スピリチュアリティ

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スピリチュアリティ: spirituality霊性)とは、霊魂などの超自然的存在との見えないつながりを信じる、または感じることに基づく、思想や実践の総称である。必ずしも特定の宗教に根ざすものではなく、普遍性、共通性を志向する概念である。

定義[編集]

現象学派心理学としての定義[編集]

現象学派心理学のElkinsら(1988)は、「スピリチュアリティ」を以下のように定義した[1]

  • 超越的次元の存在の自覚によって生じる存在・経験様式の一つであり、それは、自己、他者、自然、生命、至高の存在と考える何かに関する一定の判別可能な価値観によって特徴づけられる。

彼らは、この定義を行うにあたって、次の仮定を示している[2]

  • 仮定1. 人間の経験の中にはスピリチュアリティとしか呼びようのない次元がある。
  • 仮定2. スピリチュアリティは人間的現象であり、潜在的には誰にでも起こりうる。
  • 仮定3. スピリチュアリティは宗教と同じではない。
  • 仮定4. スピリチュアリティを定義し、それを評価する方法を開発できる。

さらに、彼らは、尺度を作って測定するために、「スピリチュアリティ」を九つの要素に分解して再定義している[3]

  • 1. 超越的次元の存在: 超越的次元、すなわち何かしら「見えない世界」の存在を信じ、それと繋がることで力を得ていると感じる。
  • 2. 人生の意味と目的: 人生には意味があり、存在には目的があると確信している。
  • 3. 人生における使命: 生への責任、天命、果たすべき使命があると感じる。
  • 4. 生命の神聖さ: 生命は神聖であると感じ、畏怖の念を抱く。
  • 5. 物質的価値: 金銭や財産を最大の満足とは考えない。
  • 6. 愛他主義: 誰もが同じ人間であると思い、他人に対する愛他的感情を持つ。
  • 7. 理想主義: 高い理想を持ち、その実現のために努力する。
  • 8. 悲劇の自覚: 人間存在の悲劇的現実(苦痛、災害、病気、死など)を自覚している。そのことが逆に生きる喜び、感謝、価値を高める。
  • 9. スピリチュアリティの効果: スピリチュアリティは生活の中に結実するもので、自己、他者、自然、生命、何かしら至高なる存在等とその個人との関係に影響を与える。

宗教現象としての定義[編集]

1990年代以降に台頭してきた新しい宗教現象について、既存の組織的な宗教と対置させる意味で、「スピリチュアリティ」という語を用いて研究する試みが多くなった。イギリスの宗教社会学者ジェームズ・アーサー・ベックフォード(James A. Beckford)は、宗教組織にとどまらず医療や教育などの分野にも浸透し発展しているこの現象を「新しいスピリチュアリティ」として考察した[4]。日本でも、1970年代後半から90年代前半になされた新宗教研究、90年代の半ばになされた精神世界ニューエイジの研究に続き、現代宗教研究の第三波として「スピリチュアリティ」が位置しており、島薗進などがその分析にあたっている[4]。本稿では、主にこの「新しいスピリチュアリティ」とその系譜について解説している。

社会現象および既存宗教との関係[編集]

スピリチュアリティは、社会現象としてみると、占い瞑想などとの関係が深く、「霊魂はいると思うけど宗教団体に所属して信仰を持つつもりは無い」というような人々の心的態度や実践である。その意味で、スピリチュアリティとは、非宗教分野での擬似宗教的な実践や、組織性を有さない擬似宗教的な思想と見ることができる。もちろん、このことは宗教団体に所属している信者がスピリチュアリティを有することを妨げない。むしろ、スピリチュアリティは「霊性」や神秘主義という概念と親和性があり、宗教の基盤や根底をなすものであると考えることができる。職業宗教家や知識階級層に限定されない、より幅広い市民の関心を支持を持ちうることが、スピリチュアリティの真骨頂といえよう。[要出典]

スピリチュアリティについては自然崇拝アニミズム的な感覚への回帰や、教祖や先生に指導されるのでなく自分自身が神や自然に繋がっていくことを回復していく流れであり、これについては先祖がえりと考えるか、より精神性が向上しているとみるかについて議論が分かれることとなっている。[要出典]

また、宗教団体構成員やスピリチュアリティを支持する人間の一部には、精神性が向上したことにより己の「魂の位があがった」としスピリチュアルを否定する人間を「魂の位が低い人間」として非難する者もいるが、これは「スピリチュアル・エゴ」という用語で呼ばれている状態だと評価する人もいる[誰によって?]

スピリチュアリティと宗教の違い[編集]

スピリチュアリティと宗教の違いには、このような表現方法も存在している。「宗教は傷ついた小鳥を保護し癒した後にかごの中に閉じ込めてしまう。」「スピリチュアリティは小鳥を保護し癒した後にかごから外に逃がしてくれる。」[誰によって?]これは、スピリチュアリティの目指すものが個々人の自立であり、宗教勧誘を目的としたものでないということがいえるからだ。また、このような表現もある。「宗教はアフリカ難民に食糧援助をして依存させてしまう。」「スピリチュアリティはアフリカ難民に魚の釣り方や小麦の作り方を教えて自立させる。」。

以上の説は島薗進などがとなえる説であるが、同様のものとする意見もある[要出典]

学術的研究[編集]

スピリチュアリティは宗教学、文化人類学、心理学、代替医療などが相互に関連しあう分野である。[要出典]

宗教学や宗教社会学の分野では、島薗進などの宗教学者の研究も古くから注目を集めてきた。近年では、「宗教と社会」学会スピリチュアリティ研究プロジェクトの代表研究者である弓山達也樫尾直樹などとスピリチュアルデザイン研究所を中心とした研究グループをスピリチュアリティ学派と呼ぶことがある[誰によって?]。また、非宗教分野での擬似宗教的な実践としてのスピリチュアリティへの関心は、非宗教分野での研究者からも広く注目[誰によって?]されるようになっている。

また、スピリチュアル・コンベンション(すぴこん)などのイベントでは、カルト団体や霊感商法を排除しつつスピリチュアリティに接しようとする取り組みが見られる。最近ではスピリチュアル110番も設置された。その取り組みに関して、島薗進、樫尾直樹が「社会的に必要な要素もあり条件付ながら見守っていきたい」などと論評を寄せている。

その一方で、そういった仕組みの成立や取り組みは困難であり、カルト教団や霊感商法の店舗を完全に排除し、トラブルを回避することは難しいとの指摘もある[要出典]

さらに、磯村健太郎の著書『〈スピリチュアル〉はなぜ流行るのか』がある。心理学の面からの取り組みとして、ユング心理学の河合隼雄[要出典]、トランスパーソナル心理学の諸富祥彦らがいる。

出典[編集]

  1. ^ Elkins, D. N.; Hedstrom, L. J.; Hughes, L. L.; Leaf, J. A.; Saunders, C. (1988). “Toward a Humanistic-Phenomenological Spirituality Definition, Description, and Measurement”. Humanistic Psychology 28 (5-18): 10. doi:10.1177/0022167888284002. 
  2. ^ Elkins, D. N.; Hedstrom, L. J.; Hughes, L. L.; Leaf, J. A.; Saunders, C. (1988). “Toward a Humanistic-Phenomenological Spirituality Definition, Description, and Measurement”. Humanistic Psychology 28 (5-18): 8. doi:10.1177/0022167888284002. 
  3. ^ Elkins, D. N.; Hedstrom, L. J.; Hughes, L. L.; Leaf, J. A.; Saunders, C. (1988). “Toward a Humanistic-Phenomenological Spirituality Definition, Description, and Measurement”. Humanistic Psychology 28 (5-18): 10-12. doi:10.1177/0022167888284002. 
  4. ^ a b 星野英紀,池上良,氣多雅子,島薗進,鶴岡賀雄 『宗教学事典』 丸善、2010年、21頁。ISBN 4621082558

関連項目[編集]

外部リンク[編集]