平和

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平和(へいわ)とは、戦争内戦で、社会が乱れていないこと。現実的には国家抑止力が内外の脅威を抑止している状態である。史学では戦間期[1]とも表現され、戦争終結から次の戦争開始までの時間を意味する。

概要[編集]

人類の歴史は、戦争の歴史である。人類は戦争を繰り返し多くの生命、財産を消失しているが、戦争により、人類は発達した文明を築いている。現代社会は、核兵器の存在によって、核兵器保有国同士の大規模な戦争は抑止され、一応の平和が保たれている。現在でも国家間の軍事力の均衡が戦争を抑止しており、戦火を交えなくとも外交経済を主軸とした、国家間の生存競争は絶えず行われている。異なる国家が隣接して国境が策定されている場合は、おのおのの国家が軍隊を組織して常時軍事的緊張を保っており、軍事力の均衡がまったくない平和は存在しない。

平和と軍事力[編集]

エルベの誓い
第2次大戦を共に戦った米ソは戦後軍事的・経済的に対立した

人類にとって武力なき平和は理想でしかない。現代国家も、抑止力(軍隊国境警備隊沿岸警備隊警察等)によって平和を保っている。抑止力が十分でない場合、クーデターが発生し、他国からの侵略を誘発する。国家の抑止力が内戦など何らかの原因でそれが機能せず無政府状態に陥った場合は、住民が各自で武装し、自警団などを結成して自力救済をする必要に迫られる。平和の象徴的存在として、中立主義を標榜する国家であるスイススウェーデン、あるいは名目上の軍隊を持たない国であるコスタリカ日本などの挙げられることもある。しかし、これらの国家は、抑止力となりえる強力な軍事力を有している。

  • スイスは山がちで防御に向いた地形と重武装によって独立を維持してきた国家である。徴兵制よる国民皆兵を敷き、兵器の自主開発・自力生産を努力することで独立を保っている。そもそも列強にはさまれた小国が独立しえたのはこの地形と強力な自衛力があったからである。スイス兵の精強さは独立をめぐる戦争とスイス傭兵を通してよく知られている。
  • スウェーデン武装中立を国是とし、スイス同様に徴兵制と兵器の国産に注力している。スウェーデンは戦闘機潜水艦装甲戦闘車両といった主力兵器を自主開発していることで知られる[2]。また小国が発言力を保つために国連の安全保障活動に積極的であることでしられ、国連待機軍を編成して海外派兵を行っている。
  • コスタリカは非武装中立を宣言しているが、実際には親米反共路線の国で米州機構加盟国でもある。また常設軍を廃止したが、戦時には徴兵制を敷いて軍を編成することを認めている。さらには市民警備隊と呼ばれる準軍事組織が国軍の代わりを果たしており[3]、中米地域では強力な実力を誇っている。

平和の方法論[編集]

平和を実現するためのモデル的な方法論はいくつかあるが、根本的な解決にはさまざまな要素により未だ至っていない。

  1. 強力な支配者が覇権を維持することによって秩序を保とうという覇権主義の考え方。
  2. 各人・各国がお互いの独立権利自由を最大限に尊重・保障しながら発展しようという国際協調主義の考え方。
  3. 複数の国家が連合した国際機関を介した集団安全保障によって実現しようという考え方。

例として

  1. ローマ帝国地中海世界で実現したパックス・ロマーナ
  2. 国際連合欧州連合が行っているさまざまな政治的、経済的、外交的な取り組み。
  3. 国際連合が設立当初目指していた安全保障理事会による集団安全保障体制。
  4. 西側東側核抑止による勢力均衡で成り立った両極体制

などが挙げられる。

日本国憲法における平和[編集]

憲法学などの授業で使用する解釈として「武力による平和」と「武力なき平和」がある。「武力による平和」は武力の行使を「国防・自衛・狭義の安全保障」とする解釈である。これは最低限の武力を持ち必要に応じて行使することで平和を保とうという考え方であり、泥棒などの犯罪者が地域や家屋に侵入すればしかるべき装備で撃退するのは当然だという考え方に基づいていると言える。「武力なき平和」は「武力があるから戦いが起こる」とする解釈である。世界大戦をはじめとするかつての戦争の大半が「自衛」を口実とした侵略戦争だったことに基づき、全ての人々が一斉に武力を放棄することで平和を保とうという考え方である。しかし「武力」とは相対的なものである。現在武力とされているものを撤廃すると、現在のところ武力となりえないものが新たな武力して浮上する。銃は刀剣となり、刀剣はナタや包丁になり最終的には自らの拳さえも武力となるだろう。このような武力撤廃を繰り返した先に到達する「武力のない状態」というものがどのような状態であるのか示した具体象は提示されてはいない、というよりも提示することはできない。すなわち人類が存在する限り武力は存在するため、このような究極的な「武力のない状態」は存在しえないと言える。また軍事力を捨てれば軍事力を備える勢力が発生した場合に止めることができない。かつて琉球王朝は軽軍備政策をとったが、結果的に島津氏の侵攻を誘発してしまい、薩摩の二重支配を受ける苦境に陥ってしまっている。

なお 大量破壊兵器を廃棄対象に限定するという考え方もあるが、反核運動の現状が示すように大量破壊兵器による戦争抑止が世界の一般的な考え方であり、全世界的に大量破壊兵器を廃棄する実効的プロセスを提示することは不可能とされる。

現在の所日本国では事実上の軍隊である自衛隊と米軍が協同した日米安保による安全保障体制を敷いている。憲法9条を条文通り厳格に解釈した場合、平和憲法と乖離しているという主張が成り立つ。このように自衛隊や日米安保が違憲であるとする立場には改憲運動護憲運動の2つの立場があり対立している。改憲運動の立場からは武力による抑止は国防の為に不可避であるとの考えから憲法を改正すべきとする。

宗教における平和[編集]

仏教サンスクリット哲学のように、内的状況の浄化によって、あらゆる嫌悪から自らを解き放とうとする形而上学的考え方が古くから在る。例:マハトマ・ガンディー

平和の課題[編集]

人類は歴史において継続的に争ってきた。史料が残っている6000年以内に発生した戦争だけに限ってもその回数は15000回以上であると考えられており、またロシア出身の社会学者ピティリム・ソローキンによれば12世紀から19世紀の間の戦争は平和期間を超え、その平和期間も軍事力 の整備に当てられた。第二次世界大戦が終結した1945年から1990年の間に戦争や内戦は150回以上発生している。戦争が本当に世界から無くなった期間は三週間だけであったとも言われている。「平和が普通であって、戦争は異常である」という戦争観が必ずしも正しくないことがここから分かる。

  • 国際連合は平和のために創設されたが、多くの問題を内包している。国連憲章にある集団安全保障冷戦における米ソの対立により機能不全に陥った。現在世界各地で行っている平和維持活動も人材や資金の確保、その権限や任務内容において数多くの問題がある。特にルワンダにおける平和維持活動は国連の限界や平和維持活動の問題を大きな問題を浮上させることとなった。
  • テロは近年一般化しつつある手段であり、その社会に与える影響力・破壊力は大きい。しかし社会現象的な側面もあり、軍事力や法律だけの政策では解決が難しい。テロは非常に安価で安易な攻撃方法だが、その対策体制を維持するには高度な費用と手間がかかり、また 監視体制や公安活動に対する市民の反発を買いやすく、テロリストが優位に立ちやすい。
  • 大量破壊兵器の拡散は核兵器の開発技術、核物質、技術者が世界規模に拡散し、また比較的製造が簡単な生物兵器化学兵器が世界各地に流通することであり、テロと結びつけば治安が大きく破壊される。また積極的な軍事攻撃を方針とする国家に渡れば、軍事力の不均衡をもたらす可能性がある。
  • 民族宗教・経済格差などの要因による紛争は歴史においても恒常的な戦争の誘因となってきた。国内における民族衝突や経済格差が深化すれば、国家間の戦争だけでなく、国内での内戦クーデター革命などに結びつく。しかし、すべての蜂起が最悪の結果に繫がったというわけではなく、民主主義を確立するための王制との争いは歴史的な視点に立てば一定の成果が得られたものである。
  • 歴史的、とりわけ近代以前には地域内において戦争のない状態のみをもって平和とされていた。例えば、日本の豊臣政権は、一連の「豊臣平和令」によって村落から大名まで紛争の解決方法として武力による自力救済(戦闘行為)が日常的に行われてきた戦国時代を終わらせる事には成功したが、同政権とこれに続く江戸幕府による「300年の太平」は実際には封建体制身分制度の強化による民衆への力による強権的支配と一体化したものであった。

国連平和維持軍[編集]

国連では、戦争に介入することによって平和を積極的に創造する取り組みを行っている。この主なものがPKF(国連平和維持軍:Peace-Keeping Forces)である。治安維持や一般市民への食料・医療の供給、停戦や、戦争を行う軍隊の撤退を手助けしている。この活動に対して、1988年ノーベル平和賞が贈られた。

その他[編集]

オリーブがデザインに使用された国際連合の旗

出典[編集]

  1. ^ : interwar
  2. ^ 戦闘機はサーブ 39 グリペンが現役であり、潜水艦は先進的な非大気依存推進を開発していることで知られる(これを自衛隊のそうりゅう型潜水艦が採用している)。装甲戦闘車両は主力戦車こそ、国産のStrv.103からレオパルド2系へと移行したが、装甲車両(SV/CV90シリーズ)や自走砲を自主開発を続けている。
  3. ^ 市民警備隊:4300名(うち海兵隊400名) 地方警備隊(行政警察省):3200名(ミリタリーバランス1995年版)

関連項目[編集]