鳩
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鳩(はと)は、ハト目・ハト科に属する鳥類の総称である。 体に比べて頭が小さく、胸骨、胸筋が発達してずんぐりとした体型が特徴である。 日本に生息する鳩には、アオバト、カラスバト、キジバト、シラコバト、ドバトなどが知られている。 このうちドバトはカワラバトの飼養品種が再野生化したものとされ、野鳥とはみなされないこともある。
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生物として [編集]
鳩という名前はパタパタと飛び立つときの音の様子に由来すると考えられる。「鳩」(九+鳥)の字にある(九)は鳴き声(クルッククゥー)からきた、とする説がある。「鳩」の中国語の発音であるキュウ(漢音)やク(呉音)は、英語のハトの鳴き声<coo>(クウ)、日本語のハトの鳴き声「クウクウ」に近い。 「ハト」の名は、軽やかに羽ばたく音「ハタハタ」から、ともいう。また、漢和字典では「球」(中心に引き絞られた形)と同源としている。現代中国では「鴿子」(正体字)「鸽子」(簡体字)という。拼音は「gēzi」。
食性は雑食性である(木の実やミミズを食べる)。鳩のヒナは孵化(ふか)後一定期間、鳩ミルク(ピジョンミルク)と呼ばれる親鳥の半消化物を主食として成育する。ひなは親鳥の喉にくちばしを差し入れて胃の内容物を摂取する。巣から落ちた鳩のひなを人工飼育するには、植物性の練り餌(釣具屋で売っているフナや鯉釣り用の練り餌が安価で簡便である)をぬるま湯でかゆ状に溶き、手のひらに握りこんで指のすき間から与えるのが簡単な飼育法である。
飼育史 [編集]
ハトはおおよそ10000年から6000年ほど前の新石器時代に飼育動物化されたと考えられている。ハトは人里に近い土地で営巣する動物であり、洞窟や崖、そして泥や石で造られた初期人間の住居に巣を作っていた。当時中東において栽培が始まったコムギやオオムギなどもハトの食料として好適であった。こうしてハトと人間の距離がちぢまったのち、ハトの飼育化がはじまった。当初は神経質な成鳥にくらべ人に慣れやすく飼いやすいハトの雛を成長させる目的で飼育がはじまり、やがて家禽化していったと考えられている[1]。
紀元前2900年ごろにシュメールのシュルッパクにて起こった大洪水はシュメルの洪水神話として後世に残され、『ギルガメシュ叙事詩』や旧約聖書のノアの方舟の話の原型となったが、『ギルガメシュ叙事詩』においてすでに陸地を探すためにハトをはなした話が記載されており、このころにはハトが飼育されていた証拠とも考えられている。紀元前4500年ごろのイラクのアルパチャにおいてハトのテラコッタの像が出土しており、ハトが宗教上重要視されていたことをものがたっている。古代エジプトにおいてもハトは飼育されていた。やがてハトの飼育は地中海へと広がり、古代ギリシャの各都市やエトルリア人にも広まった。ローマ帝国においてはハトは宗教上重要な意味を持つ一方、肥育されて食用としても盛んに用いられた[2]。
人との関係 [編集]
ハトはまた、通信用の伝書鳩としても古代から盛んに使用された。カワラバトを改良したドバトは、戦前・戦中の軍事用、戦後の一時期には報道用に伝書鳩として大いに活用された。地磁気などにより方角を知る能力に優れているとされ、帰巣本能があるため、遠隔地まで連れて行ったハトに手紙などを持たせて放つことによって、情報をいち早く伝えようとしたのである。しかしその後、電話などの通信技術の進歩によりその価値を失い、現在ではレース鳩として飼われることがほとんどである。
このほか銀鳩と呼ばれる白い小型のハトが存在し、観賞用に飼われたりマジックの小道具として使用されるが、これはドバトとは別種のハトである。
文化 [編集]
ハトは、その群れを成す性質から、オリーブと共に平和の象徴とされている。
これは旧約聖書のノアの箱舟の伝説にも由来している。ノアは47日目にカラスを放ったが、まだ水が乾く前であったからすぐに戻ってきた。ハトを放ったところ、オリーブの葉をくわえて戻ってきた。これによりノアは水が引き始めたことを知ったという。平和の祭典とも称される近代五輪の開会式では、かつては実際に鳩が飛ばされていたが、モニター映像によるものに変わった。
また、ギリシア神話においてハトは、愛と美の女神アプロディーテーの聖鳥とされていた他、イアーソーンを始めとする英雄たち(アルゴナウタイ)が乗るアルゴー船が、互いに離れたりぶつかり合ったりを繰り返す二つの巨岩シュムプレーガデスの間を通り抜ける際、試しにハトを通り抜けさせて安全を確認するエピソードや、狩人オーリーオーンがプレイアデス(巨神アトラースの七人娘たち)を追い回した際、それを不憫(ふびん)に思った主神ゼウスが彼女たちをハトに変え、さらに星へと変えたエピソード等が存在する。
日本 [編集]
日本では、神使として(八幡さまのハトといわれるように)いにしえより親しまれてきたが、八幡神は戦の神様で、かならずしも平和とは直接結びつかなかった。戦後西洋的価値観が入ってきて、タバコのピースのデザインのようにハト=平和のシンボルと言うイメージが定着した。
日本の童謡の代表的なものの一つとして『鳩』が挙げられる。また、滝廉太郎は『鳩ぽっぽ』という童謡を作曲している。
あっけにとられた様子を指して日本では、「ハトが豆鉄砲を食ったよう」という言葉を用いることがある。
ハトの名前は特急列車の名称などに用いられ親しまれたことがある他、日本テレビのジャンクション『鳩の休日』にも長年(開局〜)ハトが登場している。また、神奈川県の銘菓のひとつに、「鳩サブレー」というハトの形を模した菓子も存在している。
企業名やシンボルマークでハトにちなんだものとしては、例えばはとバスや、イトーヨーカ堂のロゴマーク(真上に青と真下に赤の中間にシロバトの位置)が存在し、また滋賀県を中心に展開するスーパーチェーンの平和堂のロゴマーク(赤い背景に前にシロバトと後にアオバトの位置)として親しまれていたこともある。後述の外国語名から取られた企業名として、ベビー用品メーカーのピジョン、ガス機器メーカーのパロマなども挙げられる。
日本では1980年代あたりから都市部を中心にハトによる食害や糞害が多発し、問題化している。もともと都市部に生息する野鳥はヒトに肺炎を起こすオウム病クラミジア(原虫)やクリプトコッカス(カビの一種)を含んだ糞を排出しやすく、特に大群をなすハトはそれを排出しやすい。公園などでの餌付け行為にも賛否がある。
イングランド [編集]
イングランドでは、胸の筋肉を異常に発達させたポーターという愛玩具用の品種の鳩やw:Fancy pigeonという観賞用のハトの品種群が存在する(w:pouterを参照)。
中国 [編集]
中国では鳥を放つと幸運が訪れるという民間信仰があり、祭事・祝い事の際にはハトを放つ習慣があったが、現在では都市部でハトが繁殖してしまっているため、放鳥が禁止されている地域もある。
食用 [編集]
食文化としてドバトは中国では普通に食用にされる。また、フランスでもハトは食材として一般的である。ギリシャやレバノン、エジプトなど地中海沿岸諸国においてハトはよく食される[3]。イギリスでも18世紀頃までは自然繁殖した物を捕らえて調理したものが一般的に食卓に上っていたといわれ、現在でも食文化中にそのなごりがみられる。中近東では古くより、乾燥した風土でも放し飼いでよく増える性質があるため、ハトのための養殖場(塔のような建造物)もあり、貴重な動物性蛋白源として、一般的に利用されている。鳩の塔(ピジョン・タワー)と呼ばれるこの塔は、高さは10mから15mほどで、場所によってスタイルが違う。イランのイスファハーン周辺においてはひとつおきに積んだ日干しレンガを高く積み上げ、ハトの休息できる無数の空洞を作る。ここにハトがやってきて営巣するのである。その外側はぐるりと日干しレンガの壁によっておおわれており、内部構造は見えなくなっている。外壁にはいくつかの穴があけられており、そこからハトは出入りする。エジプトにおいては中は空洞で、そのかわりに止まり木が何段も差し込まれ、これがハトの巣となっている。イランにおいてのピジョン・タワーの主目的は肥料としてのハトの糞の収集であり、そのため化学肥料の普及後は利用されることはなくなっている。これに対しエジプトのピジョン・タワーは食用ハトの飼育を目的としており、現在でも使用されている。糞ももちろん肥料として使用するが、二義的なものである[4]。エジプト料理においてはハトは一般的な食材の一つとなっている。
日本では一般的には鳩を食用とすることはまれである。初めて日本にきた中国人はしばしば、野生のハトを誰も捕まえようとせず、ハトも人を恐れないことに驚く。日本の都市部でもかつては経済的に困窮した人が野鳥や野犬を捕らえて食べることがままあったが、現代の日本において野鳥を狩猟することは鳥獣保護法で規制されている。また様々な物を食べる野生種は家禽より味に癖があり、誰でも容易に鶏肉を購入できる現代の日本人はハトを捕獲する動機に乏しいとおもわれる。ただし食用に肥育したハトの胸肉は、高級食材として流通している。また、キジバト(山鳩)は狩猟鳥であり、食用にされる。
ハトの卵はハトの肉と同様日本では食材として一般的ではなく、ほとんど食べられることはないが、中国では食用とされる。ハトはニワトリほど頻繁に卵を産まないため、ハトの卵の価格はニワトリの卵と比べると高価であり、高級食材として扱われている。
首振り歩行 [編集]
ハトは歩行時に首を前後に振りながら歩くことで知られている。この動作はハト科以外の多くの鳥でも見られるが、ハト(特にドバト)は、警戒心が非常に弱く、歩いている状態で身近に見かける機会が多いため、多くの人々から「首を振る鳥」として認知されている。
この首振り歩行は、暗闇や、ベルトコンベア上を逆向きに歩かせたときは行われず、胴体が前進しているときでも頭部だけはなるべく長時間にわたって空間内で静止するよう首を前後させているため、視覚情報(あるいは聴覚、平衡感覚なども)を安定して得られるように行われているものと考えられている。また、首振りのタイミングは、体重を片脚で支えている間も重心が安定する位置に来るようになっている。それゆえに「安定して歩行するため」という説もあるが、ハトも高速での歩行時では首振りを行わないため、やや疑わしい。
各国語での呼び名など [編集]
- pigeon (ピジョン) / dove (ダヴ)
- 英語において、ノルマン人からの借用語である pigeon は主に飼いバトを、ゲルマン語由来の dove は野生バト、とりわけコキジバト(turtle dove)を指すが、現在はアメリカなどでは pigeon で一括してしまうことも多い。また詩語としては dove が好んで使われる。
- paloma (パロマ)
- スペイン語でハトの意味。パロマを参照。
- Taube (タウベ)
- ドイツ語。英語 dove と共通の祖語(再構形: *dubon)をもつ単語。
- 鴿子/鸽子(コーツ、gēzi)
- 現代中国語では「鳩(鸠)」という字は用いない。なお、「鳩(鸠)」「鴿(鸽)」ともに、鳩の鳴き声に由来する音字であるとされる。
脚注 [編集]
- ^ 『ケンブリッジ世界の食物史大百科事典2 主要食物:栽培作物と飼養動物』 三輪睿太郎監訳 朝倉書店 2004年9月10日 第2版第1刷 pp.645-646
- ^ 「家畜の歴史」p528 F.E.ゾイナー著 国分直一・木村伸義訳 1983年6月30日初版第1刷 法政大学出版局
- ^ 「アフリカを食べる」p204 松本仁一 朝日新聞社 1998年8月1日第1刷発行
- ^ 「沙漠に緑を」pp85-88 遠山柾雄著 岩波新書 1993年6月21日第1刷
関連項目 [編集]
- 鳥の一般名の記事
カタカナ名の記事が自然科学的な内容を中心とするのに対し、一般名の記事では文化的な側面や人との関わりなどについて解説する。