シャンパン

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シャンパン

シャンパン: Champagne[† 1][† 2])とは、フランスシャンパーニュ地方特産の発泡ワインである。シャンペン[† 2]シャンパーニュとも表記される。明治初年の日本では、三変酒とも呼ばれた[1]。かつて香港および上海では三鞭酒[† 3]当て字された。

ドン・ペリニヨン神父が確立したと伝えられる瓶内二次発酵と、アッサンブラージュと呼ばれる様々な原酒のブレンド、さらにティラージュおよびドサージュと呼ばれるシロップの添加に大きな特徴がある。

TRIPS協定地理的表示に指定され、国際的にブランドが保護されるため、シャンパーニュ地方で生産され、決められた製法で造られたものでなければシャンパンの名称を使うことはできない。

それ以外の産地、製法で製造されたものは任意の名称として、スパークリングワインと表記されている。

概要[編集]

一般には、仏シャンパーニュ地方で生産されたブドウのみを使い、瓶内二次発酵を行った上で封緘後15ヶ月以上の熟成を経た、いわゆるシャンパン製法の発泡ワインを指す。元となるワインは様々なレシピによりブレンドされる点や、二次発酵のために発泡のもととなるシロップを添加(ティラージュ)、また仕上げにリキュールとシロップの添加(ドサージュ)する点も特徴である。ほぼ同様の工程を経た発泡ワインに、スペインの「カヴァ」、イタリアの「スプマンテ」、ドイツの「ゼクト」等があるが、シャンパンはその選定基準の厳しさと熟成期間の長さにおいて突出している。

現在シャンパンと言う場合、1919年にAOC(アペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ。原産地呼称統制法)によって定められた定義「シャンパーニュに使用できるブドウ品種は、ピノ系品種とアルバンヌ、プティ・メリエのみである」[2]、また2010年11月22日の政令による定義[3]に基づき、シャンパーニュ地方でつくられた7つのピノ系ブドウ品種ピノ・ノワールPinot Noir)、ピノ・ムニエPinot Meunier)、ピノ・グリPinot gris)、アンフュメアルバンヌ(Arbanne)、プティ・メリエ(Petit Meslier)、ピノ・ブラン[4]シャルドネChardonnay)を材料として醸造された発泡性ワインのことである。1919年の定義にシャルドネが指定品種の中に含まれていなかったのは、ブドウ品種の分類に関する研究があまり進んでおらず、シャルドネはピノ系のブドウに含まれていたためである。

AOCが制定された当時、シャンパーニュ地方以外の地域でもシャンパンという名称で発泡性ワインが生産されており、発泡性ワインの一般名称であった。現在でもカリフォルニア・シャンパンという呼称でカリフォルニア産の発泡性ワインがつくられているのは、200年以上生産されてきた歴史に基づいている。しかし近年では、フランスのAOC法が尊重され、AOCの規格に則って製造されたシャンパーニュ地方製の発泡ワインだけが、シャンパンと名乗ることを認められ、その他のフランス製発泡ワインはヴァンムスー(Vin Mousseux)と呼ぶ。なお日本ではこれに似せて作られた清涼飲料水を「ソフトシャンパン」と名付けて販売していたことがあるが、フランス政府からの抗議があり、シャンメリーという名称に変更された。またスイスのシャンパーニュでは、フランスのシャンパーニュより早くから伝統的にワインをつくっていたが、1974年世界貿易機構により、この土地で生産されたワインやビスケットなどについて「シャンパーニュ」というラベルを使用することをやめるよう命令された。

フランスのシャンパーニュ委員会では正式名称「シャンパーニュ」を使って欲しい、と呼びかけている。ただし、「シャンパン」が既に日本語として定着していることや、フランス語の音韻に近いことから、従来通り「シャンパン」と呼称する方が多い。

シャンパンは生産者毎に番号が振られており、ラベルに記載される。

ラベルの記載例
(例:KRUG、NM225-001)
最初2桁のアルファベットは、生産者の形態を表す。
  • NM:Negociant Manipulant(ネゴシアン マニピュラン) ブドウの一部または全量を購入して製造する会社。
  • RM:Recoltant Manipulant(レコルタン マニピュラン) 自社のブドウだけで製造する会社。
  • CM:Cooperative Manipulation(コーペラティヴ マニピュラシオン) シャンパーニュ生産者の協同組合。
  • RC:Recoltant Cooperative(レコルタント コーペラティヴ) ブドウ栽培者の協同組合。
  • SR:Societe de Recoltant(ソシエテ ド レコルタン) 同族のブドウ栽培者によって構成される会社。

主な種類と用語は以下の通り。

  • Non Millesime(ノン・ミレジメ) ヴィンテージ(収穫年)がラベルに記載が無く、様々な年のワインをブレンドされ造られている。Non Vintage(ノン ヴィンテージ)とも言われる。アッサンブラージュのため味が安定している、最も基本的なシャンパン。
  • Millesime(ミレジメ) ヴィンテージが記載され、主にその年のワインで構成される(他の年のワインも20%ブレンド可能) 良年のみ造られる。Vintage Champagne(ヴィンテージ・シャンパン)とも言われる。ノン・ミレジメに較べて一般に高価だが、ブレンドを前提とするシャンパンにおいては異色。
Blanc de Blancs(ブラン・ド・ブラン)
  • Rose Champagne(ロゼ・シャンパン) いわゆるピンクシャンパン。果皮から汁を出さないように搾汁して後、一定期間果汁に果皮をつけ込むことで淡いピンク色を付けた(セニエ方式)もの。ブレンド時に赤ワインを混ぜる場合もある。マダム・クリコが開発したとも言われている。異なるのは主に色だけで、味にロゼ独特の違いは少ないことから、シャンパンの中では文字通り「イロモノ」的な扱いとなる。
  • Blanc de Blancs(ブラン・ド・ブラン) 規定の白葡萄(シャルドネ)のみで造られたシャンパン。ブレンドを前提としたシャンパンの中では異色の存在。
  • Blanc de Noirs(ブラン・ド・ノワール) 規定の黒葡萄(ピノ・ノワール、ピノ・ムニエ)のみで造られたシャンパン。皮を使用しないため色はつかない。ブラン・ド・ブランと同じく、ブレンドを前提としたシャンパンの中では異色の存在。
  • Grand Cru(グラン・クリュ) ラベルに記載されている場合、格付Cru100%の畑の葡萄だけで造られたシャンパン。
  • Premier Cru(プルミエ・クリュ) ラベルに記載されている場合、格付Cru90~99%の畑の葡萄だけで造られたシャンパン。

製法[編集]

シャンパンのコルク

シャンパンは最も多くの場合、黒葡萄と白葡萄の配合によって造られる。白葡萄で主に使用されるのはシャルドネ種であり、黒葡萄でよく使用される2種類はピノ・ノワールと、ピノ・ムニエである。近年、上記以外のフロモントー(Fromonteau)、アンフュメ(Enfume)などの品種が使われている銘柄も存在する。

赤ワインの色合いはその果皮に由来するため、果汁は圧搾機で果皮から色素が浸漬しないように手早く静かに搾られ、白い果汁が取り出される。「ロゼ」または「ピンク」のシャンパンは、黒葡萄の果皮を微かに色付けのために与えた後に取り出すセニエ方式、または、瓶内二次発酵前に赤ワインの添加によって造られる。シャンパンに使用される葡萄は一般に、この地方が葡萄栽培地として寒冷地の北限にあたる為、糖度が低く酸の強いものが多い、しかしこの強い酸がシャンパンに他の発泡性ワインには真似できない気品を与えると言われている。また収穫は規定により手摘みに限られる。

最初の発酵は秋に、非発泡性ワインと同じ方法で行われ、果実に含まれる糖分がアルコールへと転換される。これが「ベース・ワイン」となるが、このワイン自体は酸味が強過ぎて面白みに欠けるものが多い。この時点で、様々な畑の、あるいは、「ノン・ヴィンテージ・シャンパン」の場合には様々な年のワインを使ったブレンド(アッサンブラージュ、assemblageと呼ばれる工程)が行われる。各作り手のブランドイメージに沿ってブレンドされ、作り手の腕の見せ所でもある。また良い葡萄が収穫された年に造られた優れたブレンド用のワインはリザーブワイン(又はヴァン・ド・レゼルヴ、vin de reserve)と呼ばれ、その配合が品質に強い影響をあたえる為、良いリザーブワインの確保が作り手にとって重要であると言われている。

Carafage du champagne.JPG

ブレンドされたワインは、炭酸を得るための二次発酵の準備として酵母とその発酵を促進するため蔗糖の入ったシロップをワインに加える(ティラージュ、tirageと呼ばれる工程) そして瓶詰めされワインの貯蔵室に置かれる。貯蔵室は石灰岩の地下深くに掘られた洞窟を使用していることが多い。発酵によりアルコールと泡の源である二酸化炭素が発生し、瓶内に閉じ込められ、ワインの中に溶け込む。発酵が終わり役割を終えた酵母は澱となり、その澱とともに寝かせることによって、酵母が分解作用でとり込んだうまみがワインに徐々に戻される。その後ピュピトルと呼ばれる台に差し込み保管される。瓶は毎日微かに(1/8)回転させながら徐々に倒立した状態にさせられ、澱が瓶の首の部分に集まり(ルミアージュ、remuageと呼ばれる工程)除去が可能となる。昔は職人が手作業で行っていたが、現在は非常に手間のかかる手作業よりもジャイロパレットと呼ばれる機械でルミアージュが行われることが多い。出荷が近づくと瓶の口を氷点下20度に冷却し、栓を抜くことで気圧により凍結させた澱がぬけ、澱が除去(デコルジュマン、degorgementと呼ばれる工程)される。冷却せずに手作業で澱を除去する昔ながらの方法もある。目減りした分はワインやシロップで補充(ドサージュ、dosageという工程)される。このときのシロップの比率で甘口か辛口かが決まる。

甘さを調整する為様々な量のシロップが添加される。最も甘口のものは「ドゥー」(doux)(残糖分50g/L以上)と呼ばれ、辛口になるにつれて「ドゥミ・セック」(demi-sec)(33g~50g/L)、「セック」(sec)(17g~35g/L)、「エクストラ・セック」(extra sec)(12g~20g/L)、そして「ブリュット」(brut)(6g~15g/L)がある。従ってエクストラセックを直訳した「極辛口」のシャンパンは実際には、ブリュットと書かれたものよりは甘いのである。幾つかの作り手は、糖分を添加しない「エクストラ・ブリュット」(extra brut)を造っている。この作業はシャンパーニュ造りの終りの工程であるため、「門出のリキュール」と呼ばれる。その後、瓶にコルクで打栓(bouchage)され針金つきの金具でとめる。

製品はティラージュ(tirage)後、最低でも15ヶ月寝かせるまでは、法的に出荷が禁止されているが、より長い方が望ましい。「ヴィンテージ・シャンパン」は、最低3年寝かせる事が決められている。

シャンパンを用いた料理[編集]

  • シュークルート・ア・ラ・シャンパーニュ Choucroute à la Champagne - 仏語:シュークルート(独語:ザワークラウト)は、通常では白のアルザスワインで煮るが、これの代わりにシャンパンで煮る贅沢な料理。レストラン(ブラッスリー)では客の目の前でアルコールランプなどを用いて鉄皿をあぶりつつシャンパンをまぶして煮る。
  • アマダイのシャンパン煮 - アマダイの白ワイン煮の内、使うワインがシャンパンとなるもの、飲用に出すのと同じシャンパンひと瓶を丸ごと惜しげもなく鍋に注いで煮込む、大変贅沢な一品。

シャンパングラス[編集]

シャンパン用のグラス(Champagne stemware)にはクーペとフルート(仏:フリュート)がある。

  • クープはボウルの部分が浅い、脚付きのグラス。主流だったが、口が広く炭酸が抜けやすいことから、シャンパン・フルート(champagne flute)にその座を譲るようになった。シャンパン・タワー(champagne tower)の演出で用いられることが多い。オリジナルはマリー・アントワネットポンパドゥール夫人ジョゼフィーヌ・ド・ボアルネいずれかの胸をモデルにしたという伝説がある。「飲むには理由がある」[5]を書いている弁護士の山本博は現物が世界に2つ残っていて、小さくなく豊かで見事なものであるという。
  • フルート(フリュート)は細長いグラスで、スマートで泡立ちもよく見えるので、席巻している。とはいえ、飲みにくいし、残り少なくなったのを飲むのも大きく傾けなければならない。「飲むには理由がある」[6]で山本博は普通の白ワイン用のグラスが向いているという。

シャンパンとイベント[編集]

シャンパンタワー
シャンパンファイト(シャンパンシャワー)
表彰式や祝勝会などで優勝した選手や優勝したチームが行う。
シャンパンタワー(シャンパンピラミッド)
シャンパングラスをタワー状あるいはピラミッド状に積み上げて上からシャンパンを注ぐもの[7][8]

シャンパンが登場する作品[編集]

参考となるサイト[編集]

公式サイト[編集]

その他[編集]

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ フランス語発音: [ʃɑ̃paɲ] シャンパーニュ
  2. ^ a b 英語発音: [ˌʃæmˈpeɪn] シャンイン
  3. ^ 拼音sānbiān jiǔ

出典[編集]

  1. ^ 西国立志編より
  2. ^ AOC Champagne - Conditions de production
  3. ^ Décret n° 2010-1441 du 22 novembre 2010 relatif à l'appellation d'origine contrôlée « Champagne »
  4. ^ ただしここに含まれないピノ系品種もつかわれているし、使用が許されている。
  5. ^ 朝日新聞be2014年10月4日。
  6. ^ 朝日新聞be2014年10月4日。
  7. ^ ウエディング用語集”.  :ゼクシィリクルート). 2013年4月5日閲覧。
  8. ^ ウエディング用語集”.  :ゼクシィリクルート). 2013年4月5日閲覧。

関連項目[編集]