朝食

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朝食(ちょうしょく)とは、に摂る食事のことである。朝餉(あさげ)ともいう。また、米飯の有無にかかわらず、朝飯(あさめし)、朝御飯(あさごはん)と呼ばれることもある。さらに英語で朝食を意味する breakfast からブレックファーストまたはブレックファストと呼ぶこともある。

概要[編集]

朝起きて、最初に食べる食事である。1日の食事の中では比較的軽食である場合が多い(ただし英国など一部地域ではしっかりと摂る)。また、後述のとおり、朝食を摂らない人も多い。多くの栄養学者は一日の活動を始めるための大事なエネルギー栄養を供給する食事として朝食を摂ることを薦めている。逆に摂らない方がよいと主張する医師なども存在する。

人間の場合はまず、朝起きてから実際に活動に適した体温に上がるまでに、若干の間があり、この体温上昇を促し、午前中~日中の活動に必要なカロリーを摂取する必要もあるが、まだ消化器官が活発に活動していない時間帯ともあって、消化しやすい炭水化物が中心となる傾向が強い。

起床して朝食を摂ることで一日が始まるが、その朝食を摂るまでもなく簡単に済ませられるぐらい容易なことを「朝飯前」と呼んだりする。

各地の典型的な朝食[編集]

フランス[編集]

パンバゲットまたはクロワッサン)や、シリアル、 飲み物にカフェ・オ・レコーヒーなど。パンにはジャムバターを添えることがある。

ドイツ[編集]

パン(多くライ麦の入った酸味のあるものが好まれる)・コーヒーヴルスト(ソーセージ)・ハム。果物を取ることもある。コーヒーでなく、紅茶や野菜ないし果物ジュース麦芽を溶いたミルクを好むものもある。全体にあまり火を通さないものを並べる(カルトエッセン)

ドイツ料理には、Bauernfrühstück バウエルンフリュシュトューク[注 1] (「農夫の朝食」)と呼ばれるボリュームのあるじゃがいも料理があるが、これが朝食に食べられることはない。農夫のように肉体労働をする人なら、朝食に食べるかもしれないが、という意味合いで、実際にはブランチ、もしくは昼食に食べられるものである。

イギリス・アイルランド[編集]

産業革命の時代より、伝統的にたっぷりの食事を、時間を掛けて食べるものとされ、炭水化物以外にも脂肪分や動物性蛋白質の豊富なメニューが並ぶ。

サマセット・モームが「イングランドでおいしいものを食べようと思うなら朝食を3回食べよ」と言ったように、評判の良くないことが多いイギリス料理のなかで朝食の評価はおしなべて高い。ただし量がとても多いので、旅行者の評判は微妙な傾向も見られる。英語では、イングリッシュ・ブレックファスト[1](イングランド風朝食)と呼び、大陸の簡素な食事をコンチネンタル・ブレックファスト[2](大陸風朝食)と呼ぶ。

18世紀以前は他の大陸諸国と同じく簡素な食事だったが、産業革命期に現在の英国風朝食のスタイルが生じてきた。

ベーコン卵料理(通常は目玉焼き)を基本とし、英国風ソーセージマッシュルームソテー、焼きトマト、 ブラック・プディング(豚の血で作った黒ソーセージ)、ベイクド・ビーンズ(の煮物)などにバタージャムを塗ったトーストや揚げパンとミルクを添えた紅茶を添える。イギリス人はこのボリュームのあるFull English Breakfast を週末の朝などに食べている。通常は簡素なシリアルやトーストなどで済ませる者が多い。イギリス国内ではイングランド以外でも同様の朝食をとる食習慣があるが、スコットランドではこのような朝食を「スコティッシュ・ブレックファスト」[3]と呼ぶ。

イギリス国外でも、その影響の強いアイルランドではそのような朝食をとるが、これを「アイリッシュ・ブレックファスト」[4]と呼ぶ。

中国・香港・台湾[編集]

地域によって異なるが、概ね饅頭(マントウ)など。粥には油条と呼ばれる揚げパンが供される場合がある。点心などで済ませる者も多い。

日本[編集]

江戸時代、庶民の間にも米食が広く普及するにつれ、地方により朝食における米食のスタイルの違いが見られるようになった。江戸では朝に炊飯したものを朝食として食し、夕食には湯漬けや茶漬け等にすることが多かったが、京阪などでは夕食に炊飯した残りを翌朝にとして食すことが多かった。

和風の場合にはそれ相応に手間の掛かる傾向が強く、家庭主婦の重労働とされる仕事の一つにも挙げられていたが、現在では様々な調理器具や調理済み食品が出回っている関係で省力化が進んでいる。

現代では、和風ならば、ごはん味噌汁納豆、生焼き魚漬物海苔加工品など。茶粥を食べるところもある。洋風ならばパン目玉焼きコーヒースープなど。

家庭によっては、前日の夕食の残り物を利用する場合がある。とくに鍋料理の場合はその傾向が強く、おでん惣菜の1品として、水炊きすき焼きの場合は雑炊などに調理して食べる。

アメリカ[編集]

アメリカ合衆国は移民の国であるので様々な形態の朝食が並立している。各移民が出身国の伝統を持ち込んでおり、また米国の地で生み出された新たな選択肢も加えられている。現在でもルーツにあたる国の朝食を摂っている家庭も相当数あり、イギリス系の人々はイギリス風の、ドイツ系の人々はドイツ風の、中国系の人々は中国風の朝食を摂るなどということも行われている。総数としてはイギリス系の人口が多いので日本のメディア等ではそれが紹介されることが比較的多い。

トーストシリアル卵料理(例:エッグスベネディクト) 、ベーコンハムソーセージパンケーキワッフルフレンチトーストドーナツマフィンベーグル果物ハッシュドポテトコーンビーフハッシュなど。

ただしこのすべてが供されるわけではなく、好みによって選択する。また、ブレックファスト・ステーキというものもある。

宿泊施設の朝食[編集]

ホテル等で提供される、コンチネンタルブレックファストは、基本的に温かい食べ物がない。たとえば、ロールパンバターサラダフルーツ等である。飲み物に関しては、紅茶コーヒーなどが付くことがある。

一方、アメリカンブレックファストは温かい食べ物が提供される。たとえば、トーストスクランブルエッグ等である。

京都の旅館での朝食。「部屋食」

日本の旅館では前述(「各地の典型的な朝食」)の標準的な献立を中心に、客間で客それぞれに配膳する、いわゆる「部屋食」が正式な給仕法である。しかし、平成期に入った頃から効率化のため高級な施設以外では、食堂でビュッフェ形式の朝食を提供することが多くなった(俗に「朝食バイキング」と呼ばれる)。また、食堂で客それぞれに配膳する形式も存在する。日本のホテルでは以前から高級な施設ではルーム・サービスのアメリカンブレックファストと、食堂でのビュッフェ形式を選択出来る。それ以外のクラスでは食堂でのビュッフェ形式のみが提供される。低料金で素泊まり中心のホテルでは、ごく簡単な食事をサービスとして提供することもある(パン、飲み物程度)。

この辺りは世界的にも朝食の内容に関して、お国柄や個人差が大きく出る部分もあり、先に上げた英国でも、外国人観光客が泊まるようなホテルでは、少なくともコンチネンタルとブリティッシュ(アメリカン)のどちらかのスタイルが選べる様式が見られる。

日本の飲食店や各種施設等での朝食提供[編集]

飲食店

日本では、飲食店の中には早朝から営業開始し、朝食を提供するものもある。典型例として、中京圏喫茶店が行っているモーニングサービス和製英語。「モーニングセット」や、単に「モーニング」と呼ぶこともある)が挙げられる。また、ファーストフード店やファミリーレストランが朝間限定のメニューを提供している(例えば、マクドナルド朝マックや、いくつかの牛丼屋チェーンが提供する「朝定食」など)。

教育施設

近年では、大学などが、学生の食習慣や生活習慣を改善することを狙って学生食堂でたっぷりとした朝食を格安や無料で提供する例もある(東北大学宮城教育大学など)[注 2]

交通機関

交通機関においても朝食が提供されていることがある。宿泊設備を備えた船舶や列車(寝台列車や長距離フェリーなど)で提供されているのはある意味当然で一般的であるが、他にも例えば一般の通勤用鉄道列車でも、朝の通勤時などに列車内で食べられるような朝食用の駅弁が販売されているものがある(高崎駅上州の朝がゆなど)。また東海道新幹線では、朝8時30分までに東京駅名古屋駅新大阪駅を発車する列車内において、サンドイッチとコーヒーをセットにしたモーニングセットが車内販売されている。航空では、国際線の機内食で朝食(「リフレッシュメント」と呼ぶこともある)を提供する場合もあり、その内容は航空会社ごとに様々である。

特定地域の珍しい習慣

喜多方ラーメンで有名な福島県喜多方市では、朝食にラーメンを食べる習慣があり(朝ラーメン)、「朝ラー」という言葉で新聞にもとりあげられた[5]

朝食の有無と健康への影響[編集]

日本では、20歳代の男性では3人に1人、女性では5人に1人が朝食抜きと言われている[6]。原因は夜更かしの結果やダイエット目的が多いとされる。

朝食を抜くことについては、健康面において、しばしば次のような悪影響があると指摘されている[6]

  • 体力や集中力の低下を招き、生体リズムが乱れる結果、午前中の仕事や学業に集中できない。全寮制の大学での調査で、朝食を摂ったグループがそうでないグループより学業成績が優れ、欠席時間も少ないとの報告も出ている。
  • 昼食夕食の2食だけでは栄養素の補給が不十分であり、夕食の比重が高くなる。すると、肥満につながり、糖尿病や高血圧などの生活習慣病を誘発する。この点については同じ食事量にもかかわらず食べる回数が少なくなると、肥満、心臓疾患、糖尿病のリスクが高くなるというデータがある[7]

ダイエットのために朝食をとらないことは科学的には疑問とされ、実際、相撲力士には昔から体重を増やすために朝食をとらない風習があり、これにはヒトの体は空腹時間が長くなると防衛本能が働いてエネルギーをなるべく消費せずに体内に蓄えるようになるという科学的根拠がある[7]

東北大学加齢医学研究所教授の川島隆太らによると、朝食を毎朝摂っている人ほど幸福を感じているというアンケート結果が出ている[8]

脚注[編集]

  1. ^ アクセントは、ウエルンフリュシュトューク
  2. ^ 早起きをして学生食堂に来た学生にだけ格安(例えば50円程度)で提供するようにしているパターンや、運動競技の強化選手指定を受けている学生などに(十分な栄養をとり良い成績を残すことを期待して)無料で提供しているパターンなど。
出典
  1. ^ : English breakfast
  2. ^ : continental breakfast
  3. ^ : Scottish breakfast
  4. ^ : Irish breakfast
  5. ^ “「朝ラー」大入り 喜多方”. 朝日新聞. (2007年9月9日). http://www.asahi.com/komimi/TKY200708290069.html 2010年9月7日閲覧。 
  6. ^ a b あなたの健康百科 - 朝食抜きの弊害
  7. ^ a b 落合敏監修 『食べ物と健康おもしろ雑学』 p.186 梧桐書院 1991年
  8. ^ “毎日朝食取る人は「幸福」実感…健康や家族重視”. 読売新聞. (2010年9月17日). http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100917-OYT1T00064.htm 2010年9月18日閲覧。 

関連項目[編集]