ポーランド料理
ポーランド料理は、基本的に家庭料理である。ポーランド固有の料理は少ないが、中世から近世のポーランド王国はポーランド人のほかに東欧系ユダヤ人・チェコ人・ハンガリー人・ドイツ人・リトアニア人・ラトビア人・ベラルーシ人・ウクライナ人・スコットランド人・アルメニア人・タタール人(リトアニア・タタール人)などで構成される多民族国家だったため、周辺のあらゆる民族の食習慣を取り入れて独自の食文化を構築しており、伝統料理のバラエティは非常に豊かである[1]。19世紀に現在のポーランド料理の原型ができたと言われている[1]。
過去には、ポーランドでは一日に4回の食事をとっていたが、近年は3回の家庭が多い。基本的には昼食を正餐とし朝食と夕食は軽く済ますのが伝統だが[2]、都市部では男女とも外に出て働くことが多いことから、昼食を軽くし夕食を正餐とする場合も多くなっている。
大抵のポーランド人は自分の母親の作る料理こそ世界で一番おいしいと考えているが、近年は徐々に外食の習慣も広まり、レストランで食事を取ることも多くなってきている[注 1]。さらに、レストランで出されるポーランド料理はフランス料理の要素を取り入れ洗練したものである。一方、その反対にわざと田舎風にしたポーランド料理を出すレストランもあり、これもまた人気がある。都市部ではポーランド料理に限らず、世界各国の料理を食べることができる。
- なお、以下で太字になっている料理名は画像がある料理である。
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概要 [編集]
ポーランドには、肉料理を中心に長時間煮込む料理が多い[1]。脂肪分が比較的多く、周辺諸国に比べて薄味なのも特徴である。中世の昔、ポーランド王国ではアルメニア人商人による東方陸上交易により他のヨーロッパ諸国に比べてコショウ(ピェプシュ pieprz)が非常に安く手に入った。そのため肉料理にはコショウがふんだんに使われている。肉料理にはショウガ(インビル imbir)やニンニク(チョスネック czosnek)、各種ハーブ(ジョワ zioła)も多く使われる。
ジャガイモ(ポーランド語でジェムニャク ziemniak あるいはカルトフェル kartofel)はポーランド人の主食といえる。また、ライ麦の栽培はポーランドの寒冷な気候に適していることから、ライ麦粉と小麦粉を混ぜて使った、香りと少々の酸味があるパン(フレプ chleb、あるいはフレペック chlebek/パンちゃん)は種類が豊富で、よく食べる。精白した小麦粉で作る白パン(ブウカ bułka)も種類が多いが、フレプほど頻繁には食べない。ソバの実(カーシャ・グリチャナ kasza gryczana)や米(リシュ ryż)を茹でたもの、ジャガイモのダンプリング/団子(ピズィ pyzy、オーストリアではクヌーデル、チェコではクネードリキと呼ぶ)もよく食べる。
ポーランド人は奇妙なほどゆで卵(ヤイカ jajka またはヤヤ jaja)が大好きな民族で、スープ(ズッパ zupa)やサラダ(サワトカ sałatka)の具などとして頻繁に出てくる。また、ゆで卵は復活祭の正餐には欠かせない食べ物である。
またポーランドの人々は伝統的に乳製品を非常に好み、独特の製法でさまざまなチーズを作るが、古くは7500年前の「世界最古のチーズ」製造の痕跡がポーランドで発見されている[3][4]。
ポーランド人の食べ物 [編集]
料理 [編集]
- 代表的な料理
- ソーセージ(ポ:キェウバーサ kiełbasa)
- ハム(シンカ szynka)
- キシュカ(kiszka)
- 肉や魚や野菜のアスピック(ガラレートカ galaretka)
- ザワークラウト(カプスタ・クファショナ kapusta kwaszona またはカプスタ・キショナ kapusta kiszona)
- 肉や野菜やフレッシュチーズを使ったピェロギ(pierogi)またはウシュカ(uszka、耳ちゃん)
- 餃子に似ているが、肉の具だけでなく野菜(ジャガイモやザワークラウト)、チーズ、果物などが入ることもあり、甘いピェロギはデザートにもなる。
- ビーフシチュー(グヤーシュ gulasz)
- 牛肉と野菜の串焼き(シャシュウィク szaszłyk)
- 香味野菜のスープで茹でた牛肉(シュトゥカ・ミェンサ sztuka mięsa、オーストリアではターフェルシュピッツと呼ばれる)
- タルタルステーキ(タタール tatar またはベフシュティック・タタールスキ befsztyk tatarski/タタール人のビーフステーキ)
- ジビエなどさまざまな肉とザワークラウトの煮込み(ビゴス bigos)
- 豚足のシチュー(ゴロンカ golonka)
- 豚足のグリル(ゴロンカ golonka、ゴロンカとは「げんこつ」の意味。日本のラーメンの「げんこつスープ」の「げんこつ」と同じ呼び方。)
- ピクルスなどを牛肉で巻いて焼いてクリームソースをかけたもの(ズラズィ・ザヴィヤネ zrazy zawijane)
- アヒルとリンゴのロースト(カチュカ・ス・ヤブウカミ kaczka z jabłkami)
- ポーランド風ロールキャベツ(ゴウォンプカ gołąbka/鳩ちゃん、座った鳩に形が似ているためであって鳩の肉は使わない)
- 牛肉や豚肉のカツレツ(コトレット・スハボヴィ/kotlet schabowy)
- じゃがいもやマカロニをつかったキャセロール料理(ザピェカンカ zapiekanka)
- ポテトパンケーキ(プラツェック placek、複数形はプラツキ placki)
- ジャガイモの団子(ピズィ pyzy あるいはクルスキ kulski、オーストリアではクヌーデル、チェコではクネードリキと呼ぶダンプリング)
- 蕎麦の実(カーシャ kasza)を水や野菜スープで茹でたもの
- 茹でた白米(リシュ ryż)
- 社会主義時代に考案されたポーランド式ピザパン(これも「ザピェカンカ」と呼ぶ)
- さまざまなポーランド式サラダ(サワトカ sałatka)
- サワトカは素材に火を通してから和えたサラダを指し、生野菜のサラダはスルフカ(surówka)と呼んで区別する。
- シレチ・ポ・ヤポンスク śledź po japońsku/日本風ニシン)
- 酢漬けにした大西洋ニシンをゆで卵入りのマヨネーズで和えた、マリネの一種。「日本人はニシンの卵(数の子)が好きだ」というのが、「日本人はニシンと卵が好きだ」と誤ってポーランドに伝わったため、ニシンと卵をあわせた料理が「日本風」と呼ばれるようになった。
また、このほかに大ポーランド地方(ヴィエルコポルスカ地方)、マゾフシェ地方、マズールィ地方、ポモージェ地方、シロンスク地方、小ポーランド地方(マウォポルスカ地方)、ポドハレ地方、ガリツヤ地方、東部国境地方(クレスィ・フスホドニェ地方)、ポドラシェ地方といった国内の各地方によって独特の郷土料理がある。ソーセージ(キェウバーサ)も地方によって異なる。
スープ [編集]
- 伝統的なスープ
- 発酵したライ麦の上澄み汁(ポーランド語でジュル żur)を使った白いスープ(ジュレック żurek/ジュル君、またはバルシチ・ビャウィ barszcz biały/白いバルシチ)
- 発酵したテーブルビートの上澄み汁を使った赤いスープ(バルシチ・チェルヴォヌィ barszcz czerwony/赤いバルシチ)
- テーブルビートの汁とサワークリームを使った冷たいスープ(フウォドニック Chłodnik、あるいはバルシチ・リテフスキ/barszcz litewski リトアニア風バルシチ)
- 透明なチキンスープ(ロスウ rosół)
- さまざまなキノコのホワイトスープ(ズッパ・グジボヴァ zupa grzybowa)
- キュウリのスープ(ズッパ・オグルコヴァ zupa ogórkowa)
- スイバのスープ(ズッパ・シュチャヴョーヴァ zupa szczawiowa)
- トマトスープ(ズッパ・ポミドロヴァ zupa pomidorowa)
- 野菜と蕎麦や大麦の実の入った具沢山のチキンスープ(クルプニック krupnik)
- ザワークラウトのスープ(カプシニャック kapuśniak)
- エンドウマメのスープ(グロフフカ grochówka)
- アヒルの血の田舎スープ(チェルニナ czernina)
- 牛の胃を使ったもつ煮込みのようなスープ(フラキ flaki、またはフラチュキ flaczki/フラキちゃん)
- サクランボ(スミミザクラ)を使った冷たく甘酸っぱい夏のスープ(ズッパ・ヴィシニョヴァ zupa wiśniowa)
など。
ポーランド料理の中でも、スープの評価は高い[5]。具の種類も多く、ポーランド語ではメインディッシュが「第二の食事」と言われるのに対してスープは「第一の食事」と言われている[6]。具材はさまざまな肉(ミェンソ mięso)、魚(ルィバ ryba)、野菜(ヴァジヴォ warzywo)、キノコ(グジブ grzyb)、果物(オヴォツ owoc)のほか、ソーセージ、ジャガイモの団子(ピズィあるいはクルスキ)、ジャガイモ、ゆで卵、パスタ(マカロン makaron)など。食べる直前にサワークリーム(シミェタナ śmietana)やヨーグルト(ポーランド語でもヨーグルト jogurt)を入れることも多い。
変わったところでは、近年ポーランド式のインスタントラーメンが国内や英国などで人気を博している。麺は日本のインスタントラーメンのものに似ているが、スープはキノコ風味、ジュル風味などポーランド風の味が多く、種類も多い。
肉 [編集]
日常的に牛肉(ヴォウォヴィナ wołowina)、仔牛肉(チェレンチナ cielęcina)、豚肉(ヴィェプショヴィナ wieprzowina)、鶏肉(クルチャック kurczak)、アヒル肉(カチュカ kaczka)を食べることが多く、マトン(バラニナ baranina)、ラム(ヤグニェンチナ jagnięcina)、ウサギ(クルリック królik/ちいさい王様ちゃん - 耳が王様の冠に似ていることから)、七面鳥(インディク indyk)などの肉も売られている。また、ポーランドは自然が豊かで、地方によってはジビエ(野生の鳥や獣)の肉を好んで食べ、レストランでもジビエが供される[7]。一般的には牛肉よりも豚肉が好まれており、市場の肉屋には豚の頭から豚足まで並べられている[8][9]。豚の骨はスープの出汁、豚足はガラレタというゼリー寄せ、血はカシャンカというソーセージの材料に使われる[9]。
これら多様な肉を使って作ったハム(シンカ)やソーセージ(キェウバーサ)は、種類が非常に多く、地方色があり、ポーランド独特な食べ方をすることもある。肉やレバーのペーストもよく食べる。
肉に添えるつけ合わせは茹でたジャガイモやザワークラウト、ジャガイモ粉の団子(ピズィあるいはクルスキ)が多い。
魚 [編集]
タイセイヨウニシン(シレチ śledź)は酢漬けやオイル漬けにして日常的によく食べ、そのほかにタラ(ドルシュ Dorsz)、鮭(ウォソシ Łosoś)、ウナギ(ヴェンゴシュ Węgorz)もよく食べる。そのまま料理するほか、燻製にしたものを購入する場合もある。
バルト海に近い地方ではカレイ(フロンドロヴァテ flądrowate)やシタビラメ(チョサンコヴァテ ciosankowate)もフライやムニエルにしてよく食べる。グダニスク、ソポトといったバルト海に近い地方の街や漁村では新鮮な魚のフライを屋台で楽しめる。
復活祭の前夜(ヴィェルカノツ/大いなる夜)は肉食が禁じられている四旬節期間中であるため、ニシンをよく食べ、クリスマス(ボジェ・ナロヅェニェ Boże Narodzenie/神さまの誕生日)にはきれいな水で養殖された臭みのない鯉(カルプ karp)のフライを主菜とする。
野菜 [編集]
野菜はホウレンソウのピューレのほかには緑黄色の葉野菜はあまり摂らず、代わりにキャベツ(カプスタ kapusta)ときゅうり(オグレック ogórek)を大量に食べる習慣がある。キャベツの漬物(カプスタ・クファショナ kapusta kwaszona またはカプスタ・キショナ kapusta kiszona)ときゅうりの漬物(オグレック・クファショヌィ ogórek kwaszony またはオグレック・キショヌィ ogórek kiszony)はほぼ毎日食べる。ポーランド系アメリカ人の女性は他の民族グループに比べて乳癌の罹患率が特に低く、キャベツを大量に食べる習慣と関連付けられている[10]。
春はポーランド人にとってアスパラガス(シュパラク szparag)の季節である。ポーランド人は伝統的に軟白したアスパラガス(シュパラグ・ピャウィ szparag biały)を好む。白いアスパラガスは皮をむき、ゆでたものにバターやマヨネーズをベースにしたソースをかけたり、肉料理や魚料理のつけあわせにしたり、独特のクリームスープ(クレム・ゼ・シュパラグフ krem ze szparagów)の具にしたりして食べる。最近はイタリア料理や中華料理など外国料理の影響で緑のアスパラガス(シュパラグ・ジェロヌィ szparag zielony)も好まれるようになった。またポーランド国内では、すでに西ヨーロッパ諸国で見ることのできなくなった野生のアスパラガスがいまだ大量に自生し、田舎では若いものを摘んできて料理する。
そのほかに通常は、テーブルビート(ブーラク burak)、トマト(ポミドル pomidor)、ジャガイモ(ジェムニャクziemniak またはカルトフェル kartofel)、パプリカ(パプルィカ papryka)、ニンジン(マルヘフ marchew)、セロリ(セレルィ selery)、ニンニク(チョスネック czosnek)、たまねぎ(ツェブラ cebula)、ハツカダイコン(ジョトキェフ rzodkiew)、ダイコン(ジョトキェフ・ヤポンスカ rzodkiew japońska/日本のハツカダイコン)、ハクサイ(カプスタ・ペキンスカ kapusta pekińska/北京のキャベツ)などを食べる。近年は外国から輸入された野菜や新たにポーランド国内で栽培の始まった野菜も店頭に並んでいる。
スラヴ民族の特徴として、さまざまなキノコを食べる習慣があり、特にポルチーニ(ボロヴィック borowik)とマッシュルーム(ピェチャルカ pieczarka)は普段から頻繁に食べる。そのほかに多くの種類のキノコが店で売られている。近年はシイタケ(トゥファルヂャク・ヤポンスカtwardziak japońska)も広まっている。秋には森へキノコ狩りに出かけ、大量のキノコを採取する習慣がある。ポーランド人はキノコのクリームスープを特に好む。また家庭では大量のキノコをピクルスにして冬の保存食とする。
果物 [編集]
果物はベリー(ヤゴダ jagoda)の種類が特に豊富である。
- イチゴ(トゥルスカフカ truskawka)
- キイチゴ(イェジナ jeżyna)
- ラズベリー(マリナ malina)
- ブルーベリー(ボルフカ borówka)
- ビルベリー(ボルフカ・チャルナ borówka czarna)
- コケモモ(ボルフカ・ブルシュニツァ borówka brusznica)
- グーズベリー(アグレスト agrest)
- 赤スグリ(ポジェチュカ・チェルヴォナ porzeczka czerwona)
- 黒スグリ(カシス)(ポジェチュカ・チャルナ porzeczka czarna)- カシスは収穫高と輸出高でポーランドが世界一。世界全体の約半分を占める。
- ツルコケモモ(ジュラヴィナ żurawina)
- ブラックベリー(イェジナ jeżyna)
など、数え切れないほどの種類がある。旬になると店にはたくさんのベリー類が並び、夏には森へ野生のベリーを摘みに行く習慣がある。
それ以外にも、
- サクランボ(チェレシニャ czereśnia/ヴィシニャ wiśnia)
- スモモ(モレラ morela)
- プルーン(シリフカ śliwka)
- モモ(ネクタリナ nektarina)
- リンゴ(ヤプコ jabłko)
- セイヨウナシ(グルシュカ gruszka)
などを食べる習慣がある。
セイヨウナナカマド(イェジェンビナ jarzębina)やローズヒップ(ルジャ・ヂカ róża dzika)など、生食できないものでも、ジャムなどにして食べる。果物ではないが、ポーランドには「バラの花びら」をジャムにする食習慣があり、ポーランド式ドーナツ「ポンチキ」の中に入れるフィリングとしては最も一般的。
ポーランドでは、果物は肉料理やスープにも頻繁に使われる。ベリー類のジャムはグリルした羊乳スモークチーズ(オスツィペック)につけて食べる(お祭りなどの屋台ではたいがいこの羊乳スモークチーズのグリルが売られていて、ポーランド名物となっている)。またピエロギやジャガイモの団子(ピズィ)の具にもなる。
ポーランド国内ではあまり栽培がされていないが、ブドウ(ヴィノーロシル winorośl)はポーランド人の好物で、たくさんの種類が輸入されて店頭に並んでいる。近年はマンゴー、ドリアン、マンゴスチンなどのトロピカルフルーツもさかんに輸入されている。
乳製品 [編集]
ポーランド人は乳製品、特にフレッシュチーズが大好物で、驚くほど大量に食べる習慣がある。社会主義時代には新鮮な乳製品の入手は産地でなければ非常に困難であったが、1989年に体制が変わってからは生産や流通が活発化して手軽に手に入るようになった。体制変革後に成長期を経たポーランド人は、体制変革前に成長期を過ぎたポーランド人と比べて極端に背が高く、牛乳や乳製品の摂取量の違いが指摘されている。
フレッシュチーズでは、生乳を軽く発酵して作る軽い酸味のあるクアルクチーズ(トゥファルク twaróg、トゥファロジェック twarożek/トゥファルクちゃん、セル・ビャウィ ser biały/白チーズ、またはセレック・ビャウィ serek biały/白チーズちゃん)が一般的である。見た目はカッテージチーズに似ているが、生乳を使い、それを事前に少し発酵させるなど、製法はカッテージチーズとは異なる。味はくせがなくおいしい。乳脂肪分の割合(%で表示されている)の異なるトゥファルクが売られており、用途や好みに応じて買う。北東部の広大な湿地帯では、ポーランド固有の赤牛の乳を使ったトゥファルクが各農家の家内工業で生産されており、近年はこれがブランド化される傾向にある。羊やヤギの乳で作った一種のクアルクチーズ(ブリンザ bryndza)は南部の山岳地帯でよく食べられている。「ブリンザ」はヨーロッパ連合(EU)でポーランドのこの地域のこのチーズのみに使用が許されている名称[4]。フレッシュチーズはそのまま食べたり、ディルやネギなどのハーブや香味野菜を混ぜて塩コショウなどで味を調えパンに乗せて食べたり、サラダに使ったり、ポーランド式チーズケーキ(セルニック)をはじめとしたケーキの材料にしたりする。
南部のマウォポルスカ地方やその周辺の農家ではヤギの生乳から作った非常にクセの強いスモークチーズが各農家の家内工業で生産されており、このチーズはポーランド人の間でも好き嫌いが分かれる。地域よって製法・見た目・味が微妙に異なり、それぞれオスツィペック(oscypek)、オシュチペック(oszczypek)、ゴルカ(golka)、レディコルカ(redykolka)、ブンツ(Bundz)などと呼ばれている。これらは一般に紡錘や俵のような形をしており、独特の紋様がつけられている。数日間から14日間ほどかけてゆっくりと燻煙する。これを適当な大きさに輪切りし、フライパン、オーブン、オーブントースターなどで柔らかくなるまで焼いたものはバツフカ(Bacówka、「羊飼いの小屋」の意味)あるいはポドスマジャヌィ・オスツィペック(podsmażany oscypek=焼いたオスツィペック)といい、蜂蜜、メープルシロップ、ジャム、ベリーソース、ホイップクリーム、サワークリームなどを乗せると、ちょうど良いおやつになる。
外国風のチーズではゴーダチーズやクリームチーズが特に好まれる傾向にあるようだが、そのほかにもさまざまな種類のチーズが売られている。
ヨーグルト(jogurt)をたくさん食べる。さまざまな料理にサワークリーム(シミェタナ śmietana、あるいはシミェタンカ śmietanka/サワークリームちゃん)を使うことが多い。ケフィア(ケフィル kefir)を飲む習慣がある。
ポーランドのバター(マスウォ masło)は通常は無塩バターで、薄く切ったライ麦パン(フレプ、またはフレペック/フレプちゃん)にたっぷりと塗り、そこにハムやチーズなどの具を乗せて食べる人が多いが、摂取カロリーに気を使う若い女性はバターの摂り方を控える傾向がある。
デザート・菓子 [編集]
- 代表的なデザートやお茶菓子は、
- アイスクリーム(ロディ lody)
- ポーランド風クレープ(ナレシニキ naleśniki)
- プディング(ブディン budyń)
- フルーツを具に使ったピエロギまたはウシュカ(耳ちゃん)
- 中に果物を入れたジャガイモの団子(ピズィ)
- 大量のケシの実のロールケーキ(マコヴィェツ makowiec) - クリスマスなどの特別な日によく振る舞われる[11]
- 大量のケシの実を練りこんだパウンドケーキ (ピェグセック piegusek)
- シレジア地方式クラムケーキ (コラチ・シロンスキ Kolacz Śląski)- リンゴやケシの実をたくさん使用したクラムケーキ
- ポーランド式ベークドソフトチーズケーキ(セルニック sernik)
- ポーランド式パウダードチーズケーキ (セルニック・プドロヴァーニィ sernik pudrowany)
- ストルツラ strucla (ポーランド式シュトゥルーデル) - オーストリアのシュトゥルーデルにあまり似ておらず、トルコのバクラヴァに近い
- ポーランド式イーストケーキ(バプカ babka あるいはババ babaあるいはバプチャ babucia/意味は「おばあちゃんケーキ」、バプカ・ヴィェルカノツナ babka wielkanocna/復活祭のおばあちゃんケーキとも言う) - フランスなどのババの原型がこれで、特に型に特徴がありフランスでも「ポーランド式」の型と呼ばれる
- シャルロートカ(szarlotka)- 軽いりんごケーキ
- ヤプウェチュニック (jabłecznik) - 濃厚なりんごケーキ
- チョコレートタルト (トルト tort)
- ミルフィーユ(ナポレオン napoleon)
- ポーランド・リトアニア式バウムクーヘン(センカチュ sękacz)
- ポーランド式「堅いワッフル」(ポトプウォムィク podpłomyk)
- ポーランド式「やわらかいワッフル」 (ゴーフル gofr、通常は大量の生クリームと、フルーツやチョコレートなどの甘いソースが乗せられ、屋台で売られる)
- トルニのジンジャーブレッド(ピェルニキ・トルンスキェ pierniki toruńskie)
- チョコレート(チェコラーダ czekolada)
- 練りゴマと水飴を練ったハルヴァ(ハウヴァ chałwa)
- ポーランド式ローストプレッツェル(パルーシュキ paluszki/指ちゃんたち)
- 煎りゴマを水飴で固めた菓子(ゼザムキ sezamki)
- バラのジャムのドーナツ(ポンチェック pączek、複数形はポンチュキ pączki)
- 鶏卵入りの縄編みパン(ハウカ chałka、ストルーツラ strucla)
- 芥子の実とパンのプディング(マクフキ makówki)- クリスマス・イブや大晦日に食べるシレジア発祥のデザート
- さまざまな菓子パン(単数形ドロズゾフカ drozdzowka、複数形ドロズゾフキ drozdzowki)
- わたあめ(ヴァタ wata、ないし「飴の綿」を意味するヴァタ・ツクロヴァ wata cukrowa)- ポーランドでは「わた(綿)」をヴァタ(wata)と呼び、日本語の「わた」のローマ字綴り(wata)と偶然にもまったく同じ。
など。
ポンチェックは復活祭前に肉食を絶つ期間(四旬節)直前の木曜日にあたる「脂の木曜日」(トゥスティ・チュヴァルテク Tłusty czwartek)という祭日に、満腹になるまで食べる習慣がある[12]。ポーランド式クリームケーキ(クレムフカ kremówka)は前ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世が若いころからの大好物で、これが知られるとポーランド国内でクレムフカが流行したことがある[13]。古都クラクフにはベーグルに似た名物のクラクフ式ベーグル(オブヴァジャネック obwarzanek)を売る屋台がたくさんあり、何もつけないもののほかケシの実やゴマを表面に散らしたものがあって大変な人気があり、夕方にはどの屋台でも売り切れてしまう。
また、ワルシャワで1851年に創業されたチョコレートショップのE・ヴェーデル(E.Wedel)が作るホットチョコレート(ゴロンツァ・チェコラーダ gorąca czekolada)は有名で、これもポーランド人は誇りにしている。
ポーランド人の飲み物 [編集]
ソフトドリンク [編集]
ポーランド人は紅茶(ヘルバータ herbata)をよく飲む。東方正教会の信者が多い北東部ではロシアから伝わったサモワール(サモヴァール samowar)も使用されている。また、さまざまなハーブティー(ナパル napar)を薬としてよく飲む。
家庭では果物のソフトドリンク(コーンポト kompot)を作る習慣があり、冷たいまま、あるいは暖めて飲む。1990年代にコーラなどの清涼飲料水が普及すると、家庭の手作りの飲み物であるコーンポトは「ダサい飲み物」としてあまり飲まれなくなったが、近年は材料であるベリー類などの果物に含まれる果糖による体にやさしい甘みのほか、ビタミン、ミネラル、酵素、抗酸化物質、クエン酸、ペクチンなどを多く含む健康的な飲み物として急速に見直され、再び多くの一般家庭で見られるようになってきた。
女性や子供はポーランド式の清涼飲料マルタ(malta)をよく飲む。家庭で手作りすることもある。店ではプレーンのほか、バニラ、フルーツ、コーヒー、チョコレートなどのフレーバーがついたものが売られている。ココア(カカオ kakao)は子供に人気がある。
コーヒー(ポーランド語でカヴァ kawa)もよく飲む。近年はエスプレッソが人気だが、伝統的なものはトルココーヒーに近い淹れ方をする。ウィーンにてヨーロッパ大陸最初のカフェを開店し、カフェ文化を広めたのが第二次ウィーン包囲の際にオスマン帝国からウィーンを救ったポーランド王ヤン3世配下の将校フランチシェク・クルチツキ(Jerzy Franciszek Kulczycki)であったことを誇りにしている。ウィーンには彼の名前にちなんだ「コルシツキー通り(Kolschitzky gasse)」があり、彼の銅像がある。
アルコール飲料 [編集]
ポーランド人にはアルコール好きが多い。一方で20%程度が禁酒家でもある[14][15]。
ウォッカ(ポーランド語ではヴートゥカ wódka)を代表として蜂蜜酒(ミュト・ピトヌィ miód pitny)、ビール(ピヴォ piwo)の種類が豊富。家庭ではさまざまなリキュールを作る習慣がある。
ポーランド原産のウォッカとして、アルコール度数世界一の「スピリタス(正しくはスピリトゥス spirytus)」、香草ウォッカの「ズブロッカ(正しくはジュブルフカ żubrówka)」、果物で香りをつけた「チェリーウォッカ(ヴィシニュフカ wiśniówka)」、香木で香りをつけた「バルサム(Balsam)」、「ベルヴェデーレ(Belvédére)」や「ショパン(Chopin)」などの最高級ウォッカ、ヨーロッパでもっとも人気のある高級ウォッカ「ヴィボロヴァ(Wyborowa)」、オークの木の樽で長期間熟成させた古酒「スタルカ(Starka)」など多数の種類がある(ポーランドのウォッカのブランドについてはウォッカ#ポーランドを参照)。近年は強いアルコール飲料が敬遠される傾向にあり国内のウォッカ消費量は減少の一途をたどっているが[7]、西ヨーロッパ、北アメリカ、日本などへの輸出は好調で、生産量は大幅に増加している。
近ごろのポーランド人の主要なアルコール飲料はむしろビールで、消費量も急拡大している。かつてはチェコとドイツ同様、ポーランドでもビールの醸造が伝統的に行われていたが、一時期ビール産業は衰退する[7]。近年になってビール産業に活力が戻り、多くの生ビールと地ビールが出回っている[16]。代表的なブランドは、ジヴィエツ(Żywiec)、オコチム(Okocim)、エーベー(EB)、ティスキェ(Tyskie)、デンボヴェ(Dębowe)など。各社ともピルスナー、ラガー、バルチックポーターなどさまざまな種類のビールを出している。非常に古い形のビールとして、ライ麦パンを発酵させたどぶろくのようなビール(ポドピヴェック Podpiwek)もある。
ワイン(ヴィノ wino)は国内でも西部ルブシュ県のジェロナ・グラと中東部マゾフシェ県のヴァルカ(Warka)の2ヶ所で造られており、いずれも白ワインである。この2ヵ所には、ワイン用のブドウ畑がある。国産ブランデーも造られている。ワインは中世の昔から大量に輸入されており、ワインの輸入販売で財をなした豪商もいたほど、ポーランド人に好まれている。昔からブルガリアやグルジアなどの赤ワインやハンガリーの貴腐ワインがよく飲まれていたが、近年はフランスをはじめとする世界中からワインが輸入されている。赤ワインが好まれ、白ワインやスパークリングワインを日常的に飲むことは比較的少ない傾向にあるが、誕生日や結婚式などといったお祝い事にはシャンパンが出てくる。ワインベースの混酒、ポンチュ(poncz)やクルション(kruszon)も親しまれている。
脚注 [編集]
注釈 [編集]
- ^ 1996年2月に刊行された 沼野充義監修『中欧 ポーランド・チェコ スロヴァキア・ハンガリー』、p300 には、外食産業が未発達であると書かれている。
引用元 [編集]
- ^ a b c 渡辺『ポーランドを知るための60章』、p162
- ^ 『ポーランド料理』、p26
- ^ http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2916512/9989394?ctm_campaign=txt_topics
- ^ http://mainichi.jp/feature/news/20121213reu00m030007000c.html
- ^ 沼野『中欧 ポーランド・チェコ スロヴァキア・ハンガリー』、p298
- ^ 渡辺『ポーランドを知るための60章』、p163
- ^ a b c 沼野『中欧 ポーランド・チェコ スロヴァキア・ハンガリー』、p300
- ^ 『ポーランド料理』、p30
- ^ a b 渡辺『ポーランドを知るための60章』、p164
- ^ New study touts sauerkraut's cancer fighting strength
- ^ 渡辺『ポーランドを知るための60章』、p165
- ^ 『ポーランド料理』、p29
- ^ [1](2012年2月閲覧)
- ^ [2]
- ^ [3]
- ^ 沼野『中欧 ポーランド・チェコ スロヴァキア・ハンガリー』、pp300-301
参考文献 [編集]
- 沼野充義監修『中欧 ポーランド・チェコ スロヴァキア・ハンガリー』(読んで旅する世界の歴史と文化, 新潮社, 1996年2月)
- 藤井朋子、八木めぐみ、吉岡則子編『ポーランド料理』(日本ポーランド協会関西センター, 2000年3月)
- 渡辺克義編著『ポーランドを知るための60章』(エリア・スタディーズ, 明石書店, 2001年9月)
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