もつ
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もつとは、鳥獣肉の臓物(内臓)のこと。ホルモン[1]、畜産副生物[2]、内臓肉とも呼ばれている。また欧米では「バラエティミート」「ファンシーミート」と呼ばれる。
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[編集] 概要
[編集] 意味
広義には臓物全般を指す。この場合肝臓や心臓などを「赤もつ」、胃や腸などを「白もつ」と言う。
狭義には腸(特に小腸)を「もつ」「ホルモン」と呼ぶ。ハツ・レバーなど特に名前が付けられている部位はもつと呼ばれることは少ない。
[編集] 歴史
食肉の歴史が古いヨーロッパなどでは比較的一般的であるが、日本においては、食肉の文化が限定的で、また内臓肉は精肉より劣化が早く、独特の外見や匂いがあることなどから消費者の好みが分かれるものであり、一般の人々が口にしたり店頭で見かける機会は少なかった。しかし安価な食材であることから大衆居酒屋のメニューとしてはよく用いられ、各地に特徴のあるもつ料理が存在する。
一方、長野県佐久市には江戸時代初期に鶏臓物料理に関する貴重な文献が現存している。慶安元年(1648年)には信州佐久郡岩村田宿の割元職の篠澤佐五右衛門が小諸城主青山宗俊に本膳料理等を献上し、その中に「ももげ」の記載がある。広辞苑によれば、ももげとは鶏の臓物である。
この記録から推測すると杉の板にももげ、くわい、生貝、赤貝、鯛を乗せ板ごと焼いている。篠澤氏は当時から現在まで連綿と飲食、宿泊業を営んでいるが、先代女将篠澤ツギの話によると、明治、大正頃までは篠澤家では日本海から木樽に氷室の氷を詰め鮮魚を佐久まで荷車で運搬して調理していたという。真夏でも海の生魚が佐久まで入ったというから、ももげに使った鯛や赤貝なども新鮮なものだったと思われる。いずれにせよ、江戸時代のはじめ頃には、すでに殿様が鶏の臓物を食していたことになる。この文献は子孫の篠澤明剛が所有しているが、現在は佐久市立望月歴史民族資料館にて一般公開されている。
一時期はもつ料理・もつ鍋がブームとなったが、2000年代はじめにBSE問題が発生して以降、(特に牛もつ系について)急速にブームはしぼんだ状態となっている。
[編集] ヨーロッパにおけるもつ
ヨーロッパの一部の地域では、陰嚢、脳、豚の小腸、脚、心臓、(ブタや牛、羊、子羊の)頭、腎臓、肝臓、肺、胸腺や脾臓、睾丸、舌、鼻や様々な哺乳類の胃といった共通の料理がある。
伝統的なスコットランド料理のハギスは、羊の胃に、肝臓や心臓、肺、ロールドオーツ(つぶしたオート麦)やその他の材料を詰めて煮たものである。イングランド中部地方のファゴットは、主に肝臓とほほ肉からなる豚のミンチと、すりつぶしたパン、ハーブ、玉ねぎをブタの大網で包んだものである。ステーキ・アンド・キドニーパイ (Steak and kidney pie) は、イギリスで広く知られ、楽しまれている。ブラウン、イギリス英語で言うところのヘッドチーズは、動物の頭蓋骨(通常は豚)の肉や組織を刻んで煮込み、ゼラチンで冷やし固めたものである。
アイスランドには、独自のハギスやブラウンがある。アイスランドのハギスは、スラウトゥルと呼ばれ、二つのタイプがある。ブロウズミョール(ブラッドラード、血脂)は、羊の胃に、羊の血とロールドオーツ、刻んだ少量の羊の脂をつめたものと、lifrarpylsa(肝臓のソーセージ)は、羊の胃に、子羊の肝臓を潰したものとロールドオーツと刻んだ羊肉を混ぜてつめたものである。アイスランドのブラウンであるSviðは、焼いた羊の頭から作られ、熱い状態や冷たい状態、骨のままやゼラチンで固めるどちらの場合でも食べられる。
ルーマニアには、イースターに出される、drobと呼ばれるハギスに似た料理がある。ルーマニアの農民は、caltabosと呼ばれる、豚の内臓から作る伝統的なソーセージの一種を作る。一般的な料理であるチョルバ・デ・ブルタ (ciorba de burta) は、シュケンベ・チョルバ(トルコのイシュケンベ)と似ている。
南ドイツにおいては、郷土料理としていくつかの内臓料理が出される。バイエルンでKronfleischküche(クローンフライシュキュッヒェ)と呼ばれる料理には、横隔膜のステーキや、その他にも例えばMilzwurst(ミルツヴルスト)があり、細かくした脾臓のソーセージで、乳房を使った料理もある。シュヴァーベンは、フライドポテトともに出される酸味のある牛の胃の料理(牛の胃の煮込み)であるSaure Kutteln(ザワークッテルン)で有名である。Herzgulasch(ヘルツグーラッシュ)は、心臓を使った(以前は安くできていた)グーラッシュ(肉のシチュー)の一種である。肝臓はいろいろな料理で使われる、Knödel(クノーデル、スープなどにいれる団子)やSpätzle(シュペッツレ、刻んで塩茹でにしたもの)、やレバーソーセージなど。メインディッシュとしては、スライスしたリンゴとタマネギの輪切りと肝臓をいっしょにして料理した(Leber Berliner Art、レーバーベルリーナーアールト、肝臓のベルリン方式)は、ベルリンで有名な料理である。ヘルムート・コールが好んだSaumagen(ザウマーゲン)は、ヘルムートが連邦首相として在任していた間に、さまざまな政治的な理由で来訪した者たちへの試練となっていた。Markklößchen(マルククレッシェン)は、骨髄から作られた小さな団子である。それらは結婚式のスープとして、ドイツの一部の地域で出される。バイエルンでは、肺のシチューが出される。
ギリシャ(トルコやマケドニア共和国も同様)には、肝臓、脾臓そして小腸を焚火で焼いたsplinanteroがある。祭りの料理としてココレッチ(トルコでkokoreç、マケドニアでkukurek)がある。子羊の内臓(肝臓、心臓、肺、脾臓、腎臓や脂肪)を串で刺して、洗った小腸で覆い、管状に巻きつけたものである。ココレッチは炭火で焼かれる。他の伝統的なイースターの料理として、羊の内臓とレタスとホワイトソースから作るスープのmageiritsa(マギリッツァ)がある。Tzigerosarmas(トルコではciğer sarması、ジーエリ・サルマス肝臓包みの意)や、gardoumbaは、異なるサイズと味をよくするために特別な香辛料を加えた2種類のsplinanteroとココレッチである。
アルメニアの伝統料理として知られるハーシは、安価な材料で作られ、シラク地方で考案された。ハーシの主な材料は、豚や牛の足で、その他耳や胃なども使われる。以前は貧しい人々の、冬の間の栄養価が高い食べ物であったが、今では上品な冬のお祭りの料理として楽しまれている。
ブルガリアやマケドニア共和国、トルコでは、シュケンベ・チョルバが、胃から作られ広く飲まれるスープである。
イタリアでは、内臓の消費がかなり広まっている。最も大衆的なものは、脳のフライかシチュー、腸の煮込み(トリッパ)、ランプレドット(牛の第四胃、パセリとチリソースで味付けした煮込みスープ)、肝臓(強火でタマネギといためる、もしくは焼く)、腎臓、心臓やその血管、頭や目、ブタの精巣、鶏の内臓などである。Pajata(パイヤータ)は、ローマの伝統的な料理である。パイヤータは、離乳していない牛(すなわち母乳だけで育った牛)の腸を指す。子牛は、授乳後すぐに殺される。腸はきれいだが、牛乳が中に残っている。調理時には、熱と腸内の酵素のレンネットによって牛乳を固め、厚く、クリーミーでチーズのようなソースを作る。パイヤータとトマトは、リガトーニ(管状のショートパスタ)の一般的なソースとして使われる。シチリアでは、脾臓とカチョカヴァッロチーズを挟んだ、pani ca meusaと呼ばれるサンドイッチの一種が楽しまれている。ニューヨークのブルックリンでも一般的に食べられ、ヴァステッダの名前で通っている。
スペインでは、内臓は多くの伝統料理で使われている、しかし、いくつかのものについて、若い世代では好まれなくなっている。いくつかの伝統的な料理には、カジョス(牛の胃、マドリードやアストゥリアス州で非常に伝統的に食べられている)、肝臓(多くの場合、タマネギやニンニクやパセリとともに調理される)、腎臓(多くの場合、シェリーと調理されるか、焼く)、羊の脳、牛の睾丸、牛タン、豚の頭や足(カタルーニャでは、豚足は伝統的にカタツムリとともに食べられている)、豚の脳(グラナダの伝統的なサクロモンテのトルティーヤ)、豚の耳(ほとんどがガリシア)がある。
ポルトガルでは、伝統的に全動物の内臓が多くの料理に使われている。足(chipseとして知られる)や、胃、豚の耳は、豆のスープで煮こまれる。牛の脳 (Mioleira) は、上品な味である、しかしクロイツフェルト・ヤコブ病の発生以来、消費が減少している。豚の血は、小麦粉と調味料を入れた非常に特異な形の黒色のプディング (farinhato) を作るのにつかわれる。
フランスのマルセイユでは、子羊の足や胃がpieds et paquetsという名前で、伝統的な食品となっている。フランスでは、腸のソーセージが珍味とされている。
[編集] 内臓肉の栄養価と保存性
一般に、内臓肉の栄養価は高く、ビタミンAやB群、鉄分などが豊富である。 内臓肉は常温では腐敗速度が速いので、正肉と比較して保存はあまり利かない。牛の正肉の場合、死後硬直を経て1週間から3週間くらい経過してからのほうが美味となるとされているが、[3]それに比較して内臓肉は、上記のとおり保存が利かないため新鮮な状態のうちに食用される。肉食動物が捕食行動を取る際には、獲物の内臓から食べ始める。これは、内臓が傷みやすい、栄養価が高いという事実を本能的に理解しているからだと考えられている。
食肉卸売業のセリを通らずに供給されることや、保存性が低いことから[4]価格は比較的安定している。
有史以来、獣肉を食べるという文化に、内臓肉の存在は必ずついて回るものであるが、鮮度に左右され流通しにくいことからその調理方法に関する文献はほとんど残っていない。冒険家の植村直己は「やっぱり内臓がすごくうまい」と発言している。[5]
[編集] もつの分類
- 心臓 : 「ハツ」「ハート」「ココロ」「ヘルツ」
- 動脈 : 「コリコリ(心臓付近の動脈)」「タケノコ」
- 気管 : 「ウルテ」「フエガラミ」
- 肺臓 : 「フワ」「フク」「プップギ」「バサ」「ホッペ」
- 肝臓 : 「レバー」「キモ」
- 胃 : 「ミノ(牛の第一胃)」「ハチノス(牛の第二胃)」「センマイ(牛の第三胃)」「ギアラ(牛の第四胃、赤センマイとも)」「ヤン(ハチノスとセンマイの繋ぎ目)」「ガツ(豚の胃)」「砂肝(砂嚢。砂ズリと呼ぶ地方もある)」
- 脾臓 : 「タチギモ」「チレ」
- 膵臓 : 「シビレ(牛の胸腺を含む)」
- 腎臓 : 「マメ」
- 乳房 : 「チチカブ」「オッパイ」
- 横隔膜 : 「ハラミ(背中側の薄い部分)」「サガリ 肋骨側の厚い部分)」
- 小腸 : 「コプチャン(小腸)」「ホルモン[6]」「コテッチャン」「シロ」「ヒモ」「丸腸(小腸の一種)」「ホソ」
- 大腸 : 「テッチャン(大腸)」「ホルモン」「シマチョウ」
- 直腸 : 「テッポウ」
- 子宮 : 「コブクロ」
- 卵巣 : 「キンカン(鶏の腹卵)」
- 精巣 : 「ホーデン」「タマ」
- 卵管 : 「タマヒモ(鶏の卵管と腹卵)」
以下は日本畜産副産物協会では畜産副生物として扱っているが、厳密には臓物ではないので、もつとは区別される場合もある[7]。
平成年間において鳥もつとして販売されているのは、普通は肝臓と心臓を組み合わせたものである。
[編集] もつを用いた料理
- もつ煮 : 豚もつ(もしくは牛もつ)を野菜やこんにゃくと共に味噌味または醤油味で煮込んだもの。関東地方の居酒屋では単に「煮込み」で通用する。関西ではほとんど見られない。
- おたぐり : 馬の腸を煮込んだ長野県の郷土料理。
- 玉ひも : 鶏の卵管と未成熟な卵巣を煮込んだもの。関西地方の居酒屋でよく見かける。
- どて煮 : 豚もつを濃い味噌だれで煮込んだ料理。名古屋名物。
- 中身汁 : 豚もつを用いた吸い物。琉球料理のひとつで、かつては手間がかかるために主に祝いの席などで供されるご馳走とされていた。近年では保存技術の発達により、日常的に食されている。
- 甲州鳥もつ煮 : 鳥のもつを煮込んだ山梨の郷土料理。独特のタレで煮込む料理であり、ねっとりとしたタレが絡まって汁気がないのが特徴。
- もつカレー: 静岡県清水市の居酒屋店主が考案した名物料理だったが、2008年ころから静岡のB級グルメとして全国に知られるようになった。
- イシュケンベ : バルカン半島周辺で見られる、ウシの胃壁のスープ。
[編集] 脚注
- ^ 語源についてはホルモン焼きの項目を参照の事
- ^ 畜産業界が定めた呼称で、生肉処理の段階で副次的に産出される肉類のことを学術的な観点から作られた造語。日本畜産副産物協会 畜産副生物とは
- ^ 食肉の熟成について
- ^ 中央畜産会 副生物がお店に並ぶまで
- ^ Number 38号 1981年11月5日号
- ^ 一般的には小腸をホルモンと呼ぶ
- ^ 社団法人 日本畜産副産物協会 副生物の呼び名
- ^ スジ肉にはハラミの一部なども使われているが、本来は腱の部分を指すことから、もつとは区別される場合もある。日本畜産副産物協会ではアキレス腱も畜産副生物として扱っている。

