ケフィア

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ケフィアグレイン

ケフィアロシア語: Кефи́рkefir)とはカフカース地方を起源とする、発酵した乳飲料である。他の表記はkeefir, kephir, kewra, talai, mudu kekiya, milkkefir, búlgarosなど。日本では「ヨーグルトきのこ」として知られる。ロシア語名に従ってケフィールとも。

概要[編集]

ケフィア粒(ケフィアグレイン、Kefir grains)という種菌ヤギの乳に植えることで作られる。伝統的なケフィアは、ヤギ皮の袋にミルクとケフィアグレインを入れ、戸口の近くにぶら下げて作られていた。人々が戸口を通る際に袋と触れたり当たったりするために、中のミルクとケフィアグレインがよく混ざり続けたのである[1]

ケフィアグレインは酵母真正細菌の結合体である。この共生母体は、カリフラワーに似た形状を形作っている。今日では、健康に利点があるという新たな調査結果により、ケフィアは段々と人気が高まっている。他にも、多くの真正細菌や酵母がケフィアグレインから新たに見つかっている[2]

伝統的なケフィアは概して常温で一晩かけて発酵させる。ラクトースの発酵により、酸・炭酸・そして僅かなアルコールが生じ、薄いヨーグルトと同程度の濃度の飲み物が出来上がる[3]20世紀初期に小規模な乳製品加工場で作られていたケフィアは、1パーセントから2パーセント程度のアルコール濃度に発酵していたが、近代的な製造方法で商用に作られるケフィアのアルコール濃度は1パーセント以下である。これは発酵時間が減少したためと考えられている[1]

しばしばカスピ海ヨーグルトと混同されがちだが、酢酸菌類の有無などから別物である[4]

亜種[編集]

他の似たような種類の飲料も存在するが、これらは見た目や微生物の配合の点でケフィアと著しく異なっているであろう。ウォーター・ケフィアとも呼ばれるティビコス(TibicosまたはKefia d'acqua)は砂糖水やイチジク類の乾燥果物、レモン汁の中で室温にて1日またはそれ以上で菌が成長する。

ケフィアの製造[編集]

慣習的なケフィアの製造には、真正細菌と酵母のゼリー質の集合体であるケフィアグレインが必要とされる。このケフィアグレインには糸のような質感で口の中でもそれが感じ取れる、「ケフィラン」として知られる水に溶けやすい多糖が含まれている。ケフィアグレインは発酵の中で成長し、さらなるグレインが産出されるのである。グレインは白色から黄色に見え通常はクルミ大の大きさであるが、米粒と同じくらいの大きさの場合もある。

製品を保存している間も発酵は続き、ガスが発生し続けるため、店頭で販売する際は容器にガス抜き用の穴が開いている。その為、食品衛生法で販売される食品の梱包は密閉状態でなければならないと定められている日本では生の状態では販売できず、乾燥してカプセル剤などに加工されて販売されている。

ケフィアグレインの注意点[編集]

ケフィアグレインを使用しない際は、湿らせた状態または乾燥した状態のどちらでも保管できる。グレインは摂氏4度の水につけて湿らせ、8~10日間保管できる。もしくは平たいチーズに包んで保存しそのまま36~48時間室温で乾燥させると、この乾燥したグレインは室温でも包みに入れて保管すれば12~18か月もつ。乾燥したケフィアグレインはミルクの中で連続した成長の循環が幾度か行われることにより、再び菌の活動が活発になる。ケフィアが(湿った)原型のような外形やにおいを発したとき、グレインはケフィアの生産の準備ができる。この再成長段階に及ぶまでには、含まれる正しい真正細菌のバランスを再び確立させることが求められる。

ケフィアグレインは大腸菌群やケフィアの保存期間を短縮させてしまう他の損傷した真正細菌のような、グレインにとって望ましくない細菌により汚染されてしまう場合がある。こうした細菌に対抗するため、ケフィアを製造する容器は作る前に予め洗浄し衛生的にするのがよい。適した容器にはジャムの瓶やピクルス用の瓶などガラス製の瓶があるが、作るのに適したサイズの容器であれば他の物でもよい。ケフィアグレインを洗い落とす際には、沸騰させていない冷水か新鮮なミルクで洗浄するのが良いとされる。クロラミンで消毒された水は使用を避けた方がよいが、もし必要ならば揮発や薬剤などでクロラミンを落とすとよいだろう。

健康への利点[編集]

単純に発酵の期間を短くまたは長くすることで、栄養物の含有量を変更することができる。しかしどちらの長さでも、それぞれ異なった健康への利点がある。例えば、かなり熟成させたケフィア(酸味が増加する)は葉酸の含有量が著しく増加する[5]。また、ケフィアはラクトースの消化を助ける役割も果たすため、ラクトースに耐性の無い人々にとっては他の乳製品より適した食品となっている[6]。その他、ケフィアに入っているケフィランもネズミの血圧の上昇を抑えたり血液中のコレステロール水準を下げる効果を示しているという[7]

ケフィアの飲用[編集]

ケフィアをストレートに飲む人がいる一方でそのままでは酸味が強すぎるために果物やハチミツ、メープルシロップや他の甘味料を加えて飲むのを好む人々も多い。凍らせたバナナイチゴブルーベリーや他の果物をケフィアと混ぜミキサーに入れスムージーを作って飲むことも可能である。中にはバニラリュウゼツランの果汁等の風味を加えて飲む例もある。また、シリアルやグラノーラの上にミルクの代わりとしてケフィアをかける人もいる。ケフィアはまた安価で健康な飲み物として人気が高い旧ソビエト連邦の位置していた地域全体でも、やはりミルクの代わりに飲む朝食の飲み物として典型的でどこでも手に入る飲料となっている。

料理への使用[編集]

ケフィアはリトアニアビートの冷製スープ、「シャルティバルシュチャイ」(šaltibarščiai) には欠かせない材料の1つである。ケフィアを使用した他の種類のスープや料理は、以前ソビエト連邦が形成されていた地域全体において広く人気のあるものである。これはかつてソビエト連邦において、牛のミルクから作られたケフィアが雑貨店や日用品店でも至る所で手に入ったためではないかと考えられている。

使用するミルクの種類[編集]

90グラムのケフィアグレイン

ケフィアグレインはほとんどの哺乳類から出るミルクの中でうまく発酵すると思われ、またグレインの成長も続くだろうと考えられている。使用されるミルクの典型としては牛乳やヤギ・羊の乳が含まれ、それぞれ感覚上・栄養上の性質が異なっている。

加えて豆乳や米乳、ココナッツミルクの他、フルーツジュースやヤシの水、麦芽汁、ジンジャー・ビールほか糖分を含んだ液体等、哺乳類から産出されていない「ミルク」でもケフィアグレインは発酵することがある。しかし、菌の成長要素として不可欠な真正細菌(哺乳類のミルクには入っている)を含んでいない媒体が使用された場合、グレインが成長を中止してしまう恐れがあるため発酵させる際に新しい液体を試す場合は余ったケフィアグレインを使用すると良い。

しかし乳糖はグレイン(ケフィラン)を作り出す多糖の統合に不必要であり、科学的研究により米の加水分解物 (rice hydrolysate) が代用の媒体として適しているという論証もなされた[8]。それに加え、豆乳はその異なったタンパク質のために見た目や大きさを変化させるにもかかわらずケフィアグレインが豆乳を発酵させる際に再生することも示された[9]

参考[編集]

以下は、翻訳元の英語版からの出典項目である。

  1. ^ a b Farnworth, Edward R. (2003). Handbook of Fermented Functional Foods. CRC. ISBN 0-8493-1372-4. 
  2. ^ Lopitz-Otsoa, F; Rementeria, A; Elguezabal, N; Garaizar, J (2006). “Kefir: A symbiotic yeast-bacteria community with alleged healthy capabilities”. Revista Iberoamericana de Micología 23: 67-74. http://www.reviberoammicol.com/2006-23/067074.pdf 2007年6月10日閲覧。. 
  3. ^ Kowsikowski, F., and V. Mistry. 1997. Cheese and Fermented Milk Foods, 3rd ed, vol. I. F. V. Kowsikowski, L.L.C., Westport, Conn.
  4. ^ マキノ出版/壮快 2002年7月号、8月号
  5. ^ Kneifel, W; Mayer, HK (1991). “Vitamin profiles of kefirs made from milks of different species”. International Journal of Food Science & Technology 26: 423-428. 
  6. ^ Hertzler, Steven R.; Clancy, Shannon M. (2003 May). “Kefir improves lactose digestion and tolerance in adults with lactose maldigestion”. Journal of the American Dietetic Association (Elsevier, Inc.) 103 (5): 582-587. doi:10.1053/jada.2003.50111. http://www.adajournal.org/article/PIIS0002822303002074/abstract 2007年6月10日閲覧。. 
  7. ^ Maeda, H; Zhu, X; Omura, K; Suzuki, S; Kitamura, S (2004-12-30). “Effects of an exopolysaccharide (kefiran) on lipids, blood pressure, blood glucose, and constipation”. BioFactors (IOS Press) 22 (1-4): 197-200. http://iospress.metapress.com/link.asp?id=kfk3vbda80uh2cq8 2007年6月10日閲覧。. 
  8. ^ Maeda, H; Zhu, X; Suzuki, S; Suzuki, K; Kitamura, S (2004-08-25). “Structural characterization and biological activities of an exopolysaccharide kefiran produced by Lactobacillus kefiranofaciens WT-2B(T)”. Journal of Agricultural and Food Chemistry (American Chemical Society) 52 (17): 5533-8. doi:10.1021/jf049617g. http://pubs.acs.org/cgi-bin/abstract.cgi/jafcau/2004/52/i17/abs/jf049617g.html 2007年6月10日閲覧。. 
  9. ^ Abraham, Analía G.; de Antoni, Graciela L. (May 1999). “Characterization of kefir grains grown in cows' milk and in soya milk”. Journal of Dairy Research (Cambridge University Press) 66 (2): 327-333. doi:10.1017/S0022029999003490. http://journals.cambridge.org/action/displayAbstract?fromPage=online&aid=11539 2007年6月9日閲覧。. 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]