アメリカ哲学協会

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アメリカ哲学協会会館
American Philosophical Society Hall
アメリカ哲学協会会館(2006年撮影)
アメリカ哲学協会の位置(フィラデルフィア内)
アメリカ哲学協会
アメリカ哲学協会の位置(ペンシルベニア州内)
アメリカ哲学協会
アメリカ哲学協会の位置(アメリカ合衆国内)
アメリカ哲学協会
所在地ペンシルベニア州フィラデルフィア5番街104番地南
座標座標: 北緯39度56分55.51秒 西経75度8分59.42秒 / 北緯39.9487528度 西経75.1498389度 / 39.9487528; -75.1498389
建設1785–89
建築家サミュエル・ヴォーン英語版
建築様式ジョージアン様式
NRHP登録番号66000675[1]
指定・解除日
NRHP指定日1966年10月15日
NHL指定日1965年1月12日

アメリカ哲学協会(アメリカてつがくきょうかい、American Philosophical Society (APS))は、アメリカ合衆国自然科学人文科学に関する学術団体である。1743年フィラデルフィアで設立された、アメリカ初の学術団体とされ、長きにわたりアメリカの文化的・知的生活において重要な役割を果たしてきた。

研究助成金、学術雑誌の発行、アメリカ哲学協会の博物館や図書館、定期的な会合などを通じて、同協会は自然科学と人文科学の様々な分野の発展に貢献している。

独立記念館のすぐ東側にある哲学会館英語版は、長らく同協会の本部として使用され、現在は博物館となっている。1965年にアメリカ合衆国国定歴史建造物に指定された。

歴史[編集]

1743年、ベンジャミン・フランクリンジェームズ・アレクサンダー英語版フランシス・ホプキンソンジョン・バートラムフィリップ・シン英語版[2][3]によって、それまでの相互研鑽クラブ「ジュント英語版」から派生して哲学協会が設立された。

図書館(2013年撮影)

初期のメンバーには、ジョン・ディキンソンジョージ・ワシントンジョン・アダムストーマス・ジェファーソン[4]アレクサンダー・ハミルトンジェイムズ・マクヘンリートマス・ペインデイビット・リッテンハウス英語版ニコラス・ビドル英語版オーウェン・ビドル英語版ベンジャミン・ラッシュジェームズ・マディソンマイケル・ヒレガスジョン・マーシャルジョン・アンドリュース英語版などがいた。

当時の知識人の集まりは、世界中から会員を募集するのが一般的だった。同協会も、プロイセンアレクサンダー・フォン・フンボルトフリードリッヒ・ヴィルヘルム・フォン・シュトイベンフランスラファイエットリトアニアタデウシュ・コシチュシュコロシアエカテリーナ・ダーシュコワなど、アメリカ国外からも会員を募っていった。

1746年に活動を停止したが、1767年に復活した。1769年1月2日に、アメリカ有用知識促進協会(American Society for Promoting Useful Knowledge)と統合し、「有用知識促進のためにフィラデルフィアで開催されたアメリカ哲学協会」(American Philosophical Society Held at Philadelphia for Promoting Useful Knowledge)となった。初代会長にはフランクリンが選ばれた[5]。この時期に、常設のアメリカ改善委員会(Committee on American Improvements)を設置した。この委員会の初期の目的の一つには、チェサピーク湾デラウェア川を結ぶ運河の見通しの調査があった[6]チェサピーク・アンド・デラウェア運河英語版はトーマス・ギルピンにより計画され、1820年代に建設された[7]

図書館に隣接するトーマス・ジェファーソン・ガーデン

アメリカ合衆国の独立後、同協会はアメリカ独立宣言の署名者の一人であるフランシス・ホプキンソンに指導を仰いだ。ホプキンソンのつてで、ペンシルバニア州政府から土地の提供を受け、フィラデルフィアに哲学会館が建てられた。


これまでに、チャールズ・ダーウィンロバート・フロストルイ・パスツールエリザベス・キャボット・アガシー英語版ジョン・ジェームズ・オーデュボンライナス・ポーリングマーガレット・ミードマリア・ミッチェルトーマス・エジソンなどが会員となった。2005年現在の会員数は920名で、その内訳は772名の国内会員(アメリカ合衆国市民または居住者)と、20数か国の148名の外国人会員である。

APSの最初の役員や貢献者にはシンシナティ協会(SOC)の会員が多く、APSとSOCは今でも非公式な同僚関係を保っている。

[編集]

1786年に、航海術・天文学・自然哲学の業績を称える賞であるマゼラン・プレミアム英語版を創設した。この賞は、アメリカの機関が授与する科学賞としては最も古い。

その他に、文化史部門のバルズン賞、ジャドソン・ダランド臨床研究賞、ベンジャミン・フランクリン・メダル、神経生物学部門のカール・スペンサー・ラシュレー賞、ルイス賞、芸術・人文・社会科学分野での優れた業績を称えるトーマス・ジェファーソン・メダルなどを授与している。

出版物とアーカイブ[編集]

APSは、1771年から"Transactions of the American Philosophical Society"(アメリカ哲学協会紀要)を毎年5号発行している。1938年からは"Proceedings of the American Philosophical Society"(アメリカ哲学協会会報)を発行し、年2回開催される学会で発表された論文を掲載している。

APSは、ベンジャミン・フランクリンジョセフ・ヘンリーウィリアム・ペンメリウェザー・ルイスウィリアム・クラークの論文集も出版した。ジェーン・エイトケン英語版は、APSの本を400冊出版した[8]

また、アメリカ合衆国憲法の起草者であるジョン・ディキンソンに関する膨大なアーカイブを保有している[9]

建造物[編集]

国定歴史建造物の銘板

哲学会館[編集]

哲学会館英語版(Philosophical Hall)は、フィラデルフィアの南5番街104番地、チェスナット通とウォールナット通の間の旧市庁舎のすぐ南側にある。同協会の本部とするために1785年から1789年にかけて建設された。設計者はサミュエル・ヴォーン英語版で、フェデラル様式英語版で設計された[10][11]

1890年には図書室を拡張するために3階が増築されたが、インディペンデンス国立歴史公園を創設する際に[12]、建設当時の姿に復元するために、1948年から1950年にかけて増設部分が撤去された[11]

2001年にはアメリカ哲学協会博物館として一般公開され、歴史・芸術・科学の接点を探るテーマ別の展示が行われている。館内には、APSが所蔵する美術品、科学機器、オリジナル原稿、希少本、自然史標本、あらゆる種類の珍品、そして他の機関から貸与された品が展示されている[13]

図書館[編集]

図書館の閲覧室(2019年撮影)

1789年から1790年にかけて、フィラデルフィア図書館会社英語版(LCP)がAPS本部の向かいに本社を建設した。1884年にLCPはその建物を売却し、1887年にドレクセル・ビル(Drexel & Company Building)の拡張のために取り壊された。

ドレクセル・ビルが1950年代半ばに解体された後、APSは1958年に、かつてLCPの建物があったのと同じ場所に図書館を建設した。そのファサードは、LCPのものを再現した。

ベンジャミン・フランクリン・ホール[編集]

APSは、1854年から1855年にかけてチェスナット通り425-29番地に建設された旧ファーマーズ&メカニクス銀行の建物を修復し[14]、ベンジャミン・フランクリン・ホールとした。この建物は、ジョン・M・グリーズの設計により、イタリア様式英語版で建てられた。現在は、会議や主要なイベントの会場として使用されている[15]

リチャードソン・ホール[編集]

ベンジャミン・フランクリン・ホールのすぐ西側、チェストナット通り431番地にあるコンスタンス・C・アンド・エドガー・P・リチャードソン・ホールは、アディソン・ハットン英語版が設計し、1871年から1873年にかけてペンシルバニア生命保険年金会社ビルとして建設された[16]。ここにはオフィスと科学・技術・医学史のコンソーシアムが入っている[15]

ギャラリー[編集]

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ National Park Service (23 January 2007). "National Register Information System". National Register of Historic Places. National Park Service. {{cite web}}: Cite webテンプレートでは|access-date=引数が必須です。 (説明)
  2. ^ Duer, William Alexander. The life of William Alexander, Earl of Stirling, Major-General in the Army of the United States during the Revolution New York: Wiley & Putnam for the New Jersey Historical Society, 1847. p.5
  3. ^ "Philip Syng, Jr.", Philadelphia Museum of Art. Retrieved 31 December 2015.
  4. ^ American Philosophical Society selected records, 1784–1954”. Archives of American Art (2011年). 2011年6月17日閲覧。
  5. ^ New International Encyclopedia
  6. ^ Goodrich, Carter (1974). Government Promotion of American Canals and Railroads, 1800–1890. Greenwood Press. ISBN 978-0837177731 
  7. ^ Kozel, Scott M. (2010年). “Chesapeake and Delaware Canal (C & D Canal)”. PENNWAYS: Roads to the Future. Scott M. Kozel. 2015年5月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年9月6日閲覧。
  8. ^ James 1971, p. 26.
  9. ^ John H. Powell Collection of John Dickinson Research”. American Philosophical Society. 2020年5月26日閲覧。
  10. ^ Gallery, John Andrew, ed. (2004), Philadelphia Architecture: A Guide to the City (2nd ed.), Philadelphia: Foundation for Architecture, ISBN 0962290815  p.160
  11. ^ a b Teitelman, Edward & Longstreth, Richard W. (1981), Architecture in Philadelphia: A Guide, Cambridge, Massachusetts: MIT Press, ISBN 0262700212 , p. 30
  12. ^ Richard Webster, Philadelphia Preserved (Philadelphia: Temple University Press, 1976), p. 92.
  13. ^ American Philosophical Society Museum: About. ARTINFO. (2008). http://www.artinfo.com/galleryguide/22252/8770/about/american-philosophical-society-philadelphia/ 2008年7月25日閲覧。. [リンク切れ]
  14. ^ Gallery, John Andrew, ed. (2004), Philadelphia Architecture: A Guide to the City (2nd ed.), Philadelphia: Foundation for Architecture, ISBN 0962290815 , pp. 55–56
  15. ^ a b "Directions" Archived 2013-06-04 at the Wayback Machine. on the APS website
  16. ^ Gallery, John Andrew, ed. (2004), Philadelphia Architecture: A Guide to the City (2nd ed.), Philadelphia: Foundation for Architecture, ISBN 0962290815 , p.64

情報源[編集]

Works cited

外部リンク[編集]

(Wayback Machine copy)