ダグラス・ホフスタッター

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ダグラス・ホフスタッター ハーバード大学での発表(2005年)

ダグラス・リチャード・ホフスタッターDouglas Richard Hofstadter1945年2月15日 - )はニューヨーク生まれのアメリカの学者。2006年現在、インディアナ大学ブルーミントン校教授。専門は認知科学および計算機科学。ホフスタッターは多くの一般書を執筆しており、その中でも特に有名なのが『ゲーデル、エッシャー、バッハ - あるいは不思議の環』(1979)。 ホフスタッターは1980年に同書でピュリッツァー賞一般ノンフィクション部門を受賞した。この本は人工知能の問題を高エネルギー物理学音楽芸術分子生物学文学、といった多彩なテーマに絡めて記述し、多くの人々の興味を惹いた。この本がきっかけになって、人工知能分野へ進むことを決めた学生も大勢いると言われている[誰によって?]

経歴[編集]

ダグラス・ホフスタッターは、1945年、アメリカのニューヨークで生まれた。父親はノーベル賞を受賞したこともある物理学者のロバート・ホフスタッター。ホフスタッターの父方の叔母は、進化生物学者スティーヴン・ジェイ・グールドの母方の叔父と結婚していた。

1965年、スタンフォード大学数学科を卒業し、1975年にはオレゴン大学で物理学の博士号を取得。 2006年現在、インディアナ大学ブルーミントン校で認知科学と計算機科学の教授(College Professor)および科学史、科学哲学、哲学、比較文学、心理学の教授(Adjunct Professor)を務める。また同校の概念認知研究センター(ホームページ)の代表も務めている。

ホフスタッターはマルチリンガルでもある。彼は母語である英語に加えて、他にイタリア語フランス語ドイツ語を使うことが出来る。1960年代の中ごろ、数年をスウェーデンですごしスウェーデン語を学んだ。 彼のこれらの言語に対する知識は部分的には若い時にジェノバで過ごした数年間の経験に帰せられ、彼はジェノバでインターナショナルスクールに通っていた。彼はロシア語もある程度話し、『ゲーデル、エッシャー、バッハ』の一部分は自身の手でロシア語に翻訳している。また、プーシキンの韻文小説『エヴゲーニイ・オネーギン』を韻文で英語に翻訳し出版した。亡き妻キャロルを追悼して書いた Le Ton beau de Marot で、彼は自分のことを「パイリンガル; pilingual」と称し(3.14159…個の言語に精通しているという意味)、「オリゴグロット; oligoglot」(oligo は「少数」、glotは「言語に通じている」の意)であるともしている。

彼の興味の範囲には、音楽精神創造力意識自己言及のパラドックス翻訳数学ゲームなどが含まれる。

ホフスタッターは日本の絵本作家安野光雅(パズル的・幾何学的なテーマの絵を好む)のファンで、二人は、他数名と共に一緒に食事をしたこともある[1]

業績[編集]

インディアナ大学で、彼はメラニー・ミッチェルらと共同で「高水準の知覚」の認知モデル Copycat およびいくつかのアナロジー作成認識のモデルを制作した。Copycat プロジェクトは Metacat と Magnificat へと発展し、ホフスタッターらが取り組んでいる。Metacat の 1999年の概要はここにある(PDF形式)。 Copycat FARGitecture に基づく新しいモデルとしては、SeekWell(音楽に関するアナロジーと認知モデル)と SeqSee (数列に関するアナロジーと認知モデル)がある。

ホフスタッターは、従来の学術誌よりもアイデアを本の形にまとめることを好むため、学術誌にはあまり論文を発表していない(下記にある初期の物理学関連の論文を除く)。そのため、計算機科学への多大な影響にも関わらず、王道から外れたアンダーグラウンドな印象がある。彼の業績から様々な研究プロジェクトが影響を受けたが、公式に引用されることは少ない。

マーティン・ガードナーが Scientific American 誌の「数学ゲーム」というコラムをやめたとき、ホフスタッターはコラム執筆を引き継ぎ、「メタマジック・ゲーム」と題した(原題 Metamagical Themas は Mathematical Games のアナグラム。いずれも日本では日経サイエンス誌に連載された)。このコラムをまとめた本によると、ホフスタッターは「この本の書評」という自己言及のパラドックスの一種を発明している。これは、その本に関する書評を集めた本である。

[it] is just a fantasy of mine. I would love to see a book consisting of nothing but a collection of reviews of it that appeared (after its publication, of course) in major newspapers and magazines. It sounds paradoxical, but it could be arranged with a lot of planning and hard work. First, a group of major journals would all have to agree to run reviews of the book by the various contributors to the book. Then all the reviewers would begin writing. But they would have to mail off their various drafts to all the other reviewers very regularly so that all the reviews could evolve together, and thus eventually reach a stable state of a kind known in physics as a "Hartree-Fock self-consistent solution". Then the book could be published, after which its reviews would come out in their respective journals, as per arrangement.

Douglas Hofstadter、Metamagical Themas

Apparently, Idries Shah has attempted this, or at least something similar, with The Book of the Book (ISBN 0-900860-12-X).

著作物[編集]

書籍[編集]

以下にホフスタッターの出版された書籍を列挙する(掲載されているISBNは、もしあればペーパーバック版のもの):

Amazon.comで最初に売られた本(1995年7月15日[2]

論文[編集]

  • "Energy levels and wave functions of Bloch electrons in rational and irrational magnetic fields", Phys. Rev. B 14 (1976) 2239.
    • オレゴン大学時代に書いたもので、その後の研究に多大な影響を与えた。ホフスタッターは、この結晶格子内の電子エネルギー準位がシステムの磁場の関数であり、フラクタル集合を構成すると予測した。すなわち、小さなスケール構造で見られる磁場の繰り返しパターンによって大きなスケールにおけるエネルギー準位の分布が変わるということである。このフラクタル構造は一般に Hofstadter's butterfly と呼ばれ、後に実験によって確認された。
  • "A non-deterministic approach to analogy, involving the Ising model of ferromagnetism", in E. Caianiello (ed.), The Physics of Cognitive Processes. Teaneck, NJ: World Scientific, 1987.
  • "Speechstuff and thoughtstuff: Musings on the resonances created by words and phrases via the subliminal perception of their buried parts", in Sture Allen (ed.), Of Thoughts and Words: The Relation between Language and Mind. Proceedings of the Nobel Symposium 92, London/New Jersey: World Scientific Publ., 1995, 217-267.
  • "On seeing A's and seeing As.", Stanford Humanities Review 4,2 (1995) pp. 109-121.
  • "Analogy as the Core of Cognition", in Dedre Gentner, Keith J. Holyoak, and Boicho Kokinov (eds.) The Analogical Mind: Perspectives from Cognitive Science, Cambridge, MA: The MIT Press/Bradford Book, 2001, pp. 499-538.
  • ホフスタッターはこれ以外にも50以上の論文を Center for Research on Concepts and Cognition に発表している。[1]参照。

その他の関わった書籍[編集]

以下に挙げるのは、ホフスタッターが序文を書いたり、編者として関わった書籍

  • The Mind's I (Daniel Dennett共編) (ISBN 0-465-03091-2 and ISBN 0-553-01412-9)
  • Alan Turing: The Enigma by Andrew Hodges. (序文)
  • Gödel's Proof2002年改訂) Ernest Nagel、James R. Newman 著。ホフスタッター編。 (ISBN 0-8147-5816-9)。ホフスタッターはこの本の初版(1958年)が彼の若いころに重大な影響を与えたと述べている。
  • Who invented the computer? The legal battle that changed computing history. (2003年) by Alice Rowe Burks.
  • Alan Turing: Life and Legacy of a Great Thinker by Christof Teuscher (編者)
  • Jason Salavon: Brainstem Still Life (ISBN 981-05-1662-2) 2004年 (紹介文)
  • Masters of Deception: Escher, Dali & the Artists of Optical Illusion 2004年 by Al Seckel. ホフスタッターははしがきを書いた。
  • King of Infinite Space: Donald Coxeter, the Man Who Saved Geometry by Siobhan Roberts, Walker and Company, 2006. ホフスタッターははしがきを書いた。

その他[編集]

  • 映画 Victim of the Brain(1988年)はダニエル・デネットとの共著『マインズ・アイ』に基づいている。
  • 彼は、自身の作曲したピアノ曲を Jane Jackson、Brian Jones、Dafna Barenboim、Gitanjali Mathur および彼自身が演奏したものを音楽CDとして出版した。

学生[編集]

ホフスタッターが教えた学生の中でも有名な人物

ホフスタッターの法則[編集]

『ゲーデル、エッシャー、バッハ』において、ホフスタッターはよく引用されることになるホフスタッターの法則を書いている。それは自己言及する格言であり、次の通りである:

いつでも予測以上の時間がかかるものである — ホフスタッターの法則を計算に入れても。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 『ゲーデル・エッシャー・バッハ 20周年記念版』の訳者後書き、野崎昭弘のパート(p. 734)より。
  2. ^ Amazon.com の company timelineにある。

外部リンク[編集]