円周率

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円周の長さCは直径dの大体3倍である。正確な比は π と表記される

円周率(えんしゅうりつ)は、の周の長さと直径の比として定義される数学定数である。しばしば π で表される。数学、物理学や工学の様々な分野での公式に出現し、最も重要な数学定数とも言われる。

円周率は無理数であり、その小数展開は循環しない。小数点以下35桁までの値は次のとおりである。

π = 3.14159 26535 89793 23846 26433 83279 50288 …

円周率は、無理数であるのみならず、超越数でもある。

目次

[編集] 基礎

[編集] 表記と呼び方

小文字の π は円周率を表す。写真はベルリン工科大学の数学科の近くにあるタイル。

π という文字は、周辺・地域・円周などを意味するギリシア語 περιφέρεια の頭文字であり、オートレッド(1647年)やバローによって円周を表す記号として用いられ、ジョーンズ(1706年)やオイラー(1748年)などによって、円周と直径の比率を表す記号として用いられた。日本では「パイ」と発音する。

π は国によっては別名がある。例えばそれを計算した人物の名前を取った、「アルキメデス数」、「ルドルフ数」、日本においては「円周率」がそれに当たる。

なお、「 π 」の字体は表示環境や大文字・小文字の差によってはキリル文字пに近いΠπなどとして表示されることがある。また、大文字のギリシア文字Πは数列の積を表す記号である。

[編集] 定義

[編集] 幾何学的な定義

直径 1 の円の円周は π

平面幾何学において、円周率 π は円周の長さCを、その円の直径dで割ったものとして定義される。

 \pi = \frac{C}{d}

円周の長さは直径に比例するので、この比の値はどんな円でも一定である。

[編集] 他の定義方法

円周率は元々、平面幾何学で定義された数である。そのため平面幾何学の前提や結果に依存しており、平面幾何学と関係を持たない数学の分野において π が現れる際に問題となることがある。この理由によって、現代的な数学では図形的な性質へ言及せず、解析学的な性質の一つを取り出し π の定義とすることが多い[1]。この際の π の定義として一般に使われるものは、三角関数 cos(x)が、x>0で0を取る最小の値の2倍を取るものがある。他に複素指数関数によって定義するもの、積分によって定義するものがある。

[編集] 歴史

[編集] 古代

円に内接する多角形による π の近似
円に内接・外接する多角形による π の近似。アルキメデスによる計算。

円の周と直径の比がどんな円についても同じ値になり、その数が3より少し大きい程度だと言うことは古代エジプトバビロニアインドギリシャの幾何学者たちにはすでに知られていた。また、古代インドやギリシャの数学者たちの間では半径 r の円の面積が π r2 であることも知られていた。さらに、アルキメデスは半径 r の球の体積が \frac{4}{3} \pi r^3 であることや、この球の表面積がr2(同じ半径の円の面積の4倍)になることを示した。

[編集] 2千年紀

14世紀インドの数学者・天文学者であるサンガマグラマのマドハヴァ英語版は次のような π の無限級数表示を見いだしている:

\frac{\pi}{4} = 1 - \frac{1}{3} + \frac{1}{5} - \frac{1}{7} + \cdots +(-1)^n \frac{1}{2n + 1} \cdots

これは逆正接関数 Arctan(x) のテイラー展開x = 1での実現になっている。マドハヴァはまた、

\pi = \sqrt{12}\left(1-{1\over 3\cdot3}+{1\over5\cdot 3^2}-{1\over7\cdot 3^3}+\cdots\right)

を用いて π の値を小数点以下 11 桁まで求めている。

18世紀フランスの数学者アブラハム・ド・モワブルは、2n 回コインを投げたときに x 枚が表向きになる確率は、ある定数 C(彼は n が 900 の場合に数値計算によってその値を近似した)について

C = \exp \left(\frac{-(x - n)^2}{n}\right)

となっていることを見いだした。この正規分布の概念は1738年に出版されたドモワブルの『巡り合わせの理論』に現れている。ドモワブルの友人のジェイムズ・スターリングは後になってこの定数 C \frac{1}{\sqrt{2\pi}}であることを示している。

1751年にヨハン・ハンイリッヒ・ランベルトは x有理数ならば正接関数の値 tan x無理数になることを示し、その系として π が無理数であることを導いた。さらに1882年にフェルディナント・フォン・リンデマンは π が超越数になっていることを示し、円積問題が解けない(与えられた半径の円と同じ面積を持つ正方形を定規とコンパスで作図することはできない)ことを導いた。

[編集] コンピュータによる計算の時代

20世紀に入ってからのコンピュータの発達によって、計算された円周率の桁数は増大した。1949年に、ジョン・フォン・ノイマンはコンピュータのENIACを使い70時間かけて、円周率を2037桁まで計算した[2]。その後の数十年間、さまざまなコンピュータ科学者によって計算は進められ、1973年には100万桁を超えた。この進歩は高速なハードウェアの開発だけによるものではなく、新しいアルゴリズムの考案があったためである。最も重要な発展のうちの一つとしては、1960年代の高速フーリエ変換の発見がある。高速フーリエ変換によってコンピュータで多倍精度の演算が高速に実行できるようになったためである。

2011年現在では、円周率は小数点以下10兆桁まで計算されている[3]

[編集] 円周率の性質

[編集] 無理性と超越性

π は無理数である。つまり、2つの整数の比で表すことはできず、小数展開は無限に続く。このことは1761年ヨハン・ハインリッヒ・ランベルトが証明したが、厳密性に欠けた部分があった。その部分は1806年ルジャンドルによって補われた。

さらに、π は超越数である。つまり、有理数を係数に用いた有限次の代数方程式の根とはならない。これは1882年フェルディナント・フォン・リンデマンによって証明された。この結果から、整数から四則演算冪根をとる操作だけを有限回組み合わせた計算によって π の正確な値を求めることはできないことが分かる。

π が超越数であることより、円積問題定規とコンパスによる作図で、与えられた円と同じ面積を持つ正方形を求める)が不可能であることが従う。

[編集] ランダム性

π の各桁に現れる数の並び方はランダムであることが期待されてはいるが、実際は、π が正規数であるかどうかは分かっていない。例えば π の10進表示において、各桁を順に取り出した

3, 1, 4, 1, 5, 9, 2, 6, 5, 3, 5,…(オンライン整数列大辞典の数列 A796

数列と見たときに、この数列には 0, …, 9 が均等に現れるのかどうか、すなわち、この数列が乱数列になっているかどうかは分かっていない。それどころか 0 , …, 9 のどれもが無限に現れるのかどうかすら分かっていない。

現在 π は 5兆桁を超える桁数まで計算され 0, …, 9 がランダムに現れているようには見えるが、この状態がこの先の桁でも続くかどうかは分からないのである。

ベイリーとクランドールの2000年の発表によると、ベイリー=ボールウィン=プラウフの式を用いて2進表示で様々な桁の計算をした結果では、各数値の出現率はカオス理論に基づいていると推測できるようだ。

5兆桁までの数字の出現回数は以下の通りで、ほぼ等しく出現している。最も多く出現するのは8である。

0:4999億9897万6328回
1:4999億9996万6055回
2:5000億0070万5108回
3:5000億0015万1332回
4:5000億0026万8680回
5:4999億9949万4448回
6:4999億9893万6471回
7:5000億0000万4756回
8:5000億0121万8003回
9:5000億0027万8819回


[編集] 未解決問題

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[編集] 円周率に関する式

π を含む数式は非常に多い。ここではその一部を紹介する。数式によってはそれ自体が π の定義になり得るし、π の近似値の計算などにも使われてきた。

[編集] 幾何

  • 半径 r円周の長さ: L (r) = 2πr
  • 半径 r の円の面積A (r) = π r2
  • 半径 r の球の体積V (r) = (4/3) π r3
  • 半径 r の球の表面積S (r) = 4 π r2
  • ab半軸にもつ楕円の面積: A (a, b) = πab
  • 180度の角は π ラジアンと等しい

[編集] 解析学



  • \zeta(4)= \frac{1}{1^4} + \frac{1}{2^4} + \frac{1}{3^4} + \frac{1}{4^4} + \cdots = \frac{\pi^4}{90}











  •  \sqrt{\frac{1}{2}}\sqrt{\frac{1}{2}+\frac{1}{2}\sqrt{\frac{1}{2}}}\sqrt{\frac{1}{2}+\frac{1}{2}\sqrt{\frac{1}{2}+\frac{1}{2}\sqrt{\frac{1}{2}}}} \cdots = \frac{2}{\pi}


[編集] 数論

  • 自然数から無作為に2つを取り出した時、その2つが互いに素である確率は 6/π2 となる。

[編集] 力学系・エルゴード理論

ロジスティック写像 xi+1 = 4xi(1 − xi) によって帰納的に定まる数列 xi を考える。0 以上 1 以下のほとんどすべての数について、この数列の初期値 x0 としてその数を選んだ場合に

  •  \lim_{n \to \infty} \frac{1}{n} \sum_{i = 1}^{n} \sqrt{x_i} = \frac{2}{\pi}

がなりたっている。

[編集] 統計

[編集] その他

  • 河川の長さと水源--河口間の直線距離との比は、平均すると円周率の値に近い[4]

[編集] 暗唱

[編集] 語呂合わせ

π の桁を記憶術に頼らずに暗記する方法が各種存在している。

日本語では、語呂合わせの要領で非常に長い桁を暗記するのも比較的簡単である。非常に有名なものとして以下のような物がある。

産医師異国に向かう 産後厄なく 産婦みやしろに 虫散々闇に鳴く
3.14159265 358979 3238462 643383279 (30桁)

英語圏では語呂合わせがうまくいかないため、英単語の文字数で覚える方法がいろいろと存在している。

Yes, I have a number.
3. 1 4 1 6 (小数点以下4桁までで四捨五入)
How I want a drink, alcoholic of course, after the heavy lectures involving quantum mechanics!
3. 1 4 1 5 9 2 6 5 3 5 8 9 7 9 (14桁)
How I want a drink, alcoholic of course, after the heavy lectures involving quantum mechanics! and if the lectures were boring or tiring, then any odd thinking was on quartic equations again
3. 1 4 1 5 9 2 6 5 3 5 8 9 7 9 3 2 3 8 4 6 2 6 4 3 3 8 3 2 7 9 5 (31桁)S.ボトムリー

これら覚え方には多くの方法があり、日本語では上記のものの改編で 90 桁までのものや、歌にあわせたもの、数値を文字に置き換えて 1,000 桁近く覚える方法など様々な方法がある。

[編集] 記録

ギネス世界記録』によれば、円周率暗唱の世界記録は2005年11月20日に6万7890桁を暗唱した中国人、呂超(西北農林科技大学大学院生)が記録したものである。[5][6]

2004年9月25日原口證が8時間45分かけて円周率5万4000桁の暗唱に成功し、従来の世界記録を更新した。しかしながら、実際はより多くの桁を覚えていたため、2005年7月1日--7月2日に再挑戦し、8万3431桁までの暗唱に成功した。2006年10月3日午前9時--10月4日午前1時30分(16時間30分)の挑戦で円周率10万桁の暗唱に成功した。ギネス・ワールド・レコーズに申請中である。

[編集] 文化的影響

円周率の日を祝う「パイのパイ」。デルフト工科大学で作られたもの。

円という日常でもよく知られた図形の性質として、また単純な定義でありながら有理数として表せず無限に続くという不思議さから、数学的な概念としては最もよく知られたものの一つである。

3月14日円周率の日および数学の日である。また7月22日(22/7 は近似値)は円周率近似値の日とされている。

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[編集] 参考文献

  1. ^ Rudin, Walter  [1953] (1976). Principles of Mathematical Analysis, 3e, McGraw-Hill, p. 183. ISBN 0-07-054235-X. 
  2. ^ "An {ENIAC} Determination of pi and e to more than 2000 Decimal Places", Mathematical Tables and Other Aids to Computation, 4 (29), pp. 11–15. (January,1950)
  3. ^ “長野男性、円周率で10兆桁達成 自作パソコンで”. 共同通信. (2011年10月16日). http://www.47news.jp/CN/201110/CN2011101601000563.html 2011年10月17日閲覧。 
  4. ^ サイモン・シン著、青木薫訳、『フェルマーの最終定理』、新潮社、2000年、ISBN 4-10-539301-4、42ページ
  5. ^ 陜西省の大学院生、円周率暗唱のギネス新記録樹立
  6. ^ レコードチャイナ:円周率6万桁以上を暗唱、世界記録に輝いた「記憶の達人」-陜西省楊凌市

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

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