功利主義

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功利主義(こうりしゅぎ、: Utilitarianism)は、行為や制度の社会的な望ましさは、その結果として生じる効用(功利、有用性)(: utility)によって決定されるとする考え方である。帰結主義の1つ。実利主義(じつりしゅぎ)とも呼ばれる。また、「功利主義」という日本語の語感がもたらす誤解を避けるため、「公益主義」あるいは「大福主義」[1]という呼び方が提案されている。

倫理学法哲学政治学厚生経済学などにおいて用いられる。

歴史[編集]

社会全体の幸福を重視するという発想は古来からあるが、功利主義を体系化したのはジェレミ・ベンサムである。

ベンサムの功利主義は、古典的功利主義とも呼ばれ、個人の効用を総て足し合わせたものを最大化することを重視するものであり、総和主義とも呼ばれる。「最大多数の最大幸福」と呼ばれることもあるが、正確には「最大幸福」である。この立場は現在でも強い支持があるが、一方で、さまざまな批判的立場もある。

功利主義においては効用は比較可能であると仮定される。ベンサムは快楽・苦痛を量的に勘定できるものであるとする量的快楽主義を考えた。これに対し、J.S.ミルは快苦には単なる量には還元できない質的差異があると主張し質的快楽主義を唱えたが、快楽計算という基本的な立場は放棄しなかった。

20世紀には快楽計算を放棄した選好功利主義が登場した。ヘアシンガーがその代表と目される。

分類[編集]

最大多数の最大幸福」がベンサムから続く功利主義のスローガンであるが、この幸福快楽と苦痛との差し引きの総計とするか選好の充足とするかで、次の二つに分けられる。

また、最大幸福原理を個々の行為の正しさの基準とするか一般的な行為規則の正しさの規準とするかで、次の二つに分類される。

  • 行為功利主義
  • 規則功利主義

行為功利主義と規則功利主義[編集]

両者は功利原理(利益=善)の対象が異なる。前者は行為が利益をもたらすか(「それをすれば利益があるか?」)を基準にし、後者は「規則」(「皆がそれに従えば利益があるか?」)を基準にする。

例えば、行為功利主義では「貧しい人が子供のために食べ物を盗む」のは子供が助かるからかまわないとし、規則功利主義では「子供のためなら食べ物を盗んでもよい」という規則があれば窃盗が横行して治安が悪くなるからいけない、とする。

量的功利主義と質的功利主義[編集]

量的功利主義とは異なり、質的快楽主義では快楽の種類による質的な区分を求める立場を取る。後者の代表者であるJ.S.ミルは、「満足したよりも満足しない人間であるほうがよい」と語っている。なお、ミル自身は求められるべき精神の快楽を、狭い利己心を克服した黄金律(他人にしてもらいたいと思うように行為せよ)に見出すよう主張した。

他の理論・思想との関係[編集]

利己主義は、功利主義とは日常的にはあまり区別されないが、倫理学においては功利主義は「万人の利益」となることを善とする立場を指し、「私利」のみを図ることをよしとする利己主義とは異なるとする。

国家社会主義民主主義経済学は功利主義を基本理念とした政治思想である。

功利主義への反駁、攻撃は多方面からなされている。

厚生経済学との関係[編集]

功利主義においては、異なる個人間で効用を比較したり足し合わせることも可能であるとする効用の基数性に基づく限界効用逓減の法則が前提された上、社会における全ての人々の効用の合計の最大化をはかるための所得再分配が肯定される。

ピグーの「厚生経済学」では、所得再配分はそれが経済全体のアウトプットを減少させないかぎり、一般に経済的厚生を増大させるものである(「ピグーの第2命題」)とした上、限界効用逓減の法則を前提するかぎり、所得再配分は貧者のより強い欲望を満たすことができるため、欲望充足の総計を増大させることは明らかであるとしている。

これに対し、新厚生経済学では、ロビンズの「経済学の本質と意義」では、内省によっては他人の内心を測定できない以上、異なった人の満足を比較する方法がないとして効用の可測性(基数性)が否定された上、ピグーの第2命題は、単なる倫理的な仮定にすぎないとしている。

問題点[編集]

以上では、便宜的に「個人」という語を用いていたが、正確には、どのような主体の効用を考慮すべきかという点については争いがある。具体的には、外国人(外国人の人権問題など)などが問題となる。

また、いかなる効用を考慮すべきかという問題もある。例えば、他人に不幸をもたらすこと自体によって得られる効用が問題となる。

代表的な論者[編集]

らが古典的功利主義者に数えられる。

現代においては、

らが知られている。

脚注[編集]

  1. ^ 「大福主義」という呼び方は、一ノ瀬正樹『功利主義と分析哲学』(2010年、日本放送出版協会)において提唱されている。

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]