カラス

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カラス
ワタリガラス
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: スズメ目 Passeriformes
亜目 : スズメ亜目 Passeri
上科 : カラス上科 Corvoidea
: カラス科 Corvidae
階級なし : “カラス”
和名
カラス(烏・鴉)
ワタリガラスの上半身。
ハシブトガラスが飛び立とうとしているところ。

カラス、鵶、雅)は、鳥類カラス科の1グループ。カラス属 Corvus[1][2]または近縁な数属[3]を含む。

多くは全身が黒く、黒い鳥の代表とみなされ、などではよく白いサギと対比させられる。ただし、実際は、白黒2色のコクマルガラス、暗褐色に白斑のホシガラスなどもおり、必ずしも真っ黒のものだけではない。

種類[編集]

カラスは、最も広義にはスズメ目カラス科の総称だが、通常はその一部とされる[4]。最も広義のカラス、つまりカラス科は、通常のカラスのほか、カケス類、サンジャク類、オナガ類、カササギ類などを含む。

カラス科内でのカラスの範囲は、狭義にはカラス属、広義にはそれに近縁な数属とされる。ただしコクマルガラス属 Coloeus は、独立属とするかカラス属に含めるか論争があるがそれにかかわらず、「カラス属」とされる最も狭義のカラスにも含められるようである[1][2]

カラス科の中で標準和名に「カラス」(または「ガラス」)がある種は、

に含まれる。また、カササギ属カササギは、標準和名には「カラス」はないが、カチガラス、コウライガラスの異名を持つ。

これらのほとんどは、かつてはカラス属に近縁だろうと考えられていた[5]。しかし実際は、ホシガラス属・コクマルガラス属はカラス属に近縁(●を付けた)だが、ソデグロガラス属・サバクガラス属・ベニハシガラス属は離れており(○を付けた)、中でもベニハシガラス属はカラス科の中で最初に分岐している[6]

カラス科


ベニハシガラス属 Pyrrhocorax



タイワンオナガ属 Dendrocitta



ラケットオナガ属 Crypsirina など





サンジャク・ヘキサン類




アカオカケス属 Perisoreus



オナガ属 Cyanopica




ソデグロガラス Zavattariornis




アフリカサンジャク Ptilostomus



サバクガラス属 Podoces




カササギ属 Pica



カケス属 Garrulus




ホシガラス属 Nucifraga




コクマルガラス属 Coloeus



カラス属 Corvus






New World jays





カラス科以外では、ウミガラスオオウミガラス(共にチドリ目ウミスズメ科)、チシマウガラスペリカン目ウ科)、カワガラス(スズメ目カワガラス科)、ハゴロモガラス(スズメ目ムクドリモドキ科)、ハイイロモズガラスフエガラス(共にスズメ目フエガラス科)などもいるが、生物学上のカラスの仲間とはみなされない。ただし、スズメ目シジュウカラ科ヒメサバクガラスは、かつてはサバクガラス属に近縁だと考えられ、カラス科に含められていた。

[編集]

和名に「カラス」が含まれるカラス科の現生種をリストする[7]

カラス属[編集]

ハシボソガラス
ミナミコガラス
ソロモンガラス

近縁な属[編集]

近縁でない属[編集]

分布と各地での呼称と種類[編集]

ハシボソガラスはユーラシアに広く生息するが、ハシブトガラスの分布は東アジア南アジアに限られる。ヨーロッパでは、ハシボソガラス (carrion crow)、ワタリガラス (common raven)、ミヤマガラス(rook)、ニシコクマルガラス (jackdaw) などが分布する。

英語での区別と呼称[編集]

レイヴンとクロウ[編集]

英語では、カラス属のほとんど(ミヤマガラスを除く)は、crow(クロウ)と raven(レイヴン)に別れる。これらは、分類学的な差異はないものの区別すべき別の鳥とみなされている[8]

おおまかに言って、カラス属の大型種は raven、小型種は crow に分類される。また、大きさほど顕著な違いではないが、尾の形も異なり、raven は扇型、crow は楔型をしている[8]。日本のハシボソガラスとハシブトガラスは共に crow に分類される。

英語のそれらを和訳する際(特に文学作品)には、ハシボソガラス等を指す crow と区別して、raven を「大ガラス」と訳すことがある。エドガー・アラン・ポーの詩「大鴉」はその一例である。ただし、近年では raven を「ワタリガラス」と訳したり、そのまま音読で記す場合も多い。

その他の英語呼称[編集]

カラス属のうちミヤマガラス1種だけは、大きさは crow の範囲だが rook(ルック)とされる。

コクマルガラス属コクマルガラスニシコクマルガラス)は、カラス属の呼称と異なり jackdaw(ジャックドー)とされる。jackdawcrow よりさらに小さい。

ソデグロガラス属唯一の種ソデグロガラスは、かつては Stresemann’s Bush Crow という名だったが、crow ではないとして Stresemann’s Bushcrow に改名された[9]

ホシガラス属nutcrackerベニハシガラス属chough とされる。明色のサバクガラス属は、カケスの仲間の jay に含められる。

日本での分布と呼称[編集]

日本で日常的に見られるカラス属のカラスは、留鳥ハシブトガラスハシボソガラスの2種である。日常語ではこれらの全身が黒いカラスを通常は区別することはない。

渡り鳥では、北海道にワタリガラス、九州にミヤマガラスコクマルガラスが冬鳥として飛来する。迷鳥ニシコクマルガラスイエガラスを含めると、計7種が記録されている。

カラス属以外では、ホシガラスが山間部に生息する。

生態[編集]

ハシブトガラスの飛翔。

ハシブトガラスの場合、翼長は32–39cm。

鳥類のなかでも最も知能が発達しているとされる。ある程度の社会性を持っており、協力したり、鳴き声による意思の疎通を行っている。遊戯行動(電線にぶら下がる、滑り台で滑る、の斜面を仰向けで滑り降りるなど)をとることも観察されている[10]4色型色覚で色を識別でき、人間と同じRGBに加えて紫外線も識別できる。人間の個体を見分けて記憶したり、植物家畜ペットを含む哺乳類・鳥類などを区別して認識できるといわれている。詳細は「知能」の項目を参照。

食性[編集]

雑食性で生ゴミや動物の死骸をついばんでいるところがよく目撃される。都市部では食物を得るためにごみ集積所を荒らすという行動や、農耕地では農作物を食害するという行動が問題となっている。その他にも昆虫類、小動物(小型哺乳類、鳥類の卵や雛、爬虫類両生類ザリガニなど多数)果実、種子、動物の糞なども食べる。ハシブトガラスは動物食傾向、ハシボソガラスは植物食傾向が強い。獲得した食物を物陰に隠し、後で食べるという貯食行動も行う。大型鳥類ということもあり、都市部では、最も馴染みのある鳥類であるドバトを捕食する場面も稀に確認される。

繁殖・営巣[編集]

針金ハンガー入りの巣

繁殖期は春から夏で、一夫一妻制で協力して子育てを行う。巣は樹上に小枝を組んで作るが、最近では電柱や看板などに営巣することもあり、またの材料も針金プラスチックなどさまざまなものを利用するようになっている。電柱送電塔に針金類で営巣した場合、しばしばショートの原因となり、問題となっている。

営巣期間中は縄張り意識が強く、不用意に巣に近づいた人間や動物への威嚇・攻撃行動が見られる。基本的に、まず鳴き声によって威嚇をし、それでも侵入者が立ち去らない場合、相手の頭上近くまで舞い降りてサッと上昇する行動を繰り返す(テレビ番組等ではこれを「攻撃」と表現することがあるが、実際は威嚇の一種である)。攻撃行動の多くは、「後ろから頭を蹴りつけるか、頭髪をつかんで引っ張る」というものであり、怪我をした例は全体の17%であったという報告がある[11]

抱卵期間は20日前後、巣立ちまでの期間は30–40日程度。産卵数は2–5(ハシブトガラス)ないし3–5(ハシボソガラス)程度。

群れの形成[編集]

巣立ち後も2–3ヶ月程度は家族群れを組んで生活する。その間に子カラス達は自分らで餌を集め親カラスに与える。育ての親に恩返しをしたうえで独り立ちをする。[要出典]

成鳥はつがいでほぼ一年中固定された縄張りを持つが、若鳥は群れで行動する。群れも仲間が窮地に陥ると他のカラスが助けに入ることもあるらしく、カラスを仲間のカラスが助けようとしている姿が目撃されている。[要出典]

繁殖中のつがいは巣の周辺でねぐらをとることが多いが、それ以外の個体は夜間人が立ち入ることのないよく茂った林や竹林に集団ねぐらをとる。

知能[編集]

前述のように昔から知能の高い動物として知られており、イソップ寓話には、瓶の中で水に浮く餌を取り出すために石を沈めて水位を上げる『カラスと水差し』(en)という話が伝承されているなど、霊長類に匹敵する問題解決能力や観察力を有している。例としては

  • ハシボソガラスがまた、硬くて自身の嘴だけでは砕けないものを飛行場滑走路防波堤建物屋上などの硬い場所に落として割る行動が見られ、広島県では、カキ貝を落とす例もある[12]。それだけには留まらず、道路にクルミを置き、自動車にひかせて殻を割るという行動が、仙台市の青葉山をはじめ、日本の至る所で報告されている[13]
  • 1996年神奈川県鉄道レール上にハシボソガラスが石を置くという事件が頻発した。「JRの人間に巣を撤去されたことに対する復讐として、列車を転覆させようとしたのでは」と言われたこともあったが、実際は敷石の下にパンを貯食した際にくわえ上げた石を偶然レール上に置き、それを放置することで起きていたというのが真相であった[14]
  • 簡単な道具を使ったり、巣作りに工業製品の廃物を利用する。使うだけではなく、カレドニアガラスのように、小枝を加工し道具を作る例もある[15][16]
  • 雛の時期から人間に飼育された個体は、キュウカンチョウなどのように、人間やの声などを真似ることもできるようになる。

また、宝飾品ガラス製品を収集するなど、繁殖・生命維持に無関係と思われる行動も行う。

天敵[編集]

カラスは大型鳥類のため天敵はあまり存在しないが、オオタカの中にはカラスを頻繁に捕食する個体が存在し[17]、その他の猛禽類キツネなども稀にカラスを捕食することがある。だが、カラスはこれらの天敵から逆に獲物を横取りしたりすることも多く、また猛禽類に対しては頻繁にモビングを行う[18]

卵や雛はアオダイショウなどに捕食されている可能性もある[17]ほか、フクロウが実際にカラスの雛を捕食した例もある[14]

このほか、同種のカラスが他の卵や雛、衰弱した個体を共食いすることも多い[19][17]

鳥類ではないカラスと名のつく生物[編集]

利用[編集]

日本では、ミヤマガラス・ハシボソガラス・ハシブトガラスは、鳥獣保護法により猟期に猟区で適法な方法にて捕獲する場合を除き原則として捕獲が禁止されている。

食肉[編集]

カラスの肉は食用には適さないと考えられがちだが、中には食用にする地域・文化もあり、鯨肉などに近い味という意見もある。

2003年の報道によると[20]帯広畜産大学畜産科学科関川三男助教授[21]らのグループが、カラスの食用化を探る研究を進めている。研究は、将来の食糧難対策と、有害鳥獣として処分されるカラスの有効活用にメドをつけるのが目的。カラスの胸肉は、鯨肉にも豊富に含まれるミオグロビンと呼ばれる色素が多く、赤みが強いのが特徴。食感や味はの胸肉に似ており、学生に食べさせたところ、評判も上々だったという。また、関川の報告によると、カラスの肉に残留した重金属や農薬などもなく、微生物検査においても問題がなかったために、食肉としての安全性も認められるとされている[22]。その他に、カラスの肉は鶏肉と比較して鉄分が高いことが分かっている[22]

ハシボソガラスの肉に関しては調理に創意工夫を重ね、近年ではフランス料理などにも登場している。味は想像以上に美味であるとのこと[22]

羽根[編集]

チェンバロのジャックの爪は元々鳥の羽根を使い、元気なカラスが飛び去ったあとに落ちた羽をオリーブオイルで浸けたものが一番よいとされている。

神話・伝承[編集]

太陽の使いや神の使いという神話や伝承が世界各地にある。元は違う色だったカラスの羽毛が、何らかの原因で真っ黒になってしまった、という伝承が世界各地にある。

視力が高い、見分ける知能もあるということから「炯眼慧眼」とされ、神話や伝承において斥候や走駆や密偵や偵察の役目を持つ位置付けで描かれることが多い。

日本[編集]

八咫烏

信仰[編集]

熊野牛王符(熊野速玉大社

カラスは古来、吉兆を示す鳥であった。神武天皇東征の際には、3本足のカラス「八咫烏(やたがらす)」が松明を掲げ導いたという神話がある。日本サッカー協会のシンボルマークはこの八咫烏である。

この言い伝えから、八咫烏やカラスは家紋としても利用されており、有名なところでは熊野の雑賀党鈴木氏が存在する。

カラスは熊野三山御使いでもある。熊野神社などから出す牛王宝印(ごおうほういん=熊野牛王符)は、本来は神札であり、近世には起請文を起こす用紙ともされたが、その紙面では、カラスの群れが奇妙な文字を形作っている。これを使った起請を破ると、熊野でカラスが3羽死に、その人には天罰が下るという。また、「誓紙書くたび三羽づつ、熊野で烏が死んだげな」という小唄もある。

長野県北信地方に伝わる「烏踊り」といわれる民謡踊りがあり、足さばきにおいて九種類の型を繰り返すことから、修験者である山伏が唱えた呪法である九字切り(九字護身法)を手ではなく足で行ったとされる。このことと、山岳信仰を起源に持つ修験道では、「カラスは神の使い」とされてきたことと合わせて、この烏踊りは山岳信仰に基づく烏に対する信仰と修験者の踊りが、民謡になっていったと考えられている。

カラスの色[編集]

また神話・伝説上では通常、生物学的に知られているカラスとは違い・特徴違いのカラスが存在する。それらは、吉祥と霊格の高い順に八咫烏赤烏青烏蒼烏白烏が同等とされている。

民話のひとつには次のようなものがある。「カラスは元々白い鳥だったが、フクロウ染物屋に綺麗な色に塗り替えを頼んだところ、黒地に金や銀で模様を描けば上品で美しく仕上がると考えたフクロウはいきなりカラスの全身を真っ黒に塗ってしまい、怒ったカラスに追い掛け回され、今ではカラスが飛ばない夜にしか表に出られなくなった。カラスはいまだにガアガアと抗議の声を上げている」というものがある。別に伝わる民話では「欲張りなカラスの注文に応じて様々な模様を重ね塗りしていくうちに、ついに真っ黒になってしまった」というものもある。

中国[編集]

日本を始めとし中華文明圏の周辺国に伝わる3本足のカラスという外形そのものは、中国起源の「日烏」である。中国では古来、太陽にはカラス、月にはウサギまたはヒキガエルが棲むとされてそれぞれの象徴となった。月日のことを「烏兎(うと)」と呼ぶ用例等にこれが現れている。足が3本あるのは、中国では奇数は陽・偶数は陰とされるので、太陽の象徴であるカラスが2本足では表象にずれが生じるからである。このカラスの外形の起源に付いては、黄土の土煙を通して観察された太陽黒点から来ているのではないかとする説がある。清朝においては、太祖がカラスに命を救われた逸話に基づき神聖な動物として尊重された。

イギリス[編集]

ワタリガラス

イギリスでは、アーサー王魔法をかけられてワタリガラス(大ガラス)に姿を変えられたと伝えられる。このことから、ワタリガラスを傷付けることは、アーサー王(さらには英国王室)に対する反逆とも言われ、不吉なことを招くとされている。また、ロンドン塔においては、ロンドンの大火の際に大量に繁殖したワタリガラスが時の権力者に保護され、ワタリガラスとロンドン塔は現在に至るまで密接な関係にある。なお、J.R.R.トルーキンホビットの冒険作中に、ワタリガラス(原文は Raven。訳書によってはオオガラス)の一族が登場するが、これも英国王室に少なからぬ関係を持つワタリガラスを尊重しての登場だと言われている。ただし、指輪物語にも登場するクレバインと呼ばれる大鴉たちはむしろ邪悪の陣営の走駆としての役どころである。

ケルト神話[編集]

ケルト神話に登場するバズヴ、ヴァハネヴァンの三位一体の女神(戦いの神)とされるモリガンは、戦場にワタリガラスの化身となって表れる。もしくは、肩にカラスが留まっている姿で描写されたり、三位の一つであるバズヴがカラスの化身であるとされるなどとして、伝承される神である。神といっても清廉や崇高な印象ではなく、戦場に殺戮と死をもたらすものとして描かれることが多い。

北欧神話[編集]

北欧神話では、主神であり、戦争を司るオーディン斥候として、2羽のワタリガラスフギン(=思考)とムニン(=記憶)」が登場する。このワタリガラスは世界中を飛び回り、オーディンに様々な情報を伝えているとされる。

ギリシア神話[編集]

アポロンとカラス

ギリシア神話では太陽神アポロンに仕えていた。色は白銀(白・銀とも)で美しい声を持ち、人の言葉も話すことができる非常に賢い鳥だった。

しかし、ある時にカラスは、天界のアポロンと離れて地上で暮らす妻コロニスが、人間の男であるイスキュスと親しくしている(見間違いとも)とアポロンに密告(虚偽の報告とも)をした。アポロンは嫉妬し怒り、天界から弓矢を放ちコロニスを射抜いてしまった。

死ぬ間際に「あなたの子を身ごもっている」と告げたコロニスの言葉に、我に返ったアポロンは後悔し、きっかけ(密告した・虚偽の報告をした)を作ったカラスに行き場の無い怒りをぶつけ、その美しい羽の色と美声と人語を奪った。カラスは天界を追放され、喪に服すかのように羽は漆黒に変わり、声も潰れて、言葉を話すどころか、醜い鳴き声を発することしかできなくなった。

異説

異説として、アポロンの走駆密偵または水くみの仰せをつかったカラスが、地上で道草をしてしまい地上の状況の報告または水くみが遅れ、「嘘をついて言い訳をした」または「コロニスとイスキュスの密会をでっち上げた」というものもあり、水くみについては、仕えたカラスの死後、天上星座としてかたどったとしながらも、コップ座がちょうどからす座の嘴(くちばし)に届かない微妙な位置にあることから、水くみの異説を裏付けるものとして捉えられている。

エジプト[編集]

古代エジプトでは太陽の鳥とされた。

メソポタミア[編集]

メソポタミアを中心に旧約聖書・『創世記』5章から10章でも伝わる世界を襲った大洪水の後に、『創世記』8章7節において、炯眼から偵察として初めて外に放たれた動物である。洪水後、船から放され、水がひいたことを知らせた。旧約聖書ではカラスに次ぎ鳩が放たれた。

北米先住民[編集]

トリンギット族(クリンギット)とトリンギット亜族(チルカット族・ツィムシアン族・ハイダ族)に伝わるカラスは、創世に関わるものが複数あり、代表的なものとしては、「ワタリガラスがを作り、人を始めとした生き物が住み着いたが、あるときに寒波が襲い、生き物は死に絶えそうになった。一計を案じたワタリガラスは、ワシに太陽まで飛んで行ってそのかけらを持ち帰ってほしいと頼んだ。ワシは承諾し、身を焦がしながらも火を持ち帰り、大地の様々な所に火を灯した。それが、生きとし生けるもののとなった」というものがあり、この伝承の影響からかハイダ族は、カラス族とワシ族の2部族に分かれている。

その他のバリエーションとしては、人々が暗闇の中で何も持たず暮らしているのを不憫(ふびん)に思ったワタリガラスが、「二枚貝の暗闇の中から誘い出す・神が隠した太陽を神の娘の子供としてカラス自身が娘に受胎し、神の孫となって神に頼んで太陽を開放する・天上界(空の家という表現)へ変装して忍び込み星と月と日を盗み出し、人々に開放する」といった各話に、「人々に暮らしや家を与える、作り方などを教える」といったものが付加される形で創世の神話がなっている。

イメージ[編集]

知能が高い面が狡猾(こうかつ)な印象を与えたり、食性の一面である腐肉食や黒い羽毛が死を連想させることから、様々な物語における悪魔魔女の使い(使い魔)や化身のように、悪や不吉の象徴として描かれることが多い。その逆に神話・伝承にあるように、古来から世界各地で「太陽の使い」や「神の使い」としてあがめられてきた生き物でもある。これは、古代には世界各地で朝日や夕日など太陽に向かってるように見えるカラスが飛ぶ姿(近年では太陽の位置と体内時計で帰巣する姿であるという研究がある)を目にした当時の人々がその性質と太陽と結びつけ、神聖視されたという説がある。また、古代には鳥葬の風習がかつてあった地域も世界には存在し、猛禽類やカラスなど肉食性の鳥類が天国へ魂を運ぶ、死の穢(けが)れを祓(はら)ってくれる、あるいは神の御使いであるなどの理由で神聖視されたという説もある。 日本では、カラスの実際の羽色は、「烏の濡羽色(からすのぬればいろ)」という表現もある通り、深みのあるつややかな濃紫色である烏の濡羽色は、黒く青みのあるつややかな色の名前で、特に女性の美しい黒髪の形容に使われることが多く、濡烏(ぬれがらす)、烏羽(からすば)烏羽色ともいう。 ねぐらに帰る行動の時に鳴くことも多く、この行動が深く印象付けられてきたことから、帰る(帰郷・帰宅)や夕暮れを想像させ、伝統的にそういった比喩や例えがある。 鳴き声が「アホーアホー」と聞こえることがあるため、漫画アニメーションコントではこれを用いたその設定の上での、なにかを嘲笑した表現としてカラスが使われる。

慣用句・常套句・名文句[編集]

円山応挙画:からす

烏を用いた慣用句などには次のようなものがある。

  • 烏の行水(すぐに風呂から上がってしまうこと)
  • 烏の足跡(目じりのしわが足跡のように見えることから)
  • 烏の髪(黒髪のこと)
  • 烏の鳴かぬ日はあっても(語尾に毎日何かが行われる様子を書く 物事を強調するために用いる)
  • 濡烏・烏の濡れ羽色(しっとりと濡れたような黒色 烏の髪と同様に黒髪を指す場合が多い)
  • 闇夜に烏(見分けがつかないことの例え)
  • 三羽烏(さんばがらす、三人組のたとえ)
  • 烏合の衆(統制の取れていない集団をさす言葉)
  • 「カラスが鳴くから、帰ーろうっ」(男子)「カラスが鳴くから帰りましょ」(女子) - 夕方になって子供たちが遊びを仕舞にし、「みんな家に帰ろうよ」という時の合図のように使われる。
  • 「ねぐらへ帰る烏が二羽、三羽」(昭和のアナウンサーである松内則三が、1929年(昭和4年)秋の東京六大学野球早慶3回戦の実況の際、夕暮れの神宮球場の情景をラジオで伝え、これがレコード化されたため著名になった文句[23]
  • 烏を食べる (英語で屈辱を耐える、恥を忍ぶの意[24]

カラスに関係した飛行機[編集]

カラスが重要な位置づけで登場する作品[編集]

文学[編集]

歌曲[編集]


実写映画[編集]

  • 『大きな鳥と小さな鳥(パゾリーニの鳥)』 - ピエル・パオロ・パゾリーニ監督の1966年の映画。人間の言葉を話すカラスと放浪の旅を続ける親子。
  • クロウ/飛翔伝説』 - ブランドン・リー主演の映画。ギャングに殺害されたロックミュージシャンがカラスの力によって蘇り、自分と恋人の命を奪った者たちに復讐していく。続編も何本か制作されている。
  • 』 - 2007年のアメリカ映画。『』を下敷きにしながら、さらに残酷な描写。
  • 『忍者と悪女』 - ロジャー・コーマン監督、ヴィンセント・プライス主演の1963年の映画。エドガー・アラン・ポーの『大鴉』が原作。

漫画・アニメ・ゲーム[編集]

  • ザ・クロウ』 - ジェームズ・オバー原作のコミック。ギャングに殺害された青年がカラスの力によって蘇り、自分と恋人の命を奪った者たちに復讐していく。
  • ヘッケルとジャッケル』 - アメリカのアニメ。ヘッケルとジャッケルは本来カササギであるが、日本の放送ではカラスとされたことがある。
  • AIR』 - Key制作のアダルトゲーム。ヒロインのペットとして悲劇的結末を傍観する、子供のカラスが登場。先天的性質を気味悪がられ、学校と家庭において、いじめ虐待は無いものの消極的に疎外されている「ヒロインの境遇」と、平安時代から1000年間の時系列を越えて物語の根幹に関わる「翼を持つ、まだ幼い生命」という2つの要素を投映・暗喩する存在でもある。

キャラクター・意匠[編集]

注脚・参考文献・出典[編集]

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  1. ^ a b 安部直哉 (2009), “カラス”, 世界大百科事典, 2009年改定新版, 平凡社 
  2. ^ a b 宇田川竜男 (1993), “カラス”, ブリタニカ国際大百科事典, 第2版改定, TBSブリタニカ 
  3. ^ 浦本昌紀, “カラス”, 日本大百科全書, Yahoo!百科事典, 小学館, http://100.yahoo.co.jp/detail/%E3%82%AB%E3%83%A9%E3%82%B9%EF%BC%88%E9%B3%A5%EF%BC%89/ 
  4. ^ 浦本昌紀 (1974), “カラス”, 万有百科大事典 20 動物, 初版, 小学館, p. 184–185 
  5. ^ カラスを「カラス属およびそれに近縁な属」としている日本大百科全書(浦本昌紀)は、カラス属に近縁な属としてベニハシガラス属・ホシガラス属、近縁な可能性がある属としてサバクガラス属・ヒメサバクガラス属を挙げている。ソデグロガラス属については言及がない。
  6. ^ Bonaccorso; Peterson, A. T. (2007), “A multilocus phylogeny of New World jay genera”, Mol. Phylogenet. Evol.journal=Mol. Phylogenet. Evol. 42: 467–476, http://specify5.specifysoftware.org/Informatics/bios/biostownpeterson/BP_MPE_2007.pdf?q=Informatics/bios/biostownpeterson/BP_MPE_2007.pdf 
  7. ^ Gill, F.; Donsker, D., eds. (2010), “Vireos, crows, and allies”, IOC World Bird Names, version 2.5, http://www.worldbirdnames.org/n-vireos.html 
  8. ^ a b >FREQUENTLY ASKED QUESTIONS ABOUT CROWS: What is the difference between a crow and a raven? - コーネル大学鳥類学研究所
  9. ^ Master List | IOC World Bird List - Vireos, crows, and allies Version 3.5 (2013)
  10. ^ 唐沢孝一 (2003年), カラスはどれほど賢いか ― 都市鳥の適応戦略, 中公文庫, 中央公論新社, p. 191–206 
  11. ^ 山岸哲(監修)(財)山階鳥類研究所(編著) 『保全鳥類学』 京都大学学術出版会、2007年3月25日ISBN 978-4-87698-703-0
  12. ^ カラス以外では、北海道東部漁港に生息するオオセグロカモメにも、同様の方法でを割る行動が見られる
  13. ^ YouTube 都市部のハシボソガラスが学習を重ね、その環境を有効に利用する例 BBC Wildlife より。この動画では、急降下する際のハシボソガラスの羽の様子もよく分かる。
  14. ^ a b 樋口広芳; 森下英美子 (2000), カラス、どこが悪い!?, 小学館文庫, 小学館, p. 35, 45–56 
  15. ^ YouTube グラスの中のものを曲がった針金で持ち上げるカレドニアガラス
  16. ^ NHK Webサイト・ダーウィンが来た! 〜生きもの新伝説〜「天才職人!道具を作るカラス」
  17. ^ a b c 柴田佳秀 (2007), カラスの常識, 寺子屋新書, 子どもの未来社, p. 27–28, 88–91 
  18. ^ 大田眞也 (2007), カラスはホントに悪者か, 弦書房, p. 105–106, 156–170 
  19. ^ 松田道生 (2006), カラスはなぜ東京が好きなのか, 平凡社, p. 111–113 
  20. ^ 2003年8月8日 読売新聞「カラスの肉は栄養豊富? 帯畜大の食用化研究: 北海道」
  21. ^ http://www.obihiro.ac.jp/~meatscience/seki01.htm
  22. ^ a b c “カラス:フランス料理に登場 美味で役立つ?”. 毎日新聞. (2011年11月12日). http://mainichi.jp/select/wadai/news/20111112k0000e040047000c.html 2011年11月12日閲覧。 
  23. ^ 松井高志編 「野球“きまり文句”小辞典ココログ、2005年12月8日。
  24. ^ 21世紀研究会『食の世界地図』文藝春秋・P226

外部リンク[編集]