報道の自由
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報道の自由(ほうどうのじゆう)とは、日本では報道機関がさまざまな表現媒体をもちいて、国民の知る権利に奉仕する存在である。
英語圏ではFreedom Of Press、つまり、マスコミなどの報道機関の自由となり、報道活動だけでなく取材、さらには報道機関を設立する自由も含む自由ととらえられ、アメリカなどではこの場合、表現の自由は憲法で保障されている権利となっているが、取材活動に関しては憲法的に保障された権利ではなく、取材を制限するような法律は合憲との判断が最高裁判所で出されている。議会の証人喚問で、記者や編集者が合法的には得られない情報のソース元の証言を拒否した場合、その記者が場合によっては服役刑に処せられるのもこのためである。もちろん、政府の行為そのものが違法である場合などでは「公共の利益」を根拠に無罪判決を勝ち取った場合が英国でも存在する。
報道の自由に関しては、個人のプライバシー、企業や国家の機密などに関して報道機関の取材の自由及び報道の自由がどの程度の範囲で認められるかという議論がなされる。
目次 |
[編集] 日本における報道の自由
報道機関の活動は国民の日本国憲法第21条の「知る権利」を充足させるのに重要な役割を果たすことから、報道機関には、報道の自由が認められている。報道の自由及び取材の自由は、報道機関にのみ与えられた特権である。ただし、新聞とテレビでは、法律における扱いはかなり異なっている[1]。その準備段階である取材の自由については後述する。
[編集] 評価
国際的なNGO団体である国境なき記者団による2010年度の報道自由度ランキングにおいて、日本は北欧諸国などに次ぐ11位と比較的高い評価をされている。国境なき記者団では日本における課題として、記者クラブ制度により外国人ジャーナリストやフリージャーナリストによる情報のアクセスが妨げられていることを挙げている。
[編集] 実名報道
詳細は「実名報道」を参照
被害者を傷つけていることや無罪を推定されている被疑者・被告人の犯人視につながること、加害者の更生を妨げているという理由で実名報道に対する批判がしばしばなされるが、一方で、実名報道の規制は報道の自由を侵害するという意見も根強い。しかし、過剰な報道はプライバシーの権利を侵害することにもなりかねない。
英語圏では未成年が加害者である場合はその実名報道には法的な規制がかかる。被害者に関しては未成年であろうと実名報道がおこなわれる。ただし、先進国全般を見渡せば、アメリカなどの例外を除くと、芸能人や政治家などの著名人でない一般人の実名報道は自粛される傾向にある。一般の市民の生活を著しく損なうような活動をすれば、たとえ、表現の自由に守られているとされるマスコミの報道活動をも規制する法律が立法化される可能性が極めて高いためである。
[編集] 問題となった事件
- 博多駅テレビフィルム提出命令事件
- 少年法による未成年者の事件報道規制
[編集] アメリカ合衆国における報道の自由
アメリカ合衆国においては、アメリカ合衆国憲法修正第1条において言論の自由・表現の自由が保障されている。ただし、報道の自由に関して直接憲法上での言及はなく、裁判所の判断においても、報道であることをして特別の保護が与えられているわけではない[2]。報道機関のもうひとつの主要な活動である取材に関しては表現の自由の一部ではないとの判例が出ている。
[編集] 報道の自由の程度の評価
国境なき記者団が2005年10月20日に発表した2005年度の報道の自由度のランキング(Worldwide Press Freedom Index 2005)では、対象となる167ヶ国中、もっとも自由度の高い報道をおこなっている国として、デンマーク、フィンランド、アイスランドなど7ヶ国で、逆に、自由度のない報道をおこなっているのは北朝鮮、エリトリアなどである。
中国、ベトナム、中央アジア諸国など旧社会主義陣営や イラン、リビアなど中東諸国が下位にランクされていることが目立つ結果になっている。
2007年5月2日、ニューヨークを本部に置く非営利団体「ジャーナリスト保護委員会」(CPJ)は、「過去5年間で報道の自由が最も後退した10カ国」を1位から順にエチオピア、ガンビア、ロシア(11人の記者が相次いで殺害されたのが理由)、コンゴ民主共和国(旧ザイール)、キューバ、パキスタン、エジプト、アゼルバイジャン、モロッコ、タイ(2006年9月19日のクーデターが理由)と発表した(前回最下位の北朝鮮は対象外)。
あくまで一民間団体が示した見解であり、必ずしも中立的な評価ではないということを留意する必要がある(特に「国境なき記者団」はその“過激な”活動・主張について各国から疑問を呈されている団体でもある)。
[編集] 取材の自由
報道の自由に関連する、あるいは一部である自由として、取材の自由という概念が観念されることがある。すなわち、報道をおこなうためには報道内容について取材することが必要不可欠であり、したがって、取材の自由が十分尊重されなければ報道の自由を確立することはできないことにもとづく。
取材の自由と関連して、取材源秘匿の権利があげられることがある。これは、情報提供者に関する情報、あるいは得た情報そのものの開示を強制されれば、報道機関と情報提供者との信頼関係が崩れて正確な情報を得られなくなる恐れがあるためである。 取材源の秘匿には、狭義と広義がある[3]。狭義には、誰から情報を得たかを秘匿する権利あり、広義にはその得られた情報(メモ・フィルムなど)を秘匿する権利である。 これらの権利がどこまで保障されるかについても議論がある。上智大学教授の田島泰彦は、基本的に、記事の正確性、信頼性、透明性の観点から、情報の出所の明示が最も大事な原則であり、とりわけ、公権力を行使する政治家や官僚が情報源である場合、明示は当然であり、取材源秘匿は、取材源の生命にかかわる、重大な不利益になるといった場合の例外とすべきであると主張している[4]。
[編集] 日本における取材の自由
ただ、取材の自由が日本国憲法第21条によって直接に保障されるかどうかは意見が分かれる。報道の自由のなかには取材の自由が当然に含まれるとする意見が存在するが、判例は報道の自由を表現の自由の一内容とは認めず、「憲法第21条の精神に照らし、十分尊重に値する」と述べるにとどまっている。
取材の自由は、取材対象もしくは関係者の権利保護、公正な裁判の維持、国家機密の保持などさまざまな利益と衝突することがある。この場合、取材の自由が制約を受ける可能性も出てくる。
[編集] 問題となった事件
取材源秘匿との関連では、米国の企業が所得隠しをおこなっていたとされる複数社の報道に対し、NHKや読売新聞、共同通信の記者に対して取材源の開示を要求した訴訟のケースでは2006年3月14日の東京地裁判決が読売の報道について取材源を秘匿すべき事情は認められないと判断した一方、NHKの報道については2005年10月11日の新潟地裁・2006年3月17日の東京高裁判決は取材源の秘匿を認め、同年10月3日最高裁判所決定で確定した。
1957年には売春汚職事件で検察の派閥争いの過程で捜査情報漏えいをつきとめるために検察内部から情報をリークしていた人物を特定するために政治家を逮捕方針という偽情報を流し、偽情報をつかまされて報道した新聞記者が名誉毀損で逮捕された。記者はニュースソースを明かさなかったために、情報提供者は発覚しなかったが、その結果として検察の派閥争いでの陰謀の解明が難しくなった。
1972年の西山事件では新聞記者が取材で得た情報について、報道より前に政治意図を持って特定の政治家に情報を流して政治利用されたことや、ニュースソースを秘匿しなかったために新聞記者だけではなく情報提供者の発覚を招いたことがジャーナリズムの上で問題となった。
2010年1月には小沢一郎民主党幹事長の陸山会事件に関する報道で、検察からマスコミへの取り調べ内容のリークが一部で問題視され、放送局の監督権限を持つ総務大臣の原口一博が、取材源を単に「関係者」とするのは不適切であると発言した。
刑事事件については、民訴法とは異なり、証言拒絶ができるとされる職業が限定列挙であり、報道関係者は含まれていないので、取材源の秘匿を理由に証言拒絶ができないこととなっている。
「博多駅テレビフィルム提出命令事件」も参照
[編集] 放送の自由
テレビ、ラジオなど電波メディアによる情報提供の自由を放送の自由とよぶ。広義には有線放送も含まれる。
[編集] 日本における放送の自由
放送はジャーナリズム機能を持ったマスメディアである。ニュースやドキュメンタリーに限らず他の番組についても程度の差こそあれ、ジャーナリズム性を帯びているといえる。加えて放送には聴覚性、視覚性、同時性、臨場性があり、他の活字メディアに比べ受け手に与えるインパクトがはるかに強く、社会的影響力が大きい。活字メディアである新聞や雑誌は誰でも自由に刊行できるが、放送事業は電波を使わなければ成立しない電波メディアである。電波は天然資源と同様に有限・希少な資源である。すなわち電波は「国民の共有財産」であり、放送局は国民の共有財産をその負託を受けて利用しているということになる。すなわち「社会的影響力の大きさ」「電波利用」の二つの特徴から「公共性」が極めて高いということになり、放送には電波法や放送法などによってさまざまな規制が課されている[5]。
放送はその「中立性」を保つため、公権力の介入を認めないものとしているが、それが他者の人権を侵害する場合は、一定の制限を受けることになり、公権力の介入を受けることになる。このことから各放送事業者はそれぞれ自律するための「放送基準」を定め、自らに制限を課している[6]。
[編集] 脚注
- ^ 野中・中村・高橋・高見「憲法Ⅰ」第4版p372
- ^ 松井茂記『アメリカ憲法入門』第5版 有斐閣 149ページ
- ^ 野中・中村・高橋・高見「憲法Ⅰ」第4版p374
- ^ 「開かれた新聞」委員会 (2009年1月5日). “「開かれた新聞」委員会 座談会(その1) 情報出所、明示に努力”. 特集 「開かれた新聞」 (毎日新聞) 2009年6月10日閲覧。
- ^ 『放送ハンドブック:文化をになう民放の業務知識』 日本民間放送連盟編、東洋経済新報社、1992年3月16日(原著1991年5月23日)、第4刷 p3-4。ISBN 4492760857。
- ^ 『放送ハンドブック:文化をになう民放の業務知識』 日本民間放送連盟編、東洋経済新報社、1992年3月16日(原著1991年5月23日)、第4刷 p5。ISBN 4492760857。
[編集] 関連項目
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