ロシア人

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ロシア人

  1. ロシア民族(ルースキエ;русскиеルースキイェ) - 東スラヴ族の一つの民族
  2. ロシア連邦国民(ロシヤーネ;россиянеラスィヤーニェ) - ロシア国民

日本語では両者を区別しない曖昧な表現となるが、ロシア語では明確に区別される。2は1以外にも多数の民族がおり、1と2は別の概念である。本項では1の民族について解説する。


ロシア人
русские
総人口

 約1億5000万人

居住地域
ロシアの旗 ロシア: 115,889,107[1]
ウクライナの旗 ウクライナ 8,334,000[2]
カザフスタンの旗 カザフスタン 3,962,100[3]
アメリカ合衆国の旗 アメリカ
(ロシア系アメリカ人)
3,152,959[4]
イスラエルの旗 イスラエル 1,500,000+
ベラルーシの旗 ベラルーシ 1,142,000[5]
ウズベキスタンの旗 ウズベキスタン 620,000[6]
ラトビアの旗 ラトビア 612,306[7]
ドイツの旗 ドイツ 560,178[8]
カナダの旗 カナダ
(ロシア系カナダ人)
500,600 [9]
キルギスの旗 キルギス 439,860[10]
モルドバの旗 モルドバ 369,488[11]
エストニアの旗 エストニア 342,000[12]
トルクメニスタンの旗 トルクメニスタン 314,000[13]
イギリスの旗 イギリス 300,000[14]
ブラジルの旗 ブラジル
(ロシア系ブラジル人)
200,000[15]
リトアニアの旗 リトアニア 161,700[16]
イタリアの旗 イタリア
(1995年-2010年のロシア移民)
199,600[17]
アゼルバイジャンの旗 アゼルバイジャン 144,000[18]
アルゼンチンの旗 アルゼンチン
(1880年-1950年のロシア移民)
114,303[19]
タジキスタンの旗 タジキスタン 68,200[20]
グルジアの旗 グルジア 67,671[21]
アラブ首長国連邦の旗 アラブ首長国連邦 58,000[20]
オーストラリアの旗 オーストラリア 56,600[22]
スペインの旗 スペイン 42,585[23]
ルーマニアの旗 ルーマニア (リポバン) 36,397[24]
チェコの旗 チェコ 31,941[25]
フランスの旗 フランス 15,601[26]
フィンランドの旗 フィンランド 15,600[27]
ブルガリアの旗 ブルガリア 15,595[28]
アルメニアの旗 アルメニア 14,660[29]
中華人民共和国の旗 中国 13,500[30]
言語
ロシア語、他多数
宗教
正教イスラム教仏教ユダヤ教及びその他キリスト教諸派など
関連する民族

スラヴ人、特に東スラヴ人ベラルーシ人ウクライナ人

ロシア人(-じん)、ロシア民族(ルースキエ;русскиеルースキイェ)は、東スラヴ人に属する民族である。ロシア語を持つ。ロシア連邦(80%以上)・ウクライナ(17.3%)・ベラルーシ(11.4%)などを中心として旧ソビエト連邦構成国に広く居住する。

人口[編集]

居住各国の統計から算出すると1億3,000万人を超えており、世界でも人口の多い民族の一つである。およそ1億1600万人がロシア連邦内に、1600万人がロシアの近隣諸国に住んでいる。その他、約460万人が世界各国に居住し、その多くはアメリカ合衆国と西ヨーロッパ諸国である。

文化[編集]

民族衣装ココシュニック(ロシアの帽子)をかぶって踊る民族舞踊。

東欧の森林地帯で独自の宗教・信仰と生活様式を持っていた東スラヴ人の文化に起源をもつ。 はじめ、ロシア人の先祖は、近隣のフィン・ウゴル人遊牧民、特にポントス・ステップ黒海沿岸のステップ)のテュルク系民族から文化的影響を強く受けていた。またスカンディナヴィアから来てキエフ・ルーシという国の建国に関わったとされるヴァイキングヴァリャーグ達も、ロシア人の文化的アイデンティティ英語版の形成に重要な役割を果たした。このキエフ・ルーシは988年にビザンツ帝国からキリスト教を受容したが、このことによりロシア文化はスラヴ文化とビザンツ帝国文化の融合した文化としてその後1000年発展を続けることとなった[31]

1453年コンスタンティノープルの陥落後、ロシアは世界最大の正教国家となり、ビザンツ帝国に次いで「第3のローマ」を自称した。一方でヨーロッパ文化の影響を強く受け、特にピョートル大帝の大改革の以後ロシア文化は西欧文化を背景として大きく発展した。20世紀は共産主義イデオロギーがソビエト連邦とその最大・主導的構成国であったロシア・ソビエト連邦社会主義共和国の文化を形作った。

ロシアの文化は極めて多様である。また豊かな歴史をもち芸術の様々な面[32]で卓越性と長い伝統を誇っている。特に文学[33]哲学音楽[34][35]バレエ[36]建築絵画映画アニメ[37]といった分野で世界各国の文化に一定の影響を及ぼした。

ロシア文学における著名な作家としては、アレクサンドル・プーシキンレフ・トルストイフョードル・ドストエフスキーアントン・チェーホフイワン・ツルゲーネフウラジーミル・マヤコフスキーボリス・パステルナークアンナ・アフマートヴァヨシフ・ブロツキーマクシム・ゴーリキーウラジーミル・ナボコフミハイル・ショーロホフミハイル・ブルガーコフアンドレイ・プラトーノフアレクサンドル・ソルジェニーツィンヴァルラーム・シャラーモフなどが挙げられる。

クラシック音楽の分野においてもピョートル・チャイコフスキーや、同年代のロシア5人組、特にモデスト・ムソルグスキーニコライ・リムスキー=コルサコフなど世界的に有名な作曲家を輩出した。また20世紀になってからも、ドミートリイ・ショスタコーヴィチセルゲイ・プロコフィエフセルゲイ・ラフマニノフイーゴリ・ストラヴィンスキーゲオルギー・スヴィリードフアルフレット・シュニトケといった作曲家が活躍した。

言語[編集]

ロシア語русский язык)はユーラシア大陸でもっとも広い地域で話され、スラヴ語の中で話者数がもっとも多い言語である。ロシア語はインド・ヨーロッパ語族に属し、ベラルーシ語ウクライナ語と共に東スラヴ語群を形成する。

10世紀以降確認された古東スラヴ語の資料から、ロシア語には東スラヴ語の文法の特徴とスラヴ祖語の語彙の多くが残されているが、政治、科学、テクノロジー分野では他国の言語に由来する語も多い。冷戦期ソ連が超大国として位置付けられたことから、ロシアは20世紀の政治において多大な影響力をもった国家であり、ロシア語は国連の公用語ともなった。

ロシア語では、口蓋化した子音二次的調音を含む、いわゆる軟音硬音がある。ほぼ全ての子音で口蓋化音と非口蓋化音があり、ロシア語の大きな特徴となっている。また、母音弱化アクセントの無い母音の発音も英語など他言語と違う重要な特徴である。ロシア語では語のどの音節にもアクセントをおけるため、学習者にとってもっとも難しい点のひとつとなっている。

宗教[編集]

ロシアでは正教イスラム教仏教ユダヤ教等、様々な宗教が信仰されているが、中でも正教がもっとも広く信仰されている。2007年にロシア国民に対して行われた世論調査によると、回答者の63%は正教の信者であると回答しており[38]、回答者の内ほぼすべての人がロシア正教会に属している。ロシア正教会はロシアのナショナル・アイデンティティ発達において重要な役割を担ってきた。ロシア国外では、ロシア正教会の信者はロシア正教会モスクワ総主教庁と直接関係を持つ教会(例:ウクライナではウクライナ正教会 (モスクワ総主教庁系))、又は歴史的に関係を持つ教会(アメリカ正教会在外ロシア正教会)に所属することが多い。正教の古儀式派(「ラスコーリニキ」は主流派正教会側が用いる蔑称であり中立的な立場の者は使用しない。17世紀の奉神礼改革を拒絶し主流派ロシア正教会に破門された諸教派)に所属するロシア人もいる。

信仰を持たないロシア人も、文化的な理由で正教会の信仰と自分を関連付けることがある。 ロシアに伝統的なキリスト教の教派としては、モロカン派ドゥホボル去勢派スコプツィ)、鞭身派フルィスティ)及びその他の教派からなる霊的キリスト教の諸派がある。ドゥホボルは17世紀ごろ現れ19世紀末に多くの信徒がカナダに移住した。モロカン派は、1550年頃現れ、王権神授説を否定し、イコンを拒絶、兵役も拒絶した。

その他にも、少数派の教派がある。バプテスト教会は8万5千人以上のロシア人信徒をもち、他にはペンテコステ派福音主義セブンスデー・アドベンチスト教会ルーテル教会エホバの証人などがある。

2000年代になってからは、スラブ・ネオペイガニズム(スラヴ人社会における復興異教主義)が一定の信者を獲得している。また古代スラヴ宗教の伝統と思想研究についてのウェブサイトも数多くある[39][40][41]

脚注[編集]

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  1. ^ Ethnic groups in Russia, 2002 census, Demoscope Weekly. Retrieved 14 August 2009
  2. ^ (2001 census)
  3. ^ (July 2006) Data from Kazakhstan Statistical Agency (ロシア語)
  4. ^ Selected Social Characteristics in the United States: 2007”. U.S. Census American Community Survey (2007年). 2009年4月23日閲覧。
  5. ^ (1999)
  6. ^ BBC NEWS | Asia-Pacific | Russians left behind in Central Asia
  7. ^ [1]
  8. ^ [2] Although millions of immigrants arrived in Germany from Russia, only about 560,178 of them are Ethnic Russians, according to recent German government estimates.
  9. ^ (2006)
  10. ^ Национальный состав населения”. Kyrgyz Statistical Agency. Kyrgyz Statistical Agency (2009年). 2010年3月26日閲覧。
  11. ^ 2004 Moldovan Census and Transnistrian Census data.
  12. ^ [3]
  13. ^ Turkmen pledge on Russian rights, BBC News
  14. ^ (2006 estimate) "300,000 Russians in the UK, "Londongrad" a prime location"
  15. ^ Câmara de Comércio Brasil-Rússia
  16. ^ (2009)Census
  17. ^ (2001)
  18. ^ CIA - The World Factbook
  19. ^ [4]
  20. ^ a b (2000)
  21. ^ (2002 census)
  22. ^ Créditos
  23. ^ (2005 census)
  24. ^ (ルーマニア語) Informatii utile | Agentia Nationala pentru Intreprinderi Mici si Mijlocii
  25. ^ (31.12.2010)
  26. ^ (1999)
  27. ^ (2000 census)
  28. ^ (2002 census)
  29. ^ (2002 census)
  30. ^ [5]
  31. ^ excerpted from Glenn E. Curtis (ed.) (1998年). “Russia: A Country Study: Kievan Rus' and Mongol Periods”. Washington, DC: Federal Research Division of the Library of Congress. 2007年7月20日閲覧。
  32. ^ Russia”. Encyclopedia Britannica. 2008年1月31日閲覧。
  33. ^ Microsoft Encarta Online Encyclopedia 2007. “Russian Literature”. 2011年2月21日閲覧。
  34. ^ Russia::Music”. Encyclopædia Britannica. 2011年2月21日閲覧。
  35. ^ A Tale of Two Operas”. Petersburg City. 2011年2月21日閲覧。
  36. ^ Garafola, L (1989). Diaghilev's Ballets Russes. Oxford University Press. p. 576. ISBN 0195057015. 
  37. ^ Russia::Motion pictures”. Encyclopædia Britannica (2007年). 2007年12月27日閲覧。
  38. ^ Опубликована подробная сравнительная статистика религиозности в России и Польше” (ロシア語). 2011年4月12日閲覧。
  39. ^ A web-site with information about current pagan activity in Russia.” (ロシア語). 2011年4月12日閲覧。
  40. ^ A site with a lot of information on Slavic Paganism.” (ロシア語). 2011年4月12日閲覧。
  41. ^ A Slavic spiritualism site calling for returning to the roots.” (ロシア語). 2011年4月12日閲覧。

参考文献[編集]

  • 岡田進 『ユーラシアブックレットNo.159 新ロシア経済図説』、2010年ISBN 978-4885959523

関連項目[編集]

外部リンク[編集]