左翼
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左翼(さよく、英:left-wing, leftist, the Left)または左派(さは)とは、政治においては通常、「より平等な社会を目指すための社会変革を支持する層」を指すとされる[1][2]。「左翼」は急進的、革新的、また、革命的な政治勢力や人を指し、社会主義的、共産主義的、または、無政府主義的傾向の人や団体をさす[3][4]。
目次 |
[編集] 概要
[編集] 語源
「左翼」「右翼」の語源はフランス革命である[5][6]。「左翼」という表現は、革命後の国民議会で議長席から見て左側の席を、共和派や世俗主義などの急進派が占めた事に由来する[7]。
[編集] 用法
「左翼」という用語は、通常、「より平等な社会を目指すための社会変革を支持する層」を指し[8][9]、革命運動、社会主義、共産主義、社会民主主義[10]、アナキズム[11]などを支持する層を指すことが多い。
同時に、「左翼」は相対的な用語であり、何を「左翼」や「右翼」と呼ぶかは時代・国・視点などによって変化する。また「左翼」という言葉はレッテル貼りに使われる場合も多い。
[編集] 様々な特徴・バリエーション
左翼と呼ばれる勢力には、多かれ少なかれ根底には専制政治や弱肉強食的な資本主義に対する懐疑がある。左翼は平等、労働条件の改善、社会保障、福祉、平和などを追求する場合が多い。
左翼は総称であり、非常に幅広い潮流を含んでいる。たとえば目標とする国家については、市民や労働者の自治を重視するサンディカリスム、政府を否定する無政府主義、逆に国家の積極的な介入を重視する福祉国家、執権党が一党独裁を行うソ連型社会主義などがある。また変革の方法についても、資本主義の枠内での社会改良主義、議会制民主主義のもとで将来的には社会主義社会を目指す平和革命主義、武力革命を行うべきとする暴力革命主義などがある。
身分制度や封建主義などに反対して近代化と富の増大を求める面では、資本主義と同様に近代主義・啓蒙主義・自由主義の側面がある場合がある。逆に、資本主義による伝統的な地域共同体の破壊や労働者の搾取に反対する面では、保守主義の側面がある場合もある。
ヨーロッパ、特に大陸では「左派」と政党や政治家が自ら公称することは珍しくない。一方でアメリカ合衆国では「左派」「右派」とも批判的な文脈では使われるが、自称する例は少ない。一般に左派は「リベラル」と称されるが、1980年代以降の政治家はこの呼称で定義されることも避け、中道的立場を強調することが多い。これは「保守」を強調する政治家が一定存在し、また「保守」と定義されることを避ける政治家があまりいない点と異なる。
政党の内部において、党内の「左派」「右派」と呼ばれる例も多い。たとえば、旧日本社会党では、社会民主主義的な勢力は「社会党右派」、労農派マルクス主義の流れをくむ勢力は「社会党左派」と呼ばれた。
[編集] 極左
詳細は「極左」を参照
左翼の中でも極端に急進的な変革・革命を求めるものは極左と呼ばれ、暴力事件、テロをも行う犯罪組織もある。日本では中核派、革マル派、日本赤軍、連合赤軍等の新左翼が呼ばれる事が多い。ただし極左と極右は全体主義や党派性などに類似性が指摘される事もあり、また反権力の観点から極左と極右が連係する場合もある。
[編集] 歴史
詳細は「フランス革命」、「社会主義#歴史」、「共産主義#歴史」、および「社会主義国#歴史」を参照
[編集] フランス革命以降
フランス革命直後の国民議会では、王党派に対して共和派が「左翼」と呼ばれた。フランス革命第二期では右翼のフイヤン派が没落し、今まで左翼だった共和派が支配的となる。しかし、政策を巡って再び左右で割れ、新しい軸が生まれる。そして右側には穏健派のジロンド派が座り、左側には過激派のジャコバン派が座ることとなった。
1793年には左翼のジャコバン派が国民公会からジロンド派を追放し、ジャコバンが目指した共和政ローマに似た独裁政治が敷かれた。しかし、ジャコバン派は新興資本家寄りのダントン派と労働者層寄りのエベール派に分裂する。ロベスピエールは両者を粛清して、恐怖政治を強めた。1794年にはテルミドールのクーデターが起き、ジャコバン派が次々と投獄・処刑される(当時はジャコバン派の熱烈な支持者だったナポレオン・ボナパルトもこれに含まれた)。このクーデターによって王党派が復活し、左翼は一時衰退する。
1871年には史上初の社会主義政権であるパリ・コミューンが成立した。
[編集] 20世紀
20世紀は専ら大学教員などの知識人が大衆の左翼運動を指揮し、欧州やロシアではマルクス主義が台頭した。また、欧州では同時に穏健派の社会民主主義も勢力を増大させた。絶対王政が続くロシアでの革命は成功したが、レーニン死後は世界革命を主張するトロツキーが失脚させられ、後継には一国社会主義を主張するスターリンが権力を掌握した。スターリンの独裁体制は、政敵や無辜の民に対する大粛清を行うなど恐怖政治が横行した。
帝政からの解放者としてのソ連共産党が全体主義的な傾向を強めていき民主主義色が薄れていったため、マルクス・レーニン主義から欧州の知識人も離反していった。それゆえ、西欧の共産党や急進左派は反ソ連・反スターリンの傾向を強め、リベラリズムとの親和性が高いユーロコミュニズムを提唱していくことになった。
資本主義を認める穏健左派などと呼ばれるリベラリズム・社会民主主義は欧州(特にフランス・ドイツ・イギリス・北欧など)において福祉国家を建設した。ヨーロッパ大陸の福祉国家は、資本側と労働者側が政府を仲介として協調する(ネオ・コーポラティズム)ことに特色がある。
これに対し、イギリスの社会民主主義は階級制度の残存への対抗から、階級闘争勢力としての社会主義が根強く、ヨーロッパ大陸の左派勢力の福祉国家路線とはやや形態が異なっていた。イギリスの社民主義は、1990年代に新自由主義を大きく取り入れ、第三の道と言われる方向に変化していく。
[編集] 現在
中華人民共和国やベトナムは、政治的には一党独裁を堅持しながら、経済的には鄧小平理論などに基づいて市場原理を導入した。
ラテンアメリカではアメリカ合衆国が主導するアメリカニゼーション・新自由主義に対する反発から、ベネズエラのウゴ・チャベスやボリビアのエボ・モラレスなどの反米左翼政権が数多く誕生した。また、反米というわけではないがブラジルの前大統領であるルラも労組出身の左翼であり、現職のルセフもルラの政策を引き継いでいる。1980年代以降一部の左派系の政権も新自由主義的な経済政策を取り入れ始めたため、急進左派勢力がある程度勢力を拡大している。
ドイツでも旧東ドイツのドイツ社会主義統一党の流れを汲む民主社会党PDSとドイツ社会民主党SPD左派が合流した左翼党が党勢を伸張している。東欧では市場経済導入以降の国内の経済格差批判から、党綱領と党名を変革した旧共産党の社会民主主義政党が政権に戻りつつある。
イギリスでは、労働党のトニー・ブレア首相は、労働党の政策を新自由主義を取り入れた第三の道へ変えることで政権を獲得したが、第三の道は一部労働組合の反発を招き、左派勢力の分裂をもたらした。
ヨーロッパの学派は、日本の沈滞状況とは対称的に、ネグリ、ハート、アルチュセール、ジジェク、ラクラウ、デリダ、バトラーなど、新保守主義、リベラルとは違う第三極として、ニューレフトを模索する運動が盛んである。これらは、文化的な相対主義など政治を離れて哲学的な論及も行うため、文化左翼といった呼び方もされる。
[編集] 左翼団体
[編集] 日本
詳細は「左翼団体」を参照
日本で一般的に「左翼団体」と呼ばれている政党や勢力には、以下のものがあるが、その定義や範囲は立場によってさまざまである。
明治から第二次世界大戦までは、合法的な社会主義政党である多数の無産政党として、左派の労働農民党、中間派の日本労農党、右派の社会大衆党などが存在した。また治安警察法などの治安立法により非合法で日本共産党が結党した。しかし昭和に新体制運動が高まり、日本共産党以外の全政党は大政翼賛会に合流した。
第二次世界大戦終結後は、合法化された日本共産党と、戦前の多数の無産政党が一同団結して結成された日本社会党(1996年に社会民主党に改称)が、「左翼政党」の代表的存在とされている。この他、日本共産党から分裂した複数の党派も含む新左翼各派や、日本社会党から分裂した民社党や社会民主連合や新社会党、あるいはベ平連などの従来の政党とは異なる平和運動や市民運動、更にはリベラル的な傾向の強いマスコミや団体や個人なども「左翼団体」や「左翼勢力」などと呼ばれる場合もある。
1955年からの55年体制では、革新勢力と保守勢力は二大勢力となった。特に1960年代と1970年代の安保闘争では激しい闘争が行われた。連合赤軍や日本赤軍による暴力事件、テロが盛んに行われたのもこの時代である。しかし、「左翼」内部での多数の分裂と党派抗争、公明党などの「中道」政党の躍進、世界的な共産主義勢力の停滞とソ連崩壊、環境問題などの従来の「左翼・右翼」の分類の枠内に収まらない課題の増加、民主党などへの一部合流、などもあり、1980年代以降は従来型の「左翼団体」や「左翼勢力」は縮小傾向にある。日本の戦後左翼は伝統的に他国の左派よりも平和主義に傾倒する傾向が強いが、近年は他国の左派と同様に新自由主義やグローバリゼーションによる格差社会や環境破壊などを主要な問題意識とする動きも強まっている。
[編集] 参考文献
浅羽通明(2006年)『右翼と左翼』幻冬舎、ISBN 434498000X
[編集] 脚注
- ^ T. Alexander Smith, Raymond Tatalovich. Cultures at war: moral conflicts in western democracies. Toronto, Canada: Broadview Press, Ltd, 2003. Pp 30.
- ^ Left and right: the significance of a political distinction, Norberto Bobbio and Allan Cameron, pg. 37, University of Chicago Press, 1997.
- ^ 大辞林. 三省堂.
- ^ 広辞苑. 岩波書店.
- ^ Andrew Knapp and Vincent Wright (2006). The Government and Politics of France. Routledge.。
- ^ 大辞林. 三省堂.
- ^ Andrew Knapp and Vincent Wright (2006). The Government and Politics of France. Routledge.
- ^ T. Alexander Smith, Raymond Tatalovich. Cultures at war: moral conflicts in western democracies. Toronto, Canada: Broadview Press, Ltd, 2003. Pp 30.
- ^ Left and right: the significance of a political distinction, Norberto Bobbio and Allan Cameron, pg. 37, University of Chicago Press, 1997.
- ^ Van Gosse, The Movements of the New Left, 1950 - 1975: A Brief History with Documents, Palgrave Macmillan, 2005, ISBN 9781403968043
- ^ Brooks, Frank H. (1994). The Individualist Anarchists: An Anthology of Liberty (1881–1908). Transaction Publishers. p. xi. "Usually considered to be an extreme left-wing ideology, anarchism has always included a significant strain of radical individualism...
[編集] 関連項目
- 極左 - 左翼 - 中道左派 - 中道 - 中道右派 - 右翼 - 極右
- 平等主義
- 革新
- 左翼団体
- 革新政党
- 宗教左派
- 宗教的左派
- キリスト教社会主義
- イスラム教社会主義
- 日本の労働運動史
- 日本教職員組合
- 部落解放同盟
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