リキュール
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リキュール(Liqueur)とは蒸留酒に果実やハーブなどの副材料を加えて調製した酒のこと。そのまま飲むこともあるが、多くはカクテルの材料や菓子の風味付けなどに利用される。リキュールという言葉はラテン語の liquor (液体)ないしは liquefacere (溶解させる、溶け込ませる)に由来する。
日本の酒税法上においては、リキュール類は「酒類と糖類その他の物品(酒類を含む)を原料とした酒類でエキス分が2度以上のもの(清酒、合成焼酎、しょうちゅう、みりん、ビール、果実酒類、ウイスキー類、発泡酒、粉末酒を除く。)」と定義されている。またヨーロッパ委員会の法律(法律1576/89)では、ワイン、ビールを除くアルコール度数15度以上の飲み物のうち、糖分を1リットルあたり100g以上含むものを指す。
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[編集] 歴史
酒に色々な風味をつけて楽しむ習慣は古代エジプト、古代ローマ、あるいは唐(中国)の時代にまでさかのぼるが、現在のように蒸留酒をベースとして保存性を高めた「リキュール」が生まれたのは十字軍の遠征によってアラビアの技術を知り持ち帰った中世ヨーロッパである。
錬金術の発展の過程で蒸留の技術が発達し、高いアルコール度数の酒が作られるようになると、錬金術師たちはこれを生命力を高める為の霊酒と考え、各種の薬草・香草類を加えてさらに効果の高い、不老長寿の秘薬、エリクシルを作ろうとした。これがリキュールの原型である。その後その技術は各地の修道院に受け継がれ、薬用酒として盛んに作られるようになった。現在でも修道院で作られ、そのレシピは門外不出であるものも多種存在する。いわゆる大航海時代には交通の発達に伴ってリキュールの原材料が多様化し、アジアや新大陸の植物、あるいは砂糖などの調味料が用いられるようになった。
18世紀になると薬用という意味合いは薄れ、各種の果実や砂糖を使用し、味わいを追求するようになり、現在のような多種多様なリキュールが作られるようになった。またリキュールの色を服装や装飾品に合わせてコーディネートする習慣も流行し、リキュールの色彩の多様化を促した。
日本における最初のリキュールは平安時代に中国から伝わった屠蘇だといわれる。その後、室町時代に菊酒が作られるようになった。「加賀の菊酒」と「肥後の菊酒」の2種類が知られている。江戸時代には薬酒が各地で作られ、万病に効く薬として販売された。また、この時代に梅酒作りも盛んになった。現在日本では、輸入品も含めて500種類以上のリキュールが販売されている。ただし日本ではリキュール類と分類されている酒でも、リキュールの定義の問題で、日本以外ではリキュールと呼ぶことができない酒が多数ある。
[編集] 製法
リキュールの製造過程には様々な製法があり、一般には香味原料からの成分の抽出、配合、熟成、仕上げの各段階を経て作られる。
ただその前に、まずはベースに、どのような蒸留酒を使用するかを決定する。この時、後から香味成分を加えるので、ウォッカのような癖の少ない、つまり、エタノールと水の混合物に近い蒸留酒を選択することが多い。もちろん、敢えて癖のある蒸留酒を選択し、その癖を活かすという方法を取る場合もあるし、中にはニ種類以上の蒸留酒をブレンドしたものをベースとすることもある。
その次にベースの蒸留酒、または水(温度は様々)に、香味原料からの成分の抽出を行うわけだが、この時、おおよそ次の4方式が用いられる。それは、蒸留法、浸漬法、エッセンス法、パーコレーション法のいずれか、または、これらを組み合わせるのである。
- 蒸留法
- ベースの蒸留酒と香味原料を混合、もしくは、水と香味原料を混合し、それを蒸留釜で蒸留して香味成分のみを残す方法。蒸留後、甘味料や着色料を加えることもある。濁りの無い澄んだリキュールを作る事ができ、高級なリキュールは方法で作られることが多い。ただし繊細な芳香を残したい場合や、ベリー類の果実のように加熱によって変質してしまう香味原料を使用する場合には向かないという欠点がある。
- 浸漬法
- 浸漬法は、冷浸法と温浸法に分けられる。最も古くからリキュール作りに用いられてきた方法である。蒸留は行わない。
- 冷浸法(または冷浸漬法)とは、ベースの蒸留酒に香味原料をそのまま漬け込んでしまう方法。浸漬期間は任意。日本の家庭で作られる梅酒・カリン酒などの果実酒は、普通この方法を用いる。
- 温浸法(または温浸漬法)とは、湯に香味原料を漬け込んで、湯が冷えたらベースの蒸留酒を加えておく方法。浸漬期間は任意。
- なお、いずれの方法も甘味料や着色料を加えることもある。
- エッセンス法
- ベースの蒸留酒に、別途抽出しておいたエッセンスオイルを加えて香りを着ける方法。すなわち香料の添加である。合成香料が用いられることもある。蒸留法や浸漬法など他の方式と併用される場合も多い。なお香料としてだけではなく、味を補うための調味料としてエッセンスオイルを加えることもある。
- パーコレーション法
- 香味原料に、ベースの蒸留酒または水を循環させながら、香りや味を抽出する方法。コーヒーを抽出する際のパーコレータ法と似ている。加熱によって変質してしまう香味原料から成分の抽出を行う際に使用する。
これらの方法で出来上がった原酒をブレンドしたり、そこにさらに香味液を加えたりすることもある。その後、任意の期間熟成してから出荷される。
なお、リキュールは製法で分類すると混成酒である。しかし混成酒は醸造酒をベースにしたものと蒸留酒をベースにしたものの両方を含むのに対し、リキュールは蒸留酒をベースにしたもののみなので、混成酒よりは狭い範囲の分類である。ただし冒頭の説明にもある通り、一口にリキュールと言っても国や地域により定義に違いがあることを断っておく。
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- この項目の参考文献
橋口孝司『スピリッツ銘酒事典』新星出版社 2003年5月15日発行 ISBN 4-405-09064-5
[編集] 分類
リキュールは香草・薬草系、果実系、ナッツ・種子系、その他の4種類に分類される。リキュールの元祖となるのは薬でもあった香草・薬草系のリキュールである。近年では食品の加工技術の向上に伴い、従来の枠にははまらない特殊なタイプのリキュールも多く出現している。
[編集] 香草・薬草系のリキュール
香草・薬草・スパイスの類を主原料とするリキュール。中世に薬としての役目を担っていた、修道院系のリキュールの大部分はここに属する。シャルトリューズのようにレシピが非公開であるもの、100以上の原材料を配合しているものもある。果実や種子を主原料としたリキュールでも、アクセントや隠し味として少量の香草類が使われている場合がほとんどである。
- アイリッシュ・ミスト
- アンゴスチュラ・ビターズ
- アブサン
- イェーガーマイスター
- ヴェルヴェーヌ・ヴェレ(クマツヅラほか)
- ウゾ(アニスほか、ギリシア料理の項参照)
- ウニクム
- ウンダーベルク
- エギュベル
- ガリアーノ(バニラ、ミント、アニスほか)
- カンパリ
- 桂花陳酒(キンモクセイ花)
- クレーム・ド・ミント(ミント)
- サンブーカ(ニワトコ花ほか)
- シャルトリューズ
- スーズ(リンドウ類の根ほか)
- ストレガ(サフラン、バニラほか)
- チナール(アーティチョーク)
- ティフィン (紅茶)
- ドランブイ
- パスティス
- パルフェ・タムール(菫、柑橘類ほか)
- ベネディクティン
- ベルモット
- マカディア(マカ、ローズヒップ)
- 養命酒
[編集] 果実系のリキュール
果実の果肉・果皮・果汁を主原料とするリキュール。製造の歴史は浅いが近代における製造量や種類は最も多い。薬よりは嗜好品としての要素が強いリキュールであり、カクテルや製菓に利用される。また風味が穏やかで親しみやすく、ストレートあるいはソーダ割りなどの手軽な方法での飲用に向く種類でもある。
- 梅酒(梅)
- キュラソー(オレンジ)
- クレーム・ド・アプリコット(杏)
- クレーム・ド・カシス(カシス)
- クレーム・ド・ペシェ(桃)
- クレーム・ド・フランボワーズ(フランボワーズ)
- コアントロー(オレンジ)
- サザンカンフォート(桃)
- シャンボール(フランボワーズにハーブ、蜂蜜)
- 杏露酒(杏)
- スロージン(スローベリー、ジンの種類の項参照)
- ディタ(ライチ)
- パッシモ(パッションフルーツ、柑橘類)
- パッソア(パッションフルーツ)
- パライソ(ライチ)
- マラスキーノ(マラスカ種チェリー)
- ミドリ(メロン)
- モニカ(クランベリー)
- リモンチェッロ(レモン)
- キバ(さくらんぼとバナナ)
- ピンクス(グレープフルーツ)
[編集] ナッツ・種子系のリキュール
果実の種子や豆類を用いたリキュール。コーヒー豆のように焙煎された材料が使われるものもある。重厚な風味と甘味を備えたものが多く、製菓や食後酒に向く。
- カハナ・ロイヤル(マカダミアナッツ)
- カルーア(コーヒー)
- ゴディバ(カカオ)
- ティア・マリア(コーヒー)
- ディサローノ・アマレット(アプリコット核、アーモンド香)
- ノチェロ(くるみ)
- フランジェリコ(ヘーゼルナッツ)
- マリブ(ココナッツ)
- モーツァルト・チョコレート(チョコレート)
[編集] その他のリキュール
技術の発達に伴い製造されるようになった、比較的新しいリキュール。卵やクリーム・ヨーグルトといった、タンパク質や脂肪分を多く含む材料を使ったものが代表的である。
- アドヴォカート(卵)
- ドランブイ・クリーム(クリーム)
- ベイリーズ・アイリッシュ・クリーム(クリーム)
- モーツァルト・カプチーン・コーヒー・クリーム(コーヒークリーム)
- モーツァルト・チョコレート・クリーム(ミルクチョコレート、ヘーゼルナッツ、チェリー)
- ヨーグリート(ヨーグルト)
[編集] 参考文献
- 大槻健二 監修 『リキュールとカクテルの辞典』 成美堂出版(1999) ISBN 4-415-00835-6
- 渡邉一也 監修 『リキュール&カクテル大辞典』 ナツメ社(2004年) ISBN 4-8163-3734-2

