児童ポルノ
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児童ポルノ(じどうポルノ、英: child pornography、又はkiddy ponography,中: 儿童色情制品〔児童色情製品〕)とは、児童を被写体としたポルノのことである。
日本においては、児童とは、普通、小学校に在学する者をさす[1]が、児童福祉法や児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律で定義するところの児童ポルノとは、高校生などの青少年も含む18歳に満たない者を被写体としたポルノのことである[2][3]。2007年には、17歳の女子高生がTバック姿で出演した作品が児童ポルノにあたるとして、出版会社社員が逮捕されている[4][5]。
形式としては写真や動画像であり、媒体は書籍・雑誌やビデオテープ・DVDなどを用いたものの他に、ウェブサイトで公開されているものもあり、そちらは特に児童ポルノサイトという。
児童ポルノの対象には女子のみならず、男子(男児)も含まれる。男子に性欲を覚える小児性愛者、児童性愛者もおり、男子も被写体にされる。日本では、2008年4月に、乳幼児のおむつ換えのシーン[6]や、小学生の入浴映像が「男児ポルノ」に該当するとして、放送倫理・番組向上機構(BPO)が、自主規制を要望する動きに出ている[7]。
なお、日本ユニセフ協会(ユニセフ東京事務所とは別の民間団体)が法規制を求めている「子どもポルノ」[8][9](法規制に反対する署名活動も展開されている[10][11])とは、「18歳未満の児童および18歳未満に見える成人」に加えて、「実在しない架空の人物」を対象としたものであり、協会の提唱した「準児童ポルノ」を含めたものをいう。
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[編集] 定義について
国際的な観点でみた場合、児童ポルノとは何かという定義をするのは困難である。ひとつには被写体の年齢の問題、もうひとつにはポルノの範囲の問題がある。
前者の「被写体の年齢」については多くの国では18歳未満を対象としているが、歴史的・文化的理由からこれとは異なる年齢を基準として採用している国も見られる。[12]後者の「児童ポルノの範囲」については、現実の性的な行為を行うものについては疑いないとして、単に姿態をとらせるだけのヌード写真(児童エロチカの一部)や、あるいは姿態をとらせていないヌーディズムの写真、芸術に属するものなどの扱いが分かれる。
また、疑似児童ポルノとも呼ばれる、児童に見える成人によるもの、合成写真や写実的なコンピュータグラフィックスによるものについての扱いが分かれる。さらに、児童に見えない成人が児童の扮装をしているものや、アニメなどの現実の児童との対応がないことが明らかなもの、文章による表現を対象とする国も、カナダなど、ごく少数ながら存在する。 ニュージーランドでは、2004年に、一般向けアニメ作品のぷにぷに☆ぽえみぃ[13]が、子どもや若者の性的目的での搾取を助長・支援するとして児童ポルノと認定されて発禁処分を受けている。なお、ポルノ全般を非合法としているために児童ポルノについて格段の定義を置かない国もある。またオーストラリアでは、2008年に、ザ・シンプソンズのキャラクターを使用した性的描写のあるマンガについて、たとえ人間とはかけはなれた形状であっても児童ポルノにあたるとの判断を最高裁が示している。その理由としては、アニメ等の創作物の所持者が、被写体の実在する実写の児童ポルノの所持鑑賞へと至る可能性のあることがあげられている[14]。
[編集] 児童の権利条約
国際連合では、児童の権利に関する条約の選択議定書として児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書[15](略称: 児童の売買等に関する児童の権利条約選択議定書)を採択している。その第2条 (c) で、『「児童ポルノ」とは、現実の若しくは疑似の(real or simulated)あからさまな性的な行為を行う児童のあらゆる表現(手段のいかんを問わない)又は主として性的な目的のための児童の身体の性的な部位のあらゆる表現をいう』と定めている。ただし、同条項は、コミック規制を義務づけるものではない[16]。
この選択議定書の締結国は、各国の裁量の範囲内で[17]、条約に定められた法整備を行う義務を負っている。2008年現在、締結国は、日本も含めて126カ国(全体の65%)である。G8の国では、ドイツとイギリスが未締結、ロシアが未署名 であり[18]、アメリカは条約自体に未加入 である[19]。このような国連レベルでの取り組みによって、前述の対象年齢のばらつきは、従来、18歳より低い年齢を上限としていたものについては18歳未満を一律対象とする方向で、グローバルな標準化を推進している段階である。ただし、欧州評議会の「サイバー犯罪に関する条約」[20]などの地域レベルでのより拘束力の強い条約では、締約国は、16歳を下限として、18歳より低く定めることができるとされている。
[編集] 日本
日本国の法律では、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(略称: 児童買春・児童ポルノ処罰法)(平成11年法律第52号)の2条3項に定義があり、特に次のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものである。
- 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
- 他人が児童の性器等(性器、肛門又は乳首)を触る行為又は児童が他人の性器等(性器、肛門又は乳首)を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
- 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
これらの提供・製造・頒布・公然な陳列・輸入・輸出が7条で禁止されている。
ただし、2008年(平成20年)年現在、以上の定義は法務省により「実在の児童を描写したものに限定される」と回答している。すなわち、架空の児童を扱ったポルノ作品(絵画・イラスト・漫画・ゲーム等)に関しては、現状では、本法の規制対象とされていない。これは本法が、「被害児童の人権保護」を本旨としているからである。
なお、現在日本国内で存在する、単純所持(提供・製造・頒布・公然な陳列・輸入・輸出を行わない、単に児童ポルノを所持することだけの行為)を罰する法律は、奈良県の条例「子どもを犯罪の被害から守る条例」13条のみである。
[編集] 日本における境界領域
児童ポルノ処罰法については、上記3号規定の「性欲を興奮させ又は刺激するもの」という一文について「定義が曖昧で規制が大きくなりかねない」といった懸念が施行当時から存在した。よって、法律施行直後は各グラビア雑誌において、18歳未満を使わないといった事態が起きた。
しかし、2005年度においては、一般書店に流通しているアイドルのグラビア雑誌や写真集等においては、法律施行前と同等の肌の露出を含む写真や動画の流通が容認されているようである。具体的に言えば、18歳未満の
といったものが摘発対象とされる一方で、
といったものを含みつつ摘発とされずに流通しているものが少なからず存在している。このため、児童ポルノ処罰法以前より、わいせつ物頒布罪、児童福祉法、青少年保護育成条例等を根拠に未成年の性行為の撮影や、その写真・映像の流通はそれ以前から違法性を認識されており、児童ポルノ処罰法はそれらに加えて少年・少女ヌード写真集ないしビデオの流通を新たに禁止したと理解するむきは多い。ただし、法律では前述のように「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」を児童ポルノの定義に含めているため、上にあげたような摘発対象と認識されていないものと肌の露出の度合は変わらなくとも、具体的内容によって摘発対象とすることもできる。
なお、わいせつ物頒布罪、公然わいせつ罪、児童福祉法、青少年保護育成条例などの従来の法律の適用が無くなることはなく、状況に応じて併合罪が適用されたり、観念的競合や牽連犯も適用することができる。
なお、構成用件の明確化を目的として、3号規定そのものを削除することが民主党などからは提案されている[21]。
[編集] 日本における経緯と動向
児童ポルノは、児童に対する重大な人権侵害であるとして、世界的な法的規制がなされている。
日本国内では、ECPATの日本における公式関連団体である「ECPAT/ストップ子ども買春の会」(共同代表の宮本潤子は、日本キリスト教婦人矯風会性・人権部幹事。所在地は日本キリスト教婦人矯風会第2会館)が、かねてより積極的な活動を展開している。
2008年4月17日「G8司法・内務大臣会議」において日本は「児童の性的搾取との闘い」を議題案として提示した[22][23]。
[編集] 法改正の流れ
日本では、かつては児童ポルノに対する規制が比較的緩やかであった。すなわち、撮影行為のうち一部が児童福祉法や強制わいせつ罪、強姦罪、あるいは淫行条例の対象となり、また表現内容によってその販売などがわいせつ物頒布罪に問われるのみ、といった具合であった。実務においては、ある時期までは性器の写真が問題とされず、またそれ以降においても写真の修正によって商業的に流通していた。
しかし、1996年にストックホルムで開催された児童の商業的性的搾取に反対する世界会議(ストックホルム会議)において、日本から出席したecpat関東・矯風会の宮本潤子の報告[24]をきっかけとして、「日本は児童に対する性的搾取の規制を怠っている」と非難を受けた。
これをきっかけに法改正が行われたが、その一環として制定された児童買春・児童ポルノ処罰法によって児童ポルノが厳しく規制される事になった。同法では児童を「18歳に満たない者」と定義した上で、性交等に係る児童を描写した写真等を児童ポルノと定義した。
児童ポルノを提供、製造(撮影と複製)、頒布、公然と陳列すると同法により処罰され、その目的による所持や外国への輸出および外国からの輸入も含まれる。さらに、児童ポルノは関税定率法によっても輸入禁制品とされたため、その輸入は関税法によって予備罪も含めて罰せられることになる。
また、前述の選択議定書の義務を果たすため、2004年の児童買春・児童ポルノ処罰法改正では児童ポルノの提供行為が新たに処罰対象とされた。 なお、「姿態をとらせ」ることがない盗撮行為による児童ポルノ製造については、提供、頒布、公然と陳列や、これらの目的がある製造、所持、運搬を行った場合は児童買春・児童ポルノ処罰法の対象であるが、自己で盗撮行為を行い製造しその所有のみを目的とする場合は、その盗撮行為が軽犯罪法違反や迷惑防止条例違反に問われるに留まる。[25]
児童買春・児童ポルノ処罰法を改正するための議案「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案(第169回国会 衆法 169回32号)」[26]が森山眞弓外4名によって提出される。議案は2008年6月10日、衆議院に受理され衆議院での審議に入ったが、廃案となる。
なお、日本国内において、単純所持(単に児童ポルノを所持することだけの行為)を罰するのは、奈良県の条例「子どもを犯罪の被害から守る条例」13条が平成17年7月1日に公布、平成17年10月1日から施行された[27]で、日本国内で存在する単純所持を罰する法律はこの条例のみである。
[編集] 図書館での取り扱い
既に述べた通り、過去の規制が緩やかであったため納本制度によって国立国会図書館に児童ポルノとみなされる書物が多数収蔵されている。国立国会図書館法第8章が収蔵資料の閲覧制限を想定しない「一般公衆及び公立その他の図書館に対する奉仕」を定めていることもあり、児童買春・児童ポルノ処罰法の施行から暫くは同図書館での該当書物の閲覧が可能であった。
当然のことながらこれを問題視する声があがり、児童ポルノの提供一般を処罰対象とした改正児童ポルノ処罰法が2004年7月に施行されたのち法務省から利用提供の違法性を指摘されるに至って、同図書館は2005年7月から閲覧制限を開始した[28][29]。これまでの国会図書館における閲覧制限はわいせつ物頒布罪による有罪確定や名誉毀損裁判における出版差し止めの確定をもって行っていたためこれに準ずる扱いを検討した。これは、図書館というものが「知る自由」の保障を第一の目的として自主規制を行わないべきであるとされてきたためである[30]。しかし、提供について有罪が確定した児童ポルノ図書の情報の網羅的・継続的入手に困難があることや、摘発事例の有無に関わらず対応することを法務省から求められたため、該当性判断は法令や入手できた判例をもとに館独自に行うこととなった。当初は閲覧請求に対して正当目的であるかどうか審査を行う制限措置であったが、2006年4月1日からは特例内規を設けて完全な閲覧禁止措置とした。写真集など118点、雑誌2タイトルが対象とされているという[31]。
「図書館の自由に関する宣言」も参照
[編集] 男児ポルノの問題
2008年1月22日、BPO/放送倫理・番組向上機構が開催した、第9回青少年委員会(通算86回)で、ECPAT/ストップ子ども買春の会の共同代表の宮本潤子がレクチャーを担当している[32]。
宮本によると、日本の子どもポルノの現状として、男子児童の被害も増えてきているという。その根拠として、警察庁の外郭団体であるインターネット・ホットラインセンターに寄せられた通報等をあげている。また、男児ポルノと性犯罪との因果関係については、「直接の原因ではないが画像を見ることによってその種の犯罪を犯す可能性が増大することは確かである」との主張を展開している。
同年4月11日、同BPOの青少年委員会は、「児童の裸、特に男児の性器を映すことについて」[33]と題した注意喚起の文書を公開している。次にあげるのは、同文書において「問題」と指摘されたケースである。
- お笑い芸人の自宅での入浴シーンで6歳と11歳の兄弟の性器が写っていた。
- ニュース番組で小学生の強化合宿に密着取材し、小学6年の男児が合宿所で局部丸出しの状態で入浴しているシーンをモザイクやボカシ等の映像処理もなく、そのまま放送していた。
また、創作物に関しては、2008年5月に、東京都立産業貿易センターで行われたショタケットで、「主催者である東京都より、青少年保護条例および公序良俗に関する非常に強い要請」により、前例のない厳しさの自主規制が実施されている。
また2008年には、男児(8歳)の陰部を携帯電話のカメラで撮影した男が児童ポルノ禁止法違反(製造)の疑いで逮捕されている[34]。
[編集] 保護法益の問題
2009年1月14日(水)の14時00分より開かれた[インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会]の第10回会合において総務省はパブリックコメントに対し、「御意見に対する考え方」として以下の見解を示し対策としてフィルタリング (有害サイトアクセス制限)やブロッキングの導入も検討しているとした。第10回会合は当初、2008年12月24日の開催が告知されていた。しかし、11月下旬から3週間にわたって募集した最終報告書案へのパブリックコメントで想定していたより多くの意見が寄せられたため、整理に時間がかかり、年明けまで延期された。意見の一部として、最終報告書案において、児童ポルノを「社会的法益侵害情報」として扱っていた点に対して、児童ポルノ禁止法のそもそもの目的が児童の人権を擁護すること(個人法益)であり、「権利侵害情報」として扱うべきとの意見が多く寄せられた。多くの指摘があったことから、誤解を与える恐れが高いとして、個人法益についても否定していないという説明を最終取りまとめ(案)に追加した。また、健全な社会を維持するという目的があることについても、児童ポルノ禁止法改正案の発議者の1人である円より子参議院議員が過去の委員会で説明した内容を引用して裏付けている。検討会はこの会合で総務省が今後推進する「『安心ネットづくり』促進プログラム」の骨子となる最終報告書をとりまとめた。報告書では「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」(青少年ネット規制法)が施行される2009年4月1日から2011年度までに講じるべき施策を提言している[35][36]。
- 「児童買春・児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」第1条は、「児童の権利を著しく侵害することの重大性にかんがみ(中略)児童買春・児童ポルノに係る行為等を処罰する(中略)ことにより、児童の権利を擁護することを目的とする。」と規定し、児童の権利侵害という側面を重視しておりますが、同時に、同法は、児童を性欲の対象としてとらえることのない健全な社会を維持するという社会的法益の保護をもその目的としているものと考えられています。
- したがって、インターネット上における違法情報の類型の整理にあたっては、たとえば名誉毀損情報や著作権侵害情報などと同じ情報類型としては取り扱われてこなかったものです。しかしながら、本最終取りまとめ(案)においても、「被害児童が存在するため権利侵害の側面もある」、と記載し、3の(2)において特に「児童ポルノの効果的な閲覧防止策の検討」と題した項目を立てた上、「被害児童保護の要請より、インターネット上の児童ポルノ対策は喫緊の課題」と位置付けて対策を検討しているとおり、児童ポルノに係る犯罪の権利侵害としての側面を否定ないし軽視しているものではありません。
- もっとも、同様の御指摘を多くいただいたことを踏まえると、児童ポルノに係る情報を社会的法益侵害情報と表記することは権利侵害の側面を否定しているとの誤解を与えるおそれが高いものと考えられますので、最終取りまとめ(案)において上記の趣旨の説明を追加することとします。
なお、2008年には、16歳の少女が衣服の一部を着けない姿態(水着姿)で出演した作品が児童ポルノに該当するにあたるとして、タレントプロダクション会社の経営者とディレクターが逮捕されているが、元警察庁職員で弁護士の後藤啓二は、「子どもを性的対象としてみるようなものを作ってそれを売ることが、社会的にみて許されないということは言うまでもない」として、18歳未満の児童を性の対象とするような社会的風潮に対する批判を展開している[37]。
[編集] インターネット上の流通問題
2007年3月29日、スウェーデンのシルビア王妃は、日本ユニセフ協会、駐日スウェーデン大使館、ECPAT/ストップ子ども買春の会、ECPATスウェーデンによって開催されたシンポジウムで、スウェーデンの企業「ネットクリーン・テクノロジー社」の取り組みなどを取り上げ、子どもポルノの画像をダウンロードすれば警察に即通報されるソフトについて言及し、こうした犯罪に立ち向かうにはインターネットサービスプロバイダ(ISP)企業と法執行機関(警察)の連携が欠かせないと話した[38][39]。
2008年7月16日、警視庁の検討会議総合セキュリティ対策会議では2008年度の検討課題を「インターネット上での児童ポルノの流通に関する問題とその対策」として検討を行い2009年3月に報告書を提出した[40]。
- 憲法上の「表現の自由」との兼ね合いでは、児童ポルノ(被写体のいない創作物は含まれない)を掲載したウェブページへのアクセスを禁止する措置がとられたとしても、そもそも現行法では既に提供目的の所持が禁止されていることから、「当該児童ポルノを掲載した者の表現の自由は既に制約」されているため、「従来からの制約の枠を超えるものではない」との認識を示している。
- 「通信の秘密の保護」については「「通信当事者の同意があれば、窃用に当たらないため、構成要件を満たさない」という議論が参考となり得る。しかし、一般に、通信の当事者間では、「通信の秘密の保護」は放棄されている場合が多いものと解されることから、ISPと利用者が当該通信行為の当事者と解し得る場合には、「通信の秘密の保護」との関係は、比較的容易に整理されるものと考えられる」としている。
- 具体的な対策としてはサイト管理者等のために自動判定技術の開発等を促進し、捜査上の隘路となっているインターネットの匿名性等の問題を解決し、流通させた者の特定を容易にするため、インターネットカフェにおける利用者の本人確認の実施を求めていくなどの取組みを行うとともに、取締りを強化するための警察における態勢を強化する必要があるとしている。さらに、リスト上に掲載された児童ポルノに係る情報について検証等を行う機能を有する児童ポルノ掲載アドレスリスト作成管理団体(仮称)を立ち上げ、そこが作成したリスト等を元にISP(インターネットサービスプロバイダ)によるブロッキングを実施に移す案をまとめた。[41]。
その後2009年6月2日に児童ポルノ流通防止協議会が発足。会長に野口京子・文化女子大教授が就任した。発足した協議会はネット事業者や被害防止に取り組む民間団体、学識経験者ら約20人で構成され、警察庁や総務省、経済産業省などもオブザーバーとして参加する。協議会はまず、児童ポルノが掲載されているアドレスなどをリスト化したうえで、サイトのブロッキング(閲覧の禁止)などを行う事業者に提供する団体の設立を目指すとみられ、当面はその団体運営のガイドラインなどを検討する。[42][43]。
2009年6月2日・6月3日、国際電気通信連合(ITU)と総務省がシンポジウム「ITU/MIC Strategic Dialogue on Safer Internet Environment for Children(安心・安全なインターネット環境整備に関する戦略対話プログラム)」(東京戦略対話)を東京都千代田区の「ホテルニューオータニ」で開催した。児童失踪・児童虐待国際センター(ICMEC)のキャシー・カミングスは児童ポルノの画像や動画をインターネットで販売することが「インターネットで最も急速に発展しているビジネスの1つ」であると指摘。ネット決済や電子通貨がこれを加速させているとし、クレジットカード会社など決済サービス業界とも連携して締め出していかなければならないとした。また児童ポルノの所持で逮捕されたうちの83%が、6~12歳の写真を、39%が3~5歳の写真を、19%が3歳未満の乳幼児の写真を持っていたという米国での調査結果を紹介。「業界は、児童ポルノ対策で協同することで大きな役割を果たせる」と呼び掛けた。世界の携帯電話事業者で構成するGSM協会でコンテンツ政策部長を務めるナターシャ・ジャクソンは、携帯ネットワークから児童ポルノへのアクセスを拒否することを、26社が参加する児童ポルノ対策のアライアンスで決定し、業界として推進していく方針を示した。また、「1つの解決法だけですべての問題が解決するということではない。教育者、保護者、政府など全員の協力が必要」と訴えるとともに、児童ポルノは全ての国で違法とされる電磁記録物であることから、国際連携によるインターネット環境整備 の第一歩として児童ポルノ問題が適しているとの認識を示している。 [44][45][46][47]。
[編集] レイプレイ事件
2009年5月8日、読売新聞は、国際女性人権団体イクオリティ・ナウ(en:Equality Now)が、日本国内で販売されているアダルトゲーム等の流通を批判する活動を開始したことを報じた[48]。それによれば、イクオリティ・ナウは、「日本政府はなぜレイプを奨励するかのようなゲームの流通をやめないのか」との批判を展開しているという。日本国内におけるラディカル・フェミニズムの人権団体であるポルノ・買春問題研究会研究会(APP研)は、同会の共同代表である角田由紀子がイクオリティ・ナウのボードメンバーを勤める[49]などして、イクオリティ・ナウとの活発な交流活動を展開しているところであるが[50]、読売新聞の取材に対して、角田は、インターネット時代においては「国内だけの問題ではなくなっている」と話している[51]。また、APP研究会のもう一人の共同代表である中里見博(福島大学)は、読売新聞の取材に対して、日本が、海外の人権団体から以前から批判の目が向けてられていたとの談話を寄せている。また、イクオリティ・ナウは、同団体のホームページ上で、ポルノ・買春問題研究会による女性のモノ化(the objectification of women)を阻止するための取り組みを紹介したうえで、しばしば性あるいは暴力の対象として描写されているメディア内での女性のイメージが、ジェンダー・ステレオタイプ(Gender Stereotypes)に対して重大な影響を及ぼすとした女性差別撤廃条約委員会に対する報告書を引用し、日本国内のゲームメーカーおよび販売業者のアマゾンに対する販売自粛、および日本政府の要人らに対して女性差別撤廃条約に定められた義務の履行を求める「性暴力ゲーム」規制要求の抗議活動を展開することを、160か国の会員3万人に向かって呼びかけた[52][53]。
この問題はゲームメーカーILLUSIONが2006年に作成し、コンピュータソフトウェア倫理機構(ソフ倫)の審査を通過して日本国内の18歳以上向けに発売していた[54]アダルトゲーム『レイプレイ』(en:RapeLay)が、2009年2月に英国Amazon.comでディーラーズ販売(Amazonではマーケットプレイスと呼ばれる販売方式)されていたことを2009年2月12日にベルファスト・テレグラフ(en:The Belfast Telegraph)[55]が報じたことが発端となり、2009年2月26日のイギリスの国会で、暴力表現が問題とされたゲームManhunt(マンハント)を発売禁止に追い込んだことで有名な労働党のキース・ヴァズによって、フェミニストとして知られるハリエット・ハーマン女性・平等担当大臣に対する質問の中で取り上げられた。英国議会の家庭問題委員会では有害ソフトのリストアップとインターネット上での流布状況の調査が長期間にわたり続けられて来るなどチャイルドポルノ規制を強化していたことや、その総仕上げともいえる法案が英議会で審議中であった事などもこの事例が取り上げられた要因であった[56]。これをきっかけとして[57]、米国の本社Amazonや英国Amazonなどが2月にこの商品の取り扱いを中止した。英語圏諸国ではベルファスト・テレグラフの記事がen:Sydney Morning Herald、en:The Times of India、en:Fox News、en:News24等にニュースとして転載されるなどした。この段階では日本国内での報道は一部の海外ゲーム系ニュースサイトに限られていた[58]が、Amazonジャパンも、同年4月下旬にこの商品の販売中止を決めた。また、その後も海外ユーザーにより改造された英語版のレイプレイは複数の海外サイトからダウンロード可能になっている。
次にこの問題を2009年2月23日にニューヨーク市議会[59]の報道官クリスティーヌ・クィンと性的暴力に反対するニューヨーク連合(NYAASA)が取り上げ、強姦ビデオゲームのボイコットを呼びかけた。その際、これについてあくまでニューヨーク市民が求めていることだと強調し、呼びかけは検閲を奨励するものではないとの見解を示した[60]。この問題はFree Radicalなどの団体によって取り上げられるなどした[61]。その後、市議会で取り上げられたのが市販品ではなく英語版に改造した海賊版であったことや[62][63]、この問題を取り上げたオタク層以外のサイトなどでグランド・セフト・オートシリーズが許されてレイプレイが許されないのはなぜか、ゲームの表現は社会の反映だからレイプレイを潰してもレイプ文化はなくならないなどと批判された[64]。また、オタク層に加えて海外のゲーム制作者なども現場からの声を出し始めたため議論は収束していった。しかし、ゲームのボイコット自体はニューヨーク市の正式なプロジェクトとして昇格した。
同年5月6日にはアメリカの国際女性人権団体「イクオリティ・ナウ」が日本での販売中止を求める抗議活動を起こし、日本国内でも読売新聞の報道を皮切りにテレビ各社などにも取り上げられた。イクオリティ・ナウのロンドン支部の責任者は、「レイプレイ」の意味するものは、「女性のモノ化(en:Sexual objectification)と非人間化であり、女性に対する暴力の日常化」であると語っている。これらはAFP通信(フランス通信社)やガーディアン紙の東京特派員などを通じて世界に発信された[65]。この状況を受け、メーカーはレイプレイのホームページへの掲載とネット販売を取りやめたことを明らかにした[66]。同社の担当者は「今後の販売などについて、現段階ではコメントはできない」としている。その後、5月29日に自由民主党女性局が「性暴力ゲームの規制に関する勉強会」を開催し、出席者の一人である内閣府特命担当大臣の野田聖子が、「今回の件はアメリカ人権団体から各大臣宛にレターが届きわかったもの」と前述のイクオリティ・ナウによる抗議活動に言及し、「政権政党自民党だからやるべきことなので、山谷えり子女性局長にお願いした」と説明している[67]。その数日後、6月4日に入って、ソフ倫が自主規制の方針を打ち出し、「凌辱系ソフト」の製造禁止を決定するとともに、「Japan Sales Only」の表記の徹底を通達している[68][69]。6月30日、公明新聞は、「児童ポルノ規制」「インターネット規制」「ゲーム規制」を「三つの挑戦」と題した記事で、「公明党が推進してきた“三つの挑戦”で、ネット事業者やアダルトゲーム業界が自主規制に乗り出」したことを報じ、「日本もようやく国際社会の潮流に乗りつつある」と評価している[70]。
また、イクオリティ・ナウは声明の中で、マンガの形態をとる過激なポルノグラフィ(en:Hentai)や、なかでも女子児童に対する性的虐待を描写した「ロリコン」(en:Lolicon)と呼ばれる作品が、日本では簡単に入手可能であることをも問題としている[52]。 また、第3回子どもと青少年の性的搾取に反対する世界会議の参加団体であり、「ジェンダーの平等と子どもの幸福は、切っても切れない関係」(UNISEF事務局長アン・ベネマン)[71]との認識に基づいてジェンダー・イクオリティ(en:Gender Equality)を近年において強力に推進している日本ユニセフ協会の担当者は、インターネットでグローバル化された世界では、たったひとつの抜け穴がすべての規制を無効化するものであり、世界の趨勢は、「バーチャルなイメージ」を掲載したウェブサイトにアクセスして閲覧することさえも違法化する方向に向かいつつあるとして[72]、「ある文化で受容されるものが他の文化ないしは文脈では受容されない事があることを日本人は知るべきである」[73]と主張している。なお、法学者の右崎正博(獨協大学)は、朝日新聞[74]に寄せた談話で、「小説やマンガにも性暴力を扱った表現はあり、法的なレベルで白か黒かと言えば、黒とは言い難い」ものの、「現状では社会的な反発を招き、安易な法規制を招きかねない」として、表現の自由を守るためにも、業界全体として改めて適切な自主規制を検討すべきとの見方を示しているが、産経新聞の取材には「ある種のジャンルを一切禁止するのは、少々乱暴」として、「作品ごとに個別に対応できるような方法を考えるべき」との見方も示している[75]。また、法学者の田島泰彦(上智大学)は、製造自体を禁止したソフ倫の決定に疑問を呈するとともに、「フィルタリングシステムを導入するなど、表現の自由をできる限り追求することが大切」と指摘している[75]。
「ポルノグラフィ」、「レイプ」、「女性差別撤廃条約」、および「アダルトゲームと表現の規制」も参照
[編集] 単純所持の宣言
2008年5月30日、法政大学の法学博士白田秀彰は「2001年まで完全に合法であり 一般書店で市販されていた18歳未満の人物の裸の写真が扇情的な様相で掲載されている写真集を現在一冊保有している」ことを宣言し、その中で、性暴力表現を含む暴力表現の厳格な規制強化の必要性と、日本における性表現の規制のあり方への疑問を示した(「単純所持宣言」)[76]。単純所持の違法化が実現した際には、他の誰を摘発するよりも先に、自らを摘発することを法執行関係者に呼びかけている。
[編集] 規制推進派の動向
2008年3月11日、日本ユニセフ協会(国際連合の組織であるユニセフ東京事務所とは別の団体)は、漫画やアニメなど「子どもの性を商品として取引するもの」を「子どもポルノ(子供ではなく子ども)」という名称を造語し、「子どもに対する性的虐待を性目的で描写した写真、動画、漫画、アニメーションなどを製造、譲渡、貸与、広告宣伝する行為に反対する」と表明して、インターネットによる署名活動を開始した。この署名活動では、18歳未満の児童が出演する作品に加えて、18歳以上の人が児童を演じる作品の規制も求めている。[77]その呼びかけ人[78]には、アグネス・チャンなどの日本ユニセフ協会の関係者をはじめとして、元警察官僚でインターネット・ホットラインセンターの創立者の一人である竹花豊(おやじ日本会長)などの著名人のほか、賛同団体[79]には、日本キリスト教婦人矯風会や創価学会女性平和委員会などのほか、マイクロソフトやYahoo! JAPANといったインターネット関連企業も名を連ねている[80]。
同日、「日本ユニセフ協会大使」のアグネス・チャンは、元法務大臣森山眞弓らとともに衆院第2議員会館で開いた記者会見の場で「子どもへの性的虐待は犯罪。ポルノを持ってもだめ、漫画を買って読んでもいけないと訴えていくべき」と発言し、森山は「自民党の小委員会では単純所持は禁止の方向で一致しており、今後具体的に進めていく」とした。チャンは2008年4月7日と2008年12月2日にNHK教育テレビの視点・論点に出演し、番組の中で「単純所持を禁止し、アニメ、マンガ、ゲームに対する規制をかけることにより児童ポルノを根絶させるべきである」という持論を展開した[81][82]。
読売新聞や毎日新聞はこのキャンペーンに参画していないものの、創作物の規制に関して積極的な姿勢を見せている。ことに毎日新聞は、海外に向け、防衛庁が幼児性愛漫画のキャラクターで政策をアピールしているとして、これを問題視する記事を過去に配信していたが、現在では削除に至っている[83]。
また、エクパット関東の構成員である綱野合亜人は、海外に向けて日本の萌え文化を紹介する内容のECPAT責任編集記事[84]で、子どもを含めた多くの日本人が、チャイルド・ポルノ的なイメージを当然のもののように受容しはじめているとして、この現象の元凶としてオタク文化を名指しして非難している。またこれに呼応する形で、国際エクパットの2006年報告書[85]では、性的暴行(sexual violence)の促進を示唆する証拠の存在を条件として、擬似(simulated)児童ポルノの禁止は不可避であると結論し、日本の児童ポルノ法の緊急の見直しを要求している。
また、2008年には、「街中に氾濫している美少女アダルトアニメ雑誌やゲームは、小学生の少女をイメージしているものが多く、このようなゲームに誘われた青少年の多くは知らず知らずのうちに心を破壊され、人間性を失っており、既に幼い少女が連れ去られ殺害される事件が起きている」として、美少女ゲーム等の販売規制を求めた請願が参議院に提出されている。しかし、請願の取り上げていた小学生以下の幼い少女を被害者とした性犯罪件数(1988年~2008年)が、警察庁の統計によれば[86]極めて低位のまま安定的に推移していることや、そもそも幼い少女への性的虐待事件と美少女ゲーム等との因果関係を示す科学的・統計的な根拠があげられていなかったことから、紹介議員の一人であった円より子の公式サイトの掲示板が炎上するという事件が起こっている[87]。
2008年10月3日、衆議院議員の村井宗明(民主党)が第170回臨時国会にてアダルトゲーム撲滅活動団体・カスパルによる「美少女アダルトアニメ雑誌及び美少女アダルトアニメシミュレーションゲームの製造・販売を規制する法律の制定に関する請願」と題した請願書を提出し、受理された[88][89]。
また、外務省では「ポップカルチャー発信使」(通称カワイイ大使)を任命して、日本の学園アニメを通じて制服人気が広がっているといわれるタイでの「ジャパン・フェスタ」や、日本のアニメ、コスプレに夢中となる若者が多いといわれるフランスでの「ジャパン・エキスポ」をはじめとした世界各地での活動を展開させている[90]ところであるが、「カワイイ」を合言葉にしたこのような取り組みに対し、公明党の丸谷佳織が、2009年4月24日の衆院外務委員会で、「ポップカルチャー発信使が訪問国において誤解を与えないよう服装等に児童ポルノ取締との関連で注意を払う必要があるのではないか」 [91]「文化には税金を使って広めるべきもの、広めなくても浸透していくものがある」[92]などとの懸念を示している。
2009年6月10日、スウェーデンのシルビア王妃は、読売新聞とストックホルムの王宮で単独会見した。シルヴィア王妃は第1回「世界会議」の名誉議長を務めるなど[93]、児童性的搾取の問題への熱心な取り組みで知られた存在であり[94]、記事では「各国政府や民間団体、企業の連携の強化が重要」「所持の禁止は児童ポルノ対策に大きな意味を持つ」との認識を示している[95]。
2009年6月26日に行われた衆議院法務委員会に於ける児童買春・児童ポルノ処罰法改正案の審議では、女優の宮沢りえの写真集「サンタフェ」を引き合いに「大手出版社や映画会社が配給したDVD」を含めて「10年前、20年前、30年前とかに製造・販売されて手元にあるものを、そんなものをみんな調べるんですか?」と問いただした民主党枝野幸男議員に、法案提出者である自民党の葉梨康弘議員は、「(施行から)一年間の猶予期間がある。廃棄していくのは当然」「有名な女優であろうが(中略)関係ない」「児童ポルノかも分からないなという意識のあるものについては、やはり廃棄をしていただくのが当たり前」と、答弁している[96]。
この審議の様子は、衆議院TVなど動画サイトを通して、ネット上に非常に大きな衝撃を与えた。国内最大級の電子掲示板・2ちゃんねるでは、この日を境として、自民党支持者は泡沫勢力へと転落した。
ただし後日、葉梨自身が、「宮沢りえさんの「サンタフェ」が、「児童ポルノ」に当たるのか否か、見ていない私としては判断のしようもない」「現行法の定義規定について、権威のある解釈や答弁を行う立場にはない」と訂正している。また、与党案における性的好奇心の有無に関する判断の問題を尋ねた枝野幸男に対し、葉梨康弘は、仮定の話として、国会議員である枝野幸男が児童ポルノの所持者であれば、その所持が性的好奇心によるものとは認められないとの認識を明らかにしている。
[編集] 慎重派の動向
一方、慎重派の動きとしては、創作物の規制/単純所持規制に反対する署名活動が展開されている[97]。賛同人一覧には赤木智弘、後藤和智、斎藤環、里中満智子、新谷かおる、藤本由香里(明治大学)、みなもと太郎、宮台真司(首都大学東京)、森川嘉一郎(明治大学)他が名を連ねている。また紹介議員として、辻元清美、福島瑞穂、保坂展人(以上社会民主党)、枝野幸男、中村哲治、松浦大悟、吉田泉(以上民主党)、川田龍平(無所属)が名を連ねている。
また、民間団体では、日本ペンクラブ、日本弁護士連合会などが反対の声明を出している[98][99]。またMIAUが、日本ユニセフ協会に対して質問状を送付している。[100]。また全国同人誌即売会連絡会は署名活動(前述の「創作物の規制/単純所持規制」の反対署名をさす)を行う予定であることを発表した[101]。
マスメディア関係では、東京新聞が、規制反対派の主張を全面的に取り上げた見開きの特集記事を掲載し、創作物の規制に反対の立場を明確にした[102]。また日本雑誌協会が単純所持を規制した与党案に反対する姿勢を示している[103]。
なお、著名人では、宮崎哲弥、勝谷誠彦、宮台真司(法論議の際に参考人として参加)、藤井誠二、伊集院光、後藤和智や森永卓郎、藤本由香里、江川達也などが、出演するテレビ番組・ラジオ番組・ブログなどで表現の規制に反対もしくは慎重の態度を示している。
また、内閣府の実施した対面方式での調査によると、これらの「架空の児童」についても何らかの規制が必要であるという意見が大半であった[104][105]が、これについて弁護士の山口貴士は「調査の手法に問題がありすぎだ。この調査の結論には何の信用性もない」と述べている[106]。
なお、法学者の奥平康弘(東京大学)は、わいせつ規制に関する裁判で、「憲法的な表現の自由を媒介として、それをルールとして切り開いて作られた理論としてコンセンサスがあるわけではない」とし、表現の自由の本質は、あくまでも少数者の利益を確保することにあるとの指摘を行なっている[107]。
また、衆議院議員の保坂展人(社会民主党)は、新たに単純所持の禁止などを追加する改正の動きに対し、慎重な議論を求める請願を255人の署名とともに第170回臨時国会にて衆議院法務委員会に提出。児童ポルノ画像や映像の所持・取得に罰則を設けることは「多くのえん罪事件や捜査権の乱用、プライバシー侵害や行き過ぎた監視国家化が引き起こされる」と主張し、新たな罰則を設けないよう求め。児童ポルノの定義を明確なものにすることや、イラストを同法に含めないことも求めている。また2008年11月10日に動画投稿サイトニコニコ動画内のコンテンツニコニコ生放送で行われたネット政策討論会で取り上げ、2008年6月11日に成立した「青少年ネット規制法」の件とともに討論した。討論会は20時20分に開場、討論に当たっては事前に「ニコ割アンケート」で児童ポルノ禁止法、ネット規制問題に対するユーザーの考えを聞いた上で、その結果に基づいて進行した。その後2009年4月4日の17:30~18:00(JST)に開かれたコンテンツ文化研究会主催のマンガ規制・ネット規制について考える集まりにゲストとして参加し、その模様は後日ニコニコ動画の福島みずほチャンネルにアップロードされた。[108][109][110][111][112][113]。
2009年7月1日付けの東京新聞紙上で、高取英(劇作家)は、すでにポルノグラフィが「わいせつ物」として刑法で規制されている日本で、あらためて児童ポルノが論議される必要性に疑問を呈し、「人間の心の中を裁こうとする恐ろしさを感じる」「問題点がずらされ、本当に議論されるべき、幼い少女の人権の議論が置き去りにされている」との見方を示している[114]。
[編集] 政党、政治家の反応
[編集] 自民党、公明党
自民党および公明党は児童ポルノの単純所持と創作物の違法化に積極的な立場であり、法制定時や2004年改正で単純所持違法化を検討しており、また2008年に創作物に関する将来の規制に向けた調査研究[115]項目を盛り込んだ改正案を提出している。
自民党の森山眞弓や野田聖子、高市早苗や公明党の丸谷佳織、松あきらなどの女性議員らは「児童ポルノの単純所持の違法化」や「漫画・アニメ・ゲームの規制」に積極的な態度を見せており、児童ポルノ禁止法を代表的に推し進め、更なる規制を目指している中心人物である。
自民党の男性議員の中にも規制推進派は多く、特に規制に積極的な立場を見せているのが鳩山邦夫である。鳩山は、2009年2月18日の衆院予算委員会で、公明党の丸谷佳織の質問に児童ポルノを個人的に所有する「単純所持」について「断固として禁止するべきだ。表現の自由で守られる法益と、児童ポルノで失われる人権を比較すれば、表現の自由が大幅に削られてかまわない」と述べ、単純所持の規制だけでなく、創作物の表現規制にも積極的な姿勢を見せている。鳩山が法務大臣であった2008年には、児童ポルノを個人的に収集・所持する「単純所持」を原則禁止する、児童買春・児童ポルノ禁止法改正案が、議員立法で国会に提出されている[116][117]。
福田康夫も首相在任時に国会での答弁で「漫画ポルノ、あれもあのときに問題になったけれども、やっぱり日本はそういうものを許容する、そういう社会なのだろうか。これは決して誇るべき社会でないと思う」「そういう観点から、この問題についてはしっかりと対応すべきであり、私もこれは何らかの手を打たなきゃいかぬと、こう思っている」と発言し、創作物の表現規制に積極的な姿勢を見せている[118]。
ただ、自民党内でも慎重意見が存在しないわけではない。与党プロジェクトチームの早川忠孝は、個人ブログで、児童ポルノ法の問題を連日に渡って取り上げ、読者からの合計コメント数が1000件を突破した。これらのやり取りを通じ、規制派から慎重派に転じた早川は、個人的見解[119]として、定義の厳格化、所持ではなく譲り受けといった特定の具体的行為を禁止対象とすること、かつて適法とされていた物件の所持は対象から外し廃棄を義務づける、などの対案を示しており、法務部会では、「証拠を集めない限り、警察は強制捜査が出来ない」[120]ようにすることを目的として、「所持にプラスして、所持に至った原因行為である取得行為や製造行為の立証も必要になるような規定」を提案していた[121](ただし公明党の主張が与党PTとしての結論となった関係で[122]、部会としての結論とはならなかった)。また、児童ポルノ法の本来の目的は、児童ポルノによる児童の被害をなくすことにあり、単なる「児童ポルノ禁止法」という捉え方をすべきでないとの見方を示している[121]。
公明党は、創作物の規制に関して「禁止行為とすることが望ましい」との判断を示している。
公明党は党内に児童買春・ポルノ禁止法の見直しプロジェクトチーム(座長は丸谷佳織)を発足して協議を行い、米国での児童ポルノの対策などについて米国連邦捜査局(FBI)法務官のローレンス・J・フタ、駐日米国大使館政治部のスコット・ハンセンと意見交換話をするなどしている[123]。また、単純所持禁止の裏づけとなる性犯罪との因果関係を示すデータが存在しないとして、国の調査・研究による裏づけを求めている[124]。
公明党代表代行の浜四津敏子と児童買春・ポルノ禁止法見直しプロジェクトチームが、2008年12月4日に東京都新宿区の公明党新館で、児童ポルノに対する規制強化に関して、アメリカの日本駐箚アメリカ合衆国大使ジョン・トーマス・シーファーと懇談。プロジェクトチームから松あきら、丸谷佳織、事務局党の鰐淵洋子事務局長が出席した。浜四津らは、シーファーが児童ポルノの根絶に向けて尽力していることに謝意を示すとともに、与党として2008年6月に国会提出した「単純所持」を処罰対象とする児童ポルノ禁止法改正案の成立を急ぐ考えを伝え。また、第3回子どもと青少年の性的搾取に反対する世界会議で発表された宣言が、過激な漫画やアニメも児童ポルノに含む内容であったことを踏まえ、「漫画やアニメも規制対象に加えることに取り組んでいきたい」との認識を示した[125][126]。
[編集] 野党の反応
民主党は松浦大悟、枝野幸男、中村哲治、鈴木寛(落選中の議員である本多平直、山花郁夫も含め)を初めとした「表現規制反対派・慎重派」が多く、幹部クラスの議員からも「適用範囲が広すぎて不正捜査を招く危険がある」と規制の弊害を危惧する意見が出ている[127]。法改正検討PTの座長の千葉景子と事務局長の吉田泉(規制反対署名の紹介議員の一人)も慎重な姿勢を見せている。なお、長島昭久は単純所持の規制には賛同しているが、創作物の規制には反対の姿勢を示している[128]。
しかし、民主党内の一部(とくに女性議員)にも規制推進派は存在しており、日本ユニセフ協会が単純所持禁止を訴える「なくそう!子どもポルノ」キャンペーンの記者会見において出席した、民主党の参院議員神本美恵子らの女性議員が「同党内でも議論するべき」と発言している(ほかに小宮山洋子や泉健太、アダルトゲーム等の規制に関する請願を提出した円より子、下田敦子、村井宗明など)。かつて在籍していた水島広子は、単純所持違法化・創作物規制にかなり積極的であった。
党全体としてはこれまで「児童ポルノの単純所持違法化」や「創作物の規制」について反対の姿勢を見せてきており[129]、2008年には児童ポルノの名称を「児童性行為等姿態描写物」と改めるなどして、「アニメなどバーチャルな表現の規制に及ぶという懸念を払拭」[130]した改正案を提出している。。
社民党は自社さ連立時代に法案作成に携わっており、当時在籍していた清水澄子が「絵も規制の対象に含むべきだ」と主張していたが、党内や民主党の反発もあって清水の主張は退けられた。現在、党レベルで「権力や支配層の意思、考え方が一方的に押しつけられることがないように、表現および言論の自由を徹底的に擁護する」と宣言をしており、児童ポルノの規制には批判的な立場である[131]。また2009年6月26日の「from 社会新報」では、「「改革」や「エコ」といった、一見すると誰にも反対できないイメージを使い、政府与党は制度を作りあげる傾向がある」と批判し、「今回は「児童ポルノ」であるが、この法案の「改正」により、表現や内心の自由を規制・監視 しようとする流れができることを危惧するとともに、社民党はこうした動きへの「監視」を今後も続けていく」と報じている[132]。
また、社民党は党首である福島瑞穂自身が児童ポルノの規制に懸念を示している。ニコニコ動画内の福島みずほチャンネルでは萌え絵風の自画像を掲載して「創作物」および「単純所持」の規制に反対する立場を明らかにしている。また、同党所属議員である辻元清美とともに、前述の創作物の規制/単純所持規制に反対する署名活動の紹介議員となっている。また、自らのブログで「児童ポルノにはもちろん反対だが、ポルノかどうかの判断は、人によって違ってくる。拳銃や麻薬のように単純に違法なものかは判断できない」とコメントしており、単純所持の違法化には反対の姿勢を見せている[133]。創作物の規制に関しても、「一見児童ポルノを処罰をするようで、実は、ポルノ全体の処罰とならざるを得ない」[134]との認識を示しており、「(仮に漫画などが規制された場合)判定をする人間、最終的には、裁判官が「アニメのこの子は、19歳に見える、いや17歳くらいだろう」と判断をすることになる。はっきり言ってそれは、不可能でありかつ恣意的になる。法廷で、いや18歳以上に見えると論争をするのだろうか」として、漫画などの規制に懸念を示している[134]。また同党所属の保坂展人もこれらの意見に同調している[135]。
日本共産党は、2005年に奈良で施行された「子どもを犯罪の被害から守る条例」13条には日本共産党奈良県委員会が反対しており、現在は、児童ポルノの単純所持違法化についても慎重な立場をとっている[136]。また、創作物については、党としては批判的な視点をもつとしつつも、道義的な問題と法律の区別を前提として、法による一律の規制に対しては否定的な見方[137]を示している。またその機関紙である赤旗において「表現の自由で守られる法益と、児童ポルノによって失われる人権とを比較すれば、表現の自由という部分が大幅に削られて構わない」とした鳩山邦夫の国会答弁を批判する記事を掲載し、「与党提出の児童ポルノ禁止法改定案が、憲法で保障された表現の自由を脅かすことを認めた」ものと批判した上で、「児童ポルノは、そのほとんどが現行法で取り締まることが可能」との認識を示している[138]。ただし議員レベルでは、共産党の党中央委員会政策宣伝委員会責任者である小池晃が、日本ユニセフ協会のメンバーと懇談の中で「(実写、アニメ、マンガ、ゲームの全てにおいて日本の児童ポルノは)現状は放置できないひどい実態」「みなさん(日本ユニセフ協会)の要望をしっかりと受け止める」とコメントしており、規制の強化に積極的に姿勢を見せている[139]。
国民新党は、単純所持および創作物の双方について、法規制に対して反対の立場を明確にしている[140]。
無所属では、参議院議員の川田龍平が、規制反対署名の紹介議員となっている。
[編集] 日本以外での状況
アメリカ合衆国においてFBIはインターネットの児童ポルノの摘発に乗り出し、複数の作戦を決行している。その作戦のコードネームとその概要を記す。
- イノセント・イメージス
- アメリカ・オンラインを通じ違法行為の調査を進めた連邦捜査局は2年間の捜査活動を経て、1995年9月13日に容疑者12名を逮捕。100件以上の家宅捜索を実施。1997年4月時点で91名を逮捕し、83件の重罪の有罪判決が下された。これはFBIが1つのオンラインサービスの捜査を全国規模で実施した初の例であった。
- オペレーション・キャンディマン
- FBIのおとり捜査官が児童ポルノに関わる3つのEグループを特定。2001年1月から一斉摘発を開始。2002年7月時点で100名以上の逮捕を報告。同年8月には米国と西欧諸国の捜査当局が連合し、国際的な児童ポルノリングの組織を摘発。20名を逮捕。この事件における被害者は容疑者らの子供も多く、その映像は世界中に配信された。
2003年にはザ・フーのギタリストであるピート・タウンゼントが児童ポルノのサイトに接続したとして性犯罪者リストに登録されてしまったが、彼は幼い頃虐待を受けておりその著書のための下調べという事情もあったが、それであっても逮捕された。
なお、アメリカでは、18歳未満の子どものように見えるポルノグラフィ(含む創作物)を、児童ポルノ法によって一律に規制したCPPAが、表現の自由に反するとして、2002年に、連邦最高裁によって、政府は「憲法上、個人の私的な考え方を管理することが望ましいという前提に立って法律の制定を図ることはできず」、また「 『はっきりしない将来の時点』において、違法行為が行われる可能性が高まるからといって言論を禁止することはできない」[141]として違憲判決を受けており、現在では、ミラー基準の枠内で、わいせつ法の条文を利用した規制(PROTECT Act of 2003)が行なわれている。
その後、2006年にわいせつ物に該当する創作物を所持していたとして前述のPROTECT Act of 2003の下で起訴を受けた事件で、2009年に検察当局との司法取引によって有罪が確定している。被告人のChristopher Handleyには15年以下の懲役が課せられる見込み。Handleyは実写による児童ポルノは一切所持していなかったという[142]。
また2006年に別の事件で、架空の創作物をインターネット上の同好の士に電子メールで配布したとして、2009年に米連邦控訴裁判所で有罪の判決が下っているが、連邦第4巡回控訴裁判所のRoger Gregory判事が、わいせつ物に関する法律は、「完全に想像上のものである児童の画像」には適用されるべきでないとの見方を示しており、「個人的な空想を、その内容に同意している他の成人に対して私的に通信したという”被害者のいない犯罪”に関して有罪にする」ことに疑義を呈すとともに、「個人の考えへの政府の規制」にあたるとの懸念を示していることから、最高裁に持ち込まれる見込みという[143]。
なお、児童ポルノを所持し視聴する行為が、それだけでも児童を性的に虐待する行為の誘因となるという主張も存在する。アメリカでは、両者の相関関係を示す資料として、子どもポルノを受動的に視聴した受刑者 の76%が接触犯罪が犯していたとのヘルナンデス調査が報告[144]されている。ただし、両者の因果関係を示す科学的・統計的な資料がいまのところ存在しない。
なお、イギリスにおいては1999年以降に行なわれた児童ポルノの一斉摘発作戦(オペレーション・オーen:Operation Ore)によって35人の自殺者が出ており、その大半は妻帯者であった。
児童ポルノの需要状況を示すデータは、イタリアの児童保護団体テレホノ・アルコバレーノ(it:Telefono Arcobaleno)[145]のレポート[146]によると、2007年における小児性愛者サイトのユーザー・訪問者の割合は、米(22. 82%)、英(7. 02%)、仏(3. 56%)、独(14. 57%)、伊(6. 14%)、加(3. 16%)、露(8. 39%)、日本(1. 74%と)なっている。
児童ポルノの供給状況を示すデータは、イギリスのインターネット監視財団Internet Watch Foundation(IWF、en:Internet Watch Foundation)[147]のレポート[148]によると、2006年における児童ポルノサイトのホスティングサーバは、アメリカ(62%)、ロシア(28%)となっている。
イタリアの児童保護団体テレホノ・アルコバレーノのレポート[149]によると、2008年における小児性愛者サイトの件数は、独(2, 139)、米(560)、蘭(413)、露(259)、機(174)、中(138)、加(77)、宇(22)、葡(13)、仏(9)、越(7)、日(6)、韓(5)、英(2)、西(2)、伊(1)となっている。
なお、児童ポルノの二大消費国(「児童ポルノ大国」)としてアメリカに加えて日本が取り上げられることがあるが、その統計的な根拠は明らかではないことを日本政府も認めている[150]。それにもかかわらず日本が「児童ポルノ大国」であると名指しされる場合、被写体の実在しないアニメ等の創作物が児童ポルノに含まれていることがあるが、吉田泉議員の質問に対する政府答弁として、「漫画、アニメ等実在しない児童を描写したポルノにつきましては、この児童ポルノには該当しない」ことが確認されている[151]。またG8の中で単純所持を規制していないのは日本とロシアだけとの批判がなされることがあるが、単純所持を 規制していない国は138ヶ国存在することも留意すべきである。
[編集] 国際会議
ブラジル・リオデジャネイロで2008年11月25日~11月28日開かれた第3回子どもと青少年の性的搾取に反対する世界会議において、会議は、児童ポルノを絶対許さないとする「容認ゼロ方針」(ゼロ・トレランス方式)を徹底し、児童ポルノ画像を入手するだけでなく、それを見ることや過激な漫画などの表現物も規制対象とする行動計画が策定された。新たな行動計画では、画像の製造や提供、所持、購入にとどまらず、見ること自体も犯罪とみなすことを決めた。また、漫画やアニメなど「仮想の画像や性的搾取の表現」も児童ポルノに含まれると規定した。日本ユニセフ協会などとの関係の深いエセル・クエール博士の取りまとめた報告書[152]では、被写体の実在しない仮想の表現であっても概念としての児童の人権を侵害するという主張が展開された。なお、同会議は、もっぱら法規制の推進に賛同する活動家や団体によって催された会合であり、行動計画に法的拘束力はない[153][154][155][156][157]。
[編集] 児童ポルノ規制の主要な論点
[編集] 強力効果論
「児童ポルノを見る者は、いずれは児童に実際に性的虐待をはたらくはずである(あるいは潜在的な性犯罪者である)」という強力効果論的な主張がなされることも少なくない[158]。
しかし、このような表現物と行為とを同一視する主張に対しては、同様の論法で、犯罪性の高い行為を題材にした表現物を鑑賞する者は潜在的な犯罪者である、という主張も通ることになるとの反論も存在する。たとえば、「レイプを題材にしたアダルトビデオを観る者は潜在的な強姦犯である。あるいは、いずれは実際に強姦事件を起こすはずである」「痴漢もののアダルトビデオを観る者は潜在的な痴漢犯罪者である」「猟奇殺人を題材にしたスプラッター映画を観る者は潜在的な殺人犯である」という論法が通じれば、「テロを題材にしたアクション映画を観る者は潜在的なテロリストである」という主張も通ることになる、との反論も見られる[159]。
そもそも、ポルノと性犯罪との因果関係を肯定し、ポルノがその鑑賞者を性犯罪者に変化させる力を有するとする強力効果論は、ポルノが、無数に存在する引き金の一つに過ぎず、しかも、もともと犯罪的な傾向の強い人間に対してしか引き金として機能しない、とするクラッパーの限定効果説によって、学問的には退けられている[160]。
[編集] 定義年齢の問題
児童ポルノとは、児童に対する性的な虐待の記録物であるが、児童性的虐待の綜合的な定義は、性交同意年齢を基準としている(SCOSACによる)。にもかかわらず、日本における児童ポルノ法の定義では、性交可能な性交同意年齢(13歳)に達している18歳未満の未成年者が対象に含まれている。これは、成熟した判断能力を備えていない未成年者を、永久的な記録性をもつポルノグラフィの被写体とされる危険から保護する目的によると説明されている[161]。
しかし、高校生(18歳除く)も含む被害児童(援助交際などの当事者もこれに含まれる)の定義年齢が多少高すぎるという議論がなされていることも事実である[162][163]。日本ペンクラブは、「対象年齢を「十八歳未満」とするのは「児童」の概念から甚だしく逸脱しており、せめて義務教育年齢以下とすべき」と提言している。なお、青少年保護育成条例等では、18歳未満の児童との性交又は性交類似行為は、これを罰則をもって禁止している(いわゆる淫行条例)が、婚姻年齢に達している16歳以上の「年長青少年」については、公権力をもってその性的自由に不当な干渉を加えるものであるとした谷口正孝裁判官の意見も存在している[164]。
なお、単純所持を規制した奈良県の条例[165]においては、法律上の児童のなかでもとくに小学生以下の者について、心身の未成熟、不充分な判断能力、犯罪被害に遭う危険性が特にに高いこと、犯罪に対する抵抗力が乏しいことなどを理由[166]として、その定義年齢が13歳未満と定められている。
[編集] 年齢判断の問題
単純所持違反の事件として立件するためには写真や動画に登場する被害者の年齢を判別しなければならないが、警察官が全ての証拠に目を通して査定しおおよその判断をした後医師等が体格、骨格、発育状況を基に医学的に鑑定しなければならない。その場合恣意的な判断を避けるため『児童鑑定書』等の判断マニュアルを作成するなど基準の統一化が必要になる。しかし、どういう基準を決めて現場でどのように判断するかは難しい。概ね第二次性徴が表れる前か後かは比較的判断しやすいが思春期の時期や生長の度合いは個人差が非常に大きい。人種による違いや個体差もあり早熟や晩熟の違いもあれば個々の発達の仕方も違う、思春期早発症から思春期遅発症の他、ホルモン異常や染色体異常、半陰陽の場合などがある。総じて日本人は欧米人よりも二次性徴が早く成長が早い段階で止まるため同年齢の欧米人より若く見られがちである。また、撮影する時のアングルや遠くから撮影されたもの、レンズの焦点の合っていないもの、体の一部や全体像が見えない物などもある。解像度の低いものについては判別が難しい。
児童買春の場合、児童ポルノ問題に詳しい奥村徹弁護士が、「年齢不知について無過失の主張はまず通らない」との認識を示している[167]が、まれに立件が見送られるケースも存在する。
- 2008年2月に宇都宮市内のホテルで出会い系サイトで知り合った当時16歳の少女を買春したとされる事件では、被疑者である警察官が、「少女が18歳未満とは知らなかった」と供述したことを理由として、児童買春・児童ポルノ禁止法違反容疑での立件が見送られている[168]。
- 元国会議員の私大学長に16歳の女子高生を紹介し、わいせつな行為をさせたとして、団体職員らが逮捕された事件で、事情聴取に対し「未成年とは知らなかった」と答えたことを理由として、私大学長側の立件が見送られている[170]。
ほかには、偽造した卒業証書で出演した16歳の女子児童を撮影したフリーカメラマンが、児童ポルノ処罰法違反(製造)の疑いで逮捕されている[171]。また、姉の免許証を盗んで持って来た16歳の女子児童がビデオに出演した事件で、女子児童の側を被害者として、製作会社の社長が逮捕されている。ただし、ある製作会社の役員は、詐欺にあったのはむしろ製作会社の側であるとの認識を示した上で、「『児童』と名の付く法律はそれだけ強権的」との懸念を示している[172]。
また、そもそも現行法は、行為の違法性を基礎づける本質的要素である当該児童が18歳未満の者であることの認識(故意)がなくても、そのことについて過失があれば故意犯として処罰可能とされている(9条)ことにつき、法学者の井田良(慶應義塾大学)は、「刑法の基本原理からかなり逸脱したもの」であると指摘し、国民に近い機構による立法(議員立法)が非専門的な傾向を示す一例として挙げている。
[編集] 規制範囲の問題
代表的なものとしては、所持している本人が「性的な画像」という自覚が無くても摘発される危険性である。
- 海外での問題・・・外務省では、児童ポルノの単純所持がすでに違法化されているアメリカで、自分の子供が入浴した時の写真を現像に出しただけで事情聴取に至った事例を紹介し、「日本では何でもないと思われること」であっても処罰の対象となることもあるとして注意を喚起している[173]。
- 被写体の問題・・・自分の子供の裸の写真や映像(水浴びや入浴している時に撮影したものなど)や、自分自身が子供の頃に撮影した裸の写真や映像をアルバムなどに保存しているだけで、「児童ポルノ所持」の容疑者として摘発されるという危険性も指摘されている。自分自身が赤ちゃんやまだ物心がついていない時に「両親が撮影した幼い自分の裸の姿の写真や映像」、第二次大戦前に生まれた人々についてでさえ、その人の両親が生前に撮影するなどして残っている可能性もあり、こうした写真などを所持しているだけで摘発されることになる。もし、被写体本人や撮影者が既に死亡した後に遺品として、そういう写真や映像が発見された場合、遺族が罪に問われることにもなる。ECPATストップ子ども買春の会ではこれらの事例について「子どもの自己被害化」であるとしている[174][175]。またアメリカやオーストラリアでは10代の未成年が自分のヌード写真やセミヌード写真を携帯電話でやり取りする行為が流行っていると報道されており、携帯電話でメッセージを送るという意味の「テキスティング(texting)」という単語をもじってセクスティング(en:Sexting)と呼ばれる。これらの写真を所持しているという理由で、米国各地で多くの10代が逮捕・起訴されている。また、2008年3月にバージニア州サウスライディング(en:South Riding, Virginia)にあるフリーダム高校で教頭をしていたTing-Yi Oei氏(60歳)が校長から命じられて校内で起きたこの問題を調べ、男子生徒に画像を提出させたが。その2週間後にこの生徒が別の問題で停学処分を受け。それを不当に感じた生徒の母親が警察に通報、この写真が17歳の同校の女子生徒のものであることが判明して。起訴陪審(大陪審)が8月に同氏を起訴するという事件が発生した。夫妻はコミュニティの人々から冷たい目で見られたほか、家宅捜索に備えて、家にあった写真を調べ、自分の子ども達が小さいころに裸で映っている写真がないかチェックするなど、パラノイア的な不安に襲われたという。一方、教育関係の団体や元生徒、属していたキリスト教会(クエーカー)の人々など、多額の訴訟費用で困難に陥ったOei氏を助けようとする人々もあった。その後2009年3月に裁判所が訴えを棄却したため4月から勤務に復帰し、育委員会は6月23日(米国時間)訴訟費用として約16万7000カナダドルを同氏に返還することを7対1で決定した[176]。毎年、世界中から8000人の研究者が集まり、最新の社会動向について議論する「Canadian Federation for the Humanities and Social Sciences(カナダ連邦人文・社会科学会議)」の第78回会議が2009年にカナダ・オタワで開催された際。5月26日にトロントのヨーク大学のピーター・カミング(Peter Cumming)准教授は子どもの性的関心についての報告の中で、セクスティングは現代の「お医者さんごっこ」のようなものだと指摘し「児童ポルノの頒布」の罪にはあたらないとの意見を発表した[177]。また、こうした点については、「被写体本人が自分自身であり、かつ自分自身がその写真や映像の存在によって不快に感じているわけでもないのに、単に“裸の子供の画像”というだけで一律に法規制の対象にするのはおかしいのではないか」といった意見も多くあり、実際に法規制の対象になるかどうかは議論を呼ぶところである。
- 成人後の問題・・・小学生の女児のヌードを撮影した写真集が仮にあったとしても、その写真の撮影から10年~18年以上が経過し、出版物として世の中に発表された時点で既に出版を決意した女性本人が成人になっている場合、それも児童ポルノと呼べるのか?といった意見も少なからず存在する。
[編集] 被害者支援の問題
奥村徹は、国や自治体、国内のNPOが、「声高に規制を求めた割には全く(被害者の)救済に動かない」として、これを問題視しており[178]、弁護人としての経験から、「児童ポルノ・児童買春の被害者は、条文上存在するが、実際には姿が見えない」と指摘している。また、教育、啓発及び調査研究の推進を定めた第14条に、予算がつけられていないことも指摘している[179]。
なお、児童ポルノ法が、風紀取締りのための風俗犯罪処罰法でなく、被害児童の保護のための法律であることを明確にする趣旨から、「児童ポルノ」の用語を「児童性行為等姿態描写物」と改めることと、あわせて被害児童の保護の具体的な実施主体として児童相談所などを規定するとともに、厚生労働省に設置された審議会などにおいて、フォローアップの体制を制度化することなどが民主党からは提案されている[180]。
[編集] 供給者・加害者側の取り締り
児童に対する性的虐待の取り締まりは、加害者側の取締り強化を前提とすべきところ、現状の議論では、児童ポルノと、それを鑑賞する所持者を摘発することのみに集中しているとの主張がなされている。
そもそも、児童ポルノ規制の根拠とされているのは、ポルノの被写体になることによって傷つけられた被害者となる児童の存在である。しかし、その供給者(あるいは加害者)は、被害者となる児童を被写体にした大人(あるいは出演を承諾した親)である。日本ユニセフ協会によれば、児童に対する性的虐待の多くが、被害者児童の保護者、つまり親や親戚などの身近な関係にある親族によるものであるという[181]。[182]
評論家の赤木智弘は[183]、日本ユニセフ協会が、子どもを搾取の対象としている「「親の欲望」を大きくは取り扱わない」として批判している。サブカルチャーに属する「アニメやゲームというスケープゴートを批判して、親やマスコミの溜飲を下すような口当たりのいいキャンペーンを行って募金を集めるのではなく、しっかりと現実を直視して、本当に子供たちのためになるキャンペーンを行うべき」と提言している。
なお、児童に対する性的虐待者(チャイルド・マレスター)は、状況的虐待者(小児性愛者でない者)と選好的虐待者(小児性愛者)に分けられるが、加害者の大半を占めるのは前者(状況的虐待者)である[184]。また、非商業的な場面での被害は、その大半が、児童と顔見知りであり、児童に対して親的な立場にある大人によるものである。具体的には、両親・保護者・親戚などの親族のほか、幼稚園・学校・大学などの教師、児童のための施設の職員、教会の聖職者、その他スポーツクラブのコーチ、外国への交流旅行に関わる大人などがあげられる[185]。2002年には米カトリック教会の神父4450人に11000件にのぼる児童性的虐待の疑いが発覚したローマ・カトリック教会の聖職者らによる性的虐待事件をアメリカのメディアが大々的に報じているが、被害者団体側は、教会側の出した報告書の数字は実際の被害件数を下回ると批判している[186]。
[編集] 単純所持規制に固有の論点
[編集] 捜査権の拡大
- アメリカ合衆国では、FBIが児童ポルノサイトへのリンクを装った「だましリンク」をネット上の電子掲示板などに貼り付け、そのリンクを一度でもクリックした人物を児童ポルノ処罰法違反容疑で逮捕するといった、おとり捜査も行われている。「おとり」というよりは「罠」という表現もできる。この場合、誤ってクリックしただけで逮捕される。しかもFBIのやっていることは本質的にはワンクリック詐欺と同様であり、被害者が存在しないにもかかわらず犯罪者を次々と生み出すことに繋がる[187][188]。
日本でも児童ポルノの単純所持が違法化されれば、警察のこういった捜査が横行する危険性が出てくることになり、「犯意誘発型」に相当するはずのおとり捜査までもが合法化される危険性も出る。弁護士で社民党の福島瑞穂は、「「単純所持」が処罰をされるということは、単純所持が、犯罪になるということであり、つまり、捜索が可能となるのである」として、捜査権の拡大を懸念している[133]。
- アメリカ合衆国では、通関に際し、携帯電話やパソコンなどの情報機器が検査の対象となっており、内部に記録されたデータの一切を開示しなくてはならない。これには、プライバシーの重大な侵害との批判の声が上がっているが、あくまでも児童ポルノの捜査を目的としたものであるとして、現状では、合憲との判断が下っている[189]。
[編集] 意図しない所持に伴う問題
- メールや郵便で他人の児童ポルノの画像や本を送りつけたり、相手の所持品の中に他人の児童ポルノの写真を(本人に知られないように)紛れ込ませた後、警察に通報するだけで特定の個人や団体を簡単に社会的に抹殺することが可能となる。児童ポルノは拳銃や麻薬と違って入手や複製が容易であり、実際に作成することも可能なので、こうした冤罪が横行する可能性が大きくなる。実際に児童ポルノの単純所持が違法化されている米国や英国では、気に入らない相手に児童ポルノを郵便やメールで送りつけて社会的抹殺を図ったのではないかとされる事件がいくつか発生しているという。[190]。さらに、現行犯逮捕であれば、逮捕状を必要とせず、なおかつ何人であっても逮捕権を行使することができるので、痴漢冤罪やその捏造事件と同様の問題が容易に起こり得ることが懸念されている。
- 一般的なウェブブラウザでは表示した画像を一定期間ハードディスクにキャッシュとして保存する仕様になっているため、児童ポルノの画像があるウェブサイトに(たとえ過失であれ)接続しただけでも、キャッシュや履歴が残ることで犯罪者となってしまう。サイトによっては、アダルトサイトでなくともポップアップ広告などでアダルト画像を使ったバナーを表示するサイトや、他のページへのリンクとして画像を縮小表示したりしてるサイトも存在するため、そういったサイトに接続するだけで「児童ポルノ所持」の容疑で犯罪者になってしまうことが危惧されている。
- 児童ポルノの単純所持などがすでに違法化されているアメリカではWindowsの「Thumbs.db」という自動的に作成されるサムネイルファイルに児童ポルノと思われる画像が表示されるだけで、たとえ元の画像ファイルがハードディスク内に存在しなくても、児童ポルノ所持の容疑で逮捕されている[191]。このサムネイルファイルは、迷惑メールなどの添付ファイルや、ウェブページを見た際のキャッシュなどにたまたま含まれていた児童ポルノ画像を見ただけでも生成されてしまうため、アメリカでは大多数のパソコンユーザーが、児童ポルノ所持の容疑で摘発される可能性がある。
- コンピューターウイルスの中には自動的に児童ポルノの画像をダウンロードするものも存在し、そういったウイルスが原因で、アメリカでは本人に「児童ポルノの画像を集めている」という自覚が無いまま逮捕されると言う事件も起きている。[192]。
[編集] 詐欺の問題
それ以外にも、いわゆる「ワンクリック詐欺」を働く業者がウェブサイトに誘導し、「あなたは児童ポルノのサイトに接続したため、今すぐ口止め料を振り込まなければ警察に通報する」というような、詐欺目的で悪用される危険性も出てくる。また「振り込め詐欺」の業者が郵便やメールで児童ポルノの画像や本を送りつけ、口止め料を請求するという手口に出るというように、児童ポルノの単純所持が違法となることでそれを利用した新手の詐欺行為が噴出することに繋がる危険性も潜んでいる。
[編集] 所持の規制の論理
現行法においては、実在する児童を被写体とした児童ポルノは単純所持の規制対象とされていないが、違法な電磁データは、その複製が容易であることから、その流布の危険性の高いこと[193]を根拠として、新たに児童ポルノを対象に加えることが主張されている。衆議院議員の鳩山邦夫は、「単純所持を認めているとやはりそこから穴が広がっていって、結局その所持した物がインターネットに載るというようなことがあり得るのではないかと思います。麻薬と同じような考え方をしてもいいのではないか」との考え方を示している[194]。
なお、これと同様の考え方を根拠として、わいせつ物にあたる児童ポルノデータを所持していたケースで、それ自体は販売意図がなかったとしても、刑法175条にいう「販売目的所持」にあたるとして、2006年に有罪判決が確定している。ただし、法学者の森尾亮(久留米大学)は、この判決が、175条に規定のない予備[195]行為の処罰にあたり、罪刑法定主義に反するとの否定説を支持している。また、銃器・麻薬等の単純所持の規制には理解を示しつつも、「わいせつ物との接触は(人間もまた動物である以上)私たちの社会生活においてほとんど不可避なもの」であり、また175条の保護法益が性道徳の保護にあるからには、現行の「児童ポルノ処罰法の規制対象には含まれないような「合成写真」や「アニメ・ポルノ」等」までもが対象となりかねないとして、上記判決に批判的な見方を示している[196]。
また、法学者の松原芳博(早稲田大学)は、近年の日本では、危険社会論を背景とした抽象的危険犯の形式の下での処罰の早期化の傾向が顕著であり、「しばしば犯罪に用い得る一定の物ないし情報の提供・取得や所持・保管を構成要件化する立法形式が採用されている」[197]との認識を示している。その上で、内心の思想や意思を対象とする心情主義 [198]と対立する行為主義 (いわゆる内心の自由)[199]を擁護する観点から、特に児童ポルノの単純所持の違法化には、「「所持」や「保管」は、本来、社会的外界に顕現する以前の私的領域にとどまるものであって、その犯罪化には行為主義との関係で特別の正当化を必要とするように思われる」との懸念を示している[200]。同様に、法学者の園田寿(甲南大学)も「現実に性的虐待を受けた児童の記録物が広く頒布・販売・陳列される場合に比較して、密かに個人的に所蔵される場合は、被写体とされた当該児童に対する侵害は抽象的な程度にとどまる」ことから、単純所持の禁止は、個人の自由に対する過度の介入になると指摘しており[201]、直接的な法益侵害である製造や提供行為と異なり、専ら私的領域にとどまる単純所持行為について、処罰を正当化する根拠が存在するのか疑問視する声が上がっている。
ただし、捜査関係者の間では、「児童ポルノの愛好家には画像の所持、強姦やわいせつ行為、殺害した上での強姦、わいせつ行為-という三段階がある。「単純所持者」の摘発は凶悪犯罪を未然に防ぐためにも必要だ」との見方がなされていることも事実である[202]。
また、単純所持の規制には、それに伴う捜査権の拡大の危険性も指摘されているが、元警察庁職員で弁護士の後藤啓二は、反復取得や有償譲受など明白な行為に限定するとした民主党案について、「既に所持するポルノは『合法』となるうえ、『取得の禁止』では、誰からどこで入手したかの立証が難しい」[203]「冤罪のおそれなどということを理由に児童ポルノの単純所持を禁止するべきでないというのは、子どもを児童ポルノの被害に遭うことから守ることの重要性の認識に欠けているとしか思えません。民主党の懸念を正当化してしまえば、すべての犯罪で冤罪の危険はあるわけですから、殺人でも強姦でもあらゆる行為を罰してはいけないことになってしまうのではないでしょうか」と批判している[204]。ただし、衆議院議員で弁護士でもある早川忠孝は、「証拠を集めない限り、警察は強制捜査ができない」ようにするため、あくまで「取得行為や製造行為の立証も必要になるような規定」ぶりを提案している[205]。
なお、専修大学の山田健太は、東京新聞[206]の特集記事で、単純所持の禁止が、「思想のチェックにつながりかねず表現の自由の大原則を変えることになる。1度作った例外が、その後一般化する例は少なくない」との懸念を示している[207]。
仮に、単純所持が違法化された場合、数多くの問題と危険性が指摘されている[208]。
[編集] 創作物規制に固有の論点
[編集] 表現の自由
「被害者が存在しない」「表現の自由を侵害している」という指摘がある。
児童ポルノ法によって被写体の実在しない架空の表現を取り締まることに対しては、自民党および公明党を除いた各党から疑問の声が上がっており、2008年には、民主党が、児童ポルノの名称を「児童性行為等姿態描写物」と変更する改正案を提出する動きに出ているが、これに関し、元弁護士で民主党PTの千葉景子は、「対象を明確にし、ポルノ一般の規制になるという懸念やアニメなどバーチャルな表現の規制に及ぶという懸念を払拭」するための措置と説明している[209]。
ただし元警察官僚で自民党PTの葉梨康弘は、被写体の実在しないアニメ等の規制が「被写体となった子ども全体の存在を守るためだ。小児性愛の対象とし、子供をモノとして見ることは悪だという規範を広げることが必要」だとして、18歳未満の児童の性的モノ化(en:Sexual objectification)を問題視するとともに、また日本ユニセフ協会などの提唱している「集団としての児童の人権」論を擁護する立場を確認している[210]。
写真や映像に関しては、それも著作物の表現の一種として考えた場合、厳しすぎる規制は表現の自由や公序良俗との兼ね合いにおいて問題となるが、とくに、漫画やアニメ、ゲームなどの場合、規制は、ただちに「表現の自由の侵害」につながる恐れも大きいため、法改正にあたっては、慎重な議論が求められる。
漫画家のちばてつやも、政府による創作物の規制は、過去に大日本帝国が第二次世界大戦終了まで行った報道の検閲や情報操作に類似しているとして、「法律などで(創作物を)規制するべきではない」という意見を述べている[211]。
同じく漫画家のみなもと太郎は、表現者の立場から、創作物の規制が「結局、頭の中を探って、取り締まることになる。犯罪と芸術と創造がごちゃごちゃになっている。書いていいと言われたものだけを書くのは表現の自由ではない」「魔女狩りになる可能性もある。創作者が萎縮して、表現の自由を狭めていってしまうのが怖い」との懸念を示している[212]。
なお、アメリカ最高裁の違憲判決[213]では、実在する児童の虐待を伴わないバーチャルな児童ポルノは、表現の自由に優越する公共の福祉というロジックによって規制されるべきものではない、との見解が示されている。
[編集] 保護法益の問題
また、規制派からは架空の人物に対しては「準児童ポルノ」として扱い、これらも児童ポルノ法により規制すべきとする活動が行われている。これに対しては、児童ポルノ法が、実在する児童の保護(個人法益)をその本旨としている関係から、実在しない児童を取り扱った創作物を、児童ポルノ法によって規制することには慎重意見も根強い。弁護士の奥村徹は有害図書かわいせつ図画で扱うべきだと意見を述べている[214]。なお、実在する児童の人権侵害を伴わないのであれば、18歳未満の児童を性的対象と見なす風潮(社会法益)は、それだけで独立しては問題とならないとの指摘も見受けられる[215]。
ただし、自民党の高市早苗は、子供を性の対象とする社会的風潮を助長する可能性が高いと見られる創作物について、その規制を可能にするために、個人法益から社会法益へと重点を移すことを検討する必要性を示唆している[216]。この点、裁判実務では、なお実在の児童に限定されてはいるものの、しかし社会法益をも保護法益とした判例がすでに多く出されていることも事実である[217]。また、円より子参議院議員が、衆院法務委員会で、18歳未満の「児童を性の対象としてとらえることのない健全な社会を維持することもこの法案では目的としております」とし、現行法においても付随的にではあるが社会法益も対象とするとの趣旨の答弁をしている[218]。
[編集] 3号規定との関係
現行の児童ポルノ法では、「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」と規定されているが、肌の露出やキャラクターの行為などが、どの程度にまでなれば「性的なもの」と判断されるのかといった定義も同じく示されていない。仮に創作物が規制された場合、製作者や所持者が、場合によっては国会が「性的なもの」と判断していなくても、警察や裁判所に「性的なもの」と判断されれば、その者は逮捕される可能性を否定できない。
「準児童ポルノ」も参照
[編集] 年齢判断の問題
漫画・アニメ・ゲーム(特に少年漫画・子供向けアニメ)などのキャラクターは、原作者による公式設定で年齢を明確に設定し、または小・中学生に設定されている場合もあるが、あえて年齢を不詳とし、劇中でも言及されないキャラクターも数多い[219]。年齢を確認しようにも、漫画やアニメに登場するキャラクターは「架空の存在」であるため、戸籍などを調べて年齢の確認ができないという特徴がある(そもそも、架空のキャラクターは現在の憲法が規定する人権を備えた存在でないことは言うまでもない)。よって、公式な年齢の設定がなされていなければ、18歳以上か否かの判断は事実上不可能に近いため、こういった規制の動きを批判する声も少なくない。
「見た目は幼女だが、設定上成人女性」ということになっている場合や、「見た目は成人女性だが、設定上は幼女」の場合などはどうなるのかといった、具体的な「児童ポルノ」の定義については一切示されていない。それ以外にも、特殊な魔法や薬などで子供が一時的に成人の肉体になったり、逆に成人が子供の肉体になるといったシーンが入っている作品も数多く存在しており、そういった、肉体が変化したキャラクターの扱いについてはどうなるのかも同様に不明である。
漫画などに登場するキャラクターは人間だけとは限らない。天使、悪魔、妖精、宇宙人といった現実の世界に存在しない、または存在が確認できていない種族のキャラクターも数多く存在する。作品によっては「10歳で成人を迎える種族」という設定になっている種族が登場する場合もあり、そういった種族に属する10歳のキャラクターが性行為を行った際は児童ポルノとして扱われるのかどうかは定かではない。ただ、児童の権利条約では、児童を人間(human being)と定義していることも事実である[220]。
[編集] 創作物の規制の論理
日本ユニセフ協会などには、「実在しない架空の人物の出演する作品といえども『準児童ポルノ』として扱い、これらも法律により規制すべきだ』との主張も見られる。ひとつは、性道徳(社会法益)の保護を理由としたものであり、もうひとつは、実在する被害児童(個人法益)の保護を理由としたものである。
[編集] 性道徳の保護
カナダでは、道徳を堕落させる罪(カナダ刑法典第163条)[221]として、被写体の存在しない創作物が規制の対象とされている。具体的には「(a)事実にせよフィクションにせよ、犯罪の実行を扱うもの(b)犯罪の実行の前後を問わず、事実にせよフィクションにせよ、犯罪の実行に関連するイベントを扱うもの」が「犯罪コミック」として刑事罰の対象とされている。
このカナダの規制は、いわゆるリーガル・モラリズムに立脚したものであるが、ある個人の行為が、たんに道徳的でないことを理由として、その当人のものではない特定の価値観を、外部から法によって国家権力が強制的に実現すべきことを主張するリーガル・モラリズムは、充分な判断能力をもつ個人の自己決定権(ことに精神的自由権)を擁護するリベラリズムとは鋭く対立する[222]。
またリーガル・モラリズムは、不快感情を根拠として他者の自由の制限を求める不快原理[223](ただし不快物非公開の原則は、リベラリズムと調和する)によって助長される[224]ものであるが、弁護士で衆議院議員の枝野幸男は、2008年7月のオープンミーティング[225]で、法と倫理の区別をはかる立場から、不快感情[226]を根拠とした規制が、ポルノグラフィ全般の規制に及ぼされることに危惧を表明している。
なお社会学者で首都大学東京教授の宮台真司は、リーガル・モラリズムに関し、日本における児童ポルノ規制法が、青少年の人権を擁護する法案から青少年の道徳を規定する法案へと変容しているとの認識を示しており、日本国憲法第19条「思想・良心の自由」に規定される「法と道徳の分離」の原則、すなわち法は道徳を命令してはならず、道徳的に中立な法の下、市民同士が何が道徳的かをめぐるコミュニケーションをすることのみを許容するという原則に対する理解の欠如によって、「市民が自己責任でなすべき道徳的コミュニケーションが、「お上」に委ねられてしまう」として批判している。
また、法学者で東京大学教授の奥平康弘は、成人向けコミック規制の是非をめぐる裁判[227]で、一般に成立している慣習倫理を根拠とした規制論を退けており、表現の自由の本質が、少数者の利益を確保することにあるからには、「「一般の人々が「いいんじゃないの、これは」ということがしきたりとして成り立っていて、議論をしないで「そういうもんだろう」と思っていること」(すなわち世論)を基準とすることはできないと論じている。[228]
[編集] 実在する児童の保護
スコット・ハンセンは「子どもに性的関心を抱きがちな人間が見れば、子どもに対する性的虐待を描いた漫画やアニメ」さえも、「子どもに対する性的空想を促し、こうした行為を正当化する手立て」になりえるとして、「彼らが子どもを性的に虐待して自分の空想を実行に移す危険」が高まる[229]と主張している。また、日本国内ではジョン・トーマス・シーファーが、同様のロジックで日本政府に対して創作物の規制を要望している。
ただ、ハンセンらが主張しているような、創作物が実在する児童に対する性的な人権侵害を助長・誘発する不安を高める、というロジックに基づいた(児童ポルノ法による創作物に対する)規制は、本国のアメリカでは、連邦最高裁の下したアシュクロフト違憲判決[230]によって、バーチャルな作品と児童に対する性的搾取との客観的な因果関係が明白ではないとして退けられている。なお、児童ポルノに限っては因果関係が間接的でもよいとの政府側の主張に対しては、「 『はっきりしない将来の時点』(at some indefinite future time)において、違法行為が行われる可能性が高まるからといって言論を禁止することはできない」[231]との判断を示した上、児童ポルノの問題がその内容ではなく制作方法にあるからには、製造過程における被写体の人権侵害を伴わないバーチャル児童ポルノの表現を、それがもつ単なる傾向性だけで禁止することはできないとして、規制論が退けられている。
また、単なる間接的な波及効果(助長・誘発)に基づいた規制論に対しては、「テレビドラマや映画で暴力・殺人の描写があるものは、観る者に暴力・殺人欲求を喚起させないとは言い切れないので規制すべきだ」という主張と同類であるとの反論がなされており、枝野幸男などが同様の認識を明らかにしている[232]。
しかし、規制派のなかには、「漫画やアニメの子どもポルノの方が、ユダヤ人や黒人を人間以下の虫けらとして描き出すプロパガンダよりもはるかに有害」であり、「「表現」は、直接的に暴力」であることは自明であるとして、「漫画やアニメやゲームの子どもポルノを擁護する人々は、主観的にはどうあれ、その行為によって、事実上、子どもに対する性的虐待とレイプと人身売買を擁護」している[233]として、前述の宮台真司や、アメリカ最高裁の下した違憲判決を批判する主張も見受けられ[234]、また日本ユニセフ協会の早水研専務理事が、実在しない子どもを描いた「子どもポルノ」のほうが、実在する子どもを被写体としたポルノよりも大きな悪影響 を社会に対して及ぼしているケースも見られるとの主張を展開している[235]。
なお、漫画、アニメ、ゲームなどのバーチャルなメディアが犯罪を誘発する有害なものであるという主張は、マスコミ、一部の学者、大学教授などが昔から主張しており(代表的なものとして森昭雄のゲーム脳が挙げられる)、「「バーチャルな」子どもポルノは、「リアルな」子どもポルノに対する需要を作り出し、さらには実際の生身の少女に対する性的虐待への欲求を喚起」するとの主張も見受けられる[233]。
だが、現在のところ、実在しない18歳未満の児童を被写体とした創作物と犯罪の因果関係を示す科学的な根拠や客観的なデータは一切存在しない。
[編集] 脚注
- ^ 大辞林
- ^ なお、学校教育法や道路交通法にいう児童の定義はこれと異なる。児童#法制度における呼称を参照のこと。
- ^ 平成17年度の児童買春・児童ポルノ事件の被害者数は1750人(平成12年度は963人)で、うち小学生以下の児童は33人(平成12年度は79人)となっている。 児童買春・児童ポルノ事件の検挙状況の推移(平成12年~17年)- 警察庁
- ^ ZAKZAK - 「女子高生Tバック」めぐり攻防…警視庁VS東京地検 「児童ポルノ」か否か…DVD出版社員ら不起訴に
- ^ また2008年08月には、大手オンライン映像配信サービスが、18歳未満のアイドルの作品の一部レンタルを自主規制する動きに出ている DMM.com : [お知らせ] オンラインDVD&CDレンタル - DMM レンタル アイドル作品数減少のお知らせ [2008-07-02]
- ^ ZAKZAK - 児童ポルノに利用…入浴シーンの男児の性器ダメ
- ^ 児童の裸、特に男児の性器を写すことについて - 放送倫理・番組向上機構(リンク切れ)
- ^ 日本ユニセフ協会・特集 子どもポルノから子どもを守るために
- ^ 同人用語の基礎知識/ 子どもポルノ
- ^ STOP!今そこにある「漫画・アニメ禁止法案」
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- ^ a b ポルノ・買春問題研究会 (2002-04-17). "2002年4月17日 (水) アメリカで児童ポルノ禁止法が違憲判決" (日本語). スタッフの声. 2009-05-14 閲覧。
- ^ ちなみにラディカル・フェミニズムの古典であるロビン・モーガンの「理論と実践:ポルノグラフィとレイプ」では、「ポルノグラフィは理論であり、レイプは実践である」とされ、ポルノグラフィは「性差別主義的プロパガンダ」であるとの認識が示されている。
- ^ 早水研 (2008-01-25). "日本発子供のポルノの現状と課題PDF" (日本語). アジアにおける子どもの権利の現状とと課題 〜人権ガバナンスの模索 23-27. 早稲田大学. 2009-05-14 閲覧。
[編集] 関連項目
- 児童福祉法
- 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
- 児童の権利に関する条約
- 子供
- 福祉
- 児童労働
- 児童虐待 - 性的虐待 - 児童性的虐待 - 少年への性的虐待
- 子供の性
- 性的同意年齢
- セックスヘイト
- 児童エロチカ
- 準児童ポルノ
- 言論統制 - 検閲 - 焚書
- 冤罪
[編集] 参考文献
- 『性と暴力のアメリカ理念先行国家の矛盾と苦悶』(鈴木透、2006)ISBN 4-12-101863-X
- 『9人の児童性虐待者NOT MONSTERS』(パメラ・D・シュルツ、2005、翻訳2006)ISBN 4-89500-092-3
- 「諸外国における実在しない児童を描写した漫画等のポルノに対する法規制の例」間柴泰治 国会図書館レファレンス2008.11[5]
[編集] 外部リンク
- 幼女レイプ被害者数統計
- 「第2回児童の商業的性的搾取に反対する世界会議」の外務省による概要
- ECPAT/ストップ子ども買春の会
- エクパットジャパン関西
- 児童ポルノとは何か?(PDF)(横浜会議で配られた資料を外務省が和訳したもの)
- 増加する児童ポルノサイト、日本はワースト8位2003年の統計調査記事(Hotwired Japan)
- 日本ユニセフ協会・特集 子どもポルノから子どもを守るために - 日本ユニセフ協会
- アニメ・漫画・ゲームも「準児童ポルノ」として違法化訴えるキャンペーン MSとヤフーが賛同 - ITmedia News
- Child porn suspect suicide tally hits 32 - オペレーション・オレによる自殺者に関する記事(英文)
- 個人情報を盗まれた結果、職を失い起訴される(個人情報盗用による児童ポルノ検挙被害事件) - スラッシュドット・ジャパン
- 警察庁の『漫画・アニメ・ゲーム表現規制法』検討会問題まとめ @Wik - 見出し
- あなたの知らない児童ポルノの真実 - 山本弘(SF作家・と学会会長)による、「少女ヌード」と「児童ポルノ」の境界や、犯罪統計に基づく取締りの有効性の検証を行ったページ。

