平均寿命

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平均寿命(へいきんじゅみょう)とは、個体群(必ずしも生物個体とは限らない)の各個体の寿命平均である。この場合の寿命とはいわゆる「天寿」ではなく、死因にかかわらず生まれてから死ぬまでの時間である。

各国の人間の平均寿命の具体的な数字については国の平均寿命順リストを参照のこと。

人間の平均寿命[編集]

各国の平均寿命(CIA World Factbook 2008 Estimates for Life Expectancy at birth (years).)
  over 80
  77.5-80
  75-77.5
  72.5-75
  70-72.5
  67.5-70
  65-67.5
  60-65
  55-60
  50-55
  45-50
  40-45
  under 40
  not available

人口統計では、定常な(対象となるの各年齢の死亡率が今後も維持される仮想的な)個体群について平均寿命を求める。つまり、平均寿命とは0歳の平均余命のことである。

平均寿命は、年齢別の推計人口と死亡率のデータを使い、各年齢ごとの死亡率を割り出す。このデータを基にして平均的に何歳までに寿命を迎えるかを出す。日本の厚生労働省が発表している日本人の平均寿命は、ある程度以上の年齢のデータについては除外して計算している。これは、あまりに少数の高齢の人物のデータを算入すると、その生死によって寿命の統計が大きく影響を受けてしまうからである。データ除外の基準は年度によって異なり、2009年度の調査では98歳以上の男性と103歳以上の女性に関するデータは取り除いている[1]。つまり、日本では平均寿命は実態より短めに計算されていることになる。

平均寿命は個体群によって大きく異なるが、寿命の上限はほとんど変わらないため、平均寿命の違いは人口ピラミッドの形の違いとして現れる。個体群が定常的な場合、山型の人口ピラミッドは低い平均寿命、釣鐘型の人口ピラミッドは高い平均寿命が反映されている。ただし、近年に平均寿命が大きく変化した場合、人口ピラミッドは現在ではなく過去の平均寿命を反映している。また、人口が急増しているときは、人口ピラミッドは山型になる。

寿命の平均である平均寿命に対し、寿命の中央値を寿命中位数という。平均寿命が長い個体群では、若者(特に乳幼児)の死亡がロングテールとなり、平均寿命は寿命中位数より少し(日本では男女とも3年程度)低い。逆に、平均寿命が短い個体群では、高齢者がロングテールとなり、平均寿命が寿命中位数より高い。

国の平均寿命順位[編集]

乳幼児を除くヒトの平均寿命短縮の要因[編集]

1971年から1980年のデータで糖尿病患者と日本人一般の平均寿命を比べると男性で約10年、女性では約15年の寿命の短縮が認められた[2][3]。このメカニズムとして高血糖が生体のタンパク質を非酵素的に糖化反応を発生させ、タンパク質本来の機能を損うことによって障害が発生する。この糖化による影響は、コラーゲン水晶体蛋白クリスタリンなど寿命の長いタンパク質ほど大きな影響を受ける。例えば白内障は老化によって引き起こされるが、血糖が高い状況ではこの老化現象がより高度に進行することになる[2]。同様のメカニズムにより動脈硬化も進行する。また、糖化反応により生じたフリーラジカル等により酸化ストレスも増大させる[4]

他の生物の平均寿命[編集]

野生動物では、幼生の高い死亡率が平均寿命を著しく引き下げ意味のない数値にしてしまうことがあり、その場合、ある程度成長した個体のみの寿命を平均することがある。もっとも、動物の場合、人間のような正確な統計計算はせず概数として平均寿命を言うことが多い。

素粒子の平均寿命[編集]

素粒子放射性核種などでは、平均寿命はそれらが自然対数の底の逆数まで減少するのにかかる時間のことであり、崩壊定数λの逆数である。

また半減期(崩壊するまでの寿命の中央値に等しい)は平均寿命に比例し、平均寿命の ln2 = 0.693 倍が半減期に相当する。

平均寿命をτ、崩壊定数をλとして示すと次式になる。

\tau = \int_{0}^{\infty} e^{-{\lambda}t} dt

この定積分は広義積分であるから

F(\infty)-F(0)=\lim_{t\rightarrow\infty}{-\frac{1}{\lambda}}e^{-\lambda\times t}-(-\frac{1}{\lambda}e^{-\lambda\times 0})

これを計算すると

0+\frac{1}{\lambda}=\frac{1}{\lambda}=\tau

と平均寿命との関係が得られた。あるいは半減期の導出同様、平均寿命が経過すると自然対数の底の逆数にまで減少する関係から

\frac{1}{e}=e^{-\lambda\times\tau}

とおいてもこれをτについてとくことによって、まず両辺の自然対数をとり

-1=-\lambda\times\tau

\therefore\frac{-1}{-\lambda}=\frac{1}{\lambda}=\tau

のようにして得られる。また半減期t1/2

t_{1/2} = \frac{\ln(2)}{\lambda} \simeq \frac{0.693}{\lambda}

であるが、これを平均寿命と崩壊定数との関係式と見比べれば、確かに\ln(2)倍していることがわかる。

くわしい式導出は放射壊変の微分方程式も参照せよ。この微分方程式の解の時間に半減期を代入して半減期について解けば、半減期と崩壊定数の関係式が、上でもやったように平均寿命を代入すれば、平均寿命との関係式がえられるわけである。

また、次のような理解の仕方もできる。

少数の長生きする粒子が平均を引き上げるため、平均寿命は半減期より長い。素粒子に限らず、一般に、無記憶な個体の群ではこの関係が成り立つ。

その他の平均寿命[編集]

工業製品の場合は、「平均使用年数」、「平均耐用年数」などと言うことが多い。実際の使用実績を述べる場合と、予想を述べる場合とがある。


出典[編集]

  1. ^ “高齢者の所在不明続出で平均寿命は縮むの?” (日本語). 読売新聞. (2010年8月17日). http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100817-OYT1T00155.htm 2010年8月26日閲覧。 
  2. ^ a b 坂本信夫、坂本信夫、糖尿病合併症の成因と対策 日本内科学会雑誌 Vol.78 (1989) No.11 P1540-1543
  3. ^ Sakamoto N, et al : The features of causes of death in Japanese diabetics during the period 1971-1980. Tohoku J Exp Med 141(Suppl) : 631, 1983
  4. ^ 川上正舒、特集 糖尿病と動脈硬化症 動脈硬化症の分子機構 糖尿病 Vol.46 (2003) No.12 P913-915

外部リンク[編集]