医療保険制度改革 (アメリカ)

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Patient Protection and
Affordable Care Act
(患者保護並びに医療費負担適正化法)
アメリカ合衆国の国章
正式題名 An act entitled The Patient Protection and Affordable Care Act
略称 PPACA, ACA
通称 Affordable Care Act, Health Insurance Reform, Healthcare Reform, Obamacare
制定議会 アメリカ合衆国第111回議会
施行日 March 23, 2010
Most major provisions phased in by January 2014; remaining provisions phased in by 2020
引用
一般法律 111–148
Stat. 124 Stat. 119 through 124 Stat. 1025 (906 pages)
立法経緯
  • 2009-09-17にCharles Rangel (DNY)議員がHouseにthe "Service Members Home Ownership Tax Act of 2009" (H.R. 3590)として提出。
  • Ways and Meansで審議。
  • 2009-10-08にHouse通過。(416–0)
  • 2009-12-24に修正の上"Patient Protection and Affordable Care Act"としてSenate通過。(60–39)
  • 2010-03-21にHouseがSenate修正案を承認。(219–212)
  • 2010-03-23にバラク・オバマ大統領が法案に署名。
主な改正
Health Care and Education Reconciliation Act of 2010
Comprehensive 1099 Taxpayer Protection and Repayment of Exchange Subsidy Overpayments Act of 2011
最高裁判例

医療保険制度改革(いりょうほけんせいどかいかく)は、アメリカ合衆国で試みられているユニバーサルヘルスケア制度の取り組み。バラク・オバマ2008年アメリカ大統領選挙で公約として掲げた。

オバマが大統領に就任し、上下両院で民主党が優位となった議会を通過し、2010年3月に大統領が署名して成立(完全実施は2014年以降)したことから、オバマケアとも呼ばれる。主に二つの法律からなる[1]Patient Protection and Affordable Care Act (患者保護並びに医療費負担適正化法、PPACA),[2][3]、通称Affordable Care ActACA)が中心となる。

アメリカ議会予算局の試算では、以後10年間で、保険加入者は3100万人増加し、加入率は83%から94%に上昇するが、費用も9400億ドルに昇る[4]2014年1月1日オバマケアでの保険適用始まる。[5]

オバマケアの要点[編集]

ACAでは2010年から2020年にかけて様々な施政が予定されている。既得権者除外条項により、2010年以前の政策に基づく保険契約には影響を及ぼさないが、それ以外には様々な改革が加えられる[6][7]。2010年1月1日より、新たに以下の様々な大きな変更が加えられる。

  • 保険者は以前の健康状況に基づいて保険加入を拒否することは禁じられる。また全ての被保険者に対し、同じ年齢・同じ居住地区であれば同等の保険料を設定しなければならず、年齢・以前の健康状況にて差をつけることは禁じられる(喫煙者は例外)[8][9][10]
  • 保険が標準でカバーしなければならない保障範囲が定められる[11][12][13][14][15]
  • 被用者保険、メディケア、メディケイド、その他の公的制度(TRICAREなど)にてカバーされない無保険者は、承認を受けた民間保険に加入するか、ペナルティを払わなければならない[16][17]。これは歳入庁の定めによる金銭的困難者、宗教団体の一員であるのならば除外される[18]。低収入者には補助金を給付できる条項が定められている[19]
  • 全ての州に医療保険取引所が開設され、個人や小規模事業者は、そこで保険内容を比較し保険を購入することができる(対応者には政府補助が支給される)[20]。取引所は2013年1月1日にオープンする予定だったが、数度変更されている[21][22][23][24][25]
  • 低収入の個人・家庭(連邦政府の定める貧困線にて100%~400%)に対しては、それに比例して、保険取引所での購入時に連邦政府より補助金が受けられる[26]。貧困線にて133%~150%の場合、その保険料は補助金が付くと収入の3-4%ほどになる[27]。2013年では、年収$45,960未満の個人や$94,200未満の4人家族では、追加で税額控除を受けるか、また取引所から毎月保険者に送金するかで選ぶことができる[28]。小規模時事業者は補助金を受給できる[29]
  • メディケイド制度が拡張され、対象者は収入が連邦政府の貧困線で133%の個人・家族まで引き上げられた。また障害の無い成人、補助者のいる児童にも適用される[30]。かつ法では、メディケイド資格の上限は貧困線にて138%の者と設定され、その5%については所得に関係なく資格を得ることができる[31]。さらに児童医療保険プログラム(SCHIP)の受給要件が簡素化された[30]
  • メディケアの支払い制度が出来高払い制度から包括払い制度になり、医療機関はより一層の経営努力が求められるようになった[32][33]。さらにメディケアPart Dのギャップ(俗称donut hole)が徐々に縮小され、2020年1月1には完全になくなる[34]
  • 50人以上の従業員を抱えているがフルタイム雇用者に医療保険を提供しない事業者は、もしそのフルタイム雇用者らの医療保険加入に対して政府が(税控除などの形で)補助金を出していたならば、事業者は税制上のペナルティを払わなければならない[35][36]。2013年7月、歳入庁はこの措置を1年延期すると発表した[37]

歴史[編集]

背景[編集]

アメリカの診療は自由診療が基本である。高額な医療費に備え、各自が民間の保険会社と契約を行うが、低所得者は保険料の支払いが困難となること、医療費のかさむ慢性病患者等は更新を拒否されたりする弊害があり、医療の恩恵を享受できない国民が少なからず存在していた。アメリカの自己破産の原因の6割は医療費が原因である。さらに、その医療費が原因で破産した者の8割は医療保険に入っていたとも言われている。高額な医療費と、質の悪い保険のため、身体的のみならず、経済的にも病気や怪我に苦しめられるアメリカ人は多い[38]

実例として、骨折で手術を受け1日入院した場合で1万5千ドル、貧血で2日入院した場合で2万ドル、自然気胸の治療(手術なし)で6日入院した場合で8万ドルの請求がなされた事例もある[39]

こうした問題は、20世紀中頃からアメリカ合衆国の政治上の問題とされ、古くはセオドア・ルーズベルトトルーマンニクソン、1990年代にはビル・クリントンなどが新たな健康保険制度の創設に向け取り組みを行っていたが、財政上の問題(フリーライダーの存在とモラルハザード等)などから次々と頓挫し続けてきた歴史がある[40]

医療保険システムの萌芽[41][編集]

私的な医療保険の仕組みは,19世紀ヨーロッパにおいてギルドや工場等において見られるようになった。 アメリカにおいては20世紀はじめにヨーロッパからの移民が病気のときの給付を行う小さな互助組織を形成し始め,同時期にメトロポリタンライフとプルデンシャルが葬式費用と終末期医療費用を含んだ生命保険を売り始めた。この個人向け医療保険は週ごとの給料日に保険料を徴収するなど大変な運営費用がかかったため、大きな広がりを見せることはなかった。 アメリカにおける私的医療保険の成長は、病院にかかる費用の上昇と医療サービス提供側のイニシアティブによってもたらされた。1920年代には、病院は死ぬためのところではなく元気になるためのところになっていたが、未だ多くの患者が入院費用を支払えずにいた。大恐慌の最中、このような入院費用をカバーする私的医療保険プランが広がったが、この医療保険プランは特定の病院にかかる費用に限ってカバーするものだった。 この中で、アメリカ病院協会(The American Hospital Association)により州全体にわたって病院を自由に選ぶことができるブルークロス(Blue Cross)病院保険プランを提供され始めた。1939年にはカリフォルニア医師協会(The California Medical Association)が医師のサービスをカバーするブルーシールドプラン(The Blue Shield plan)を開始した。1940年までに39のブルークロスに600万人を超える人々が加入するようになった。このように、アメリカにおける医療保険の広がりは患者側ではなく、安定した収入源を求める医療提供者側のイニシアティブによってもたらされたものであった。

職域医療保険の成長と商業医療保険会社の進出[42][編集]

職場をベースとした医療保険は第二次世界大戦中の労働力不足の中で、フリンジベネフィットとしての医療保険を提供する雇用主が増えたことにより広まった。賃金と価格統制により賃金上昇が妨げられる中、フリンジベネフィットについては増やすことができたからである。戦後、労働組合はこの流行に乗ってヘルスベネフィットについて交渉するようになった。この結果、病院保険プランへの集団で加入件数が1940年の1200万件から1988年には14200万件に増加したのである。 このような雇用をベースとした医療保険の成長により、商業的保険会社が医療の分野に進出し、"The Blues"と競争するようになった。商業的保険会社は、それまでのコミュニティベースで加入者が等しく保険料を払っていた仕組みの中に、リスクの低いグループとリスクの高いグループに異なる保険料を提示する経験的な格付け(experience rating)の仕組みが導入された。既存のブルークロスなどもこれに追随せざるを得なくなったため、被保険者間の再分配の仕組みが弱まり、老人や病人にとっては医療保険はどんどん高くて手が届かないものになっていった。

メディケア・メディケイドの導入[43][編集]

上述の職域医療保険の成長の陰で、老人や貧困層は医療保険の恩恵を授かれずにいた。1950年後半には、高齢者層の15%弱が無保険であった。このような状況の中、1965年に高齢者のための医療制度メディケアと、貧困層のための医療制度メディケイドが導入された。メディケアには、病院への支払いをカバーするメディケアパートA、医師への支払いをカバーするメディケアパートB、メディケアでカバーされない部分について私的医療保険を購入する場合の保険料を補助するメディケアパートC(the Medicare Advantaged Program、2003年導入(後述))、処方薬をカバーするメディケアパートD(2003年導入(後述))があり、パートAは主に雇用主と被用者から支払われる社会保障税によってまかなわれている。パートBとパートDは連邦税と加入者の月々の保険料によってまかなわれている。メディケイドは州により運営されているプログラムで、連邦税と州税が財源である。

2003年のThe Medicare Modernization Act(MMA、メディケア現代化法)は、私的医療保険の役割の拡大(パートC)、処方薬給付の導入(パートD)という二つの大きな変更をもたらした。メディケアの問題の一つとしてかねてより、メディギャップ(Medigap、控除部分や自己負担部分が大きくメディケアだけでは医療費のすべてをまかないきれないという、実際の医療費とメディケアによる給付のギャップ)が指摘されていた。カイザー家族財団によれば、メディケアは平均的な加入者の医療費の48%しかカバーしておらず(2006年)[44] 、2010年には、30%近くの加入者が以前の勤め先から追加的な医療保険を提供されており、およそ20%がメディギャッププランと呼ばれる私的医療保険を追加購入し、24%がメディケアパートCに加入し、19%がメディケアとメディケイドの両方に加入している[45]。メディケアパートCは私的医療保険の保険料を補助するが、加入者にとっては、より少ない自己負担額と引き換えに、その私的医療保険と契約している医療機関のサービスしか受けられなくなることから、医療機関の選択の自由がある程度制限されることになるため、メディケアパートCにはパートA、Bよりも多くの拠出が行われている。

2010年オバマケア法成立[編集]

2000年代にはいると、医療の高度化が進み保険料も高額化。国民の6人に1人が医療保険に入れない状態となり問題は深刻化。[46]破産の原因が医療費支払いに起因することも珍しくなくなった[47]。2010年3月、オバマ大統領は選挙公約を実現する形でオバマケア法を成立。低所得者に補助を行うことにより、国民の健康保険加入率を抜本的に向上させる内容であった。しかし、住民から保険料を強制的に徴収すること、2014年までに保険加入を義務づけないとメディケア給付を打ち切るとした点について各州が反発。26州が連邦政府を訴え、2011年1月31日にはフロリダ州では法律に対して違憲判決が出される結果となり、保険制度の実効性が疑問視されるようになっている[48]

憲法判断[編集]

2012年6月28日、連邦最高裁は根幹部分である国民の保険加入を義務付ける条項を合憲とする判決を下した。ロバーツ長官を含む5人が支持、ケネディ判事ら4人が不支持[49]

2014年6月30日、一部の避妊医療負担を全企業に義務づける規定は違憲とし、信仰に基づいた経営方針をとる小規模の家族経営や非公開企業は適用除外になるとの判断を示した[50]。最高裁判事9人の内、5人が支持。

予算案不成立と政府閉鎖[編集]

オバマケアの2014年実施に関して、共和党が多数を占める下院は1年延期をする予算案を可決したが、民主党が多数を占める上院が予定通りの実施を求める予算案を可決したため、予算案が2013年9月に不成立となることが決定し、同年10月から17年ぶりに2週間以上にわたって政府閉鎖となった。10月半ばが期限の連邦政府債務限度額引上げ法案は可決され、連邦政府による債務不履行(デフォルト)は土壇場で回避された。

出典[編集]

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関連項目[編集]

  • アメリカ合衆国の医療
  • ブロッコリー : 違憲状態を争う裁判を通じて、しばしば「保険に無理矢理加入させることはブロッコリーを無理矢理食べさせるようなものだ」等、健康の象徴であるが嫌な存在の例として引き合いに出された(ニューヨークタイムズ2012年4月29日)。
  • ヒラリー・クリントン : ファーストレディー時代にオバマケアの基礎となる国民皆保険制度を提案するも、反対勢力の妨害により頓挫。
  • シッコ

外部リンク[編集]