ゾルピデム

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ゾルピデム
ゾルピデムの構造
臨床データ
胎児危険度分類 B3(AU)    C(US)    
法的規制 Schedule IV   (US)   POM (UK)[1]
識別
ATCコード N05CF02
KEGG D08690
化学的データ
化学式 C19H21N3O 
日本国内で処方されるマイスリー5mgの錠剤(旧・藤沢薬品工業時代のもの。同社のロゴが表示されている)
日本国内で処方されるマイスリー10mgの錠剤

ゾルピデム酒石酸塩Zolpidem Tarttrate)は睡眠導入剤である。日本での先発品の商品名はマイスリーイミダゾピリジン系に分類される薬剤であるため、非ベンゾジアゼピン系である。ω1受容体に作用することで効果を示す。1992年に世界で初めてフランスで販売が開始され、日本ではアステラス製薬藤沢薬品工業から発売されたが、山之内製薬に吸収合併されため、アステラス製薬が継承。開発はフランスのサノフィ・サンテラボ社、現在のサノフィ社)によって2000年8月から販売が始まっている。欧州ではStilnox、アメリカではAmbienという商品名で販売されている。また、日本では2012年6月には、ゾルピデム酒石酸塩の後発医薬品も販売が開始されている。

同じく睡眠導入剤としてトリアゾラム(先発薬の商品名は、「ハルシオン」)と同様に超短時間作用型であり、寝付きの悪さの改善薬として出される。

日本では薬事法に基づき、入手に医師処方箋が必要な習慣性医薬品である。また麻薬及び向精神薬取締法における第三種向精神薬である[2]。実際の日本の薬物乱用症例の中でも乱用されやすい薬物である[3]

効能・効果[編集]

不眠症に用いるが、統合失調症及び躁うつ病に伴う不眠症は除く[4]

なお、先述したように超短時間作用型の睡眠導入剤であるため、早朝覚醒(夜中に何度も目が覚めるなど)には用いられない。この場合は、ベンゾジアゼピン系などの中間作用型の薬(ニトラゼパムなど)が使用される。

成人は1日1回、就寝直前に服用する。服用後、ゾルピデムは速やかに胃腸から吸収され、0.8時間で血中濃度が最大なった後、速やかに減少する(消失半減期は2.1-2.3時間)[5]

血中濃度が最大になるまでの時間が非常に短く、また消失半減期も非常に短いため、翌朝に眠気倦怠感などが残りにくいとされる。

剤形[編集]

5mgおよび10mgのフィルムコート錠。通常は「1シート10錠」だが、先発薬のマイスリーの場合は「1シート14錠」のタイプも存在する。

用法・用量[編集]

通常、成人には酒石酸ゾルピデムとして1回5mg - 10mgを就寝直前に経口投与する。なお、高齢者には1回5mgから投与を開始する。年齢、症状、疾患により適宜増減するが、最大量は1日10mgを超えてはいけない。

作用機序[編集]

GABA-A受容体複合体のベンゾジアゼピン結合部位(ω受容体)に働き、γ-アミノ酪酸 (GABA) の作用を増強する。ω受容体には2つのサブタイプがあり、ω1受容体は催眠鎮静作用に、ω2受容体は抗痙攣作用、抗不安作用及び筋弛緩作用に深く関与しているものと考えられている。ゾルピデムはトリアゾラムなどのベンゾジアゼピン系睡眠導入剤と比較してω1選択性が高く、催眠鎮静作用に比べて、抗不安作用、抗痙攣作用や、筋弛緩作用が弱いのが特徴である。また、ベンゾジアゼピン系睡眠薬に比べ、反復投与しても耐薬性、依存性は形成されにくいが、慣れを生じることはあるため、連用によって効き目が落ちてくる場合はある。

副作用[編集]

一般的な副作用としては起床後の眠気・ふらつき、倦怠感などが挙げられる。ごく稀に生ずる重大な副作用としては、依存性の形成、呼吸抑制、一過性前向性健忘などがある。添付文書に夢遊行動の警告が書かれている。

2008年2月、オーストラリアの医療品委員会英語版は「ゾルピデムには睡眠歩行・睡眠運転・奇妙な行動などの危険な睡眠関連の行動を引き越す可能性が存在する。ゾルピデムはアルコールと共に摂取してはならない。他の中枢神経抑制薬物との併用には注意を要する。使用は最大で4週間に限られ、かつ厳密な医学的管理下でなければならない。」とのブラックボックス警告を行った[6]

耐性・依存・離脱[編集]

上のようなゾルピデムの依存形成の可能性が低いという売り込みをよそに、日本の薬物乱用症例においてベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系を含めて上位5位に入る[3]

医療文献では、ゾルピデムの長期的な使用は薬物耐性薬物依存、反跳性不眠、中枢神経系関連の副作用に関連するという。ゾルピデムは短期的な使用に限り、最小有効量の投与にとどめることが推奨される。非薬物療法が睡眠の質の改善に推奨される[7]。動物での耐性試験では、げっ歯類にてゾルピデムは耐性形成の可能性がベンゾジアゼピンよりも少ないが、しかし霊長類での耐性形成の可能性はベンゾジアゼピンと同じであった[8]。耐性はいくつかの人ではわずか数週間で形成された。ゾルピデムの突然の中止は、長期間・高用量で服用された場合は特に、精神錯乱、発作、または他の深刻な影響を与える可能性がある[9][10][11]

薬物耐性身体的依存が形成された場合、治療は通常、離脱症状を最小限に抑えるために数ヶ月にわたって徐々の減量を行う。これはベンゾジアゼピン離脱症候群と同様である。これに失敗した場合、一部の患者では別の方法への切り替えが必要となる場合がある。ジアゼパムまたはクロルジアゼポキシドなどの、長時間作用型ベンゾジアゼピンに置換し徐々に減量していく。時には治療困難患者のため、薬物依存の治療には、入院してのフルマゼニルを用いた迅速な解毒プログラムを使用することができる[12]

禁忌[編集]

重症筋無力症急性狭隅角緑内障には禁忌となる。また本剤服用中に夢遊病のような事例も報告されている。アメリカ食品医薬品局 (FDA) によれば、睡眠中に車を運転しようとしたり、食事をするなど異常な行動をひき起こす危険性があることが報告されている。仏サノフィ社は、夢遊病の症例は確率が1000人に1人以下のまれな副作用であると声明を出している。

その他[編集]

また、1999年に遷延性意識障害となった人へ投与したところ意識が一時的に回復(その後薬の効果が無くなると共に昏睡状態に戻る)したことから、現在その効果についての臨床試験が行われており、一部の被験者には実際に効果が出ている報告も上がっている。

60人の被験者にて調査したところそのような効果は確認できなかった[13]

脚注[編集]

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  1. ^ Home Office circular 039 / 2003
  2. ^ 厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課 (2012-02) (pdf). 病院・診療所における向精神薬取扱いの手引 (Report). http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/dl/kouseishinyaku_01.pdf 2013年3月10日閲覧。. 
  3. ^ a b 松本俊彦「処方薬乱用・依存からみた今日の精神科薬物治療の課題:ベンゾジアゼピンを中心に」、『臨床精神薬理』第16巻第6号、2013年6月10日、 803-812頁。
  4. ^ 財団法人日本医薬情報センター マイスリー錠5mg・10mg 添付文書 (PDF)
  5. ^ 財団法人日本医薬情報センター マイスリー錠5mg・10mg 添付文書 (PDF)
  6. ^ Zolpidem ("Stilnox") – updated information – February 2008”. www.tga.gov.au. 2009年6月22日閲覧。
  7. ^ Kirkwood CK (1999). “Management of insomnia”. J Am Pharm Assoc (Wash) 39 (5): 688?96; quiz 713?4. PMID 10533351. 
  8. ^ Petroski RE, Pomeroy JE, Das R (April 2006). “Indiplon is a high-affinity positive allosteric modulator with selectivity for alpha1 subunit-containing GABAA receptors” (PDF). J. Pharmacol. Exp. Ther. 317 (1): 369?77. doi:10.1124/jpet.105.096701. PMID 16399882. http://jpet.aspetjournals.org/cgi/content/full/317/1/369. 
  9. ^ Harter C, Piffl-Boniolo E, Rave-Schwank M (November 1999). “[Development of drug withdrawal delirium after dependence on zolpidem and zoplicone] [Development of drug withdrawal delirium after dependence on zolpidem and zoplicone]” (German). Psychiatr Prax 26 (6): 309. PMID 10627964. 
  10. ^ “Hypnotic dependence: zolpidem and zopiclone too”. Prescrire Int 10 (51): 15. (February 2001). PMID 11503851. 
  11. ^ Sethi PK, Khandelwal DC (February 2005). “Zolpidem at supratherapeutic doses can cause drug abuse, dependence and withdrawal seizure” (PDF). J Assoc Physicians India 53: 139?40. PMID 15847035. http://www.japi.org/february2005/CR-139.pdf. 
  12. ^ Quaglio G; Lugoboni F, Fornasiero A, Lechi A, Gerra G, Mezzelani P (September 2005). “Dependence on zolpidem: two case reports of detoxification with flumazenil infusion”. Int Clin Psychopharmacol 20 (5): 285?7. doi:10.1097/01.yic.0000166404.41850.b4. PMID 16096519. 
  13. ^ “Effect of zolpidem in chronic disorders of consciousness: a prospective open-label study”. Functional Neurology (4): 259–64. (2013). doi:10.11138/FNeur/2013.28.4.259. PMC 3951253. PMID 24598393. http://www.functionalneurology.com/index.php?PAGE=article&ID=6276. 

参考文献[編集]

関連項目[編集]