多剤大量処方

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3種類の抗不安薬と1種類の睡眠薬。すべてGABA受容体に作用する。日本の精神科薬物療法に対する批判は薬物偏重の3分診療[1]、非医師が精神療法を行うスプリット治療[2]、薬を出すしか能がない[3]といったものであるが、その薬理学さえも不得意とする者が多い[4]。日本では医師が「この組み合わせが絶妙」だとかなんだとか言って処方し、処方が多剤大量化されてきた[1]。2010年に厚労相が「うつ病などに対する薬漬け医療」に言及しプロジェクトチームを発足し[5]、2014年度の改定より、このような根拠のない処方は診療報酬が大きく減算される。

多剤大量処方(たざいたいりょうしょほう)とは、各種類の薬が複数処方され、処方量が多い処方のことである。多剤併用大量処方(たざいへいようたいりょうしょほう)とも言う。つまるところ、薬漬けである。複数の薬剤の使用を英語でPolypharmacyと言う。

原因は薬を多く投与したほうが効果が高くなるであろうという思い込みである[6]。そのため、薬理学的な考慮のない、危険性を無視した投薬となる。

とりわけ精神科医療において指摘されるその原因は、精神科医による薬理学の知識不足である[7][8][4]。そのため、完治させる薬ではないのに同じような薬を何種類も処方することになる[9]。それぞれが限度用量まで出されれば過量服薬になっていることが理解されていないということである[7]精神科の薬の種類は、主に抗精神病薬抗うつ薬気分安定薬覚醒剤抗不安薬/睡眠薬(この二種類は、共にGABA受容体に作用するものが多い)であるが、こうした向精神薬の種類ごとに複数処方すれば多剤かつ大量となる。厚生労働省によれば、日本では諸外国より多剤投与が多く、これが過量服薬の背景になっていることが指摘されている[10]。個別の記事や論文では、時に致死的なほど大量に処方される薬の毒性についての言及がなされる。危険性のある薬でも、用量順守や血液検査のような適切な安全管理がなされていないため注意喚起がなされている[11][12]過量服薬を自殺企図の手段とすることへの注意喚起もなされている[13]

背景として日本独自の慣行が存在する。欧米では、向精神薬の登場により精神病院の病床数が減少していったが、日本では増大していった[14][15]。日本では、入院日数が長くなるほど、薬を使うほどに収入が増える社会保険のシステムにより(過剰診療社会的入院)、多剤化、大量化、高価格化が促され、効果が不十分な患者に多量に薬を使うことが常態化していき、減量が簡単ではなく減薬の方略もないので半永久的な投薬の実態があった[9]。おおよそ精神科の薬は、精神疾患と区別しにくい副作用および離脱症状が生じる可能性があり、また複雑な相互の作用増減の関係があり、ある1剤により、他の薬剤の作用が増強され副作用が生じたり、また別の薬剤の血中濃度が下がり離脱症状が生じている可能性がある[16]。副作用および離脱症状が再発と誤診され、さらなる投薬がなされる可能性もある[17]

まとめると一部の精神科医にとっては、これらの医薬品は各々を最大用量まで処方でき、薬理学的な薬剤間相互作用や副作用を考慮する必要のない医薬品であり、患者の具合が優れなければ効果を高めるために投薬種類と投薬量を増やしていけばいいということである。そして最悪の場合、薬物が有毒域に達するような1日13種類40錠[18]、一度に同じ種類の薬を7種類[19]といった投薬になり死亡する。

1971年の向精神薬に関する条約において、濫用されてはならない薬物が指定されており、覚醒剤については付表(スケジュール)II、抗不安薬や睡眠薬に多いバルビツール酸系ベンゾジアゼピン系は付表IIIおよびIVに指定されている[20]。国際条約に批准する日本でこれに該当する法律は、麻薬及び向精神薬取締法であり、条約の付表Iは法律上の麻薬、付表IIが第一種向精神薬、付表IIIは第二種向精神薬、付表IVは第三種向精神薬に該当する。2010年に国際麻薬統制委員会 (INCB) は、日本でのベンゾジアゼピン系の消費量の多さの原因に、医師による不適切な処方があると指摘している[21]

日本における動向[編集]

たび重なる注意喚起[編集]

2004年の日本精神神経学会では、抗精神病薬の単剤が望ましいにもかかわらず、多剤大量処方が改善されない現状について、言及がなされた[22]。2008年には、過量服薬の危険性に特に配慮が必要である境界性人格障害に対するガイドラインが公開され、多剤の有効性を支持する強い証拠がないため、単剤が推奨され、長期漫然とした処方の有効性も示されていないという内容である[23]。2009年10月30日には、日本うつ病学会が「SSRI/SNRIを中心とした抗うつ薬適正使用に関する提言」において、大量処方を避けるという一般的な注意点を喚起している[24]

2010年1月に、厚生労働省自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム (2010, p. 1)が発足した。6月24日には、厚生労働省から、各都道府県の精神保健福祉主管部局長および、日本医師会、日本精神科病院協会、日本精神神経科診療所協会、日本自治体病院協議会、日本総合病院精神医学会、精神医学講座担当者会議、国立精神医療施設長協議会、日本精神神経学会の会長あてに、「向精神薬等の過量服薬を背景とする自殺について」という題で、自殺傾向のある患者に対して、向精神薬等の適切な処方に配慮する旨を通達している[25]

この問題は国会でも取り上げられている。

 現在、厚生労働省で、自殺・うつ病対策プロジェクトチームの会合が開かれております。(中略)ここで議論のテーマになったのが、精神科や心療内科で処方される向精神薬の多剤大量服用が自殺を引き起こす要因になっているのではないか、こういう状況をどうするかということに関してだったというふうに聞いております。
 これは不審死の行政解剖を行っている東京都監察医務院の監察医、水上創医師の論文でありますけれども、表を見ていただきたいと思います。衝撃的な数字です。自殺という事例の中、三百十七例ありますけれども、実はこの自殺という事例の中をたどっていただくと、中毒物質という一覧の中で、バルビツレート類というところからその他及び詳細不明の向精神薬、ずらずらっと並んでいる、これは全部、禁止薬物とかではなくて、精神科で処方されている向精神薬を服用してのケースであります。実に三百十七例中二百八十九例までがこうした向精神薬を服用した上で自殺を図られた、こういうケースだとこの水上医師の論文の表は示しているわけであります。また、この論文中では、この向精神薬を多剤併用して、相互作用等の要因が自殺を引き起こした可能性が高いということが指摘をされています。
 ことし六月、厚生労働省で、向精神薬の処方に関する注意喚起をしておられますけれども、精神科医療の現場では、こうした形で複数の向精神薬を医師向け添付文書の適量を超えて大量に処方する、いわゆる多剤大量処方がまかり通ってしまっている現状がある。諸外国では、今や単剤処方が主流で、日本のように、多剤大量処方が精神科において広く行われることは異常とも言われております。

柿沢未途 - “衆議院厚生労働委員会”. 1. 第175回国会. (2010-08-03). http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/175/0097/main.html 

2010年9月9日には、厚生労働省自殺・うつ病等対策プロジェクトチームが「過量服薬への取組」を公表し、以下の取り組み指針が提言された[26]

12月1日には、日本うつ病学会、日本臨床精神神経薬理学会、日本生物学的精神医学会、日本総合病院精神医学会の4学会が合同で、「向精神薬の適正使用と過量服用防止のお願い」を公表し、向精神薬を処方する医師に対して、過量服薬の背景にある不適切な多剤大量処方に注意喚起を促している[28]

2011年3月には、処方実態に関する調査書が作成され[29]、11月に厚生労働省から公表された[30]。この取り組みはゲートキーパー役が期待される日本薬剤師会日本病院薬剤師会にも共有された[31][27][32]

『臨床精神薬理』誌において、2011年12月号では、精神科治療薬と自殺関連事象に関する特集「薬物と自殺関連事象、そしてその予防」を、『精神科治療学』誌の2012年1月号と2月号では「精神科医の多剤併用・大量処方を考える」という特集を組んだ。(#参考文献に抄録へのリンクあり)

日本精神神経学会の第107回学術総会シンポジウムでは、「向精神薬の過量服薬、自殺企図を巡る諸課題」という議題で現状について語られた[33]

政府による規制[編集]

2011年、厚生労働省は「自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム:過量服薬対策ワーキングチーム」の調査を受け[13]、3剤以上の処方についての必要性を適正化する取り組みを始めた[30]

2012年3月、厚生労働省は自立支援医療費支給認定実施要綱の第4項を改正し、地方自治体は自立支援医療行政に関し、以下の管理が求められるようになった[34]

  • 支給認定時に診断書を確認し、同一種類の向精神薬が3種類以上処方されているか確認する。
  • その際に、3種類以上処方されている場合は、指定自立支援医療機関から理由を求める。
  • 支給認定時の確認にて該当した者は、その後の支給期間中も診療録等で治療状況を把握する。

2014年度の中央社会保険医療協議会診療報酬改定では、多剤処方を行った場合には「精神科継続外来支援・指導料」をゼロ算定、および処方料・処方箋料・薬剤料をマイナス算定する方針が答申された[35]。しかしこれに日本精神神経学会は反対声明を出している[36]

処方率[編集]

日本における抗精神病薬の処方種類数
(2013年中医協資料)
外来 入院
1種類 38.70% 43.50%
2種類 18.90% 23.00%
3種類 21.90% 11.70%
4種類 5.70% 5.90%
5種類以上 8.20% 6.10%
無回答 15.60% 9.80%
3剤以上割合は外来26.8%、入院23.7%

1979年と1989年の調査では、統合失調症の患者に対して、抗精神病薬1剤が約22%、2~3剤が60%前後、4剤以上というのは10%を下回っている[37]。しかしながら、90年代には1剤が11.1%、2~3剤が63.5%、4剤以上は12.8%と増加傾向にあった[37]

2010年のPCP研究会会員を対象とした調査では、統合失調症の患者に対して、単剤処方率35.2%、多剤併用率64.8%、大量処方率30.7%であった[38]。かつ統合失調症の患者に対して、抗パーキンソン薬58.6%、抗不安薬/睡眠薬77.5%、気分安定薬34.1%が処方されている[38]

気分障害症例では、抗うつ薬のほかに、76%が複数の睡眠薬、50%が複数の抗不安薬を処方されている[37]

東アジアの共同研究である「抗精神病薬の処方についての国際比較研究」[39]では抗精神病薬の一日投与量の平均値をクロルプロマジン換算で比較している。これによると中国が402.7mg、台湾が472.1mg、韓国が763.4mg、日本は実に1003.8mgと飛びぬけて大量療法になっている。同時にこの研究では多剤併用の最大値が中国5剤、台湾7剤、韓国7剤、日本は15剤と突出している。

日本の30万件の診療データからの解析がある[40]。 2009年時点で、精神科に限定されないが以下である。

埼玉県薬剤師会との共同研究によれば、複数レセプト間での重複処方が最も多いのは内科整形外科の組み合わせであり、重複頻度の高い薬剤はエチゾラム、該当者の平均年齢は約70歳であった[41]。その原因について研究者はエチゾラムが向精神薬として規制を受けていないことを挙げており、規制対象とすべきだと述べている[41]

多剤大量処方の実態と原因[編集]

各国の人口1000人あたりベンゾジアゼピン系催眠鎮静剤消費量 (国際麻薬統制委員会)[42]。この統計では複数診療科から誤って最も重複処方されているエチゾラム(デパス)[43]がカウントされておらず実際には日本が突出しているのではないかと推測されている[44]
OECD諸国の人口あたりベット数

実際には以下のようなものである[45][46][47][48][49][9]。薬を増やせば効果が増すという思い込みから、どんどん薬を増やしていくことに原因がある。そのため有効な効果の量やどの程度の量で効果がどう変わるかといった用量依存性や毒性や副作用といった、薬に関する基本的な知識の考慮がなく、多剤で症状が改善するという証拠も存在しないため不適切な処方となる。抗うつ薬を2種類、抗精神病薬を2種類、抗不安薬2種類に、睡眠薬を2種類、1日に30~40錠、またはそれ以上というような組み合わせにより、深刻な副作用が見られる場合が多いという、不適切な処方となる。

欧米では精神病院の病床数が減少し患者の「脱施設化」が進んでいったのは[15]、議論はあるが、一般的に向精神薬の登場によってであると言われている[14][50]

対照的に、日本では1955年に44,250床、1960年には95,667床、1970年には170,000床、2000年には358,153床と増大していった[51]。さらに精神病院にて、入院日数が長く、薬を使うほど、収入が増える社会保険のシステムにより、多剤化、大量化、高力価化が促されていった[9]。効果が不十分な患者に多量に薬を使うことが常態化していき、減量が簡単ではなく減薬の方略もないので半永久的な投薬が行われるようになった[9]。最たるものは、急速大量抗精神病薬飽和療法 (Rapid Neuroleptization) という抗精神病薬を大量に投与する治療法であるが、1980年頃には有効性が否定されており[9]、NICEでは禁止勧告を出している[52]

また精神科の薬は一般的に完治させる薬ではない。アメリカ国立精神衛生研究所 (NIMH) のトーマス・インセルは「不運なことに、現在の薬は快方に向かう人があまりに少なく、治る人はほとんどいない[53]」と述べている。このように、薬が症状改善に寄与する利益が少ない。

そして、危険性を考慮する必要がある薬である。英国精神薬理学会 (British Association for Psychopharmacology) の指導者は、危険性と利益についての理解に基づき、安全かつ有効に向精神薬を使用するために、過剰投与と多剤投与、不十分なモニタなどに改善の余地があり、これは課題であるという趣旨を述べている[54]

また、おおよそ薬剤の各種類において、自殺の危険性を高めるかどうかについての議論がある。抗不安薬や睡眠薬に用いられるベンゾジアゼピン系の薬剤が自殺の危険性を高めることが報告されており[55][56]、自殺の危険性のある抗うつ薬の賦活症候群や抗精神病薬による自殺関連行動が生じる懸念については、日本の添付文書に記載されている。気分安定薬として用いられる抗てんかん薬のアメリカでの承認試験からは自殺および自殺企図の危険性を増加させることが見出され添付文書に記載されている[57][58]

多剤大量で用いられた後に減量が簡単ではないというのは、各薬剤に離脱症状があり、抗精神病薬の離脱症状抗うつ薬の離脱症状、覚醒剤の離脱症状、気分安定薬の離脱症状、抗不安薬の離脱症状睡眠薬の離脱症状、副作用や離脱症状と疾患との区別が困難な症状もある。また各薬剤間で作用を増減させる相互関係があり、増減した薬剤以外の薬剤による副作用の増強、あるいは離脱症状、もしくは元の疾患の再発が生じる可能性がある[16]。副作用や離脱症状が疾患と誤診される可能性もあり[16][59]、そうしてさらに薬が追加されることになる[17]

特に乱用薬物に分類される薬物の中でも、離脱に入院を要し致命的となる可能性があるものは、ベンゾジアゼピン系やバルビツール酸系の鎮静催眠薬およびアルコールのみである[60]。これらの薬物からの離脱の際には、入院デトックスを要するような危険な発作や振戦せん妄(DT)の兆候である頻脈、発汗、手の震えや不安の増加、精神運動性激越、吐き気や嘔吐、一過性の知覚障害の評価が必要である。一度症状が出てしまうと、薬物療法が効かなくなることも多く、発症機序も不明なため、はじめから離脱症状の管理が必要である[61]

医薬品を認可する臨床試験は多剤で行っているわけではなく、また短期間である。

日本の不審死の検死解剖からは、睡眠薬と抗精神病薬と抗てんかん薬の検出が多く、詳細はベゲタミンに共に含まれるバルビツール酸系フェノバルビタール抗精神病薬クロルプロマジン、次いで、バルビツール酸系のペントバルビタール、非ベンゾジアゼピン系のゾルピデム、抗てんかん薬のカルバマゼピンや、バルプロ酸ナトリウム[62]であった。

日本では過去に、軽症のうつ病を説明する「心の風邪」というキャッチコピーが抗うつ薬のマーケティングに用いられた[63]

ガイドラインや証拠[編集]

アメリカ精神医学会(APA)は、アメリカ内科医学委員会財団(ABIM財団)が主導する過剰診療防止Choosing Wiselyキャンペーンにおいて、精神医療において避けるべき加療トップ5を公表しており、「適切な初期評価および経過観察が行われていない患者に対し、抗精神病薬を処方してはならない」「二種類以上の抗精神病薬を継続的に投与してはならない」「認知症による行動・心理症状の治療に際し、抗精神病薬を第一選択肢とすべきではない」「成人の不眠症に対し、抗精神病薬を継続的にファーストライン治療としてはならない」「精神障害でないのならば、児童と青年に対して抗精神病薬を継続的にファーストライン治療としてはならない」と勧告している[64]

英国国立医療技術評価機構 (NICE) は、抗うつ薬に関して、2009年のうつ病に対するガイドラインで、危険性/利益の比率が悪いため、軽症以下のうつ病に抗うつ薬を使用してはならないとしている[65]。ベンゾジアゼピン系薬は2週間までである[66]。日本うつ病学会による2012年のうつ病に対するガイドラインでは、軽症のうつ病に対して安易な薬物療法は避け、また1種類の抗うつ薬の使用を基本とすることが推奨されている[67]

日本うつ病学会による、2012年の双極性障害に対するガイドラインでは、基本的には、気分安定薬非定型抗精神病薬による単剤治療か1剤づつの組み合わせが推奨されている[68]

NICEの統合失調症に対する2009年のガイドラインでは、抗精神病薬の多剤処方は薬剤切替時などの例外的短期間を除いて行なわないよう勧告している[69]

NICEの境界性人格障害に対する2009年のガイドラインは、自傷行為、情緒不安定、一時的な精神病的症状に薬物療法を用いるべきではなく、処方するとしても1週間以上は推奨できず、乱用の可能性が最小で、過量服薬時に相対的に安全な薬を選択するとしている[70]。厚生労働科学研究事業による2008年のガイドラインでは[26]、過量服薬の危険性があるため研究報告の数が限られており、また有効性が示される医薬品も一時的かつ部分的な効果であり、有効性が示されないベンゾジアゼピン系の薬剤の使用を避け処方するとしても数日から2週間程度とし、全体的にも抗うつ薬と抗精神病薬といった組み合わせは支持できず単剤療法を中心とすることが推奨される[23]

NICEの不安障害に対する2011年のガイドラインでは、全般性不安障害 (GAD) やパニック障害にはベンゾジアゼピン系の抗不安薬や不安を鎮める目的で抗精神病薬は用いられない。これらの疾患に長期的な有効性の根拠があるのは抗うつ薬のみである[71]

NICEの不眠症に対する2004年のガイドラインでは、ベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の使用は、短期間の推奨である[72]。2013年の日本睡眠学会によるガイドラインでは、危険性の高いバルビツール酸系や多剤併用や漫然とした長期処方は避けることが推奨されている[73]

世界保健機関 (WHO) は、1996年の「ベンゾジアゼピン系の合理的な利用」という報告書において、ベンゾジアゼピン系の利用を30日までの短期間にすべきとしている[74]。2010年に国際麻薬統制委員会 (INCB) は、日本でのベンゾジアゼピン系の消費量の多さの原因に、医師による不適切な処方があると指摘している[21]

アメリカ合衆国では、アメリカ食品医薬品局 (FDA) によるベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬の添付文書には、7~10日の短期間の使用に用いる旨が記載されている[75]

現在、精神症状における多剤大量処方によって、脳に萎縮が起こるとされる研究論文がイギリスから発表された[76]

脚注[編集]

  1. ^ a b 大野裕、聞き手・岡崎明子 (2010年7月27日). “経験則の診療が主流のまま”. 朝日新聞: p. 13面 
  2. ^ 平島奈津子、上島国利、岡島由香 2008, p. 143.
  3. ^ 井原裕「双極性障害と疾患喧伝(diseasemongering)」 (pdf) 、『精神神経学雑誌』第113巻第12号、2011年、 1218-1225頁。
  4. ^ a b 加藤隆一監修、鈴木映二 『向精神薬の薬物動態学 -基礎から臨床まで』 星和書店、2013年、表紙帯。ISBN 978-4791108374 出版社による書籍の概要ページに薬物動態学を苦手とする精神科医が多いという旨が書かれている。
  5. ^ 江刺正嘉 (2010年6月29日). “向精神薬:過量服薬対策、厚労相が表明 省内にPT”. 毎日新聞: p. 東京朝刊1面 
  6. ^ 鈴木厚 『日本の医療を問いなおす』 筑摩書房、1998年10月、117頁。ISBN 978-4480057754
  7. ^ a b 姫井昭男 2008, pp. 106-110.
  8. ^ 笠陽一郎 2008, pp. 4,202.
  9. ^ a b c d e f 風祭元 2008, pp. 121-132.
  10. ^ 厚生労働省自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム 2010, p. 2.
  11. ^ (pdf) ラミクタール錠(ラモトリギン)の重篤皮膚障害と用法・用量 遵守、早期発見について (PMDAからの医薬品適正使用のお願いNo6) (Report). 医薬品医療機器総合機構. (2012-01). http://www.info.pmda.go.jp/iyaku_info/file/tekisei_pmda_06.pdf 2013年1月1日閲覧。. 
  12. ^ (pdf) 炭酸リチウム投与中の血中濃度測定遵守について (PMDAからの医薬品適正使用のお願いNo7) (Report). 医薬品医療機器総合機構. (2012-09). http://www.info.pmda.go.jp/iyaku_info/file/tekisei_pmda_07.pdf 2013年1月1日閲覧。. 
  13. ^ a b 厚生労働省自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム 2010.
  14. ^ a b デイヴィッド・ヒーリー 『ヒーリー精神科治療薬ガイド』 田島治、江口重幸監訳、冬樹純子訳訳、みすず書房、2009年7月、第5版、437-438頁。ISBN 978-4-622-07474-8、Psychiatric drugs explained: 5th Edition
  15. ^ a b Making Mental Health Count The Social and Economic Costs of Neglecting Mental Health Care (Report). OECD. (2014-07). pp. 15-16. doi:10.1787/9789264208445-en. 
  16. ^ a b c Neil B. Sandson 2010.
  17. ^ a b 笠陽一郎 2008, p. 4.
  18. ^ 軽い不眠症で薬漬けの妻が死亡 夫は薬物中毒死を訴え続ける”. SAPIO (2011年10月20日). 2013年6月21日閲覧。
  19. ^ 頻発する患者の死(2)「わがままな子」の治療”. yomidr. (2012年1月23日). 2013年6月21日閲覧。
  20. ^ 向精神薬に関する条約
  21. ^ a b Special Report: Availability of Internationally Controlled Drugs: Ensuring Adequate Access for Medical and Scientific Purposes (Report). 国際麻薬統制委員会. (2010). p. 40. http://www.incb.org/documents/Publications/AnnualReports/AR2010/Supplement-AR10_availability_English.pdf. 
  22. ^ “精神医学の到達点と展望を語る 第100回日本精神神経学会開催”. 週刊医学界新聞. (2004年6月21日). http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2004dir/n2589dir/n2589_01.htm 2013年3月15日閲覧。  第2589号、医学書院
  23. ^ a b 平島奈津子、上島国利、岡島由香 2008, pp. 136,142,145,148.
  24. ^ 日本うつ病学会、抗うつ薬の適正使用に関する委員会 (2009年10月30日), “SSRI/SNRIを中心とした抗うつ薬適正使用に関する提言” (pdf) (プレスリリース), http://www.secretariat.ne.jp/jsmd/koutsu/pdf/antidepressant%20.pdf 2013年3月15日閲覧。 
  25. ^ “向精神薬等の過量服薬を背景とする自殺について 障精発0624第1号/2号” (プレスリリース), 厚生労働省, (2010年6月24日), http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jisatsu/jisatsu_medicine.html 2013年3月15日閲覧。 
  26. ^ a b c d e f g 厚生労働省自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム 2010, pp. 10-12.
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  33. ^ 齊尾武郎 2012.
  34. ^ 厚生労働省 社会援護局障害保健福祉部長「自立支援医療費の支給認定について」の一部改正について(障発0322第1号)」 2012年3月22日
  35. ^ 第272回総会 - 答申 総-1 (Report). 中央社会保険医療協議会. (2014-02-12). pp. 113-114. http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000037024.html. "適切な向精神薬使用の推進「抗不安薬・睡眠薬、抗うつ薬、抗精神病薬の適切な投薬を推進する観点から、精神科継続外来支援・指導料、処方料、処方せん料及び薬剤料について、多剤処方した場合の減算規定を新設する。 」" 
  36. ^ “向精神薬の多剤併用処方による「通院・在宅精神療法等」の減算(案)に あらためて反対し、撤回を要求する” (プレスリリース), 日本精神神経学会, (2014年1月18日), https://www.jspn.or.jp/activity/opinion/2014/20140118_medical_fee_revision_statement.pdf 
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参考文献[編集]

診療ガイドライン[編集]

行政勧告[編集]

その他文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]