動物の権利
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動物の権利(アニマル・ライツ、animal rights)とは、動物には人間から搾取されたり残虐な扱いを受けることなく、それぞれの動物の本性に従って生きる権利があるとする考え方である。
動物の権利運動は、ピーター・シンガーが1975年に出版した「動物の解放」(ANIMAL LIBERATION)をきっかけに、世界中に広まっていった。シンガーはその著書の中で動物は苦痛を感じる能力に応じて、人間と同等の配慮を受けるべき存在であり、種が異なる事を根拠に差別を容認するのは種差別(スピーシズム)にあたるとした。功利主義の立場に立つシンガーは平等な配慮という原則を強調し、権利という言葉は使っていない。1983年、Tom Reganが出版した「THE CASE FOR ANIMAL RIGHTS」の中では動物の権利という概念が前面に打ち出されている。
動物の権利運動家の多くは、この運動が性差別や人種差別に反対する運動の延長線上にあると考えている。動物の権利を支持する者は、商業畜産や動物実験、狩猟等、動物を搾取し苦しめる行為を全面的に廃止するべきだと訴え、人々にベジタリアニズムの実践を呼びかけている。
動物の権利運動から見た、従来の動物愛護や動物の福祉の考え方は、動物になるべく苦しみを与えるべきではないと言う点では共通するものの、人間による動物に対する搾取そのものを否定していない点で、動物の権利の考え方とは根本的に異なると見なしている。
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[編集] 概念の歴史
こんにちの動物の権利に関する議論は、最も初期の哲学者たちまでさかのぼることが可能であろう。紀元前6世紀のギリシアの哲学者であり数学者でもあったピュタゴラスは輪廻転生を信じていたため、動物に敬意を払うように主張した。一方、同じアテナイ人であるアリストテレスは紀元前4世紀の著作の中で、動物は理性を持たないため自身の権利はなく人間の利益のためにだけ存在しているとし、存在の偉大なる連鎖(Great Chain of Being)--あるいは自然の階梯(scala naturae)--の中で人間よりもはるか下方に位置すると論じた。
17世紀、フランスの哲学者ルネ・デカルトは動物は精神を持たず考える事も苦痛を感じる事もないため、動物に対してどんなにひどい扱いをしようが間違いであることはあり得ないと主張した。これに対し同じフランス人のジャン=ジャック・ルソーは、『人間不平等起源論』(1754) の序文で次の様に論じた:人間は「知性と自立した意思を欠いた存在」でこそないものの、出発点は動物である。さらには動物は感覚を持つ存在であるため、「自然権を持つものに含まれるべきであり、人間は動物に対して責務を負っている」、とりわけ「無益に虐待されることのない権利を有するものである」
ルソーと同時代には、1793年に亡くなったジョン・オズワルド(John Oswald)がいる。『The Cry of Nature or an Appeal to Mercy and Justice on Behalf of the Persecuted Animals』の中で彼は次の様に論じた:人間は生まれつき慈悲と思いやりの心を備えている。もし自分が食べる動物が死ぬのを見なければならないとしたら、ヴェジタリアンになる人は今よりはるかに増えるだろう。しかしながら分業が発達したために、近代の人間は生まれつきの思いやりの心を起こさせることなく肉を食べられるようになる一方で、残忍な行いに慣れていった。
18世紀後期、近代功利主義の創始者でイギリスの哲学者、ジェレミ・ベンサムは動物の苦痛は人間の苦痛と同じくらい確かで類似したものであるとし、「人間以外の動物が専制政治の手によってしか奪うことの出来ない様な権利を手にする日がいつか来ることであろう」と述べた。彼は、理性があるかどうかではなく、苦しかどうかということこそが、我々が人間以外の存在を扱う際の基準であるべきだと主張し、もし理性的能力が基準となるのであれば、赤ん坊や障害者などを含む多くの人間が物の様に扱われることにならなければならないと論じ以下の有名な一節を残している
- 感覚を持つ生き物を同じ悲運に追いやる理由として、脚の本数や、皮膚の毛の密度や、仙骨の末端(尾のあるなし)のどれもが十分な理由とはならないと認められる時代が来るであろう。しかし他に何が超えられない一線となるのだろうか? 理性的な能力、あるいはもしかして議論をする能力だろうか? だが成長した馬や犬などの我々がよく知っている動物は、生後一日か一週間、あるいは一ヶ月の赤ん坊よりもはるかに理性的である。とは言え、もしそうではなかったとしても、そのことに何の意味があるだろう? 問題は、理性があるか、話す事ができるか、ということではなく、苦痛を感じるということである。なぜ法律はいかなる感覚を持つ生き物をも保護の対象としないのだろうか? いつの日か人類社会はその庇護のマントを、呼吸をする存在すべての上にまで広げることになるだろう。
19世紀にアルトゥル・ショーペンハウアー は、動物は理性的能力が欠けているにもかかわらず、人間と同じ本質を有すると述べた。彼は菜食主義を必要以上のものと見なしたが、動物に道徳的配慮がなされるべきだと論じ、動物実験に反対した。彼が著したカントの倫理的価値観に対する評論には、カントの道徳体系から動物が除外されていることを批判した、長くてしばしば激烈な議論が見られる。その中には以下の有名な一節も含まれる:「太陽を見るすべての目の完全な調和を見ようとしない道徳など呪うべきものである」
イギリスの社会改革者、ヘンリー・ソルト(Henry Salt)が1892年に出版した大きな影響力を持った著書『Animals' Rights: Considered in Relation to Social Progress』の中では動物の権利の概念が主題として扱われている。彼はこの本を出版する前年にスポーツとしての狩猟を禁止することを目的とした、人道主義同盟(Humanitarian League)を設立している。
ナチス・ドイツにおける新政権が最初に立法化した法律のひとつは動物の権利に関する法律である。しかし、ロベルタ・カレチョフスキー(Roberta Kalechofsky)などの作家はナチスが動物実験の存続を許していたと反論している。カレチョフスキーはナチスの反動物実験法を検証した、The Lancet(英国の医学専門誌)の記事を引用し、この法律は動物実験を規制はするものの廃止はしなかった、1875年に制定されたイギリスの法律と何ら変わりはないと結論づけた。
注)当項目はen:Animal rights16:41, 2 October 2006 より翻訳
[編集] 現代の運動の歴史
現代の動物の権利運動の始まりは1970年代初期にさかのぼることができる。この社会運動は哲学者によって生み出され、現在もなお最前線で続いているものとしては、めったにない例の一つとなっている。
1970年代初頭、オックスフォード大学の哲学者のグループが、人間以外の動物の道徳的地位は、必然的に人間の道徳的地位に劣るものであるのかどうかを検討しはじめた。このグループの中の一人に、1970年に種差別という言葉を作り出した、心理学者のリチャード・ライダー(Richard D. Ryder)がいた。彼はこの言葉を、個人的に印刷したパンフレットの中で、ある特定の種(人類)であることを根拠に、自分たちの利益を他の動物の利益に優先させる態度を説明するため、初めて使用した。
ライダーは、ロズリンド&スタンリー・ゴドロヴィッチとジョン・ハリスが編集し、1972年に出版された重要な本、『Animals, Men and Morals: An Inquiry into the Maltreatment of Non-humans』の寄稿者となった。現在、プリンストン大学Human Valuesセンターの生命倫理学教授であるピーター・シンガーは、New York Review of Booksでこの本を批評し、 功利主義を土台にして基本的な議論をおしすすめた。その延長としてシンガーにより1975年『Animal Liberation(動物の解放)』が書かれた。この本はしばしば動物の権利運動におけるバイブルとして取り上げられる。
80年代、90年代になると運動には、神学者、法律家、医師、心理学者、精神科医、獣医師、病理学者、そしてかつて動物実験にたずさわっていた人など多様な学者や専門家の人々も加わるようになっていった。
その他の運動の草分けとなったとされる本には以下のものがあげられる: トム・レーガン(Tom Regan)著『The Case for Animal Rights』(1983)、 ジェイムズ・レイチェル著『Created from Animals: The Moral Implications of Darwinism 』(1990)、 スティーヴン・M・ワイズ著『Rattling the Cage:Toward Legal Rights for Animals』(2000)、 ジュリアン・H・フランクリン著『Animal Rights and Moral Philosophy』(2005)
注)当項目はen:Animal rights100:28, 15 October 2006 より翻訳
[編集] 過激派の出現
1970年代になると動物の権利を侵害している人間・企業に対して非合法な抗議・妨害活動を行う過激派が出現した。 その攻撃対象は当初狩猟家及び関連産業(毛皮販売店)などであったが、次第にサーカス・動物園、精肉・鮮魚店、農場、屠殺場などへと拡大した。 合法的な抗議活動(街頭デモ等)も行われたが、従業員への脅迫などもあった。
1990年代に入ると、活動家たちは動物実験を行う・実験用動物を販売する企業を攻撃対象の中心とした。 攻撃対象となった企業は警備を強化するなどの対策をとったが、活動家達は攻撃を行う対象を直接の企業ではなく取引のある企業に対する抗議活動を行う手法を採用した。
これは、株主、銀行、監査法人、取引先企業に対して抗議活動を行うことにより取引を断念させる手法であったが、多くの場合脅迫、中傷、威力業務妨害等を伴い、実際に傷害事件等も発生している。 その対象は企業の従業員を送迎するタクシー運転手にまで至り、軽微な罪状に比して経済的損失が大きいため、結果として多くの企業が廃業に追い込まれた。
しかし、活動には無関係な一般人が巻き込まれるケースが多く、爆弾の設置など先鋭化した運動に関してFBIを始めとする捜査機関ではテロ行為として捜査を行っている。
動物の権利を支持する人々の間では、非合法な活動を市民的不服従として容認すべきかどうか議論が分かれている。ただし暴力行為までをも容認する人はほとんどおらず、先鋭化した過激派は、 動物の権利の支持者からも孤立した状態になっている。
[編集] 動物の権利と人権
人権を守るために非暴力的な抗議行動を行ったことで歴史上有名なマハトマ・ガンディーは次のようにのべている。「国家の偉大さや道徳的な進化の度合いはその国が動物をどのように扱っているかで判断できる」、「私の心の内では子羊の命の貴重さは人間の命の貴重さにいささかも劣るものではない」
実際、人々が動物を食べない食事に切り替える理由のひとつは、本来なら他の人たちのために使うことのできる資源を家畜が消費してしまうからというものである。たとえば、まるまると太った牛を育てるために穀物を育てるかわりにその穀物を第三世界の子供たちに送ることができる。
環境問題に関する著作を持つロバート・ビディノットは1992年のNortheastern Association of Fish and Wildlife Agenciesでのスピーチにおいて次の様に述べた:「動物の権利を厳格に尊重するなら、野生の捕食動物から人間の利害を守ろうとする行為も禁止される。人間の損害は許容可能なものであるが、動物の受ける損害は許容できるものではない。したがって必然的に、ビーバーは川の流れを変えても良いが人間はそうしてはいけない。蝉は何百マイルもの樹木をなくしても良いが人間にそれは許されない。ピューマは羊や鶏を食べても良いが人間には 許されない」
もし救命ボートが転覆して人間の赤ん坊と犬のどちらか一方しか助けられないとしたらどうするかと聞かれて、PeTA(動物の倫理的扱いを求める人々の会)のアウトリーチ・コーディネーター、スーザン・リッチは「はっきりとは分からない・・・赤ん坊を助けるかもしれないし犬の方を助けるかもしれない」と答えた。動物の権利哲学者のトム・リーガンは、たとえ犠牲になる犬の数が何匹であろうが、赤ん坊の方を助けるべきだと言う。この見解は、義務論者としての彼の立場を示すものと言える。一方、動物の権利活動家のラリー・カイザーは「私たちが直面しているのは、そうした緊急事態ではない。私たちは赤ん坊と犬の両方を助けることができる」とし、こうした設問自体が意味のあるものではないと述べている。
[編集] 動物の権利とホロコースト
2003年にPETAは「あなたの皿の上のホロコースト」と題した巡業展示会を行った。この展示では強制収容所におけるユダヤ人のイメージと、殺され虐待される動物たちのイメージを重ね合わせている。この展示ではPETAの会長であるイングリッド・ニューカーク (Ingrid Newkirk)の次のような言葉が紹介されている。「強制収容所では600万人ものユダヤ人が死にました。しかし、今年60億羽のブロイラーが屠殺場で死んでいきます」
アメリカ、ウイスコンシン州の動物の権利運動家の企画「The National Primate Research Exhibition Hall」においては、その企画自体をアウシュビッツのホロコースト記念館に なぞらえ、展示の中でホロコーストとの比喩を行っている。2001年には動物の権利のサイトのmeat.org で「ホロコーストの犠牲者たち」と紹介した動物の写真により構成された 「動物のホロコースト」と題したセクションを設けた。シアトルの「The Northwest Animal Rights Network」はホロコーストの犠牲者の裸の死体が並んでいる写真と一緒に死んだ牛の 写真を並べ、中央に大きな、かぎ十字を配した広告を配布した。
「Aniti-Defamation League」(訳注-ユダヤ人に対する中傷に抗議する連盟)は、動物の権利の運動にホロコーストの比喩を使うのは「600万人のユダヤ人の殺害を卑小化するもの」 であるとして批判した。PETAの会長、イングリッド・ニューカークはこの運動がある人々を傷つける事になってしまったとして謝罪の意を表明した:「これは決して我々が意図した ことではないが、大変申し訳なく思う」と。
注)当項目はen:Animal rights16:41, 2 October 2006 に基づく。
[編集] アニマル・ライツ運動に関する出来事
[編集] 問題点
FBIによると、動物解放戦線(ALF;Animal Liberation Front) 及び地球解放戦線(ELF;Earth Liberation Front) による暴力行為によるアメリカ合衆国内の被害数及び損害額は、1996年以来600件以上、合計43,000.000ドル以上に上る。
- AMP(Americans for Medical Progress)ホームページ掲載資料「アニマルライツの暴力」より
これにより、FBIは上記2団体をテロリストと認定し、動物の権利活動家の不法行為を「内なるテロ」と呼んでいる。
- FBI報告書「TERRORISM2000/2001」より
[編集] 捕鯨
アニマルライツの団体である国際人道協会(Humane Society International) (HSI)が、日本が南極海近くのオーストラリア領海で毎年続けている、ミンククジラの調査捕鯨について、日本の捕鯨会社による違法な捕鯨であり、禁止するようにオーストラリアの連邦裁判所に訴えていた問題で、2006年7月14日、同裁判所は全員一致で受理した。 2007年1月15日にもHSIの提訴でオーストラリア連邦裁判所は同国が国内法に基づき設定している「クジラ保護区」において、同国政府の許可のない日本の調査捕鯨の操業停止を命じた。しかしこのときに問題となった「クジラ保護区」は同国が主張する南極領土沿岸から200海里以内の排他的経済水域に設けられたものであるが、日本政府は南極条約(南極地域における領有権・領土請求権の放棄)により豪州の南極領土の領有を認めていない(豪州も同条約に署名しており領有権主張は凍結している)。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
関連資料(論文その他)
- 動物の権利の世界宣言(地球生物会議 ALIVE(All Life In a Viable Environment))
- ユネスコ (パリ)1978年版改正版
- 三崎滋子「動物権と捕鯨問題」(日本鯨類研究所 1996年 3月発行「鯨研通信」第389号)
- Roger Scruton「獣の美しさ」(The Times 1996年7月6日)
アニマル・ライツ関連団体・サイト
- 特定非営利活動法人アニマルライツセンター(ARC)
- アニマルライツセンターによるリポート。
- ヘルプアニマルズ
- 動画、写真等多数
- ももの宝箱
- 動物の権利を考える総合的サイト
- nyatete's HomePage
- 動物の権利について考えてみませんか?。動物の権利に関する FAQの翻訳文あり。
- Animal Hearts
- 動物実験反対 毛皮反対 Hinako
- usalovers
- 動物のお医者さんが見てきたこと
- 動物救世軍
- アニマルライツ・動物愛護関連サイトのリンク集
- ムービー アニマルライツ
- PETAが提供する動物の権利運動を解説した動画(日本語字幕付)
- MacVeg.com
- 動物の権利に関する動画等(日本語字幕付)
(以下、英語サイト)
- People for the Ethical Treatment of Animals(PETA)
- アメリカに拠点を置く世界最大の動物の権利擁護団体
- Association of Veterinarians for Animal Rights
- アニマル・ライツを標榜する獣医師団体。
動物実験反対関連団体・サイト
- Japanese For Medical Advancement 医学的見地から動物実験に反対する会 日本支部
- AVA-net
- JFMA
- STOP ANIMAL TEST! CAMPAIGN
- JAVA 動物実験の廃止を求める会
- 動物実験はいらない 動物実験に倫理的 医学的見地から反対する
- 動物実験の法制度改善を求めるネットワーク
- aboabo's home
毛皮反対関連団体・サイト
ベジタリアン関連サイト
動物食を考えるサイト
- 映像がとらえたとさつのシーン(菜食のすすめ)
- 屠畜シーンの映像や写真を通して動物の権利を訴えるサイト。
- 「肉を食らう」ということ[肉食の哲学](Carnivorous life)
- 食文化の多様性に関するエッセイ。
- 肉食を考える 肉食.com
- 畜産が地球環境・食糧問題・健康に及ぼす影響

