ザリガニ

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ザリガニ
Procambarus clarkii.jpg
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
階級なし : 汎甲殻類 Pancrustacea
亜門 : 甲殻亜門 Crustacea
: 軟甲綱 Malacostraca
亜綱 : 真軟甲亜綱 Eumalacostraca
上目 : ホンエビ上目 Eucarida
: 十脚目(エビ目) Decapoda
亜目 : 抱卵亜目(エビ亜目) Pleocyemata
下目 : ザリガニ下目 Astacidea
階級なし : “ザリガニ” crayfish
和名
ザリガニ
英名
Crayfish
上科
はさみを上げ威嚇するアメリカザリガニ

ザリガニ(蝲蛄・蜊蛄・躄蟹)は、ザリガニ下目のうちザリガニ上科ミナミザリガニ上科の総称である[1][2]ザリガニ類と呼ぶこともあるが、この語はザリガニ下目を意味することもある。

分類学的には単一の分類群(タクソン)ではなく、ザリガニ上科とミナミザリガニ上科に分類される。しかしこの2上科は近縁で、ザリガニは単系統である[3][4][5][6]

ザリガニが淡水生であるのに対し、ザリガニ下目の残りであるアカザエビ上科アカザエビロブスターなど)とショウグンエビ上科生であり、通常はザリガニには含めない。しかし、海生のグループと明確に区別するため、淡水生のグループを淡水ザリガニ (freshwater crayfish) と呼ぶこともある。

なお狭義には、ザリガニを種 Cambaroides japonicus(ニホンザリガニ)[7][8][9]、あるいは、それを含むアメリカザリガニ上科[10][8]とすることもある。種については後述。

目次

名称 [編集]

ザリガニの名はもともとニホンザリガニを指したものだが、江戸時代の文献から見られ、漢字表記では現在ではほとんど使われないが「喇蛄」と書かれる。江戸期には異称として「フクカニ[要出典]」「イザリガニ」などとも呼ばれていた。

ザリガニの語源は「いざり蟹」の転訛とするのが通説[11]。「いざる」は「膝や尻を地につけたまま進む」こと[12]で、かがんだような姿勢のまま後退行する点を指したものとされる。 ほかに「砂礫質に棲むことから“砂利蟹”」であるとか、体内で生成される白色結石から仏舎利を連想して“舎利蟹”と呼んだというような説もあるが、前者についていえば、ニホンザリガニはとくに砂礫質の場所を好んで棲むわけではない。

地方によってはエビガニと呼ぶ。身近に生息しているためザリ、ザリンコ、マッカチンなど多くの俗称がある。アイヌ語においてもいくつかの呼称があるが、ホロカアムシペ(horkaamuspe)やホロカレイェプ(horkareyep)など「後ずさり」を意味する語源が見られる。

英名 crayfish 「クレイフィッシュ」は中期フランス語 crevice 「クレヴィース」(現代フランス語: écrevisse[13])に由来し[14]、後半 -vice の音が fish に似ていることから民間語源的に異分析されたもの。なお、この crevice 自体はフランク語由来で、英語 crab 「蟹」と同じ語源由来である[14]

ザリガニとカニ・エビ [編集]

上記の通り、ザリガニはエビガニと呼ばれることもある。外見からしても、エビとカニの中間的な印象である。

ザリガニのハサミは同じ十脚目カニに似た大きなはさみを持ち、名前にもカニが入っている。しかしザリガニはザリガニ下目、カニはカニ下目であり、それぞれが独立した下目である。よってザリガニはカニとは別の生物であり、カニに含まれる生物ではない。また、十脚目の系統解析はあまり進んでいないが、ザリガニ下目とカニ下目が非常に近縁ということはなさそうである。ザリガニとカニに共通する大きなはさみは、それぞれで独立に進化している。

一方でエビは「十脚目のうちカニ下目とヤドカリ下目を除いた全ての側系統群」のことである。つまりザリガニがザリガニ下目であり、カニ下目やヤドカリ下目ではない以上、「ザリガニはエビに含まれる生物」ということになる。実際、ザリガニ下目の海生種であるアカザエビなどは、一般にはエビとみなされている。よって書籍などでは、「ザリガニはカニではなく、エビの一種である」といった紹介がなされることもあるが、エビという分類が広範囲の生物を含むため、このような説明では誤解を招く可能性がある。十脚目はクルマエビ亜目エビ亜目に大きく2分され、ザリガニ、カニ、ヤドカリは、全てエビ亜目に含まれている。つまり、ザリガニはエビの一種であるが、同じくエビの一種であるクルマエビよりも、エビには含まれないカニやヤドカリのほうに近い、と言えるのである。

生態 [編集]

河川ため池、用水路など、水の流れのゆるい淡水域ならたいていの所に生息する。ほとんどのザリガニが雑食性で、水草貝類ミミズ昆虫類甲殻類、他の魚の卵や小魚など、さまざまなものを食べる。生物間の捕食関係では、フナコイとは相利相害の相互関係で、稚ザリガニや稚魚は、互いの成体に対し捕食される関係で、生息水域や食性が同じため、直接・間接的な利害関係を有する。

分類 [編集]

上科・科・属 [編集]

2上科4科34属に分類される。うち現生は2上科3科30属。化石(現生するものを除く、以下同様)4属[15]

ただしアメリカザリガニ科は単系統ではなく、アジアザリガニ属がこの科の残りと別系統で[15][16]、ザリガニ上科の中で最初に分岐したか[4] 、ザリガニ科の方に近縁である[5]

代表種 [編集]

ザリガニ科 [編集]

ヨーロッパほぼ全域(イギリススカンディナヴィア半島を除く)、トルコ北アメリカ西部。

アメリカザリガニ科 [編集]

北米東部・中部・中米。例外的に、アジアザリガニ属は日本朝鮮半島北東アジア

ミナミザリガニ科 [編集]

オーストラリアオセアニア南アメリカ南部、マダガスカル

日本産種 [編集]

日本では、北日本固有種であるアメリカザリガニ科の Cambaroides japonicus (De Haan1841) が唯一の在来種である。これに「ザリガニ」の標準和名が充てられ、これを狭義のザリガニとして扱う。

20世紀初期にアメリカ合衆国からアメリカザリガニ科のアメリカザリガニ、ザリガニ科のウチダザリガニ(亜種もしくは変種にタンカイザリガニ)の2種が移入され[17]、20世紀後半以降はこの中の1種アメリカザリガニ Procambarus clarkii が日本全土に分布を広げた。そのため、21世紀初頭の段階では単に「ザリガニ」といえばアメリカザリガニを指すことが多い。日本固有種のザリガニは、他のザリガニ類と区別するためにニホンザリガニあるいはヤマトザリガニとも呼ばれる。アメリカザリガニの幼少期の色は灰色から青っぽいのが普通であるが、大きくなるにつれ赤みを増す。このため幼少期のアメリカザリガニをニホンザリガニと間違うことがある。

人間との関わり [編集]

アメリカザリガニ(Crustaceans, crayfish, mixed species, wild, raw)
100 g (3.5 oz)あたりの栄養価
エネルギー 322 kJ (77 kcal)
炭水化物 0 g
- 糖分 0 g
- 食物繊維 0 g
脂肪 0.95 g
- 飽和脂肪酸 0.159 g
- 一価不飽和脂肪酸 0.174 g
- 多価不飽和脂肪酸 0.293 g
  - ω-3脂肪酸 0.152 g
タンパク質 15.97 g
- トリプトファン 0.222 g
- トレオニン 0.644 g
- イソロイシン 0.772 g
- ロイシン 1.265 g
- リシン 1.388 g
- メチオニン 0.45 g
- シスチン 0.179 g
- フェニルアラニン 0.672 g
- チロシン 0.532 g
- バリン 0.749 g
- アルギニン 1.393 g
- ヒスチジン 0.325 g
- アラニン 0.902 g
- アスパラギン酸 1.648 g
- グルタミン酸 2.719 g
- グリシン 0.961 g
- プロリン 0.526 g
- セリン 0.629 g
水分 82.24 g
ビタミンA相当量 16 μg (2%)
- βカロテン 0 μg (0%)
- ルテインおよびゼアキサンチン 0 μg
ビタミンB1 0.07 mg (5%)
ビタミンB2 0.032 mg (2%)
ビタミンB3 2.208 mg (15%)
パントテン酸(ビタミンB5 0.546 mg (11%)
ビタミンB6 0.108 mg (8%)
葉酸(ビタミンB9 37 μg (9%)
コリン 80.9 mg (17%)
ビタミンB12 0 μg (0%)
ビタミンC 1.2 mg (1%)
ビタミンD 0 IU (0%)
ビタミンE 2.85 mg (19%)
ビタミンK 0.1 μg (0%)
カルシウム 27 mg (3%)
鉄分 0.84 mg (7%)
マグネシウム 27 mg (7%)
マンガン 0.226 mg (11%)
セレン 31.6 μg (45%)
リン 256 mg (37%)
カリウム 302 mg (6%)
塩分 58 mg (3%)
亜鉛 1.3 mg (14%)
コレステロール 114 mg
 %はアメリカにおける成人向けの
栄養摂取目標 (RDIの割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)

食材として [編集]

海外では食材として利用され、タラバガニに似た味で美味である。市場では、同じ大きさのエビよりも高値で取引される。

ウチダザリガニは、北海道などでヨーロッパ料理の食材として使用されている。

塩茹で蒸したものサンドイッチに挟んで食べたり、サラダに混ぜて使われたり、巻き寿司や手巻き寿司に巻いて食べる。ルッコラを添えてパスタなどにも使われる。酢飯錦糸卵に混ぜてちらし寿司海鮮丼に使われることもある。

多価不飽和脂肪酸ビタミンEナイアシン葉酸カリウムマンガンタンパク質リンセレンなどを多く含む。

なお、他の淡水生物と同様に、肺吸虫(旧称:肺臓ジストマ)の中間種となるので、食べる際はよく火を通すべきである。しかし、カニの吸虫寄生率が高い地域でも、現在では人の感染症が報告されることはまれである。これらの吸虫が人体におよぼす病害については、肺吸虫症などを参照。

飼育と生態系への影響 [編集]

アメリカザリガニなどは、他種と比べると比較的丈夫なザリガニであり、飼育しやすい。食性は雑食性で、自然界では、主にデトリタス水草・小魚(どじょうメダカフナ)・肉(動物の死骸)など何でも食べるが、飼育下においては、沈殿タイプの熱帯魚コリドラスプレコ)用や用の人工飼料などが使われている。

ザリガニは、雑食性で繁殖力・環境適応能力が高い種も多く、放流による生態系の破壊が不安視され、多くの種が2006年2月1日から外来生物法に基づき特定外来生物に指定され、無許可での飼育や遺棄・譲渡・輸入等が禁じられている。適応能力の低い種に関しては輸入販売されている。アメリカザリガニも、販売に対しては対象外であるが、放流は禁止されている。

ザリガニ釣り [編集]

アメリカザリガニはスルメパンなどを餌にして釣れるため、子供たちの身近な釣りの対象として人気がある。アメリカザリガニを参照。

その他 [編集]

アメリカザリガニは黒鯛ブラックバスなどの釣りの餌や肉食鑑賞魚の餌用などに養殖されている。

ザリガニ(ニホンザリガニ) [編集]

ザリガニ(ニホンザリガニ)
Cambaroides japonicus.jpg
ザリガニ
保全状況評価
{{{2}}}環境省レッドリスト
Status jenv VU.png
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
階級なし : 汎甲殻類 Pancrustacea
亜門 : 甲殻亜門 Crustacea
: 軟甲綱 Malacostraca
亜綱 : 真軟甲亜綱 Eumalacostraca
上目 : ホンエビ上目 Eucarida
: 十脚目(エビ目) Decapoda
亜目 : 抱卵亜目(エビ亜目) Pleocyemata
下目 : ザリガニ下目 Astacidea
: アメリカザリガニ科 Cambaridae
亜科 : 未定 incertae sedis[4]
: アジアザリガニ属 Cambaroides
: ザリガニ C. japonicus
学名
Cambaroides japonicus De Haan1841
和名
ザリガニ
ニホンザリガニ
ヤマトザリガニ
英名
Japanese crayfish, Zarigani

成体の体長は50–60mmほど、稀に70mmに達するが、アメリカザリガニよりは小さい。体色は茶褐色で、アメリカザリガニに比べて体や脚が太く、ずんぐりしている。

分布 [編集]

かつては北日本の山地の川に多く分布していたが、現在は北海道青森県岩手県及び秋田県の1道3県に少数が分布するのみである。なお、秋田県の個体群の一つにはウチダザリガニミミズ Cirrodrilus uchidai (Yamaguchi, 1932) が付着していたことから、北海道から移入された可能性が指摘されている。また、大正時代に行われた人為移入の結果と考えられる個体群が栃木県においても発見され[18]、ある一定の条件が整えば関東圏においても生息できることが証明された。

生態 [編集]

川の上流域や山間の湖沼の、水温20℃以下の冷たくきれいな水に生息し、巣穴の中にひそむ。おもに広葉樹の落葉を食べる。

繁殖期は春で、メスは直径2–3mmほどの大粒の卵を30–60個ほど産卵する。メスは卵を腹脚に抱え、孵化するまで保護する。孵化した子どもはすでに親と同じ形をしており、しばらくはメスの腹脚につかまって過ごすが、やがて親から離れて単独生活を始める。体長4cmになるまで2-3年、繁殖を始めるまでに5年かかる。アメリカザリガニに比べて産卵数も少なく、成長も遅い。

脱皮の前には外骨格(体を覆う殻)の炭酸カルシウムを回収し、胃の中に胃石をつくる。脱皮後に胃石は溶けて、新しい外骨格に吸収される。

利用 [編集]

個体数が少ない現在ではほとんど食用としないが、モクズガニと同じく肺臓ジストマの1種のベルツ肺吸虫 Paragonimus pulmonalis (Baelz1880) の中間宿主である。よって、食用にする際はよく加熱しなければならない。

20世紀前半までは数多く生息していた。食用や釣り餌などのほか、胃石が眼病や肺病などの民間療法の薬として使われていた。河川環境の悪化、採集業者の乱獲などが重なって、次々に生息地を追われた。2000年には絶滅危惧II類(VU)環境省レッドリスト)に指定された。国際自然保護連合の評価は「データ不足 (DD)」である[19]

参考文献 [編集]

脚注 [編集]

  1. ^ ジャパンクレイフィッシュクラブ (2002), 世界のザリガニ飼育図鑑, 増補版, エムピージェー, ISBN 978-4895125192 
  2. ^ 川井唯史 (2009), ザリガニ ニホン・アメリカ・ウチダ, 岩波科学ライブラリー 162, 岩波書店, ISBN 978-4-00-029562-8 
  3. ^ 安藤準 (2004), “ザリガニ類”, 節足動物の卵巣形態および卵形成様式の多様性と進化に関する研究, 京都大学, pp. 28–30, http://hdl.handle.net/2433/80143 
  4. ^ a b c Breinholt, Jesse; Pérez-Losada, Marcos; Crandall, Keith A. (2009), “The timing of the diversification of the freshwater crayfishes”, in Martin, J. W.; K. A.; Felder, D. L., Decapod Crustacean Phylogenetics, Crustacean Issues 18, CRC Press, pp. 305–318 
  5. ^ a b Johnson, Gerard T.; Elder, John F., Jr.; et al. (2011), “Phylogeny of the freshwater crayfish subfamily Cambarinae based on 16S rDNA gene analysis”, Current Trends in Ecology: 97-113, http://www.bio.fsu.edu/~stevet/FinalCrayfishManuscript.pdf 
  6. ^ Shen, Hong; Braband, Anke; Scholtz, Gerhard (2013), “Mitogenomic analysis of decapod crustacean phylogeny corroborates traditional views on their relationships”, Molecular Phylogenetics and Evolution 66: 776–789, http://decapoda.nhm.org/pdfs/38733/38733.pdf 
  7. ^ 武田正倫 (1974), “ザリガニ”, 万有百科大事典 20 動物, 小学館 
  8. ^ a b 三省堂編修所, ed. (2012), “ザリガニ”, 三省堂 生物小事典, 三省堂, ISBN 978-4-385-24006-0 
  9. ^ 武田正倫ザリガニ』 - Yahoo!百科事典
  10. ^ 武田 (1974)。ただし彼は現在のアメリカザリガニ上科をザリガニ科としていた。
  11. ^ 語頭の「い」の脱落は日本語では比較的よく見られる。いばら>ばら(薔薇)、いまだ>まだ(未だ)、いだく>だく(抱く) など。
  12. ^ 『広辞苑 第5版』 岩波書店
  13. ^ エクルヴィス。ザリガニを食材とするフランス料理レシピの総称としても用いられる。
  14. ^ a b Online Etymology Dictionary
  15. ^ a b De Grave, Sammy; Pentcheff, N. Dean; Ahyong, Shane T.; et al. (2009), “A classification of living and fossil genera of decapod crustaceans”, Raffles Bulletin of Zoology Suppl. 21: 1–109, http://rmbr.nus.edu.sg/rbz/biblio/s21/s21rbz1-109.pdf 
  16. ^ Braband, A.; Kawai, T.; Scholtz, G. (2006), “The phylogenetic position of the East Asian freshwater crayfish Cambaroides within the Northern Hemisphere Astacoidea (Crustacea, Decapoda, Astacida) based on molecular data”, Journal of Zoological Systematics and Evolutionary Research 44 (1): 17–24, doi:10.1111/j.1439-0469.2005.00338.x, http://www.aseanbiodiversity.info/Abstract/51008767.pdf 
  17. ^ 外来種ウチダザリガニの移入とニホンザリガニの国内送付に関する情報 日本甲殻類学会 会員連絡誌 (14), 23-33, 2005-05-01
  18. ^ 日光市で発見されたニホンザリガニ個体群の由来、および大正時代に北海道から本州に持込まれた個体に関する宮内庁公文書等に基づく情報 弘前大学教育学部紀要 101号 pp.31–40 ISSN:0439-1713
  19. ^ T. Kawai & Y. Machino (2010年), “Cambaroides japonicus”, IUCN Red List of Threatened Species. Version 3.1 (International Union for Conservation of Nature), http://www.iucnredlist.org/apps/redlist/details/153751 2011年11月20日閲覧。 

外部リンク [編集]

  • (PDF) 札幌市豊平川さけ科学館