大統領制

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青が共和制で大統領制、緑が共和制で大統領職と議会との関係が独特である大統領制をとる国

大統領制(だいとうりょうせい、presidential system)とは、広義においては国家元首が「大統領」あるいはそれに類する呼称を用いている制度をいうが、狭義では議会から独立した地位にある大統領が行政府の長となる政治制度のことである。本項では狭義の大統領制について述べる。

大統領の権限行使が儀礼や調停にとどまり、行政府の長としての実権が首相にある場合には大統領制とはいえず、議会から独立した権力を持っていることが重要で、その選出母体が議会そのものである場合には「大統領制」にならない。

憲法学政治学の用語としての「大統領制」は厳格な権力分立を前提とするが、大統領による独裁も分類の際には「大統領制」とされる。

なお、大統領の呼称は"President"の和訳に過ぎず、共和国における国家元首一般についてこの呼称が用いられる。ただし、漢字文化圏では「主席」(中華人民共和国ベトナム社会主義共和国朝鮮民主主義人民共和国)や「総統」(中華民国)など独自の呼称を用いる国もあるが実質においては変わらず、英訳ではどちらも"President"である。

目次

[編集] 歴史

大統領制はアメリカ合衆国憲法ではじめて具現化された。それは全く独自の統治機構ではなく、18世紀後半における英国の統治機構を模倣したものであった。当時の英国では君主がいまだ実権を有しており、内閣を率いる行政府の長でもあった。首相の地位は君主の信任のみで成立し、その性格は吏僚の首席に過ぎなかった。英国王は国家元首であると同時に国軍の最高司令官でもあり、議会で成立した法律に対しては拒否権を持っていた。これらの制度はそのままアメリカ合衆国憲法に取り入れられた。 その後、英国の君主はその実権を失っていき議院内閣制が成立した。一方、アメリカの大統領は議会からの独立性を強め、厳格な三権分立制を形成していった。

アメリカ型大統領制はのちに独立したラテンアメリカ諸国に取り入れられ、第二次世界大戦後には世界中で「大統領制」を採用する国が増えた。

[編集] 政治構造

大統領制は三権分立を最も良く体現した制度である。

立法府と行政府の融合を原則とする議院内閣制に対し、大統領制では立法府と行政府が独立して牽制しあう。行政府の長は大統領であり、首相は存在しないか、存在する場合でも大統領の下僚に過ぎない。大統領に対する不信任決議や、議会に対する解散権は通常認められないので、大統領も議員もいったん就任すれば本人が辞任するか、事故がないかぎり任期を中断されることがない。このように、大統領と議会は互いの誕生と生存について独立しているが、相手の行動に影響を及ぼすべく交渉し、場合によっては拒否権を行使する。また、この制度の場合、大統領の所属政党と議会の多数派が違う政党になることもある。その場合、大統領の望む法案の成立が思うように進まなくなる可能性がある。

議会が大統領に対して用いる牽制・抑制手段には、以下のような方法などがある。

  • 予算承認権・条約批准権
  • 高官人事の承認権
  • 大統領に対する弾劾・罷免

大統領が用いる対抗手段には、以下のような方法などがある。

  • 政府法案の提出あるいは勧告権
  • 大統領令などの行政立法権
  • 法案の拒否権や遅延権
  • 非常事態宣言や戒厳令などの非常権限

有無と細部は各国で異なる[1]

[編集] 議論

[編集] 大統領制と独裁

大統領が握る権限が強大でも、三権分立が生きているかぎり大統領制は独裁ではない。しかし、ホアン・リンスなど、大統領制民主主義に批判的な学者は、大統領と議会の対立が深刻になると、国政が麻痺状態に陥ったまま抜け出せなくなる危険があり、危機収拾のために憲法を無視しなければならないという主張が生まれ、非常事態のための規定が濫用されたり(議会の強制解散など)、大統領による独裁や反政府派によるクーデターを招くことになる、と主張した[2]

その一方で、独裁やクーデターを招いた大統領制はほぼラテンアメリカに集中していることから、ラテンアメリカという特殊な地理的要因を指摘する向きもあるし、大統領制内部での様々な制度的差異にこそ着目すべきであって大統領制そのものが問題なのではない、という主張もある[3]

[編集] 首相公選制との関連

首相公選制は、議会に依存しない首相をおくことで、行政府としての首相の権限を強化するものである。これを大統領制とみなす向きもあるが、大統領制のように議会と行政府が相互に独立した主体として牽制し合うものではなく、議院内閣制の一類型とみなすべきである[要出典]

[編集] 大統領制を採用する主な国家

[編集] 脚注

  1. ^ 代表的には、Shugart, Matthew Soberg, and John M. Carey. 1992. Presidents and Assemblies: Constitutional Design and Electoral Dynamics. Cambridge: Cambridge University Press.
  2. ^ たとえば、Linz, Juan J. 1990. "The Perils of Presidentialism." Journal of Democracy 1 (1):51-69.があるが、棄却されている主張である。
  3. ^ 上記Shugart and Careyにくわえ、Mainwaring, Scott, and Matthew Soberg Shugart, eds. 1997. Presidentialism and Democracy in Latin America. Cambridge: Cambridge University Press; Cheibub, Jose Antonio. 2007. Presidentialism, Parliamentarism, and Democracy. Cambridge: Cambridge University Press.を参照。

[編集] 関連項目