パニック障害
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| パニック障害のデータ | |
| ICD-10 | F41.0 |
| 統計 | 出典: |
| 世界の患者数 | 人 |
| 日本の患者数 | 人 |
| 学会 | |
| 日本 | 日本精神神経学会 |
| 世界 | 世界精神医学会 |
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| パニック障害 | |
|---|---|
| 分類及び外部参照情報 | |
| ICD-10 | F41.0 |
| ICD-9 | 300.01, 300.21 |
| DiseasesDB | 30913 |
| MeSH | D016584 |
パニック障害(パニックしょうがい)は、強い不安感を主な症状とする精神疾患のひとつ。パニック・ディスオーダー(panic disorder)とも呼ばれ、panic disorder からPDと略記される場合もある。従来、不安神経症と呼ばれていた疾患の一部である(不安神経症の方が広い疾患概念であり、不安神経症と呼ばれていたものの全てがパニック障害には当たらない)。かつては全般性不安障害とともに不安神経症と呼ばれていたが、1980年に米国精神医学会が提出したDSM-IIIで診断分類の1つに認められ、1992年には世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD-10)によって独立した病名として登録された。最近は心の病と考えるより、脳機能障害として扱われるようになっている。
目次 |
[編集] 主な症状
定型的なパニック障害は、突然生じる「パニック発作」によって始まる。本能的な危険を察知する扁桃体が活動しすぎて、必要もないのに戦闘体制に入り、呼吸や心拍数を増やしてしまう[1]。続いてその発作が再発するのではないかと恐れる「予期不安」と、それに伴う症状の慢性化が生じる。さらに長期化するにつれて、症状が生じた時に逃れられない場面を回避して、生活範囲を限定する「広場恐怖症」が生じてくる。
[編集] パニック発作
パニック障害患者は、日常生活にストレスを溜め込みやすい環境で暮らしていることが多く、発作は、満員電車などの人が混雑している閉鎖的な狭い空間、車道や広場などを歩行中に突然、強いストレスを覚え、動悸、息切れ、めまいなどの自律神経症状と空間認知(空間等の情報を収集する力)による強烈な不安感に襲われる。症状や度合は、患者によって様々だが軽度と重度症状がある。しかし軽・重度患者ともに発作が表れる時に感じる心理的(空間認知など)印象としては、同じような傾向が見られ、漠然とした不安と空間の圧迫感や動悸、呼吸困難等でパニックに陥り、「倒れて死ぬのではないか?」などの恐怖感を覚える人が少なくない。先に挙げた自律神経症状以外にも手足のしびれやけいれん、吐き気、胸部圧迫のような息苦しさなどがあるが、それ自体が生命身体に危険を及ぼすものではない。
[編集] 予期不安
患者は、パニック発作に強烈な恐怖を感じる。このため、発作が発生した場面を恐れ、また発作が起きるのではないかと、不安を募らせていく。これを「予期不安」という。そして、患者は神経質となりパニック発作が繰り返し生じるようになっていく。
[編集] 広場恐怖
パニック発作の反復とともに、患者は発作が起きた場合にその場から逃れられないと妄想するようになる。さらに不安が強まると、患者は家にこもりがちになったり、一人で外出できなくなることもある。このような症状を「広場恐怖(アゴラフォビア)」という。広場恐怖の進展とともに、患者の生活の障害は強まり、社会的役割を果たせなくなっていく。そして、この社会的機能障害やそれに伴う周囲との葛藤が、患者のストレスとなり、症状の慢性化を推進する。広場恐怖の記事も参照。
[編集] 二次的うつ
予期不安や広場恐怖により社会的に隔絶された状態が続くと、そのストレスや自信喪失などによってうつ状態となることもある。元来うつの症状が見られなかった患者でも、繰り返し起こるパニック発作によって不安が慢性化していくことでうつ状態を併発し、実際にうつ病と診断されるケースも多く報告されている。
[編集] 原因
原因についてはまだ完全に解明されていないが、脳内不安神経機構の異常によって起きるものだと考えられている。ヒトの脳には無数の神経細胞(ニューロン)があり、その間を情報が伝わることで、運動、知覚、感情、自律神経などの働きが起きる。パニック発作や予期不安、恐怖などもこの脳の機能のあらわれで、そこに何らかの誤作動が生じるために起こっていると考えられている。神経細胞間の情報を伝える化学物質(神経伝達物質)や、それを受けとめる受容体(レセプター)の機能の異常が関係しているのではないか、という研究が進められている。
- セロトニン仮説
ノルアドレナリンにより引き起こされる不安感がいきすぎないように抑える働きのあるセロトニンという神経伝達物質が不足したり、またはレセプターが鈍くなっているためではないか、という説。また、セロトニンの過剰によるという説もある。
[編集] 薬物原因
[編集] 喫煙
[編集] アルコールと鎮静薬
パニック障害の30%がアルコール摂取、17%がその他の向精神薬を使用している[2]。 これは一般的に61%がアルコール使用、[1] 7.9% がその他の向精神薬 [2]を使用していることと比較してである。 薬物のレクレーション使用やアルコールの使用は症状を悪化させる[3]。 カフェイン・ニコチン・コカインなどの覚醒作用を持つ薬物は心拍数などのパニック症状を増加させるので症状を悪化させる。
アルコールは初期のパニック症状を緩和させる一方、中長期のアルコール使用はパニック障害を引き起こしたり悪化させ、とりわけアルコール離脱症候群では顕著である。[4] この効果はアルコールだけに限らず、同様の作用メカニズムを持つ薬物でも同じである。とくにベンゾジアゼピンはアルコール問題のある患者に精神安定剤として多く処方されている[4]。 慢性的なアルコール乱用が症状を悪化させるのは、脳内化学機能の変化のためである[5][6][7]。
ベンゾジアゼピンの断薬時に患者の10%が長期離脱症候群を経験し、それにはパニック障害も含まれる。長期離脱症候群は、離脱時の最初の数ヶ月間の間に見られるものと似ている傾向にあり、たいてい離脱当初の2-3ヶ月の間に見られる症状に比べて亜急性レベルの重症度である。 [8]
精神保健サービスに参加する患者について、パニック障害・社会恐怖などの不安障害は、アルコールまたは鎮静剤乱用の結果であった。アルコールや鎮静薬はもともとの不安を維持したり悪化させる。アルコール乱用や慢性的な鎮静薬の使用・乱用者は、その他の治療や薬物によってベネフィットを得ることはできないだろう。それが根底にあるため、彼らは症状の根本原因に対応していない。 鎮静状態からの回復は、アルコール離脱症候群やベンゾジアゼピン離脱症候群のため一時的に悪化する[9][10][11][12]。 世界不安評議会は、ベンゾジアゼピンによる長期の不安治療については、耐性・精神機能障害・認知や記憶障害・身体的依存・ベンゾジアゼピン離脱症候群のために推奨していない[13]。
[編集] 疫学
疫学的には、生涯有病率1.6%–2.2%と言われる。
従来は心理的な葛藤が根本にあると思われてきた。しかし近年、認知行動療法の有効性が明確となり、心理的「原因」よりも、症状に対する患者の対処が症状進展のメカニズムとしては重視されるようになった。また薬物療法の有効性も確認されており、生物学的因子があるという意見も強くなっている。
パニック障害の重症度は様々であり、軽度の患者もいれば重度の患者もいる。重症例では、適切な治療を受けないまま経過すると、数年間にわたって外出できないなど、日常生活や社会生活に大きく支障をきたす場合もある。
なお、パニック障害にうつ病が併発する場合が少なくはなく、日本では約3割、欧米では約5–6割といった統計も出されている。
[編集] 診断
「予期しないパニック発作」が繰り返し発生し、それらに対する予期不安が1か月以上続く場合、パニック障害の可能性が疑われる。突然のパニック発作で始まり、予期不安を生じ、症状が持続するようになり、広場恐怖に進んでいくという経過の確認も、臨床診断においては、重要であるとされる。実際の臨床場面では、パニック障害は、広場恐怖を伴う慢性化したものと、広場恐怖を伴わない軽症例の2つに区分される。
診断基準としてはアメリカ精神医学会『DSM-IV 精神障害の診断と統計の手引き』が用いられることが多い。
なお、PTSD・うつ病・強迫性障害などの精神疾患の症状の一つとしてパニック発作を併発する場合があるが、この場合は、これらの病気の症状の一つとして扱われ、パニック障害とは診断されない。また身体疾患が原因になっている場合もパニック障害とは診断しない。
[編集] 治療
治療的には、薬物療法と精神療法があり、様々な治療が有効性を認められている。
精神療法において最も基礎的で重要なものが、「疾患に対する医師の説明」「心理教育」である。パニック障害は、発作の不可解さと、発作に対する不安感によって悪化していく疾患であり、医師が明確に症状について説明し、心理教育を行うことが全ての治療の基礎となる。
精神療法の中で、有効性について最もよく研究されているのが、認知行動療法である。認知行動療法では、「恐れている状況への暴露」「身体感覚についての解釈の再構築」「呼吸法」などの訓練・練習が行われ、基本的には不安に振り回されず、不安から逃れず、不安に立ち向かう練習を行う。系統的な認知行動療法を行う施設は日本には多くはないが、臨床医は、認知行動療法的な患者指導を行っている場合が多い。
[編集] 薬物療法
薬物療法では、発作の抑制を目的に抗うつ薬(SSRIや三環系抗うつ薬・スルピリド)が用いられ、不安感の軽減を目的にベンゾジアゼピン系抗不安薬が用いられる。これらの薬物には明確な有効性があり、特に適切な患者教育と指導を併用した場合の有効性は極めて高い。また最近は、新型抗うつ薬であるSSRIの有効性が語られることが多い。しかし、SSRIの代表とされるパロキセチン(パキシル)では、飲み忘れ等で服用を中止した数日後に起きる激しいめまい・頭痛などの離脱(禁断)症状が問題となり、パニック障害に対する安全性・有用性に疑問も呈されている。一方、米国ではベンゾジアゼピン系の抗不安薬の依存性が問題とされることが多いが、日本では、パニック障害の治療ではSSRIとベンゾジアゼピン系の抗不安薬の両方が使用されている。[14][15]
アメリカ精神医学会(APA)では、ベンゾジアゼピンはパニック障害の治療に対し効果的であり、ベンゾジアゼピン、抗パニック作用を持つ抗うつ薬、心理療法のうちどれを使うかは患者の病歴と体質を元に決めるべきだと勧告している。APAではパニック障害ではある治療を進めるには証拠が乏しいと報告している。またAPAではベンゾジアゼピンには速攻作用というアドバンテージがあるが、ベンゾジアゼピン依存症のリスクが存在すると付記している[16]。
英国国立医療技術評価機構(NICE)では[17]、パニック障害の治療に対しベンゾジアゼピンは長期的に良い結果をもたらさないために処方すべきでない(should not)、抗ヒスタミン剤と抗精神病薬は処方すべきではない(should not)と勧告している。
[編集] 認知行動療法
- 暴露反応妨害法(暴露療法)
- 不安が誘発される状況に想像的、または体験的に身を置き、回避しないことで徐々に慣れる。不安や恐怖のために避けている場所や状況に少しずつ慣らし、克服した経験を積んで自信をつけていく方法。「自分が避けている場所はパニック発作とは関係がない」ことを身をもって確かめていく。最初の目標がクリアできたら、少しずつ段階的に目標のレベルを上げていく。
[編集] 著名人
- プロ野球選手の小谷野栄一は「同病者を勇気づけたい」とパニック障害であったことを公表[18]現在も疾患を抱えながらプレーを続けている。
- 女優の田中美里が、2002年8月28日放送の『わたしはあきらめない』(NHK)で、2000年末に発作に襲われパニック障害と診断されたと語った[19]。また、その日の放送で、番組の司会者の長島一茂が、自身も1996年以来、パニック障害を患っていると明かした。
- タレントの安西ひろこは著書「バルドーの告白」の中で、2001年から2008年まで休業した理由がパニック障害であったことを明らかにした。
[編集] 類似する病気
[編集] 脚注
- ^ 史上最強図解これならわかる!精神医学(ナツメ社)
- ^ “Panic Disorder”. Mental Health America. 2007年7月2日閲覧。
- ^ (1998 May). “Practice guideline for the treatment of patients with panic disorder. Work Group on Panic Disorder. American Psychiatric Association”Am J Psychiatry 155 (5 Suppl): 1-34. PMID 9585731.
- ^ a b Terra MB, Figueira I, Barros HM (2004 August). “Impact of alcohol intoxication and withdrawal syndrome on social phobia and panic disorder in alcoholic inpatients”. Rev Hosp Clin Fac Med Sao Paulo 59 (4): 187-92. doi:10.1590/S0041-87812004000400006. PMID 15361983.
- ^ Wetterling T, Junghanns K (2000 Dec). “Psychopathology of alcoholics during withdrawal and early abstinence”. Eur Psychiatry 15 (8): 483-8. doi:10.1016/S0924-9338(00)00519-8. PMID 11175926.
- ^ Cowley DS (24). “Alcohol abuse, substance abuse, and panic disorder”. Am J Med 92 (1A): 41S-8S. doi:10.1016/0002-9343(92)90136-Y. PMID 1346485.
- ^ Cosci F, Schruers KR, Abrams K, Griez EJ (2007 Jun). “Alcohol use disorders and panic disorder: a review of the evidence of a direct relationship”. J Clin Psychiatry 68 (6): 874-80. doi:10.4088/JCP.v68n0608. PMID 17592911.
- ^ Ashton H (1991). “Protracted withdrawal syndromes from benzodiazepines”. J Subst Abuse Treat 8 (1-2): 19-28. benzo.org.uk. doi:10.1016/0740-5472(91)90023-4. PMID 1675688.
- ^ Cohen SI (1995 February). “Alcohol and benzodiazepines generate anxiety, panic and phobias”. J R Soc Med 88 (2): 73-7. PMID 7769598. PMC 1295099.
- ^ Belleville G, Morin CM (2008 March). “Hypnotic discontinuation in chronic insomnia: impact of psychological distress, readiness to change, and self-efficacy”. Health Psychol 27 (2): 239-48. doi:10.1037/0278-6133.27.2.239. PMID 18377143.
- ^ Professor C Heather Ashton (1987). “Benzodiazepine Withdrawal: Outcome in 50 Patients”. British Journal of Addiction 82: 655-671.
- ^ Onyett SR (1989 April). “The benzodiazepine withdrawal syndrome and its management”. J R Coll Gen Pract 39 (321): 160-3. PMID 2576073. PMC 1711840.
- ^ Allgulander C, Bandelow B, Hollander E, et al. (2003 August). “WCA recommendations for the long-term treatment of generalized anxiety disorder”. CNS Spectr 8 (8 Suppl 1): 53-61. PMID 14767398.
- ^ パニック障害の治療法
- ^ http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_panic.html パニック障害・不安障害]
- ^ アメリカ精神医学会 2009
- ^ 英国国立医療技術評価機構 2011, chapt.1.2
- ^ 高山通史 (2007年5月4日). “日本ハム小谷野が病魔克服の快気祝砲”. 日刊スポーツ. 2009年12月18日閲覧。。
- ^ “NHKアーカイブス保存番組”. NHK(Japan Broadcasting Corporation). 2010年1月12日閲覧。
[編集] 参考文献
- アメリカ精神医学会 (2009-01). APA Practice Guideline for the Treatment of Patients With Panic Disorder, Second Edition (Report).
- 英国国立医療技術評価機構 (2011-01). CG113 Anxiety : Generalised anxiety disorder and panic disorder (with or without agoraphobia) in adults (Report). - 成人の全般性不安障害とパニック障害(対人恐怖の有無を含む)
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- パニック障害 厚生労働省
- パニック障害教室
- (百科事典)「Panic Disorder」 - Medpediaにある「パニック障害」についての項目。(英語)
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