル(21区分)では、財政および医療サービス提供の責務が中央政府よりランスティング へ委譲されている[3]。すべてのランスティングは中央政府の保健医療政策に基づく、医師による良質な保健サービス・医療ケア・公衆衛生政策を提供する責務がある。
    • ランスティングの主な事務は医療であり(歳出の91%が医療関係)[3][2]、ランスティング経営の病院理事会が病院構造・管理・医療サービス提供の効率化に責務を持つ。
    • 各ランスティングの裁量権は大きく、医療計画や医療デリバリなどの方針はランスティングごとに様々である。約90%のランスティングは他のランスティングと文化政策や施設面などで合同事業を行っている。そのため医療サービス区域が21あり、各区域の人口は6~190万人ほどである。
  • 地方レベル(290区分)では、コミューンが水道・社会福祉などの市民密着サービスを提供している。障碍者や老人の退院後ケア、精神疾患者の長期ケアはコミューンに委譲されている[3]

基礎医療と専門医療の分担も徹底され、基礎医療の範囲は医療法で外来の一部と定義されている[1]。基礎医療の9割は公雇用の医師より提供されている[1]。慣習的には、家庭医(プライマリケア産科、外来精神医療など)・救急医療・選定医療・入院医療・外来医療・専門医療・歯科の7つに分類されている[4]

民間病院についても、ランスティングは価格・提供サービスについての規制権限を持ち、民間病院はランスティングと契約を結ぶ必要がある。患者はランスティングと契約を結んでいない民間病院で医療を受けた場合には、払い戻しを受けることはできない。

財政[編集]

OECD各国の一人あたり保健支出(青は公的、赤は私的)

スウェーデンは高福祉高負担国家であり、GDPに占める租税率は35.5%(2003年、OECDで3位)、さらに社会保障負担を含めると50.6%(OECDで1位)である[5]。個人所得税はGDP比で15.8%(OECDで2位)、地方税率は平均32%ほどである(2005年)[5]

医療費の71%は地方税を原資としており[5]、ランスティングが所得税として徴収権を持つ[6][1]。ランスティング歳入の7割は所得税、歳出の9割が保健医療関連の支出である[6][5]

ランスティング歳出 [5]
医療費関連
(93%)
一次医療 25%
専門医療 46%
専門精神医療 8%
その他医療 10%
歯科医療 4%
交通・インフラ 7%
コミューン歳出 [5]
健康・社会サービス 24%
個人・家庭ケア 24%
児童福祉 10%
教育 24%
その他 18%


医薬品の自己負担レート [7]
年間医療費総額 自己負担割合 年間自己負担累計
0~900 SEK 100% ~900SEK
902~1700 SEK 50% ~1300SEK
1101~4300 SEK 25% ~1700SEK
4300~ SEK 0% 1800 SEK
医療費のGDP比率と自己負担率 [7]
年度 医療費率/GDP 自己負担率/医療費
2000[8] 8.2% 84.9%
2003[9] 9.4% 85.2%
2004[10] 9.1% 84.9%
2006[11] 9.2% 81.7%
2007[12] 9.1% 81.7%
2008[13] 9.4% 78.1%
2009[14] 10.0% 81.5%
2010[15] 9.6% 81.5%
2011[8] 9.5% 81.6%


エレブルー大学病院

医療費の自己負担率はランスティングが決定する[2][1][16]。また自己負担上限額が設定されており、外来診療は年間900クローネ、入院は一日80クローネ、薬剤費は年間1800クローネ前後[1][2]。19歳未満の子供は無料となる[2]

処方薬は有料だが患者の年間自己負担上限が定められ、超過分は公費負担となる[5][7]。薬局はすべて情報ネットワークに接続されており、国内のどの薬局でも処方を受けることができる。処方データが薬局情報ネットワークに送信されるため、電子薬歴を参照し、必要な薬のみが処方される。

歯科医療は一般の医療制度に含まれていないが、部分的に政府補助金が支給される。19歳未満であればランスティングは歯科医療を無料で提供する責務がある[2]

休業補償[編集]

医師が患者が病気だと判断すると(どのような理由の疾病であろうと)、患者は2日目からは賃金が通常割合が支給される。最初の14日までは雇用者が賃金を支払う必要があるが、それを過ぎると患者が回復するまで政府が賃金を支払う。

規制[編集]

保健・社会政策省配下の機関であるスウェーデン医療製品庁(Medical Products Agency、: Läkemedelsverket)は、医薬品および医療機器の規制に責務を持つ[6]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f g 松田亮三「普遍主義的医療制度における公私混合供給の展開 ―スウェーデンにおける患者選択制の検討―」、『海外社会保障研究』第178巻、国立社会保障・人口問題研究所2012年3月
  2. ^ a b c d e f g h スウェーデンの地方自治 (Report). 財団法人自治体国際化協会. (2004-03). http://www.clair.or.jp/j/forum/series/pdf/j15.pdf. 
  3. ^ a b c d 主要諸外国における国と地方の財政役割の状況 (Report). 財務総合政策研究所. (2005-12). Chapt.10. http://www.mof.go.jp/pri/research/conference/zk079.htm. 
  4. ^ Mittag, Ann-Marie (2008年11月25日). “Hälso- och sjukvård” (Swedish). 2009年3月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年3月15日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g 星野泉 (2006-03). スウェーデンの地方財政と地方財政調整制度. 平成17年度比較地方自治研究会調査研究報告書 (財団法人自治体国際化協会). http://www.clair.or.jp/j/forum/series/pdf/h17-7.pdf. 
  6. ^ a b c イギリス及びスウェーデンの医療制度と医療技術評価」、『レファレンス』第753巻、国立国会図書館、2013年10月
  7. ^ a b c 泉眞樹子「医療費における自己負担と医療アクセス - 保険給付と高額療養費、難病対策その他の公費医療」、『レファレンス』第60巻第9号、国立国会図書館、2010年9月、 91-116,、 NAID 40017320355
  8. ^ a b World Health Organization>World Health Statistics2014>Part3 Global health indicators>7. Health expenditure
  9. ^ World Health Organization>World Health Statistics2006>Part1. Ten Statistical Highlights in Global Public Health>4 Health workforce health expenditure and disease burden higher burden fewer resources
  10. ^ World Health Organization>World Health Statistics2006>Part1. Ten Statistical Highlights in Global Public Health>10 health expenditure
  11. ^ World Health Organization>World Health Statistics2009>Part2 Global health indicators>7. Health expenditure
  12. ^ World Health Organization>World Health Statistics2011>Part2 Global health indicators>7. Health expenditure
  13. ^ World Health Organization>World Health Statistics2011>Part2 Global health indicators>7. Health expenditure
  14. ^ World Health Organization>World Health Statistics2012>Part3 Global health indicators>7. Health expenditure
  15. ^ World Health Organization>World Health Statistics2013>Part3 Global health indicators>7. Health expenditure
  16. ^ Glenngard, A., Hjalte, F., Svennson, M., Anell, A., & Bankauskaite, V. (2005). Health Systems in Transition: Sweden. WHO Regional Office for Europe, 2005

関連項目[編集]

外部リンク[編集]