GABAA受容体

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ニコチン性アセチルコリン受容体 (nAchR: PDB 2BG9)の構造。GABAA受容体に非常によく似ている。[1][2][3] 上図細胞膜に埋め込まれたnAchRの側面。下図:細胞外面から見た受容体。GABAとベンゾジアゼピン(BZ)の結合部位のおおよその位置はそれぞれα-およびβ-サブユニットの間とα-およびγ-サブユニットの間である。
GABAA受容体の概略構造。: GABAA単量体サブユニットは脂質二重層(青い球に薄黄色のラインが結合したもの)に埋め込まれている。4つの膜貫通のα-へリックス(1–4)は円柱で描かれている。Cys-ループ受容体(GABAA受容体を含む)のファミリーの受容体の特徴であるN末端細胞外ドメイン中のジスルフィド結合は黄色の線で描かれている。:5つのサブユニットは塩化物アニオン透過孔を中心に対称的に配列している。細胞外ループは便宜上表示していない。

GABAA受容体 (GABAAR) は、イオンチャンネル型受容体およびイオンチャネル内蔵型受容体の一つである。リガンドは主要な中枢神経系の抑制性神経伝達物質であるγ-アミノ酪酸(GABA)である。活性化されると、GABAA受容体はClを選択的にイオンチャンネルを透過させることにより、神経細胞に過分極が生じる。これにより、活動電位が生じにくくなり神経伝達の阻害効果を引き起こす。規定液中のGABAA-介在IPSP(抑制性シナプス後電位)の逆転電位は−70 mVで、GABABIPSPとは対照的である。

GABAA活性部位は、GABAならびにムッシモールガボキサドール、およびビククリンなどいくつかの薬物との結合部位である。また、タンパク質には間接的に受容体の活性を調節するアロステリック結合部位がいくつかある。これらのアロステリック部位は特に、ベンゾジアゼピン系非ベンゾジアゼピン系バルビツール酸系エタノール(アルコール)[4]神経活性ステロイド吸入麻酔薬、およびピクロトキシンを含む様々な薬物の標的である[5]

GABA受容体のA[編集]

GABAA受容体は、3種類あるGABA受容体のAであり、AとCがイオンチャンネル型受容体で、BがGタンパク質結合型受容体である[6]。このうち、本項で解説するGABAA受容体が、長らく睡眠薬の主な標的であった[6]

GABAA受容体は、隣接した様々な結合部位からも、アロステリックに調節されている[7]。GABAA受容体は、GABAに占有されるとClチャネルを開口し、クロライドイオンの透過性を高めることで、神経細胞の発火を抑制する[7]

ベンゾジアゼピンの標的[編集]

GABAA受容体は、αが2個、βが2個、γが1個(図ではα1が2個、β2が2個、γ2が1個)の5個のサブユニットから成る5量体であり、GABAの結合部位や、アロステリック調節部位としてのベンゾジアゼピン結合部位が存在する[6]

受容体のサブユニニットには、α、β、γ、δ、ε、π、θ、ρが存在する[6]。GABAA受容体は、αが2個、βが2個、γが1個のサブユニットからなる[6]

ベンゾジアゼピン結合部位には、脳などの中枢型のω1、ω2と、臓器など末しょう型のω3の3種のサブタイプが存在する[6]。この用語について、国際薬理学連合英語版(IUPHAR)は、もはや使われていない「BZ受容体」や「GABA/BZ受容体」ではなく、また「ベンゾジアゼピン受容体」の用語を「ベンゾジアゼピン部位」(benzodiazepine site)に置き換えることを推奨している[8]

ベンゾジアゼピン系薬は、ベンゾジアゼピン結合部位に結合することで、クロライドイオンの透過性を高めるGABAの作用を増加させる[7]。Clチャネルの開口回数が増えることで、GABAの薬理作用が増強されることになる[6]

バルビツール酸系薬では、低濃度ではベンゾジアゼピン系薬と同様であるが、高濃度では直接Clチャネルの開口時間を延長する[6]。またバルビツール酸系薬は、脳全体を抑制するという作用部位の違いがあり、このことが安全性の違いに反映されている[6]。(しかしながらベンゾジアゼピンによる死亡も国際的な問題とはなっている[9]。)

脚注[編集]

  1. ^ Richter L, de Graaf C, Sieghart W, Varagic Z, Mörzinger M, de Esch IJ, Ecker GF, Ernst M (March 2012). [http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?tool=pmcentrez&artid=3368153 “Diazepam-bound GABAA receptor models identify new benzodiazepine binding-site ligands”]. Nat. Chem. Biol. 8 (5): 455–464. doi:10.1038/nchembio.917. PMC 3368153. PMID 22446838. http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?tool=pmcentrez&artid=3368153. 
  2. ^ Campagna-Slater V, Weaver DF (January 2007). “Molecular modelling of the GABAA ion channel protein”. J. Mol. Graph. Model. 25 (5): 721–30. doi:10.1016/j.jmgm.2006.06.001. PMID 16877018. 
  3. ^ Sancar F, Ericksen SS, Kucken AM, Teissére JA, Czajkowski C (January 2007). [http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?tool=pmcentrez&artid=2583146 “Structural Determinants for High-Affinity Zolpidem Binding to GABA-A receptors”]. Mol. Pharmacol. 71 (1): 38–46. doi:10.1124/mol.106.029595. PMC 2583146. PMID 17012619. http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?tool=pmcentrez&artid=2583146. 
  4. ^ Santhakumar V, Wallner M, Otis TS (May 2007). [http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?tool=pmcentrez&artid=2040048 “Ethanol acts directly on extrasynaptic subtypes of GABAA receptors to increase tonic inhibition”]. Alcohol 41 (3): 211–21. doi:10.1016/j.alcohol.2007.04.011. PMC 2040048. PMID 17591544. http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?tool=pmcentrez&artid=2040048. 
  5. ^ Johnston GAR (1996). “GABAA Receptor Pharmacology”. Pharmacology and Therapeutics 69 (3): 173–198. doi:10.1016/0163-7258(95)02043-8. PMID 8783370. 
  6. ^ a b c d e f g h i 石郷岡純 2009.
  7. ^ a b c 碓氷章 2009.
  8. ^ Barnard EA, Skolnick P, Olsen RW, Mohler H, Sieghart W, Biggio G, Braestrup C, Bateson AN, Langer SZ (1 June 1998). “International Union of Pharmacology. XV. Subtypes of gamma-aminobutyric acidA receptors: classification on the basis of subunit structure and receptor function”. Pharmacol. Rev. 50 (2): 291–313. PMID 9647870. http://pharmrev.aspetjournals.org/cgi/content/abstract/50/2/291. 
  9. ^ Overdose Facts & Stats”. International Overdose Awareness Day. 2014年1月20日閲覧。

参考文献[編集]

  • 石郷岡純、日本睡眠学会編集 「睡眠薬の作用機序」『睡眠学』 朝倉書店、2009年2月、101-107頁。ISBN 978-4254300901
  • 村崎充邦、日本睡眠学会編集 「睡眠学の歴史と現況」『睡眠学』 朝倉書店、2009年2月、649-651頁。ISBN 978-4254300901
  • 碓氷章、日本睡眠学会編集 「薬理・作用機序」『睡眠学』 朝倉書店、2009年2月、661-665頁。ISBN 978-4254300901

関連項目[編集]

外部リンク[編集]