発泡酒
発泡酒(はっぽうしゅ)とは、日本の酒税法で定義されている酒類の一つ。日本の酒税法では、ビールと発泡酒は区別して定義されており、例として麦芽・ホップ・水を原料として発酵させても、「定められた副原料以外を用いる場合」はビールと認められず発泡酒に分類される[1]。本項では、日本でビールより低税率となる節税型発泡酒を中心に解説する。
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[編集] 定義
酒税法第3条によると、酒類は「ビール」「リキュール」「雑酒」など17種類に分類され[1]、発泡酒には以下の定義となっている。
- 発泡酒
- 麦芽又は麦を原料の一部とした酒類(同法第3条第7号から第17号までに掲げる酒類及び麦芽又は麦を原料の一部としたアルコール含有物を蒸留したものを原料の一部としたものを除く)で発泡性を有するもの(アルコール分が二十度未満のものに限る)をいう。
- 税制上区分は麦芽比率によって「50%以上」「50%未満〜25%以上」「25%未満」の3種(後述)。
[編集] 概要
1990年代中盤以降日本で展開されている発泡酒は、主に麦芽比率の低いビール(ローモルトビール)の一種、またはビール風アルコール飲料である。通常のビールに比べると低価格だが、味が薄い、苦みが足りない等の、「ひと味足りない」といった評価が多い。一方、女性やアルコールを嗜まない層ではビールほど重くなくあっさりしていて飲みやすいという評価もされている。
また、麦、水、ホップと定められた副原料以外のものを使用したビールも発泡酒に分類される。そのため、スパイスやハーブを用いたビールや、果実や果汁を用いるフルーツビールも「発泡酒」と区分される。
ビールの売り上げが減少傾向にあるのに対し、発泡酒市場は登場以来2000年代後期まで拡大しアルコール飲料の売れ筋商品でもあったが、2度の酒税改正や第三のビールが登場した影響で、チューハイなどに比べ、割安感が薄くなっている。
新ジャンルのビール風味アルコール飲料『第三のビール』において「リキュール(発泡性)(1)」では原材料として発泡酒が使用され、それに小麦または大麦を原料の一部に使用したスピリッツを加える製法となっている[2]。
詳細は「第三のビール」を参照
税制にあわせて製造されるアルコール飲料としては日本独自であり、海外メディアでは low malt beer や happoshu と紹介されることもある。
発泡酒にて「生」の定義は、ビールの「生」(生ビール)の定義と同様に『熱処理をしていないもの』が該当する[3][4]が、ビールの表示に関する公正競争規約の対象ではないため、基本的に「熱処理していない」旨(「非熱処理」等)の表記は行なわれていない。
[編集] 歴史・背景
日本での発泡酒の誕生には、時代背景による一種の対処法、参入障壁の高いビール製造、高いビールの税率、1989年(平成元年)以来のビールの低価格競争が主な要因としてあげられる。
太平洋戦争中は食糧不足によりビールの原材料となる大麦や米の供給不足にビール製造会社は悩むことになった。このような時代背景もあって大麦の使用量を減らした、もしくは使用しないビール風飲料「合成麦酒」の製造開発を目指し大日本麦酒などを中心に研究が行われた。この原材料は甘藷(サツマイモ)とホップであり、現在でいう「第三のビール」に相当するものであった[5]。
戦後、発泡酒に一定量までの麦芽の使用が認められるようになったことや、ビールよりも参入コストと税金が少なく抑えられる利点があった事により、参入障壁の高いビールを避けて発泡酒に参入する企業が現れた[5]。1950年代には数社から、この種の酒が製造・販売されていた。しかし、多くの会社は数年で撤退し、ライナービヤーは既存ビール会社からビールと紛らわしいと不正競争防止法で訴えられ、事実上販売を差し止められた[6]。また、1957年(昭和32年)にビール業界に宝酒造が参入したが苦戦、1967年(昭和42年)にビール事業から撤退[7]。これらの要因などから発泡酒で成功を収めるのは難しいと考えられ、発泡酒は酒税法で定義されているものの長期間参入する企業が無い状況が続き、休眠状態のジャンルとなってしまう[5]。
この間にも混合タイプの発泡酒は既存メーカーから僅かに商品化された。1983年(昭和58年)にアサヒビールが発売した「Be」はビールとジュースを混合した発泡酒で、カクテルの様に色がついていたことや、アルコール度数が2%だったこともあり「ビールタイプのライトカクテル」として発売された。ピンク・グリーン・パープルの3色に染められたネコが白いグランドピアノの前で戯れるCMが当時話題を呼んだ。1986年(昭和61年)にサッポロビールが東海四県限定で「ビヤカクテル バンブー」を発売。しかし、両商品とも短期間で販売終了した[5]。
1984年(昭和59年)にサントリーが発売した「ビーハイ」はその名の通りビールを焼酎で割ったもの[8]で、今日でいう「第三のビール:リキュール(発泡性)(1)」(もしくは「第四のビール」)のルーツ的な商品であったが、成果が出ず製造販売中止となった[8]。
1989年(平成元年)に酒類販売免許が緩和され、大型ディスカウント店でビールを扱うことができるようになった。これによりこれまでの小売店での希望小売価格での購入が減り、大店舗間での低価格競争が起こった。それらの競争は、卸売業者や生産メーカーへの値下げ要望となったのだが、そもそもビールはその小売価格のうち46.5%が税金で占められ、値下げは難しい商品であった。 また、国産ビールの値下げが難しいため、海外の安い輸入ビールを取り扱う店が急増し、大手ビール企業は危機感を募らせていた。
ここでビールを値下げする可能性の一つとして、各社で研究が進められていた(とされる)のが発泡酒である。 当時の酒税法では麦芽の比率が66.7%(3分の2)以上のものをビール、それ未満は発泡酒とし、ビールと比べると税率が大幅に安く定められていた。
その流れの中で、1994年(平成6年)にサントリーが麦芽率を65%におさえた発泡酒「ホップス」を販売し、低価格を実現させた。翌年には サッポロビールが麦芽比率25%未満の「ドラフティー」を発売、さらなる低価格に設定したことで、発泡酒は本格的な競争が開始されることになる。
当時は「節税ビール」と呼ばれ、味はビールと比べ小異[9]や劣ると評されながらも低価格が功を奏し、発泡酒の売り上げは好調だったが、ビールの売り上げが低下したため、政府は1996年(平成8年)秋、酒税を改訂、麦芽率50%以上の発泡酒の税率をビールと同じとした。発泡酒をねらい打ちにした改訂で、商品開発を行う企業努力を無視した行為だと大手ビールメーカーは反発した。
サントリーは秋の酒税法変更に対し、麦芽使用率を25%未満にした「スーパーホップス」を同年5月から市場に投入している。
1998年(平成10年)には、キリンビールの発泡酒初参入となる「麒麟淡麗〈生〉」を発売、同年の発泡酒市場のシェア50%を占める大ヒット商品となり、同時に発泡酒市場は大きく拡大した。
2001年(平成13年)、アサヒビールが発泡酒市場初参入となる「本生」(現アサヒ本生ドラフト)を発売。アサヒビールはこれまで「ビールのまがいものである発泡酒は発売しない」と表明してきたが、その間毎年のように新発売したビール新製品が不振であったことから方針転換し、当時成長過程にあった発泡酒市場への参入を決め、理由として「発泡酒カテゴリーが成立したから」と説明している[10]。
2003年(平成15年)、酒税法がさらに改正され発泡酒は10円の値上げとなる。この改正が要因となり、さらなる安い税率のアルコール飲料の研究から第三のビールが開発される事となる。その第三のビールも2006年(平成18年)に税率を上げられている。
2008年(平成20年)の出荷量は第三のビールに抜かれ、ビール類における構成比で初めて最下位となった[11]。
2010年(平成22年)現在、キリンビールが66.2%と最大のシェアを握る[12]。
[編集] 税率
2006年(平成18年)5月1日以降のもの[2]。金額は1リットルあたり。
- 発泡酒
- 麦芽比率50%以上・(ビール) - 220円
- 50%未満 25%以上 - 178.125円
- 25%未満 - 134.25円
一般的な発泡酒の麦芽比率は25%未満
[編集] 主要銘柄
2011年(平成23年)10月現在の現行商品(一部過去・発売予定品を含む)を掲載。過去の商品については、各社項目にある過去商品節を参照。
| メーカー | 商品名 | 原料 | アルコール分 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| キリンビール | 麒麟淡麗〈生〉[13] | 麦芽、ホップ、大麦、米、コーン、スターチ、糖類 | 5.5% | |
| 淡麗グリーンラベル[14] | 麦芽、ホップ、大麦、糖類 | 4.5% | ||
| 淡麗W[15] | 麦芽、ホップ、大麦、米、コーン、スターチ、糖類、赤ワインエキス、香料、カラメル色素 | 5.5% | 旧・淡麗アルファ | |
| 麒麟ZERO[16] | 麦芽、ホップ、糖類、大豆たんぱく、酵母エキス | 3% | ||
| アサヒビール | アサヒ本生ドラフト[17] | 麦芽、ホップ、大麦、大麦エキス、米、コーン、スターチ、糖類 | 5.5% | 旧・アサヒ本生 |
| アサヒ本生アクアブルー[18] | 麦芽、ホップ、大麦、大麦エキス、スターチ、糖類、酵母エキス、海藻エキス | 5% | 旧・アサヒ本生オフタイム | |
| アサヒスタイルフリー[19] | 麦芽、ホップ、糖類、カラメル色素、酵母エキス、大豆ペプチド | 4% | ||
| サッポロビール | サッポロ北海道生搾りみがき麦[20] | 麦芽、ホップ、大麦、糖類 | 5.5% | |
| サントリー | MDゴールデンドライ[21] | 麦芽、ホップ、大麦、糖類 | 6% | |
| ダイエット<生>クリアテイスト[21] | 麦芽、ホップ、大麦、糖類、酸味料、クエン酸K、甘味料(アセスルファムK、スクラロース)、苦味料 | 3.5% | ||
| オリオンビール | 麦職人[22] | 麦芽、ホップ、大麦、米、コーン、スターチ、糖類 | 5.5% |
[編集] 脚注
- ^ a b 他の主な酒類の定義は以下のようになっている。
- ビール
- リキュール
- 酒類と糖類その他の物品(酒類を含む)を原料とした酒類でエキス分が2度以上のもの(酒税法第3条第7号から第19号までに掲げる酒類、同法第2条第1項に規定する溶解してアルコール分1度以上の飲料とすることができる粉末状のもの及びその性状がみりんに類似する酒類として政令で定めるものを除く)をいう。
- その他の醸造酒
- 穀類、糖類その他の物品を原料として発酵させた酒類(同法第3条第7号から第18号までに掲げる酒類その他政令で定めるものを除く)でアルコール分が20度未満のもの(エキス分が2度以上のものに限る)をいう。
- 雑酒
- ^ a b 酒税率一覧表(平成18年5月1日〜) (PDF)
- ^ そもそも生ビールの「生」って何? エキサイトニュース 2006年6月7日
- ^ 商標法第3条第2項についての判断 「本生事件」 (PDF) 日本商標協会判決研究部会 報告資料 2007年7月18日
- ^ a b c d 神奈川における酒造の歴史「戦後の神奈川の酒造」発泡酒より
- ^ 特許ニュース 昭和40年6月分目次(IP&Sニューズ)より
- ^ ニッポンスタイル 第14回 黄金色に賭けた夢 ~「タカラビール」~より
- ^ a b こだわりのビール事業で活路を見出した サントリーの「やってみなはれ」経営〔4〕 日経BPネット 2009年4月20日
- ^ 商標審決公報 不服2008-4257 商願2007- 36439拒絶査定不服審判事件(確定日:2009年1月15日) 商標審決データベース
- ^ アサヒビール参入で発泡酒戦線さらに熱く 日経BPネット 2001年2月28日
- ^ 出荷量過去最低でも全社営業増益 2008年のビール市場と2009年の展望 J-marketing.net(JMR生活総合研究所)2009年2月
- ^ 2010年年間ビール・発泡酒・新ジャンル課税発表ヘッドライン キリンビール・販売状況
- ^ 麒麟淡麗〈生〉、キリンビール。
- ^ 淡麗グリーンラベル、キリンビール。
- ^ 淡麗W、キリンビール。
- ^ 麒麟ZERO、キリンビール。
- ^ アサヒ本生ドラフト、アサヒビール。
- ^ アサヒ本生アクアブルー、アサヒビール。
- ^ アサヒスタイルフリー、アサヒビール。
- ^ サッポロ北海道生搾りみがき麦、サッポロビール。
- ^ a b 栄養成分一覧、サントリー。
- ^ 麦職人、オリオンビール。
[編集] 外部リンク
- 発泡酒の税制を考える会
- 酒税法 - 法令データ提供システム
- お酒についてのQ&A(国税庁公式サイト)
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