チャクラ

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各チャクラの位置
チャクラが描かれたヨーガ行者の図
19C初頭の彩色写本、大英図書館所蔵

チャクラサンスクリット語: चक्र)は、サンスクリットで「車輪・円」を意味する語。漢訳は「輪」(りん)、チベット語では「コルロ」(khorlo)という。インド起源の神秘的身体論における、物質的な身体(粗大身)と精微な身体(微細身)にある複数の中枢を指す[1]

ヨーガでの用法[編集]

ヒンドゥー教ヨーガでは、人体の頭部、胸部、腹部で、輪または回転する車輪のように光っているように感じられる箇所を言う。数は6または7箇所と言われるが、それとは別に8箇所あるという説もあるなど、一定ではない。画像では光る蓮華で表現される。猿であったときの尻尾の名残の尾てい骨から発生する蛇を、チャクラを通じて頭から出すのが目的といった見解がある。

第1のチャクラ
ムーラーダーラ・チャクラmūlādhāra-cakra)と呼ばれ、脊柱の基底にあたる会陰(肛門と性器の間)にある。「ムーラ・アーダーラ」とは「根を支えるもの」の意である。ヒンドゥー・ヨーガの伝統的なチャクラの図では、赤の四花弁をもち、地の元素を表象する黄色い四角形とヨーニ(女性器)を象徴する逆三角形が描かれている。三角形の中には蛇の姿をした女神クンダリニーが眠っている[2]
第2のチャクラ
スワーディシュターナ・チャクラsvādhişţhāna-cakra)と呼ばれ、陰部にある。「スヴァ・アディシュターナ」は「自らの住処」を意味する。朱の六花弁を有し、水の元素のシンボルである三日月が描かれている[2]
第3のチャクラ
マニプーラ・チャクラmaņipūra-cakra)と呼ばれ、腹部の臍のあたりにある。「マニプーラ」とは「宝珠の都市」という意味である。青い10葉の花弁をもち、火の元素を表す赤い三角形がある[2]
第4のチャクラ
アナーハタ・チャクラanāhata-cakra)と呼ばれ、胸にある。12葉の金色の花弁をもつ赤い蓮華として描かれ、中に六芒星がある。風の元素に関係する。「アナーハタ」とは「二物が触れ合うことなくして発せられる神秘的な音」を指す[2]
第5のチャクラ
ヴィシュッダ・チャクラviśhuddha-cakra)と呼ばれ、喉にある。くすんだ紫色をした16の花弁をもつ。虚空(アーカーシャ)の元素と関係がある。「ヴィシュッダ・チャクラ」は「清浄なる輪」を意味する[2]
第6のチャクラ
アージュナー・チャクラājñā-cakra)と呼ばれ、眉間にある。インド人はこの部位にビンディをつける。2枚の花弁の白い蓮華の形に描かれる。「アージュニャー」は「教令、教勅」を意味する。「意」(マナス)と関係がある[2]
第7のチャクラ
サハスラーラsahasrāra)と呼ばれ、頭頂にある。sahasra は「千」、ara は「輻」〔や〕で、1000葉の花弁を有する蓮華で表象される。一説に千手観音の千手千眼はこのチャクラのことという。他の6チャクラとは異なり身体次元を超越しているとも考えられ[1]、チャクラの内に数え入れられないこともある。その場合、サハスラーラはチャクラに含まれず、チャクラは6輪あることになる。

簡易的には背骨の基底部から数えて第1チャクラ、第2チャクラ……という呼び方もする。

チベット仏教の指導者であるダライ・ラマ14世は、その場所に心を集中すると何かしらがあるという反応が得られると述べている[3]

仏教タントラにおけるチャクラ[編集]

インド仏教の後期密教タントラ経典でもチャクラへの言及がある。チャクラの数や位置についてはいくつか異説があるが、一般に臍、心臓、喉、脳の4輪があるとされる。最上位はヒンドゥー・ヨーガのサハスラーラに相当する「ウシュニーシャ・カマラ」(頂蓮華)または「マハースッカ・カマラ」(大楽蓮華)である。他の3つは臍にある「変化身」(ニルマーナ・カーヤ)のチャクラ、心臓にある「法身」(ダルマ・カーヤ)のチャクラ、喉にある「受用身」(サンボガ・カーヤ)のチャクラであり、仏身の三身に対応している[1]

インド密教を継承したチベット仏教の無上瑜伽タントラでは以下のチャクラがあるとされる[4]

  • 大楽輪(頭頂)
  • 受用輪(喉)
  • 法輪(胸)
  • 変化輪(臍)
  • 守楽輪(秘密処=下丹田にあたる)

一説には、インド密教ヨガのタントラ経典やチベット密教カギュ派のタントラ経典などでは、身体には主要な7つのチャクラ(または6つのチャクラと1つの門)と、身体のあちこちにあるその他の小さなチャクラとがあるとされている。主要な7つのうち、会陰と頭頂を除く5つのチャクラは、脊髄に沿った5つのチャクラと、身体前面に沿った5つのチャクラとはそれぞれがになって繋がっているとされている(「タントラ密教経典」参照。なお、密教経典は門外不出とされている[要出典])。

  • 下位幽体のチャクラ(会陰)
  • 上位幽体のチャクラ(臍下約3cm)
  • 応身(変化身)のチャクラ(臍上約3cm)
  • 法身のチャクラ(胸)
  • 報身のチャクラ(喉)
  • 本性身のチャクラ(額)
  • 金剛身のチャクラ(頭頂)

チベット仏教ゾクチェンのラマであるナムカイ・ノルブの説明によれば、タントラ経典によってチャクラの数が異なるのは一貫性に欠けているわけではなく、基本的なプラーナのシステムの概念は共通しており、さまざまなタントラの修行においてそれぞれに異なったチャクラを使うため、それぞれのテキストでは必要なチャクラだけが書かれているのだという[5]

中国[編集]

中国の道家内丹術の伝統的な身体論には、インドのチャクラに比すべき丹田という概念があるが、近代の内丹術の中でも代の閔小艮の一派はヨーガの七輪の概念を取り入れている[6]

西洋への伝播[編集]

ヨーガの伝播とともにチャクラの概念も伝播した。数は7箇所で内臓の各部に当てられるようになった。また、その振動の周波数などを解明したとする研究者もいる。神智学協会神智学などにも概念が取り入れられた。

神経叢のチャクラと脊髄のチャクラ[編集]

チャクラは脊椎に関連するエーテル体にあるエネルギー・センター(渦)で、肉体の7つの内分泌腺及びメンタル体アストラル体、肉体の調整と活性化を司り、意識の中枢と各身体の中継点としての役割をはたしている。

現在のヒーリングなどの分野では、各チャクラに対応する体表のツボのことを指して「チャクラ」と呼んでいる。体表のツボは単にチャクラからのプラーナ)の出入口としての役割を果たしているにすぎず、チャクラではないが、ここでは便宜上体表のチャクラと呼ぶことにする。一方、伝統的なヨーガが伝えている「チャクラ」は、体表のチャクラではなく、人間のエーテル体に存在するほぼ脊柱に沿った7つのチャクラで、ここではこれを脊髄のチャクラと呼ぶことにする。しかし時代が下るにつれ、この脊髄のチャクラとは異なるチャクラの記述が現われるようになる。ここではこれを神経叢のチャクラと呼ぶことにする。実のところ主要な7つのチャクラのいずれのチャクラも、これら神経叢のチャクラと脊髄のチャクラが対をなして存在している。しかし現在に至るまで、この2つのチャクラの系統は明確な区別がなされていない。

古代のヒンドゥー教のヨーガでは、脊髄のチャクラが「チャクラ」とされてきた。不滅の身体をもち今も老いることなくヒマラヤで生き続けていると言われているマハー・アヴァター・ババジが、弟子たちに伝授したクリア・ヨガの伝統では、脊髄のチャクラに関する知識が伝わっている。20世紀前半、クリア・ヨガを初めて西洋に伝えたパラマハンサ・ヨガナンダは、著書『あるヨギの自叙伝』(森北出版)の中で、アナーハタ・チャクラの位置を『心臓の後にある胸椎中枢』としている。ヨガナンダの言うチャクラが脊髄のチャクラであることが分かる。またババジのクリヤー・ヨーガ(ヨガナンダのクリア・ヨガと本質的に同じものと思われる)の普及活動をしているマーシャル・ゴーヴィンダンは、著書『ババジと18人のシッダ』(ネオデルフィ)の中で、アナーハタ・チャクラの位置を「心臓の高さに当たる脊柱内にある」としており、ヨガナンダと同様である。

6-7世紀以降、タントラ教典が編纂された後の近代のヨーガでは、神経叢のチャクラについて言及するようになった。近代のヨーガの指導者として著名なスワミ・ヨーゲシヴァラナンダの著書『魂の科学』(たま出版)にはアナーハタ・チャクラの位置について、「このチャクラは、別名、心臓のチャクラとも呼ばれていますが、胸部の両肺に挟まれた心臓内にある微細な空間の中に位置しています。」という記述があり、ヨーゲシヴァラナンダの言うチャクラが神経叢のチャクラであることが分かる。

また、サマエル・アウン・ベオールの著書『完全なる結婚』(ノーシス書院)には、神経叢のチャクラと脊髄のチャクラの存在について、「原始ヒンズーヨギたちは、脊髄のチャクラとクンダリニーにすべての注意を払い、神経叢のエーテルチャクラには、ほとんど無関心であった。このことはにせ秘教家を驚かせた。」という記述がある。

以上からも、各々のヨーガ行者あるいは神秘家がチャクラの性質及びその位置について言及する場合、神経叢のチャクラあるいは脊髄のチャクラのいずれか一方についてのみ言及しており、各々のチャクラが、これら2つのチャクラと対をなして存在していること、及び、それらの位置と機能の違いについて、明確に区別し、自覚されていたとは考えにくい。

体表のチャクラは、先に述べたように本質的にチャクラではなく、チャクラからのプラーナ)の出入り口である。しかし、そのルートが浄化されていることが心身の健康とチャクラの覚醒の上で重要であるため、ヒーリングの分野において重視されている。一方、本来のチャクラは神経叢と脊髄のチャクラであり、神経叢のチャクラは、身体の交感神経系を支配するナディーと関連し、身体の運動的な活動を司っている。一方、脊髄のチャクラは、身体の副交感神経系を支配するナディーと関連し、精神的な活動を司っている。神経叢のチャクラと脊髄のチャクラは対になっており、意識の拡大の過程を通じて、下位のチャクラから順に覚醒していく。

ヴァレリー・ハントによるチャクラの部位の電位変動測定[編集]

カリフォルニア大学ロサンゼルス校の生理学名誉教授ヴァレリー・ハント (Valerie V. Hunt) は、人体のオーラの電気的研究において、チャクラと人体の電位変動の相関を調べた。ハントは被験者の体表でチャクラに相当する部位に筋電図用の電極をあてて、人体の微弱な電位変動の波形を記録した。

この研究においてハントは、それまでに記録も報告もされたことのない、サインカーブを描いて変化する規則的な高周波信号を発見したと主張した。その報告によれば、チャクラの部位で測定された波形はつねに100-1600Hzの範囲であり、正常な脳波、筋電図、心電図での電位変動が示す電気信号をはるかに超える高周波であったという[7]

脚注[編集]

  1. ^ a b c ミルチャ・エリアーデ 『エリアーデ著作集 第10巻 ヨーガ 2』 立川武蔵、訳、せりか書房、1975年ISBN 4-7967-0087-0
  2. ^ a b c d e f 立川武蔵 『ヨーガと浄土 ブッディスト・セオロジーV』 講談社〈選書メチエ〉、2008年。
  3. ^ F・J・ヴァレーラ、J・W.・ヘイワード 『徹底討議 心と生命』 山口泰司・訳、山口菜生子・訳、青土社、1995年、109頁。ISBN 4-7917-5382-8
  4. ^ 平岡宏一 『ゲルク派版 チベット死者の書』 学習研究社〈学研M文庫〉、2001年ISBN 4-05-901032-4
  5. ^ ナムカイ・ノルブ 『虹と水晶』 永沢哲訳、法蔵館、1992年。
  6. ^ 道教と仙学 第4章 各派の丹法の要訣
  7. ^ リチャード・ガーバー 『バイブレーショナル・メディスン』 日本教文社、2000年

参考文献[編集]

関連項目[編集]