抗コリン薬

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抗コリン薬(こうこりんやく、: anticholinergic agent)は、アセチルコリンがアセチルコリン受容体に結合するのを阻害する薬物のことである。抗コリン作動薬とも呼ばれる。この抗コリン作用によって副交感神経が抑制される。副交感神経遮断薬とも言われていたが、コリン作動性線維は副交感神経節後線維だけではない。代表的なものに、アトロピンスコポラミンがある。これと逆の作用を示すのはコリン作動薬である。

歴史[編集]

ベラドンナの果実

ベラドンナは、学名Atropa belladonnaと呼ばれ、古くから用いられてきた。ベラドンナには、アトロピンスコポラミンといった成分が含まれ、これらは抗コリン薬として用いられる。

機序[編集]

アセチルコリンは神経伝達物質として、身体の様々な機能に関わっている。このアセチルコリンが作用するときに結合する部位が、アセチルコリン受容体である。さらにアセチルコリン受容体には、ムスカリン受容体ニコチン受容体が存在する。抗コリン薬は、このうちムスカリン受容体にアセチルコリンが結合して作用するのを阻害する。つまり、アンタゴニストである。

用途[編集]

胃腸の過活動、失禁、吐き気の抑制[編集]

スコポラミン(ブスコパン)のような抗コリン薬は、胃腸の過活動による、胃痛や腹痛、また乗り物酔いの抑制などにも用いられる。

抗コリン性抗パーキンソン病薬[編集]

代表的には、ビペリデン(アキネトン、タスモリン)や、トリヘキシフェニジル(アーテン)のような抗コリン性抗パーキンソン病薬が存在する[1]。1960年代にはパーキンソン病の治療にドーパミン補充療法が登場し、現在は抗コリン性抗パーキンソン病薬は、主に抗精神病薬との併用において用いられてきた[1]。しかし、そのような併用は避けることが推奨されている[1]

抗コリン作用の強い他の薬物[編集]

抗コリン中毒[編集]

抗コリン剤の過量服薬や、抗コリン作用のある三環系抗うつ薬との併用によって生じる中毒状態であり、せん妄、こん睡、けいれん、幻覚、低血圧、高熱などの症状が生じる救急状態である[1]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d 山田武史 「12 抗コリン性抗パーキンソン薬について教えて下さい。抗コリン性パーキンソン病を併用することによるデメリットはどのようなものがあるでしょうか?本当に認知機能に影響するのでしょうか?」『統合失調症の薬物療法100のQ&A』 藤井康男(編集)、稲垣中(編集協力)、星和書店、2008年5月、35-37頁。ISBN 978-4791106677
  2. ^ 精神医学講座担当者会議(監修)、佐藤光源、丹羽真一、井上新平(編集) 『統合失調症治療ガイドライン』 医学書院、2008年、第2版、124頁。ISBN 978-4-260-00646-0

関連項目[編集]