軍国主義

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軍国主義(ぐんこくしゅぎ、: Militarism, : Militarismus)とは、軍事力国家戦略的に重視し、政治体制・戦略財政経済体制・社会構造などの総合的な国力軍事力の増強のため集中的に投入する国家の体制や思想を意味する。軍事主義とも呼ばれる。非民主的な独裁政治となる場合がある。

包括的な側面を持っており絶対的な定義は難しく、近現代において歴史を検証した過程で生まれた概念であり、他者がレッテルを付与する為に使われることが多い。これまでに軍国主義を標榜した国家や団体は一切存在しない。

特徴[編集]

第二次世界大戦以降の近年に確立した概念である軍国主義の定義は、明確なものではないのでどの国が軍国主義かという点に関しては、過去に軍国主義を標榜した国家が存在しない上、政治哲学や思想傾向によって大いに議論が分かれるところではある。ここでは、歴史的な観点から、軍国主義的な特徴や個別的な事例を述べるところでとどまる。

プラトンの『国家』における理想郷や、孫武の『孫子』における兵法が、軍国主義思想の東西における起源であるとみなされている。国際関係を有利にするための近代軍国主義思想の起源は、カール・フォン・クラウゼヴィッツの『戦争論』であるとされる。

独裁政治や全体主義、またはその両者を融合した制度は軍国主義や社会主義の特徴と考えられている。これは、国民を支配し、政府の方針に異議を唱えさせないことによって、国家運営、引いては戦争の遂行をより円滑に行うことができるからである。

一般的には、軍国主義や社会主義において圧殺されがちになる私権として、言論の自由表現の自由を中心とする「意見を表明し、異議を唱える権利」、参政権選挙権の自由は形式的に保障されることもあるが、秘密投票ではなく、実質的には監視付き・与党支持率100%の翼賛選挙となりやすい)、思想・良心の自由信教の自由といった基本的な人格権など、統制経済が高度に発達している場合には、私有財産制や経済活動の自由が侵害されるという、共産主義と似た性質を持つ。

このように軍国主義や社会主義の政治的特徴は、

  1. どのようにして国民の人権を制限するか
  2. どのようにして国家や政府に恭順させるか

という部分に興味が注がれ、国家・政府への絶対的忠誠を誓わせる点にある。

このような軍国主義や社会主義を可能にする政治制度には二つの面があり、一つは強権的な支配によって国民を押さえつける警察国家的方法であり、もう一つは教育メディア戦略を通して国民を洗脳し、自発的に国家の意思に従わせる全体主義国家的方法である。両者は併用されることが多い。警察国家的側面には、強権的な秘密警察情報機関が必要な要素であり、その他に密告制度、エージェントを用い相互監視の性格を帯びた国民管理の方法をとり、更に刑罰を見せしめとして利用することで国民を威嚇する。

近代的な軍国主義国家においては、裁判の自由と司法権の独立は認められる。実際には共産主義、社会主義国家の多くがそうであったように、極めて強圧的な運用しかされず、政府当局の意志を裁判所がほぼ代弁する形と化すことが少なくない。これは前述の司法権の独立が破られているという根本的な問題のほかに、裁判の基礎となる法律自体が極めて恣意的・非民主的に作られているという点にも起因するものである。

日本における軍国主義[編集]

日本国憲法66条2項は、「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。」と定めている。同条項にいう「文民」の解釈には争いあるも、政府見解では、次に掲げる者以外の者をいうと解している[1]

  1. 旧陸海軍の職業軍人の経歴を有する者であって、軍国主義的思想に深く染まっていると考えられるもの
  2. 自衛官の職に在る者

そして、同じ政府見解によれば、軍国主義思想とは、「一国の政治、経済、法律、教育などの組織を戦争のために準備し、戦争をもって国家威力の発現と考え、そのため、政治、経済、外交、文化などの面を軍事に従属させる思想をいう」と定義づけている[2]

参考文献[編集]

出典[編集]

  1. ^ 1973年(昭和48年)12月19日(72回国会)の衆議院建設委員会において、大村襄治政府委員内閣官房副長官)は「政府といたしましては、憲法第六十六条第二項の文民につきましては、「旧陸海軍の職業軍人の経歴を有する者であって、軍国主義的思想に深く染まっていると考えられるもの」、それから「自衛官の職に在る者」、この二つを判断の基準にいたしているわけでございます。」と答弁している。
  2. ^ 1973年(昭和48年)12月19日(72回国会)の衆議院建設委員会において、大村襄治政府委員(内閣官房副長官)は「軍国主義思想とは、一国の政治、経済、法律、教育などの組織を戦争のために準備し、戦争をもって国家威力の発現と考え、そのため、政治、経済、外交、文化などの面を軍事に従属させる思想をいうものと考えられるのでございまして、この思想に深く染まっている人とは、そのような思想がその人の日常の行動、発言などから明らかにくみとれる程度に軍国主義思想に染まっている人、言いかえれば、単に内心に軍国主義思想を抱くだけではなく、これを鼓吹し普及をはかる等、外的な行為までその思想の発現が見られるような人をさすものと理解しております。」と答弁している。

関連項目[編集]