新冷戦
新冷戦(しんれいせん)とは
- 1979年12月のソ連のアフガニスタン侵攻に始まる東西の緊張状態をいう。これにより1960年代末から1970年代末にかけて展開されたデタントは終わりを告げ、米ソは再び対決姿勢を強める結果となった。詳しくは冷戦#新冷戦(1979年-1985年)を参照。
- 21世紀に入ってからのアメリカとロシアの間における、旧東側諸国への覇権ならびにアメリカによる世界の一極支配への対抗による対立。第二次冷戦(Second Cold War)とも呼ばれる。本項で詳述する。
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[編集] 概要
ソ連は1980年代後半からアメリカに対する政策を転換し、ベルリンの壁崩壊後、それまで冷戦と呼ばれていたアメリカとソ連の対立はなくなった。またソ連それ自体も解体し構成国はそれぞれ独立、ロシアも自由主義・資本主義体制に移行した。そうして1990年代前半からアメリカとロシアの関係は良好な方向に向かっていた。しかし21世紀に入り、一部の旧ソ連諸国・地域がNATOやEUなど旧西側諸国の機関や連合体などに加盟する動きを見せたため、ロシアは自らの影響力の確保のため、豊富な天然資源を背景にそれを牽制する動きを見せている。グルジアやウクライナ、アゼルバイジャン、モルドヴァのEUへの加盟への動きに対するものが、その代表的な例である
2001年には上海協力機構が結成され、ロシアは中華人民共和国や反米を掲げるイランとの関係を強化した。また、「アメリカの裏庭」であるキューバ、ベネズエラ、エクアドルといった反米的な中南米諸国との関係も強化している。こうして、ロシアはアメリカの一極支配に対抗するため、アメリカに対して様々な牽制を行っている。
[編集] 対立の表面化
2008年の南オセチア紛争の際、アメリカは2008年8月20日に予定されていたアメリカ・ロシア・カナダの共同軍事演習を中止した。アメリカ国防総省は「今後はロシアの行動次第で、軍事関係を大きく変更する」とコメントし、ロシアに対し強硬姿勢を示した。[1]。
対してロシアはアメリカがポーランドにMDを配備する事について懸念を示している。[2]もし、ポーランド(もしくはリトアニア)にMDが配備されたならば、ロシアはミサイルの照準をヨーロッパに向けざるを得ないとロシア側は表明した。
[編集] 現状
2008年8月26日にロシアのドミトリー・メドヴェージェフ大統領はアブハジアと南オセチアの独立を承認する大統領令に署名した。同日のマスコミのインタビューでメドベージェフ大統領は「冷戦再来の展望も含め、何もわれわれを恐れさせることはできない」と述べ、冷戦再来を恐れていない考えを示した[3]。一方、プーチン首相は9月11日に官僚や専門家を集めた会合の中で新冷戦を否定している[4]。
一方、バラク・オバマアメリカ大統領は「ロシアとの関係をゼロから構築しなおす」と宣言した。2009年9月17日には、アメリカが米露関係の最大の懸案であった東欧ミサイル防衛構想の中止を決定、ロシアはこれを歓迎し、対抗ミサイルの配備中止を決定した。これにより、「新冷戦」とも形容された米露関係は改善された。 しかし、ロシアが昨今の世界同時不況などでアメリカに対して批判的なスタンスを取っていることに変わりはなく、また、一部の反米国の首脳が反米国同士の連帯を呼びかける動きも見られる。
2010年2月5日、メドヴェージェフ大統領が、2020年までの国防方針となる新軍事ドクトリンを承認した。「核戦争の回避」を最重要課題としているものの、核兵器をロシアの国防の中核と位置づけることに変化はなく、NATOの東方拡大およびアメリカのミサイル防衛を軍事的脅威とし、アメリカを牽制する内容となっている[5]。
2010年6月に、アメリカでロシア連邦保安庁のスパイとされる10人が逮捕された。プーチン首相は、「一般市民を投獄しており(アメリカの)警察当局は制御不能になっている」とアメリカを批判、ロシア外務省も非難声明を発表した。これに対しアメリカ側は「米露関係に影響は及ぼさない」とし、火消しした。オバマ政権発足以降、改善に向かっていた米露関係が再び冷え込むと思われた[6]。ただ、プーチン首相は批判のトーンを抑えており、さほど大きな悪影響は及ぼさないと言う見方もあった[7]。最終的には10日あまりで両国がスパイ交換を行い、関係悪化は回避された[8]。
2010年11月30日、メドベージェフ大統領は、年次教書演説で「(欧州MDの協力で)合意できなければ軍拡競争の新たな段階が始まり、新たな攻撃システム配備を決断せざるを得ない」と述べ、欧米諸国を牽制し、NATOとの対等な関係の構築を強く主張した[9][10]。また、プーチン首相は同年12月1日にCNNの番組のインタビューで、もしアメリカとの新たな戦略核兵器削減条約(新START)の批准に失敗した場合には、ロシアは核戦力を強化せざるを得ないと言う旨の発言をし、更に「それを選んだのは我々ではない。我々が望んでいるわけではない。だが、これは我々側にとっての脅威ではない」「協調的な取り組みで合意できなければこうなることは、我々全員が予想していた」と述べた。オバマ大統領は批准に積極的な姿勢を示しているが、野党の共和党内ではロシアの増長に対する警戒感から、議会での採決を遅らせる動きが出ており、先行きは不透明である[11]。
2011年5月18日、メドベージェフ大統領はアメリカが推進する欧州ミサイル防衛構想について、「これは非常に悪いシナリオだろう。われわれを冷戦時代に逆戻りさせるシナリオだ」と語った[12]。また、これに先立って2011年5月16日には、ロシアのリャプコフ外務次官が2011年2月に発行したばかりの新STARTからの脱退もあり得る旨も表明し、アメリカを強くけん制した[13]。
[編集] アメリカ・ロシア以外の動き
EU諸国など西ヨーロッパ地域は、対ロシア関係を維持しつつもNATOに参加するなどアメリカの影響力が強い。対して中国・インドは、ロシア製の軍事兵器を多く輸入するなど、ロシアの影響力が比較的強い。
中央アジア諸国は独立以来、独立国家共同体に加盟しロシアと友好関係を築いていた。しかし、アメリカのアフガニスタン侵攻や対テロ戦争以降アメリカへ接近する国が相次ぎ、ロシアの反対していたイラク戦争を支持・派兵したカザフスタンをはじめアメリカ軍の駐留を認めるなど脱ロシアの傾向が見られる。しかし、キルギスのチューリップ革命やウズベキスタンの反政府運動にアメリカの影がちらついた事で、アメリカと距離を置く国が続出。上海協力機構設立などにより再び親露傾向へ向かっている。
南米諸国においてはベネズエラのチャベス政権発足以降左傾化が進んでおり、アメリカの勢力圏から離脱している。しかし、左派政権であるチリ・パナマ・パラグアイ・ブラジルなどはアメリカとの対立姿勢を見せず友好関係を継続している。
2010年2月8日、NATO加盟国であるフランスがロシアに強襲揚陸艦1隻を売却すると発表した。ロシアは4隻の購入を打診しているとされる。これについてはNATO加盟国から懸念の声が上がっており、特に2008年にロシアと武力衝突を起こしたグルジアや、ロシアと隣接するバルト三国からは、「ロシアの脅威が増す」として強い懸念が出ている[14]。ちなみにフランスは、旧冷戦時代に大統領であったシャルル・ド・ゴール(1959年~1969年まで在任)が、フランスをアメリカにもソ連にも与しない「第三の極」であるべきと考え、アメリカと一定の距離を置く外交を展開していた。その後2010年現在に至るまでも、フランスはイラク戦争に反対したりと、アメリカとは異なる独自路線を歩んでいる。一方でフランスは2009年に長年離脱していたNATOへ復帰した。これらのことから中立を保つ外交とする肯定的な見方もあるが、NATO加盟国としての責任を無視した行動で足並みを乱し、双方に良い顔をして混乱を煽る二枚舌外交とする批判もある。
[編集] 「新冷戦」時代幕明けの可能性
2010年現在は、アメリカによる世界の一極支配(いわば独り勝ち)が続いている。しかしながら、2015年を目途に中国は航空母艦を実戦配備する計画を立てており、また、ロシアも航空母艦の増産をそう遠くない将来に行うことを目指している。中露の計画が完了した場合、中露のものと合わせれば、航空母艦はアメリカに匹敵する数になる。このことが米中露という3つの大国による軍拡競争を生み出し、冷戦状態が再発する危険性が懸念されている。このような点などから、リチャード・アーミテージは2020年以降はアメリカによる世界の一極支配構造が崩れる可能性を指摘している[15]。
近い将来起こるとされるアメリカ一極支配時代の終焉は、長年アメリカの庇護の下にある日本にとっても決して無関係なことではなく、将来の日本の安全保障をどうするか、憲法改正論議なども含め、重要な課題となっている。
ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官は、2011年1月14日付けのワシントン・ポストに寄稿し、「米中は冷戦を避けなければならない」と述べ、米中関係の悪化を懸念した[16]。更に、琉球新報は2011年1月21日付の社説で、「ワシントンで行われたオバマ米大統領と中国の胡錦濤国家主席との米中首脳会談は、米中二大大国時代を象徴する会談となった。世界に平和をもたらすのも、戦争や紛争に陥れるのも、米中の手中にある。どうやら世界はそんな危うい時代に突入している。二大国の動向を警戒し、注視したい」と記述した[17]。
2011年11月9日、アメリカ国防総省は「エア・シーバトル」(空・海戦闘)と呼ばれる特別部局の創設、中国の軍拡に対する新たな対中戦略の構築に乗り出していることが明らかとなった。この構想には中国以外の国は対象に入っていないとアメリカ側は事実上認めており、ある米政府高官は「この新戦略は米国の対中軍事態勢を東西冷戦スタイルへと変える重大な転換点となる」と述べた[18]。
[編集] 日露関係の悪化
2011年2月6日、アメリカの同盟国である日本の菅直人首相が、2010年11月にロシアのドミートリー・メドヴェージェフ大統領が国後島を訪問したことを「許しがたい暴挙」と厳しく非難した。しかし、これがロシアの怒りを買い、メドヴェージェフは北方領土の軍備増強を指示、また、ロシアのイタル・タス通信社は「大統領は事実上今後の日本との対話を閉じた」と報道した。更にロシアは、フランスから購入し、ロシア海軍太平洋艦隊に配備予定のミストラル級強襲揚陸艦を、「南クリル(北方領土)の防衛にも使われる」とし、今後日本との有事を想定し、睨みを利かせる意向である[19]。
同年9月には日本の領空の極めて近くのオホーツク海上空でロシア空軍が飛行危険区域を設定し軍事演習を行うというという日本に対する示威行為を行った。これは前代未聞の出来事である[20]。
[編集] ロシアのアメリカ一極支配からの脱却策
2010年12月17日、ロシア連邦首相ウラジーミル・プーチンは、2015年までにロシア政府が使用しているコンピュータのソフトウェア(OS含む)をフリーソフトウェアに置換するよう命じた。ソフトウェアをアメリカの企業であるマイクロソフト社に依存している現状からの脱却を目指しているとされる[21]。また、プーチン氏は周辺の国々から構成されるユーラシア連合構想を打ち出している。
[編集] 出典
- ^ http://www.nikkei.co.jp/kaigai/us/20080814D2M1403414.html 2008-08-14 日本経済新聞
- ^ http://mainichi.jp/select/world/news/20080816ddm007030177000c.html 2008-08-16 毎日.jp
- ^ [1] 時事通信
- ^ 「プーチン首相「帝国的野望ない」、新たな冷戦を否定」 フランス通信社、2008年9月12日。
- ^ “ロシアが新国防指針、米をけん制 NATO拡大やMDが脅威”. 共同通信. (2010年2月6日) 2010年2月6日閲覧。
- ^ “ロシア:プーチン首相が米批判「一般市民を投獄している」”. 毎日新聞. (2010年6月30日) 2010年6月30日閲覧。
- ^ “スパイ逮捕で米ロ関係に影 影響は限定的か”. 共同通信. (2010年6月30日) 2010年6月30日閲覧。
- ^ “露スパイ事件:逮捕・収監のスパイ交換 米露、関係悪化を回避”. 毎日新聞. (2010年7月10日) 2010年7月10日閲覧。
- ^ “露大統領「欧州MDで合意できなければ軍拡競争」 年次教書演説で”. 産経新聞. (2010年11月30日) 2010年12月1日閲覧。
- ^ “「対等でなければ軍拡」 ロ大統領がNATOけん制”. 東京新聞. (2010年12月1日) 2010年12月1日閲覧。
- ^ “新START失敗ならロシアは核戦力強化 プーチン首相”. CNN. (2010年12月1日) 2010年12月1日閲覧。
- ^ “ロシア大統領、首相との違い示すも再出馬の明言避ける”. ロイター. (2011年5月19日) 2011年5月9日閲覧。
- ^ “ロシア、新START脱退を警告 米のMD強化に反発”. 産経新聞. (2011年5月16日) 2011年5月19日閲覧。
- ^ “フランス:ロシアにヘリ軍艦売却…NATO側から懸念の声”. 毎日新聞. (2010年2月9日)
- ^ “アーミテージ氏が語る新しい日米安全保障体制”. BPnet. (2006年7月12日) 2010年8月13日閲覧。
- ^ “「米中は冷戦を避けなければならない」 キッシンジャー元国務長官”. 産経新聞. (2011年1月15日) 2011年1月15日閲覧。
- ^ “米中首脳会談 対立から融和へ対話促進を”. 琉球新報. (2011年1月21日) 2011年1月21日閲覧。
- ^ “米が対中新部局「エア・シーバトル」空・海戦闘一体…高官「南シナ海脅威座視しない」”. 産経新聞. (2011年11月11日) 2011年11月11日閲覧。
- ^ “北方領土、大統領は日本との対話閉じた」 ロシア報道”. 朝日新聞. (2011年2月10日) 2011年2月10日閲覧。
- ^ “ロシア軍、日本領空付近で演習=政府が照会”. 時事通信. (2011年9月8日) 2011年9月8日閲覧。
- ^ “Vladimir Putin Orders Russian Government to Switch to Free Software by 2015”. Mashable. (2010年12月27日) 2011年4月14日閲覧。
[編集] 関連項目
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