フィンランドの医療

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フィンランドの人口ピラミッド(2012)

フィンランドの医療(Healthcare in Finland)には、高度に分散化された3レベルの公費負担医療制度が存在し、それと並立して小さな民間医療が存在する。フィンランドではユニバーサルヘルスケアおよび健康づくりが達成されており、医療制度に対しての責務はクンタ(kunta、基礎的自治体、市町村)にある[1]。医療政策は中央政府の社会福祉保健省英語版が所管しているが、市民への医療提供責務は地方自治体にある。

欧州委員会による2000年の調査によれば、フィンランドの医療の質は良好とされる。フィンランドでは自国の病院医療制度に満足している人の割合がEUで最も高く、EU平均の41.3%に対して、フィンランド人においては88%であった[2]

保健状態[編集]

OECD各国の人口あたり医師数
乳児死亡率を劇的に減少させたArvo Ylppö医師の切手(1987年)

フィンランドの健康政策では疾病予防に重点が置かれており、感染症撲滅および市民の健康改善を達成した。現在のフィンランドの保健課題には、手術待機リストの短縮、一部自治体でのスタッフ不足、高齢化に伴う医療費増大、医療技術高度化による医療費増大がある[3]

フィンランドの平均寿命は女性で86歳、男性で75歳である[4]。1970年では世界で最も心臓病での死亡率が高い国だったが、フィンランドダイエットと運動が功を奏した。フィンランドは喫煙率が非常に低く、男性で26%、女性で19%である[5]。 フィンランドの健康問題は他の先進国に似ており、循環器疾患が死因の約半分を占め、2番目はである[6]

フィンランドの人口1000人あたりの医師数は2.7人であり(2009年)、これは北欧諸国で最も少ない数字である[7]。それは看護師が医師診察の代替として重要な役割を担っているためとされ、人口1000人当たりの看護師数は9.6人であった[7]

フィンランドはとりわけ専門医療・疾病スクリーニング・予防接種が発達しているとされる。フィンランドは乳がん検診プログラムが整備されており、50~69歳女性の84%が検診を受けている。小児のワクチン接種率は非常に高く、2歳以下幼児の99%が百日咳および麻疹の接種を受けている[7]

フィンランドは平均寿命が延びる一方で、出生率低下と高齢化が進んでおり[8]、急激な人口高齢化による保健・福祉財源の減少が予想されるために、医療制度改革を行っている[9]。2025年にはフィンランドの高齢化率は、EU圏内で最も高くなると試算されている[10]

リスクファクター[編集]

フィンランドは通常よりも高い自殺率の問題がある。最近は数字が下落しているものの、過去に何度も世界自殺統計のトップであった。それにもかかわらず、最近の2008年には、自殺は全死亡の2%(男性での3%・女性で1%)を占めた。

住民のアルコールの年間総消費量は、週末のパーティーでの過度の飲酒は共通しているものの、他のヨーロッパ諸国より低い。しかし酔いはフィンランドの飲酒習慣の中心的な特性である[11]。生産年齢人口では、アルコール消費によって引き起こされる病気や事故は、死亡の最大の原因として冠動脈疾患を上回っている[12]

保健支出[編集]

OECD各国の種類別医療支出財源。
水色は政府一般歳出、紫は社会保険、赤は自己負担、橙は民間保険、緑はその他

フィンランドの保健支出は、2007年には157億ユーロであった[13]。公費負担率は2009年には74.7%であり、これはOECD平均の71.7%よりも多少多いとされるが、他の北欧諸国(デンマーク・アイスランド・ノルウェー・スエーデン)などと比べると公費負担率は低く、それらは80%以上である。

保健支出は、OECD諸国では2000年から徐々に上昇してきているが[14]、2009年のフィンランドではOECD諸国平均と同じであり、一人あたり2,936ユーロであった[14]。 市町村レベルでは、医療に一人あたり1,300ユーロを歳出しており(2005年)、これは自治体予算の25%を占めている[3]

16カ国と比較した2008年のSwedish Association of Local Authorities and Regionsによれば、フィンランドは最も少ない医療資源にて平均並みの結果を達成しており、研究ではフィンランドの公的医療は最も効率的なサービス提供者であるとされた[15] フィンランドの総医療費支出が低いことを説明するひとつの説は、医療従事者(とくに看護師)の給与が低く抑えられていることによるとされる[3]

財源[編集]

地方自治体の歳出 (2003年度) [1]
社会福祉および医療 48%
教育・文化 24%
その他運営支出 14%
投資性支出 9%
債務返済 3%
その他 2%

フィンランドはノルディックモデルの高負担高福祉国家である[1]。 医療制度の財源は主に二つであり、主に地方税によってその地域のプライマリヘルスケアが運営されている。個人所得税は16~23%の範囲で市町村に決定権がある(2005年は平均18.3%)[1]。フィンランドの市町村数は400ほどで、平均人口は12,000人ほど[1]であり、その地域の人口分布により税収だけでは十分な公衆サービスを提供できない場合、患者自己負担や州補助金も課すことがある。

市町村は、プライマリ保健センターおよび地域病院および二次医療に対して出資している[3]。市町村は医療の提供者および購入者を兼ねるあるため、費用対効果が十分ではないとされている。またフィンランドには法定の国民健康保険基金が存在し、これは私的医療・追加的医療・外来投薬・傷病手当にも出資している。

地域病院や大学病院は、その県の自治体が共同で出資しており、包括払い制度で運営されていることが多い[16]

総合診療医(GP)の住民受け持ちは、医師一人あたり約307人ほどであった[17]。医薬品の販売はおよそ800のライセンスを得た薬局に制限されている。

医療保険[編集]

社会保険機構(KELA)のエスポー市事務所
救急車

フィンランドには法定の国民健康保険制度があり全国民に適用されている[1]。これは社会保険機構(KELA, Kansaneläkelaitos)によって運営され、その地方事務所は国におよそ260ヶ所存在する。 KELAの業務は、家庭福祉・国民健康保険・リハビリテーション・基本的な失業給付・住宅給付・奨学金および年金給付などに渡る。

国民健康保険の事業においては、外来処方薬・民間医療機関・医療機関への交通費・傷病産休保障・リハビリサービスなどの費用を払い戻している。国民健康保険へは雇用主が賃金の1.69%、雇用者が賃金の1.50%を拠出する[1]

国民健康保険は雇用主から提供される補助的医療の費用も部分的に払い戻すが、それは状況によりけりである[9]。加えてフィンランドでは民間非営利の医療保険も存在するが、それは補助的なものであり、たいていは国民医療保険の自己負担部の補助にとどまる[3]

自己負担[編集]

医療費はKELAによる償還払いであり、払い戻し割合は民間医療機関ではドクターフィーの60%[18]、薬剤費の10ユーロを超える部分の50%、救急搬送費の9.25ユーロを超える部分、歯科医療の60%[1]

プライマリヘルスケアおよび訪問医療における自己負担額は、上限が13.70ユーロ(2010年)であり、その額は自治体ごとに様々である。病院の場合は、外来診療は一回上限22ユーロ[1]、入院患者は一日上限26ユーロ[1]

長期疾病となった場合には、支出の大部分を医療費が占める可能性がある[18]。そのため、現在のシステムは低収入者に対して医療サービスへのアクセス不平等をまねくという議論がある[19]

健康情報学[編集]

ヘルシンキのMaria病院

電子カルテシステムは、2007年にはほぼ全ての医療機関に整備された。健康情報システムが大規模に発展しており、国家レベルで指揮することなく非中央集権的に浸透している。その結果として、健康情報システムが異なる組織間で相互接続できないという問題に直面しており、情報交換が課題となっている。そのため国家レベルで共通化された情報交換システムを、患者と病院が参加可能なインターネット上に構築する努力が進んでいる[9]

フィンランド保健技術調査局(The Finnish Office for Health Technology Assessment, FinOHTA)は、保健福祉省配下の1独立機関として1995年に設立され、上位レベルの意思決定を支援する科学的基準情報をまとめることを責務とする。このサービスはすべての医療関係者・政治家・一般市民がアクセス可能である。また外国で発表された研究評価基準について、それをフィンランドの基準で評価することも責務の一つである[20]。FinOHTAはInternational Network of Agencies for Health Technology Assessment(INAHTA)およびEuropean Network for Health Technology Assessment(EUnetHTA)のメンバーでもある。

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j 主要諸外国における国と地方の財政役割の状況 (Report). 財務総合政策研究所. (2005-12). Chapt.10. http://www.mof.go.jp/pri/research/conference/zk079.htm. 
  2. ^ Health and long-term care in the European Union”. 欧州委員会 (2000年). 2011年12月13日閲覧。
  3. ^ a b c d e Finland - Health system review 2008”. European Observatory on Health Systems and Policies. 2011年12月13日閲覧。
  4. ^ Finland Life expectancy at birth - Demographics”. Indexmundi.com (2009年9月17日). 2010年2月4日閲覧。
  5. ^ Fat to fit: how Finland did it”. Guardian Unlimited (2005年1月15日). 2007年1月22日閲覧。
  6. ^ Health Care in Finland, Ministry of Social Affairs and Health, 2004
  7. ^ a b c Health at a Glance 2011. OECD Indicators”. OECD (2011年). 2011年12月15日閲覧。
  8. ^ Population change at regional level”. European Commission - Eurostat. 2011年12月15日閲覧。
  9. ^ a b c The Finnish Health Care System”. SITRA (2009年). 2011年12月13日閲覧。
  10. ^ Ageing population - will public finances cope?”. State Treasury. 2011年12月15日閲覧。
  11. ^ Alcohol use in Finland”. National Research and Development Centre for Welfare and Health (Stakes) (2005年). 2008年4月18日閲覧。
  12. ^ YLE Uutiset
  13. ^ Health Expenditure and Financing in 2009”. National Institute for Health and Welfare. 2011年12月13日閲覧。
  14. ^ a b How Does Finland Compare. OECD Health Data 2011. http://www.oecd.org/dataoecd/42/44/40904932.pdf 2011年12月13日閲覧。. 
  15. ^ Svensk sjukvård i internationell jämförelse”. Swedish Association of Local Authorities and Regions (2008年). 2011-12-15 (in Swedish)閲覧。
  16. ^ Nordic DRG system”. Nordic Casemix Center. 2011年12月15日閲覧。
  17. ^ Health (2004)”. Statistics Finland. 2007年1月22日閲覧。
  18. ^ a b Your social security rights in Finland”. European Commission. 2012年2月15日閲覧。
  19. ^ Pitäisikö Terveyskeskusmaksu poistaa?”. Kansanuutiset. 2012-2-15 (in Finnish)閲覧。
  20. ^ About us”. FinOHTA. 2011年12月13日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]