エドワード・スノーデン

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エドワード・スノーデン
生誕 エドワード・ジョセフ・スノーデン
(Edward Joseph Snowden)

1983年6月21日(31歳)[1]
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
ノースカロライナ州エリザベスシティ
現況 ロシアの旗 ロシア(滞在場所非公開)
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
職業 NSA局員
CIA局員
ブーズ・アレン・ハミルトン社職員[2]
著名な実績 PRISMの告発者

エドワード・ジョセフ・スノーデン英語Edward Joseph Snowden1983年6月21日-)は、アメリカ合衆国情報工学者中央情報局(CIA)及び国家安全保障局(NSA)の局員として、アメリカ政府による情報収集活動に関わった。

2013年6月に香港で複数の新聞社(ガーディアンワシントン・ポストおよびサウスチャイナ・モーニング・ポスト)の取材やインタビューを受け、これらのメディアを通じてアメリカ国家安全保障局(NSA)による個人情報収集の手口を告発した[3][注釈 1]ことで知られる(PRISM計画)。2013年6月22日、米司法当局により逮捕命令が出され、エクアドルなど第三国への亡命を検討しているとされていたが、同年8月1日にロシア移民局から一年間の滞在許可証が発給されロシアに滞在中である[5]2014年1月、ノルウェーボード・ソールエル英語版元環境大臣からノーベル平和賞候補に推薦された[6]

経歴[編集]

生い立ち[編集]

1983年6月21日、アメリカ合衆国ノースカロライナ州ウィルミントン市に生まれ[7]。父ロニー・スノーデンはペンシルバニア州籍でアメリカ沿岸警備隊に勤務し[8]、母はボルチモア出身でメリーランド州の連邦裁判所職員を務めていた[7][9]。国家公務員として公職に就く両親の元に育ち、後に自らもCIA職員として公職を務める事になる。16歳の時、母方の故郷であるメリーランド州のエリコット・シティに転居している[7]

病気療養を理由に高校を退校した後[10]General Educational Development(中等教育修了証)を取得する為[10]に地元のアン・アランデル・コミュニティカレッジ(短期大学)に入学して情報科学を学んでいる[7]。BBCなどの報道では必要な課題をクリアできなかったとしているが[11]、別の報道では試験を終えてGEDを取得したとするメディアもある[10][12][13]。2004年5月7日、20歳の時にアメリカ合衆国軍に入隊して特殊部隊の新兵として配属されるも、訓練中の事故で除名されている[1][14]。スノーデンは「自由の為の戦い」を望んで当時勃発していたイラク戦争への派遣を自ら志願していたが[12]、先述の事故で両足を骨折する重傷を負って派遣は見送られた。

NSA・CIAでの勤務[編集]

失意の中、治療を終えると国家安全保障局(NSA)からスカウトを受け、メリーランド大学言語研究センターの警備任務に配属される[15]。またこれに前後して中央情報局(CIA)からも接触を受け、CIA職員として雇用されてコンピュータセキュリティに関連した任務に参加した[16]。2007年にはスイスのジュネーヴでの情報収集に派遣され、同じくコンピュータセキュリティを担当した[17]

2008年、バラク・オバマ大統領当選(自身は第3党 (Third party) に投票した)を機に組織改革を期待して2009年にCIAを辞職[18]し、NSAと契約を結んでいたDELL、次にコンサルティング会社ブーズ・アレン・ハミルトン社に雇用されている。同社が在日米軍基地内のNSA関連施設での業務を引き受けた関係で来日経験があり[12]日本語日本の文化サブカルチャーである日本の漫画アニメ)に興味を持ったという[19]。また中国語普通話)や仏教などにも造詣を得た[20]ケース・アレクサンダーNSA長官はスノーデンとの契約は12か月間であったと説明している[21]

NSAでの勤務については「快適」で、待遇面でも20万ドル以上の給与を与えられていたという[22]。2011年時点でリヴァプール大学に籍を置いていたと報道された[23]。2012年5月、ブーズ・アレン・ハミルトンを通じてNSAのハワイ州にある拠点「クニア地域シギント工作センター」に赴任し、同拠点のシステム管理者に就任した[24][25][26]。後の情報源となる、個人情報に関する機密文書に常時接触できる立場にもあった[27]

情報収集の告発[編集]

背景[編集]

2012年3月から2013年3月にかけて、アメリカ合衆国の議会はNSA長官のケイス・アレクサンダー英語版将軍やジェームズ・クラッパー英語版 アメリカ合衆国国家情報長官に対して、NSAが情報収集したアメリカ人の人数の公表を繰り返し求めていた。2013年3月、クラッパー長官はアメリカ人に対する一切の情報収集を否定した[28]

スノーデンによる暴露[編集]

2013年5月、スノーデンはハワイのオフィスで告発の根拠となった文書(スノーデン自身のインタビューに先立って各紙で報道されたもの)をコピーした後、病気の治療のために3週間の休暇が必要だと上司に伝えたうえで、同月20日香港へ渡航した。九龍尖沙咀のホテルにチェックインしたスノーデンは[29][30]、マスメディアのインタビューを受け、アメリカ合衆国や全世界に対するNSAの盗聴の実態と手口を内部告発した[31][32]。スノーデンは持ち出した機密資料のコピーを分割して民間の報道機関に提供し、自身の身に危害が及んだ場合は自動的に取得している全情報が流出すると述べた。スノーデンが香港で暴露した機密情報はNSAの情報収集に関するものであったが、提供された機密資料によって、下記のような多国間に渡る情報収集活動が明らかとなった。

アメリカ合衆国を含む全世界でのインターネット傍受[編集]

スノーデンは英紙ガーディアンにNSAの極秘ツールであるバウンドレス・インフォーマントの画面を示し、クラッパー国家情報長官が否定した3月に合衆国内で30億件/月、全世界で970億件/月のインターネットと電話回線の傍受が行なわれていたことを明らかにした[33]。電話傍受にはベライゾン・ワイヤレスなどの大手通信事業者が協力しており、NSAは加入者の通話情報を収集していた[34]。標的になった情報は通話者の氏名・住所・通話内容ではなくメタデータと呼ばれるもので、通話者双方の電話番号、端末の個体番号、通話に利用されたカード番号・通話時刻・所要時間、および基地局情報から割り出した通話者の位置情報を収集していた。またインターネット傍受はクラッキングではなくアプリケーションプログラミングインタフェースのような形のバックドアによるもので、コードネームPRISM(プリズム)」と名付けられた検閲システム[注釈 2]によって行なわれていた。標的になった情報は電子メールやチャット、動画、写真、ファイル転送、ビデオ会議、登録情報などだった。

IT企業の協力[編集]

通信傍受にはMicrosoftYahoo!GoogleFacebookPalTalkYouTubeSkypeAOLAppleなどが協力させられていたことは以前から指摘されていたが、スノーデンの持ち出した資料によってその一部が明らかとなった[35]。Microsoftは、NSAが通信傍受しやすいようにMicrosoftチャットの通信暗号化を回避(バックドア)した[36]。またストレージサービス「スカイドライブ」へのNSAの侵入を容易にするように配慮を行った。SkypeもNSAが容易に情報を取得できるように特別チームを編成して、その技術的問題を解決した[37]。フェイスブックには2012年後半の6ヶ月間で、NSAから18000-19000個のユーザーアカウントについて情報提供依頼があったと報告した[38]

NSAの海外に対するクラッキング[編集]

スノーデンによると、NSAは世界中で6万1000件以上のハッキングを行っており、そのうち数百回以上が中国大陸と香港の政治、ビジネス、学術界を目標として行われ[39]香港中文大学ターゲットの一つだったという[40]。中国へのハッキングは2009年以降に活発化したとした[39]。NSAはドイツなど外国の情報機関と共謀して情報収集することもあり[41]、外国との共同作戦のための専門の委員会がNSAに設置されている。ドイツにはNSAによって盗聴や通信傍受の手技が伝授され[41]、またプライバシー侵害を非難されないようにするための情報交換も行われていた[41]。ドイツはそれらの活動により中東諸国の情報を得ていたとされた[41]

同盟国に対する情報収集[編集]

ガーディアンは、スノーデンが持ち出した極秘文書により、NSAが日本を含めた38カ国の大使館に対しても盗聴を行っていたことをスクープした[42]。対象となっている大使館は、日本やフランスやイタリア、ギリシャ、メキシコ、インド、韓国、トルコなどの同盟国も含められていた[42]。ワシントンの欧州連合(EU)代表部への情報収集工作のケースでは、暗号機能付きのファクス内に盗聴機と特殊なアンテナが仕組まれ[43]、約90人の職員のパソコン内のデータ全てをのぞき見る手法で実施されていた[42]。フランスのオランド大統領は「同盟国に対するこのような行為は容認できない」とし、ドイツ政府報道官は「全く容認できない」とする苦言を呈した[42]。これらの報道に対してオバマ大統領は、一般論として「諜報機関を持つ国ならどの国でもやっていることだ」として、同盟国の大使館に対する諜報活動を否定しなかった[44]

英国による情報収集[編集]

イギリス・政府通信本部(GCHQ)はネット上の通信記録を『総取り』して無作為に抽出し、電話番号や住所、IPアドレス、フェイスブックIDなどから個人を特定し、関心のある情報を選別するという方法で情報収集していることが報じられた[41]。またGCHQはG20会合(2009年4月の首脳会合と9月の財務相・中央銀行総裁会議)において[45]以下のような情報収集を行っていたことが判明したという[45]。G20を有利に運ぶために、当時のブラウン政権高官の承認の元で実施されたとした[45]

  • 各国代表団メンバーのノート型パソコンを通じ送受信される電子メールを情報収集プログラムで傍受[45]
  • 代表団のスマートフォンに侵入して電子メールや通信履歴を入手[45]
  • 通信傍受のために、偽のインターネットカフェを設置[45]

その他、NSAがG20でロシアのメドベージェフ大統領(当時)の衛星通話の盗聴も試みたことも報道された[45]

スノーデンの主張[編集]

香港滞在中に、香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストの取材に応じ以下のような主張を行った[39]

  • アメリカを離れて香港に移動したのは隠れるためではなく、アメリカの犯罪を暴くためである[39]
  • 香港には退去の要請があるまで当分滞在する予定[39]
  • アメリカ政府は市民の同意を尊重せず密かに情報収集作戦を行っていたが[39]、この曝露によって今後は社会への説明責任と監督が求められることになるだろうとした[39]
  • オバマ大統領は人権上問題のある政策を推進している[46]

逃亡[編集]

指名手配[編集]

連邦捜査局(FBI)は情報漏洩罪など数十の容疑で捜査に乗り出した[47]。スノーデンは、「表現の自由を信じる国に政治亡命を求めたい」として複数のメディアを通じてアイスランドへの政治亡命を求めたが、アイスランド政府は非公式な接触があったことを認めたものの、亡命を認めるかどうかについては言及を避けた[48]。またアイスランドの入国管理当局は、スノーデンの要請は受け取っていない、とした[49]。香港の滞在先ホテルを記者らに特定されたために、その後は弁護士の案内で個人宅に移動した[50]

ロシアへの渡航[編集]

誕生日に弁護士らとささやかなパーティーを行ったのちに、6月23日スノーデンはロシア行きの飛行機に搭乗しモスクワのシェレメーチエヴォ国際空港に移動した[51]。アメリカは同氏のパスポートの失効手続きをしていたが、香港政府は手続きに不備があるとしてスノーデンの出国を止めなかった。エクアドル駐モスクワ大使館でエクアドル政府に亡命申請をし[52]、同国のリカルド・パティーニョ・アロカ外務大臣は亡命申請を受け取ったとTwitterで表明した[53]。アメリカは同氏の拘束をしなかった中国を非難するとともに、ロシアに対して同氏の拘束を求めたが、ロシア政府スポークスマンはこの問題に介入するつもりはないとした[54]。スノーデンはモスクワ空港に到着したが乗り換え区画に滞在し、ロシアに入国していない状態である。スノーデンは弁護士を通じて空港内にある露外務省の領事部窓口に、キューバ、ベネズエラ、中国、スイスなど18カ国の国々に対して亡命申請を行った[55]。ラブロフ露外相はスノーデンの居る場所はロシアの司法権は及ばない区画であり、アメリカの拘束要求には法的に応じられないと説明した。またプーチン大統領はスノーデンを仮に拘束した場合であっても米露間には犯罪者引渡しに関する協定が無いのでアメリカへの身柄引き渡しを拒否する姿勢を明らかにしたが[56]、ロシア国外へはどこにでも行ける状態だとしてスノーデンを積極的にロシアに受け入れるつもりがない意図を表明していた。後ほど亡命受け入れには、アメリカの利益とならない情報漏えいをしない確約が必要という声明を発表し、受け入れを示唆した[55]。しかし、スノーデンはこの条件を拒否。自ら申請を撤回しロシア以外への亡命を模索していたが、7月12日空港内で人権団体とともに会見を開き「安全を確保できる唯一の手段はロシアに一時的に亡命者として留まることだ」「米国へ損害を与える活動は今後しない」と語り、改めてロシアへの亡命を希望している[57]

2013年8月1日、スノーデンは、ロシアの移民局から一年間の滞在許可証が発給され、5週間以上滞在していた空港を離れ、ロシアに入国した[58]

2014年5月13日、スノーデンが持ち出した未公開の機密文書を収めた書籍が、世界24か国で同時刊行された[59]

ウィキリークスの協力[編集]

2001年のアメリカ同時多発テロ事件以降、アメリカでは戦争や通信傍受のあり方を巡って、トレイルブレイザー事件ウィリアム・ビニー英語版トーマス・ドレーク英語版、2010年にAH-64 アパッチがロイターの記者を含む十数人の民間人を射殺したビデオをウィキリークスに公開[60]したブラッドリー・マニング英語版などの内部告発が相次いでいる。しかしアメリカ合衆国における内部告発者の処遇は厳しく、例えばブラッドリー・マニングは公判が始まるまでに非常に長い間拘留され[61]、独房で全裸で眠ることを強制されるなど酷い扱いを受けていると言う[62]。在英エクアドル大使館に滞在しているウィキリークスジュリアン・アサンジは、スノーデンの支援を行っていることを明らかにしている[63]。支援は航空機や宿泊先、弁護士の手配、通信の確保など逃亡生活を直接サポートする内容となっている[64]

賞歴[編集]

2014年1月14日、アメリカのNPO報道の自由財団英語版」が取締役会理事として迎える意向をホームページ上に発表した[65][66]。翌2月からスノーデンは同理事に就任している[67]

2014年2月、グラスゴー大学名誉総長に選出された [68]

各国の反応[編集]

アメリカ[編集]

アメリカ連邦捜査局(FBI)のモラー長官は、NSAの情報収集について、何ら違法性はないとの認識を示し、スノーデンの逮捕に向けて全力で捜査していると表明した[69]。6月22日、司法省が逮捕状を取得[70][71]。オバマ大統領は各国駐米大使館への盗聴に対して、一般論として「諜報機関を持つ国ならどの国でもやっていることだ」として、同盟国の大使館に対する諜報活動を否定しなかった[44]2013年5月ウォール・ストリート・ジャーナル」の千人調査によって、半数以上(7割接近)の調査対象がアメリカ政府の逮捕要請への応援態度を表明した。

同年8月の調査では2割に減り、国民の半数が態度の転換を表明したことで、これがバラク・オバマアメリカ合衆国大統領とアメリカ政府にとって新たな問題となった。

イギリス[編集]

米国との諜報協定(UKUSA協定)を結んでいるイギリス政府は、航空各社に対し、国内にスノーデンを移送しないよう警告した[72]

フランス[編集]

フランスのオランド大統領は大使館の盗聴に対して「同盟国に対するこのような行為は容認できない」とした。

ドイツ[編集]

ドイツ政府報道官は大使館の盗聴に対して「全く容認できない」とする苦言を呈した[42]。2014年7月には、本件に関する連邦議会の対応状況をアメリカに売っていた連邦情報局ドイツ連邦軍の職員がスパイ容疑で逮捕され、アメリカ大使館の情報部門責任者がペルソナ・ノン・グラータ指定を受けている[73]

ロシア[編集]

ロシアのペスコフ大統領報道官は、スノーデンが亡命を申請した場合、ロシア政府は受け入れを考慮すると述べた[49]

香港[編集]

梁振英香港行政長官は、スノーデンの引渡しを米当局が要請する場合には、香港の法律制度に基づいて対処する考えを明らかにした[74]

香港の民主派・親中派など各議員、地元市民や香港在住の欧米人は、在香港米総領事館前でスノーデンへの支援を訴えたデモを行い、米政府による監視活動はプライバシー人権の侵害だとして中止を求めた。また、米政府が犯罪人引き渡し協定に基づいて同氏の身柄引き渡しを求めても、香港政府はそれに応じずスノーデンを保護すべきだとして、香港政府庁舎前で訴えた[75]

香港紙、明報は、2013年6月18日に電話での世論調査を発表した。500人のアンケートの結果、米側への引き渡しを支持する人は20%だったとし、54%の香港市民が身柄引き渡しに反対しているとされた[76]

日本[編集]

菅義偉内閣官房長官は「米国内の問題なので、米国内で処理されることだ」「日米間の外交においては、しっかりと秘密は守られるべきだ」とのみ述べた[77]

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ スノーデンはガーディアンとのインタビューで、「暴露すべき文書を慎重に選び、リークする相手として、何を公開し、何を開示しないかを正しく判断できるジャーナリストを選んだ。」と告発情報公開先の選考理由を述べている[4]
  2. ^ プリズムのように分析が出来る事からこの名で呼ばれる。何かの頭文字ではない。

出典[編集]

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関連項目[編集]

外部リンク[編集]