フランス料理
フランス料理(フランスりょうり)は、16世紀にイタリアよりもたらされた、当初はフランス王国の宮廷料理だった献立の総称。ソースの体系が高度に発達していることが特徴で、各国で外交儀礼時の正餐として採用されることが多い。
狭義としては、こうした正餐に用いる厳格な作法にのっとったオートキュイジーヌ(haute cuisine)と呼ばれる料理を指す。もちろんフランスの各地方には一般庶民に親しまれている特徴ある郷土料理も数多くあり、広義には高級料理だけでなくこうしたフランスの伝統料理全般も含める。
フランス語では「ラ・キュイズィーヌ・フランセーズ」(la cuisine française)と呼ぶ。日本でフランス料理を「フレンチ」(French)と呼ぶ場合があるが、英語では「フレンチ・クィズィーン」(French cuisine)と呼ぶことが多く、「料理」を意味する名詞「クィズィーン」(cuisine:フランス語発音でキュイジーヌ)を省略する習慣は口語以外ではあまりない。
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歴史 [編集]
中世時代フランスで食べられていた料理は食材を焼いて大皿に乗せ、手づかみで食事を行うという非常にシンプルなものであったが現在のフランス料理の原型は、ルネサンス期のイタリアからやってきたカトリーヌ・ド・メディシス(当時フランスの王であったアンリ2世と婚姻した)とその専属料理人によってもたらされたと言われ、当初は粗野であったフランス料理に変革をもたらし、ブルボン王朝の最盛期に発達した。
それに伴い、ハプスブルク家により、ロシア、ドイツなどの宮廷に広まった。また、革命以後、宮廷から職を追われた料理人たちが街角でレストランを開き始めたことから、市民の口にも入るようになった。
19世紀に入り、カレーム、彼の弟子であるグッフェ、そしてデュボワにより大きく改革された。例えば、それまで多くの料理を同時に食卓に並べていたのを改め、一品ずつ食卓に運ばせる方式を採用した。これは、寒冷なロシアで料理を冷まさず提供するため、フランス料理の料理人が工夫したものがフランスに逆輸入されたといわれ、ロシア式サービスと称される。
そしてその流れはエスコフィエへと引き継がれた。彼はコース料理を考案したり、フランス料理のバイブルといわれる『料理の手引き』(Le Guide Culinaire)を1903年に刊行した。この本は現在でもプロのシェフにとって手放せない本となっている。
その後、1930年代に、ポワン(「ラ・ピラミッド」)、アレクサンドル(「ラ・コート・ドール」)、ピックらが、エスコフィエの料理を受け継ぎながら、さらに時代にあった料理へと改良していった。
ポワンたち3人の理念は、ポワンの弟子であるボキューズ、トロワグロ兄弟、ウーティエらに受け継がれた。フランス料理は、イタリア料理、スペイン料理、トルコ料理、モロッコ料理など歴史的にヨーロッパ・北アフリカ・西アジア料理の影響を受けてきたが、1970年代にボキューズたちは日本の懐石料理を取り入れて、軽いソースや新鮮な素材を活かした調理など「新しい料理」を創造し、ミヨがこれを「ヌーベル・キュイジーヌ」と呼んで、世界中に広まった。
1980年代に入ると、ロブション、ガニェール、デュカス、ロワゾー、パコーらが、エスコフィエの精神を生かしながら、キュイジーヌ・モデルヌと呼ばれる、さらに新しい料理を創造している。
料理法の発達とともに、食器、作法なども洗練され、味の良し悪しを批評する職業としての食通も生まれ、19世紀前半に、ブリア・サヴァランが『美味礼讃』を著して美食学(ガストロノミー)と美食文学の伝統を確立した。『ミシュランガイド』、『ゴー・ミヨ』などのレストランの格付けを行うガイドブックが発行されるようになった。
日本 [編集]
フランス料理の日本への輸入は、明治維新の際に行われた。日本国外の来賓への接待としてフランス料理が使用されるようになったのは、1873年からという[1]。
食事作法 [編集]
フランス料理のコースでは、料理の出る順番が決まっている。
主な料理と料理の出る順序 [編集]
- 1.オードブル(アントレ Entrée)
- オードブルの前にアミューズ・ブッシュ(amuse bouche、小前菜)が出されることもある。
- 2.スープ
- 3.魚料理(ポワソン Poisson)
- 魚料理と肉料理の間にソルベやグラニテと呼ばれる口直し用の氷菓が出されることがある。
- 4.肉料理(ヴィアンドゥ Viande)
- 6.チーズ(仏語ではフロマージュ(fromage))
- ここで別室へ移動、もしくはテーブルの整理
- 7.デザート(仏語ではデセール(dessert))
- デザート前のメニューを食べ終わるとプティフール(小さな焼き菓子)と温かい飲み物(エスプレッソ、紅茶など)が供される。
代表的なマナー [編集]
詳細は「マナー」を参照
- ナプキンは全員が着席し、主賓が手にしてから他の人も取る。途中で中座するときはナプキンを椅子の上に置く。
- ナイフやフォークなどは外側から順に使う(複数テーブルに並んでいる場合)。
- とりあえず皿へナイフ・フォークを置く場合は、八の字の形にする。
- 食べ終わったら、ナイフは刃を内側にして、フォークと共に先を上にして皿に並べておく。
高級料理店のような厳格な作法が求められない安価なフレンチレストランやビストロでも、前菜、メイン、デザートという流れはいずれも持っている。しかし前菜を省略することもできるし、デザートの替わりにコーヒーやお茶で済ますこともある。
フランス料理の派生 [編集]
フランス各地方の料理 [編集]
これらの地方料理は高級レストランなどに限らず一般家庭でも親しまれているものである。
- プロヴァンス料理
- プロヴァンス地方の料理。南イタリア料理と同じくトマトやオリーブオイル、オリーブを多く用いる他、エルヴ・ド・プロヴァンス(herbes de Provence)と呼ばれる当地独特のハーブを多く調合したものを用いる。地中海に面したマルセイユなどの町ではブイヤベースなどの魚料理も多い。ガルディアン・ド・トロなど、ごく一部の地域のみに伝わる伝統料理もある。アイオリソースもプロヴァンス料理の特色の一つである。
- バスク料理
- バスク地方もプロヴァンスと同じくトマトの使用量が多いが、同様にトウガラシも多く用いられる。カタルーニャやスペイン料理との共通点も多い。
- ラングドック料理
- ラングドック地方はガチョウ料理が多く、ガチョウの肝であるフォアグラや、セップ茸(cèpe、ヤマドリタケ)、アルマニャックなどが用いられる。
- アルザス料理
- アルザス地方の料理。ドイツ文化圏であるためシュークルート(ザワークラウト)、クグロフなどドイツ料理との共通点が多く、国境のライン川を挟んで反対側の黒い森地方の料理にも似ている。
- ピカルディー料理
- ピカルディーやノール県は北部国境を接するベルギー料理の影響を受けている。アンディーヴ(endive、チコリー)のグラタンなど共通するメニューもある。ビールやジャガイモも用いられる。
- ノルマンディー料理
- ノルマンディーは北大西洋に面しており、モン・サン=ミシェル付近では潮風に吹かれた牧草で育てた子羊の肉が名物とされる。シードルの産地でもあり、リンゴを用いた味付けも多い。バターや生クリームの使用量も多い。
- ブルターニュ料理
- ブルターニュは冷涼な気候のため作物は不作とされる。ソバ粉のクレープ(ガレット)が有名であるほか、ケルト系のブルトン文化が料理にも残っており、同じケルト系のウェールズ地方の料理との共通点もある。
- オーヴェルニュ料理
- オーヴェルニュ地方の料理。食材としてはシンプルなものが多く[2]、ソーセージや、地元のサレール牛を使った料理が伝統料理である[3]。これらの付け合せとしてはアリゴという、少し変わったマッシュポテトのような料理がある。
- ブルゴーニュ料理
- ブルゴーニュはフランスの家庭料理を代表するブッフ・ブルギニョン(bœuf bourguignon、牛肉の赤ワイン煮込み)発祥の地でもある。
- ロワール料理
- ロワール地方はロワール川沿いの白ワインの産地であり、白ワインを使った魚料理が特徴的である。
- サヴォア料理
- サヴォア地方は山岳地帯でスイス国境に近く、フォンデュ・オ・フロマージュ(チーズフォンデュ)やラクレットなど乳製品を多用した料理が多い。
近現代において新たに生まれた料理 [編集]
- ヌーヴェル・キュイジーヌ(新しい料理)
- 担い手となったスターシェフたち ~ ポール・ボキューズ(Paul Bocuse)、トロワグロ兄弟、ルイ・ウーティエ(Louis Outhier)、アラン・サンドラス(Alain Senderens)、ミッシェル・ゲラール(Michel Guerard)、アラン・シャペル(Alain Chapel)
- キュイジーヌ・モデルヌ(現代の料理)
- 担い手となったスターシェフたち ~ ジョエル・ロブション(Joel Robuchon)、ピエール・ガニェール(Pierre Gagnaire)、アラン・デュカス(Alain Ducasse)、ベルナール・ロワゾー(Bernard Loiseau)、ベルナール・パコー(Bernard Pacaud)
副食品 [編集]
フランスワインとフランスチーズには各地方や細かな地域ごとにさまざまな特徴があり、AOCをはじめとするさまざまな規格で品質が保証されている。フランスのほとんどの地域においてワインが飲まれている。ワイン以外の酒では、ノルマンディー地方のシードルおよびその蒸留酒であるカルヴァドス、アルザス地方のビールが挙げられる。
フランスパンもまたフランスの食卓を特徴付ける重要な位置を占めている。代表的なバゲットのほか、田舎風を意味するパン・ド・カンパーニュ(pain de campagne)、全粒粉を用いたパン・コンプレ(pain complet、アルザス地方に多い)、ライ麦を用い生カキなどに添えられるパン・オ・セグル(pain au seigle)などが挙げられる。
フランス料理のレストラン [編集]
ガイドブック [編集]
タイヤ会社ミシュランが出すガイドブック「ギド・ミシュラン」のレッド・ガイド(ギド・ルージュ)は、フランスにおけるレストランの指標に大きな影響力を与えており、フランスに限らず日本(2007年より)を含めた世界の各都市のホテル・レストランガイドを出版している。星の数によって評価を表示しており、最高は3つ星である。
ゴー・ミヨのレストランガイドも同様に有名である。こちらは20点制だが、4つまでの帽子の数による指標もある。
店舗形態 [編集]
- 高級レストラン
- 上述のように厳格な作法を持ち正式なコースを出すオートキュイジーヌ。
- ガストロノミー gastronomie
- ネオ・ビストロ néo bistro
- ビストロ bistro
- 大衆的な雰囲気を持つ食堂。食事作法なども高級レストランのように厳しく求められるものではない。
- ブラッスリー brasserie
- ビアホールやブルワリーを意味する場合とアルザス料理を出す店の意味に分かれる。前者は普通のカフェやバーがブラッスリーを名乗っている場合も多いが、後者はある程度の高級感を備えた店もある。
脚注 [編集]
- ^ 『宮廷柳営豪商町人の食事誌』児玉定子 1985年10月
- ^ “オーヴェルニュ地方で Rendez-vous”. フランス観光開発機構公式サイト. 2013年2月閲覧。
- ^ “サレール、村のレストラン”. グラムスリー. 2013年2月閲覧。
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