メダカ

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メダカ
Oryzias latipes(Hamamatsu,Shizuoka,Japan,2007)-1.jpg
ミナミメダカ(メス) 浜松市
Nihonmedaka.jpg
ミナミメダカ(オス)静岡県富士市
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
上綱 : 顎口上綱 Gnathostomata
: 条鰭綱 Actinopterygii
亜綱 : 新鰭亜綱 Neopterygii
上目 : 棘鰭上目 Acanthopterygii
: ダツ目 Beloniformes
亜目 : アドリアニクチス亜目
Adrianichthyoidei
: アドリアニクチス科
Adrianichthyidae
亜科 : メダカ亜科 Oryziinae
: メダカ属 Oryzias
: スメグマモルフ系
Smegmamorpha
亜系 : トウゴロイワシ亜系
Atherinomorpha
: ミナミメダカ O. latipes
キタノメダカ O. sakaizumii
学名
Oryzias latipes
(Temminck et Schlegel, 1846)
Oryzias sakaizumii
Asai, Senou et Hosoya, 2012
英名
Japanese rice fish
Japanese medaka
Japanese killifish

メダカ(目高)またはニホンメダカは、ダツ目 メダカ科(アドリアニクチス科)に属するであるミナミメダカ Oryzias latipesと、キタノメダカ Oryzias sakaizumii 2種の総称。体長 4 cm 程の淡水魚。ミナミメダカの学名である Oryzias latipes は『の周りにいる足(ヒレ)の広い』という意味である[1]。また、キタノメダカの種小名である「sakaizumii 」は、メダカの研究に貢献した酒泉満への献名である。また観賞魚として品種改良された「ヒメダカ」も存在する。

が大きく、頭部の上端から飛び出していることが、名前の由来になっている。飼育が簡単なため、キンギョ同様、観賞魚として古くから日本人に親しまれてきたほか、様々な目的の科学研究用に用いられている。西欧世界には、江戸時代に来日したシーボルトによって、1823年に初めて報告された。

分布[編集]

日本、台湾朝鮮半島中国ベトナムスリランカなどに分布する。この他、イラントルクメニスタンなどにも移入されている。北アメリカにも移入された地域がある。

日本では本州から琉球列島にかけて分布する。北海道の一部地域にも移入されて分布している[2]

形態[編集]

体長3.5cmほどの小型の魚[3]。側線はない。背びれはかなり後ろにあり、腹びれの前端より後ろ。腹びれは前後に長い。

体色[編集]

メダカの体色は、野生型では焦げ茶色がかった灰色だが、突然変異型では体表の、黒色黄色白色虹色の4種類の色素胞の有無あるいは反応性の違いによって様々な色調を示し、カラーメダカと呼ばれる。突然変異型には以下のものがある。

  • ヒメダカ(緋目高) - 黒色素胞(メラノフォア)がないため体色がオレンジ色をしている。観賞用や教材用に流通している[3]
  • シロメダカ(白目高) - 黒色素胞がなく黄色素胞(キサントフォア)が発達していないため、体は白い。
  • アオメダカ(青目高) - クロメダカと見た目が似ている。
  • アルビノ(白子) - 黒色と黄色の色素細胞が全くない。体が白いだけでなく、血液の色で赤い。実験用に作製された。
  • 透明メダカ - 黒色、白色(ロイコフォア)、虹色(イリドフォア)の3種の色素胞を持っておらず、体が透けて内臓まで見えるため、解剖を行わなくても生きている生物の内臓を研究できるようになった。名古屋大学若松佑子によって作出された。

これらと区別するため、野生型のメダカを通称クロメダカ[3]、野メダカ、昔メダカともいう。

遺伝子操作されたメダカ[編集]

発光遺伝子を持った「光るメダカ」などが台湾などから輸入され一部の業者で販売されている。「光るメダカ」とはメダカの受精卵DNAの一部を、発光クラゲから取り出した蛍光起因を持つDNAと組み換えて作り出す遺伝子組み換え生物である。人為的に作られた生物のため、野生には存在しない。

遺伝子組換え生物は自然界に放たれた際の遺伝子汚染が危険視され、日本では遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法)によって規制されている。この光るメダカは同法の承認がない状態で輸入・流通している違法な商品であるため、環境省及び農林水産省が同生物の回収を呼びかけている[4]

生態[編集]

小川のメダカの群れ
(俗に“めだかの学校”という)

流れのゆるい小川水路などに生息し、動物プランクトンなどを食べる。幼虫ボウフラを好んで食するため、ボウフラを退治する益魚としても知られている。

1回の産卵で、約10個のを産む。通常、からにかけて産卵し、孵った仔魚は夏、の間をかけて成長し、次の年に産卵する。早い時期に孵化したもののなかには、その年の秋に産卵をする個体もある。メダカの産卵時期と水田に水が張られる時期は一致しており、日本の稲作文化と共存してきた「水田の魚」とも称される[3]

また、腎機能が発達しているため耐塩性が非常に高く、慣れさせれば、海水で生活することも可能である[5][6]。 この体質を利用し、台風などの洪水で海に流されても河口付近の汽水域に駐留し、流水量が緩やかになってから遡上することができる。

一般にメダカの寿命は1年と数か月ほどといわれているが、人工的な飼育下ではその限りではなく、長いものでは3 - 5年程度生きる[3]

絶滅危惧と保護活動[編集]

かつて日本では、童謡めだかの学校」にも歌われたように、小川にはごく普通にメダカの群れが見られた。しかし、1980年代あたりから野生のメダカが各地で減少し始め、姿を見ることが難しくなった[3]。減少の主な原因は、農薬の使用や生活排水などによる環境の悪化、護岸工事や水路の整備などによる流れの緩やかな小川の減少、繁殖力の強い外来種ブルーギルカダヤシなど)による影響が挙げられている[3]。また、メダカは水田のような一時的水域に侵入して繁殖する性質が強く、近年の農地改良に伴う用排分離により、用排水路から繁殖時に水田内に進入することが困難になっていることが特に致命的となっており、メダカの繁殖力を著しく削いでいる[3]

こうしたメダカを取り巻く環境の変化により、1999年2月に環境庁(当時)が発表したレッドリストにて絶滅危惧II類(VU)環境省レッドリスト)(絶滅の危険が増大している種)にメダカが記載され、メダカは2003年5月に環境省が発表したレッドデータブック絶滅危惧種として指定された。身近な生き物だったメダカが絶滅危惧種となったことはマスメディアにも大きく取り上げられ、日本各地で保護活動が活発に行われるようになった[3]

しかし、絶滅危惧種であるメダカを守ろうとする保護活動が、メダカの遺伝的多様性を減少させる遺伝子汚染という新たな問題を起こしている[3]

メダカの生息水域ごとの遺伝的な違いは詳しく研究されており、アロザイム分析により遺伝的に近いグループごとにまとめると、北日本集団南日本集団に大別される。2007年8月のレッドリスト見直しの際は、メダカの絶滅危惧II類(VU)の指定が「メダカ北日本集団(Oryzias latipes subsp.)」と「メダカ南日本集団(Oryzias latipes latipes)」の2つに、2013年2月の第4次レッドリストでは、「メダカ北日本集団(Oryzias sakaizumii )」と「メダカ南日本集団(Oryzias latipes)」の2つに分けて記載された[7]。北日本集団と南日本集団は遺伝的には別種といってよいほど分化がみられるが、生殖的隔離は認められておらず、両者の分布境界にあたる丹後・但馬地方では雑種の存在が確認されている[3]。この大きな遺伝的分化は少なくとも数百万年前には発生していたといわれている[3]。アロザイム分析によれば、南日本集団については生息している水域ごとに「東日本型」、「東瀬戸内型」、「西瀬戸内型」、「山陰型」、「北部九州型」、「大隅型」、「有明型」、「薩摩型」、「琉球型」の9種類の地域型に細分されるとの結果がでている[3]。さらに、ミトコンドリアDNAの解析からはこれらの水域ごとの遺伝的に異なる個体群にはそれぞれ相互に異なる環境適応の構造が検出されている[3]

絶滅危惧に指摘されたことで、にわかに保護熱が高まった結果、こうした遺伝的な違いなどへの配慮をせずにメダカ池やビオトープ池を作り、誤って本来その地域に放流すべきでない他の地域産のメダカや、観賞魚として品種改良を施された飼育品種であるヒメダカを放流した例が多数ある[3]。実際に、関東地方の荒川利根川水系に生息する個体群のほとんどは、瀬戸内地方や九州北部に分布するはずのメダカであることが判明している[3]。ひどいところでは、誤ってカダヤシをメダカのいる池に放流してしまった例もある。

現在は、地域ごとに遺伝的に大きな多様性を持った地域個体群の局所的な絶滅の進行が危惧されており、遺伝的多様性に配慮した保護活動が望まれている。メダカの保護には生息地の保全がまず重要とされ、安易な放流は慎むことが求められる[3]生態系全体を考慮したうえでやむを得ず放流が必要な場合は、日本魚類学会が示した「生物多様性の保全をめざした魚類の放流ガイドライン」などを参考にしつつ、専門家の意見を聞くべきである[3]

利用[編集]

モデル生物[編集]

メダカをめぐる生物学は、明治時代以来、会田龍雄山本時男江上信雄などをはじめとする、日本の生物学者達の研究によって発展してきた。

日本のメダカは生物学モデル生物として用いられており、海外でも"medaka"という語が使われるほどで、日本の生物学が主導力をもって世界に貢献した数少ない[要出典]例である。モデル生物として優れている点を下に挙げる。

  • 日本全国に分布しており、かつては入手が容易だった。
  • 温度耐性(4-30°C)、耐塩性があるため、丈夫である。
  • 飼育費用が安価で、周年繁殖が容易なため、遺伝学的研究に適する。
  • の体が透明なため、発生の観察に適する。
  • 日本では江戸時代から観賞魚として親しまれており、様々な突然変異体が潰えることなく存在している。
近年の自然発生突然変異体の収集と保存は富田英夫の努力による。
田口泰子による。
  • 近縁種や自然集団が収集・保存・提供されている。
岩松鷹司成瀬清酒泉満などによる。
自然科学研究機構基礎生物学研究所が遺伝資源の保護のため、メダカの飼育を行っている。若松佑子らが、色素の少ないメダカを交配し続けることによって、透明なメダカを生み出すことに成功している。

また、体軸や器官形成などの発生研究の他、脊椎動物では2番目、哺乳類以外では初めてとなる性決定遺伝子 DMY が発見されたことから、哺乳類以外の脊椎動物での性決定機構を研究する上で注目されている。

脊椎動物の発生のモデル生物として、魚類では国際的にはゼブラフィッシュが良く用いられているが、日本国内ではその歴史的背景からメダカを用いる研究者も多い。現在、ゼブラフィッシュではHaffterら(1996年)やDrieverら(1996年)によって大規模スクリーニングが成功しており、メダカでも小規模では石川裕二らや、大規模では近藤寿人、古谷・清木誠ら(2004年)によって多くの突然変異体が見つけ出されている。

他に、生態学の分野では縄張り制の研究に用いられた。

食用[編集]

新潟県見附市阿賀町などでは佃煮にして冬場のタンパク質源として保存食にする習慣があり[8]、新潟県中越地方ではうるめとよばれている。新潟市にある福島潟周辺でも、メダカをとって佃煮にしていた。少量しかとれず、少し季節がずれると味が苦くなるので、春の一時期だけ自家で消費した[9]長岡市付近では、味噌汁の具にも使われていた。

近年では養殖も行われているが、これはメダカではなく、養殖が容易なヒメダカである[10]

その他[編集]

愛知県ではメダカを生きたまま飲み込むと婦人病に効くとの伝承があった。その他、地域によっては泳ぎがうまくなる、目がよくなるなどの伝承もあったらしい[11]

名称[編集]

メダカは日本各地に広く分布し、身近にあって親しまれたが、旧来から全国での名前の統一はされてこなかった。これらは、各地で独立の方言名を発生させるには極めて有効な条件であり、メダカの方言名は世界中の魚類で最も数が多いとされる[12]辛川十歩は4680の方言名を日本全国から調査収集した。短いものではメ・ウキから始まり、長いものではオキンチョコバイ・カンカンビイチャコなどというものまで記録されている。 一方、理科教育図鑑の流通によって、そのような方言名が生き延びる可能性も少なくなっている。

メダカの分類とメダカ類[編集]

メダカ類という言葉を用いる場合には、狭い意味から広い意味までいくつかの異なった魚のグループを指していることがある。

メダカ属[編集]

メダカにごく近縁な種は、メダカと同じメダカ属(学名 Oryzias)に分類されている。メダカ属には、東アジアから東南アジアにかけて分布している10数種が含まれる。日本産はメダカ(Oryzias latipes)1種であると考えられていたが、2011年12月に近畿大学が青森県から兵庫県の日本海側に生息する「北日本集団」を別種(Oryzias sakaizumii)として記載し、日本産は2種類であるとした。[13] また、メダカ以外は一般に飼育が難しい種が多い。

名称 学名 英名 生息地域 生息環境
セレベスメダカ Oryzias celebensis Celebes medaka インドネシアセレベス島 淡水に生息。
ハイナンメダカ Oryzias curvinotus 中国ベトナム 河口マングローブなどの汽水域。
ジャワメダカ Oryzias javanicus Javanese medaka マレー半島、インドネシア 湖沼、小川や水路、河口、マングローブの汽水域まで。
タイメダカ Oryzias minutillus Dwarf medaka 中国、インドシナ、マレー半島 澄んだに生息。
ティモールメダカ Oryzias timorensis ティモール島 淡水。
フィリピンメダカ Oryzias luzonensis ルソン島北部 淡水。
マタネンシスメダカ Oryzias matanensis Matano medaka インドネシア 淡水。
マルモラータスメダカ Oryzias marmoratus Marmorated medaka インドネシア 淡水。
メコンメダカ Oryzias mekongensis メコン川流域 小川や浅い湖沼などの淡水。
インドメダカ[14] Oryzias melastigma インド東部 河川の中流域から下流域、河口、マングローブなどの汽水域まで。

メダカ科[編集]

メダカ科には、メダカ属以外に、クセノポエキルス属(Xenopoecilus)、ホライクティス属(Horaichthys)、アドリアニクティス属(Adrianichthys)の3属がある。かつてメダカ科は、メダカ属1属だけを含む科だったが、分類群の変更に伴い、これらの属をメダカ科に含めることになった。

旧メダカ目[編集]

メダカ科は、かつてカダヤシ目(キプリノドン目)に含められており、カダヤシ目は、メダカ目と呼ばれていた。「メダカ類」というときの最も広い意味は、メダカ科に加えて、カダヤシ目に含まれる魚を指す。カダヤシ目には、アプロケイルス類などのアフリカ南アメリカなどに生息する卵生メダカ類グッピーなどの卵胎生メダカ類など熱帯魚として親しまれている種類が数百種以上含まれる。詳細はカダヤシ目を参照。

脚注[編集]

  1. ^ http://www.cbr.mlit.go.jp/chugi/topics/medaka/final/index.htm [愛知メダカの学校調査]
  2. ^ 北海道 ブルーリストメダカ
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 日本魚類学会自然保護委員会「メダカ:人為的な放流による遺伝的攪乱 (PDF) 」 、『魚類学雑誌』第57巻第1号、2010年、 76-79頁、2011年12月1日閲覧。
  4. ^ 未承認の遺伝子組換えメダカの回収のお願いについて”. 環境省 (2005年2月8日). 2013年8月13日閲覧。
  5. ^ 末広恭雄「魚の博物事典」(講談社学術文庫) ISBN 4-06-158883-4 590頁
  6. ^ 但し、日数をかけて徐々に人工海水を投与し慣らしていく必要がある上、個体によっては耐性が低いこともあるので注意を要する。
  7. ^ 環境省報道発表資料「第4次レッドリストの公表について(汽水・淡水魚類)」 (別添資料7)環境省第4次レッドリスト(汽水・淡水魚類)
  8. ^ 阿賀町役場 企画観光課. “メダカ佃煮”. 阿賀町ウェブサイト. 阿賀町. 2011年2月6日閲覧。
  9. ^ 「日本の食生活全集 新潟」編集委員会『聞き書新潟の食事』(日本の食生活全集15)(農山漁村協会、1985年)21-22頁、48頁。
  10. ^ ヒメダカのつくだ煮 - 北陸農政局
  11. ^ 内山(2005)、p.82
  12. ^ 内山(2005)、p.82
  13. ^ Toshinobu Asai, Hiroshi Senou and Kazumi Hosoya. 2011. Oryzias sakaizumii, a new ricefish from northern Japan (Teleostei: Adrianichthyidae). Icthyol.Explor.Freshwaters,vol.22,No.4,pp.289-299
  14. ^ Oryzias carnaticusと同種であるとする説もある。また、カダヤシ目の卵生メダカのグループ、アプロケイルス属(Aplocheilus)に含める分類もある。

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  • Nelson, J. S. (1994) Fishes of the World. (3rd edition) John Wiley & Sons, Inc., NY.
  • 宮地伝三郎・川那部浩哉・水野信彦、『原色日本淡水魚類図鑑』、(1963)、保育社
  • 江上信雄 『中公新書931 メダカに学ぶ生物学』 中央公論社、1989年。
  • 内山りゅう、『ヤマケイ情報箱 田んぼの生き物図鑑』、(2005)、山と渓谷社
  • 奈良県大和川水系のメダカ集団から確認されたヒメダカ由来のミトコンドリアDNA 魚類学雑誌 Vol.56 (2009) No.2 p.153-157

外部リンク[編集]