熱帯魚

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熱帯魚(ねったいぎょ)とは、観賞魚形態の一つである。熱帯地域に生息し、鑑賞目的に飼育する魚類を指す。

熱帯魚の飼育環境[編集]

器具・設備[編集]

濾過器上部フィルター方式の仕組み
1.水をポンプでくみ上げる
2.物理濾過:水に含まれているゴミを漉し取る
3.生物濾過:バクテリアに有害物質を分解させる
4.化学濾過:紫外線などにより化学的反応により不要物を分解させる
5.水を水槽内に戻す
水槽
ガラス製が一般的であるが、小型のものではプラスチックの一体成型のもの、大型のものはアクリル板を貼り合わせたものも多い。大きさは様々であるが、ガラス製の長所としては、透明度を長期間保つことができる点があり、短所としては大きくなると重量が大きくなり過ぎることと、強い衝撃により破損の恐れがある点が挙げられる。これに対しアクリル製では、素材となるアクリル板は比較的軽く加工が容易である反面、ガラスよりも経年劣化が起きやすく、比較的柔らかい為に傷が付き易くプレコなど固い歯で物の表面についたコケをこそぎ取る性質のある魚種を長期間飼育すると表面に細かい傷が多数発生し「曇る」場合もある。アクリルの強度が十分でない場合、水圧で変形し数年で細かい「す」が入ることがある。
ろ過
水中内のゴミを漉し取ったり(物理濾過)、バクテリアの力により魚類の排出する有害物質(主にアンモニア)を硝酸塩などの比較的無害な物質に変化させる(生物濾過)する装置。
上部フィルター方式
水槽の上部に設置した濾過装置にポンプでくみ上げた水を通過させ、重力を用いて濾過し水槽に落下する。現在の日本では中型の水槽では最も一般的な方式である。
外部フィルター方式
水槽の外部に濾過装置を置く。濾過された水は、ポンプの力で水槽内に還流させる。
内部式フィルター方式
濾過槽と一体化したポンプを水槽内部に設置する。後述の投げ込み式フィルターとは区別される。
底面フィルター方式
水槽の底面に敷き詰めた底床(砂利)に、エアポンプなどで循環させる構造。安価で手軽だが、濾過能力は高いと言われている。底砂にゴミが溜まるので定期的に泥抜きをする必要があり、事実上水槽を半リセットしなければならない。
オーバーフロー方式
水槽を2階建てにし、1階の濾過槽からポンプで強制的に2階へ汲み上げる。2階であふれた水は1階の濾過槽に落ちてくる仕組み。やや高価で場所をとるが、濾過能力は高い。
外掛フィルター方式
水槽の布置に取り付けて簡易・小型のオーバーフローを実現するろ過装置。安価・手軽であり小型水槽に良く用いられるが、濾過能力は低い。
水中エアーリフト式フィルター方式
ろ材を入れたケースを水槽内部に設置し、エアポンプから送られてくる空気で循環させる。設置が簡単で、初心者向けの小型水槽セットに付属することも多い。濾過能力はポンプの強さで決まる。
上部底面併用フィルター方式
上部フィルターと底面フィルターを組み合わせた方式。双方の能力を用いることとなり、濾過能力はとても高い。物理濾過と生物濾過とを上部と底面のどちらで行うかで2通りの方法がある。物理濾過を上部で行う方が手入れの面で楽である。
濾過材
バクテリアの住処として濾過器に入れる。大磯砂からセラミックス製までさまざま。
照明器具
魚類が美しく見えるように工夫されたライト。水草の生育にも不可欠。蛍光灯が一般的。水草を多く入れた水槽ではより多くの光量を確保する為水銀灯メタルハライドランプを用いる事もある。
ヒーター
保温装置で、冬季に水温を一定に保つために使用する。魚が触れて火傷をしないように、特に物に張り付く習性のある魚を飼育している場合はカバーを付ける事がある。ヒーターやセンサーを噛み砕いたりして破壊してしまうような大型魚の飼育では水槽の角に通水性のある囲いを作りそこに設置する場合もある。濾過をオーバーフローで行う場合は濾過槽内に設置できる。またかつては外部フィルターのホースに接続出来るヒーターも存在した。
サーモスタット、ヒーター分離型
サーモスタットとヒーターがそれぞれ別売りになっており、ヒーターをサーモスタットに接続して使用する。ヒーターが故障してもヒーターのみの交換で済むメリットがある。ヒーターは専用の物を使用し、またこれはサーモスタットに接続しないで通電すると際限なく水槽内の水を加熱してしまう。水槽内にヒーター本体とサーモスタットの温度センサーの両方を設置するため、小型水槽では一般的ではない。
サーモスタット、ヒーター一体型
サーモスタットとヒーターが一体となっており、そのままコンセントに差し込むだけで使用可能。温度を指定するダイヤル付きのボックスが付いている物と完全にヒーター内にサーモスタットを内蔵した物がある。後者は温度の指定が自分で出来ない(大抵25℃前後に保つようになっている)。小型水槽ではこちらがよく用いられる。ヒーターが故障した場合はたとえサーモスタットに異常が無くとも交換となる。
パネルヒーター
水槽の下に敷いて使う。爬虫類の飼育等でも用いられている。主に通常のヒーターが入らないような小型水槽で飼育している場合(ベタの飼育等)に用いられる。
クーラー
夏場に水温が上がり過ぎないようにする装置。専門店等でしか取り扱っていない場合が多い。同じく水温上昇を防ぐものとして、小型のファンで気化熱を利用して冷却するものがある。こちらを使用する場合は水槽の設置場所の湿度を下げる工夫をしないと効果が発揮されなくなる。
温度計
水温管理に使用。サーモスタットの誤動作や夏場の水温上昇等もあるので、時折見る必要がある。アナログ式(アルコール式)とデジタル式がある。以前は水槽の外側に貼り付ける物も存在した。
カルキ抜き
水道水に含まれる魚類にとって有害な塩素を中和させる薬品。
殺菌灯
殺菌灯を仕込んだケースに飼育水を通水させて殺菌する装置。飼育システムや水草に付着する藻類の減少や病気の予防、水の透明度を上げる効果がある反面、効果的に殺菌するために殺菌灯に至近距離で長時間飼育水を通水させる設計になっているため、水温を上昇させてしまう欠点がある。余談だが、世界の侵略的外来種ワースト100に選定されたイチイヅタはモナコ水族館で殺菌灯を浴びた同種が突然変異を起こし、低水温への適応とアレロパシーを得たものである。
トリートメントタンク

多目的に用いる予備水槽である。用途上、飼育システムを全て丸洗いする事が多いのに加えて、特に清潔に保つ必要があるため、底床材を敷かずろ過装置もスポンジフィルターなどの簡易なもので行い、水質管理は換水に頼ることが多い。

トリートメント用途
新たに熱帯魚や水草を入手した際には、下記の理由によりメインの飼育システムに導入する前に予備飼育する。良心的な店やブリーダーが販売する個体はトリートメント済みのこともあるが、店の水槽の水質と自宅の水槽は水質が違うため、やはり軽い予備飼育は必要となる。
魚、両生類、貝・エビなどの無脊椎動物
伝染病や寄生虫の進入を防ぐため。特に野生採取の個体には寄生虫がいることが多いことに加え、グッピーエイズカエルツボカビ症などの病原体による飼育システムの汚染防止や病原体の拡大阻止のため必要である。またショップで売られている個体は長い距離を運ばれた上で入荷してきた後で体力を消耗しており、水槽導入後に発病してしまうことも多いため、事前に競合相手のいない環境で十分に餌を採らせて体力を回復させる必要がある。
水草
水草を食害する巻き貝の進入阻止や水草農場で用いられる農薬による飼育水の汚染防止のため。水草には無害な農薬でも無脊椎動物や古代魚など薬剤に敏感な種に影響があることがあり、またコケ防止の農薬は水槽内で育成しているウイローモスなどの有用な藻類に影響が出てしまう。
病気治療用途
病気治療に用いる薬剤は飼育水や飼育機材を着色してしまうものが多いのでこれが惜しくない安価なものを用いる必要があるほか、治癒後に手軽に丸洗いや熱湯消毒が行える必要があるため。種によって薬剤への耐性が異なることや、害の少ない魚病薬として古くから用いられている塩も水草には有害であることも、メインの飼育システムでの病気治療が現実的でない要因である。
繁殖用途
飼育している生体が繁殖行動を始めた際、多くの場合は親魚の気性が荒くなり他魚を攻撃するので隔離水槽が必要になるほか、稚魚が産まれた後は保護するために必要。

この他、以下のものも重要である。

水草
鑑賞の際の視覚効果だけでなく、水槽内の窒素リン酸等を吸収をするために水質の安定をもたらし、また魚の隠れ家になったり、卵床になる等の効果がある。一方、枯れた水草は、水質を悪化させる。中には、水草を食べてしまったり、砂をかき混ぜ、囓ってしまう等水草と共存できない魚もある。
底床(ていしょう)材とも呼ばれる。これも老廃物等をその中に抱え込む等、水質安定に大きな意味がある[要出典]。底面式濾過装置の場合、濾過装置の一部をなす。サンゴ砂等、ペーハーを変化させるものもある[1]
弱酸性・中性・弱アルカリ性など、飼育する魚や水草に都合のよい水質に調節したり、バクテリアの住み処になったりと、濾過フィルター内の濾材と同じような効果がある。
大磯砂
一般的な砂であり、ろ材としても用いられる。かつては神奈川県大磯海岸で採取されていたためこの名がある。現在は大磯での採取が禁じられたため他の場所から採取している。
川砂
大磯砂よりも粒が細かい。白っぽい物が多い。白色に近い砂を敷いて長期間飼育していると魚の色が薄くなる「色飛び」が起こる恐れがある。
ソイル
土を低温で焼き固めた粒状のもの。主に水草育成のために用いられるが、大抵の商品が水質を弱酸性に保つ作用があることからこの水質が好ましい魚種を飼育する場合にも用いられる。元が土である為に時間の経過により団粒構造が失われ泥状になっていく。

えさ[編集]

人工餌(フレーク)
エビ魚肉穀類などを魚油などで練って乾燥させたもの。日常的にはほとんどこれがあれば飼育に事足りる。魚の遊泳域は、その性質により上層・中層・下層に固まりやすいので、これらに対応して人工餌も浮上性のものと沈下性のものがある。また食性に合わせ肉食魚や草食魚用飼料、形状も顆粒状、フレーク状、タブレット状等の種類がある。
クリル
オキアミを乾燥させたもの。エビの殻に含まれる色素により、魚の色を良くし観賞価値を高める(色揚げ)に効果があるとされる。
アカムシ
ユスリカ幼虫。乾燥させたものや冷凍したものがある。非常に食い付きは良いが、特に乾燥アカムシは消化不良を起こしやすい。
イトミミズ
泥中に住む環形動物の一種。こちらも食いが良い。その代わり外部から有害物質を持ち込んでしまう場合もある。
ブラインシュリンプ
ソルトレイクなどの塩湖に住むプランクトンの一種。幼魚のエサなどに用いられることが多い。普通は乾燥卵の状態で販売され、それを塩水に入れて孵化させ魚に与える。塩湖に住む為淡水水槽内では生存することが出来ず、食べ残しは死骸となり、量によっては水質に影響を及ぼす恐れがある(特に小さいケース内で稚魚を育成する時)。すでに孵化した状態のブラインシュリンプを冷凍させたものも販売されている。
インフゾリア
牛乳などを微量入れた水を放置し、繁殖したゾウリムシワムシなどを与える。ブラインシュリンプでは大きすぎる場合に使われる。独特の臭いがある。
生き餌
メダカ、小赤(小型の和金)、コオロギ、アカヒレなど。ガーパイクやピラニアなど、肉食の魚に用いる。人工飼料よりも食い付きが良いことが多いが、生き餌をストックしておく容器や手間が必要となる。

主な熱帯魚[編集]

ウィキペディアに項目のある熱帯魚の一覧。目分類ごとに示してある。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 月刊アクアライフ