カラマーゾフの兄弟
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『カラマーゾフの兄弟』(ロシア語: Братья Карамазовы)は、フョードル・ドストエフスキーの最後の長編小説。1879年に新聞に連載され、1880年に単行本として出版された。『罪と罰』と並ぶドストエフスキーの最高傑作である。この作品に題をとった映画や劇が数多く作られている。
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[編集] 概要
複雑な構成を持つ長大な作品で、信仰や死、国家と教会、貧困、父子・兄弟関係などさまざまなテーマを含む深遠な思想小説である。イワンがアリョーシャに語る「大審問官」は特に有名。
作者自身による前書きにもあるとおり、当初の構想ではこの小説はそれぞれ独立したものとしても読める二部によって構成されるものであったが、作者の死によって第二部(第一部の13年後の物語)は書かれることなく中絶した。ただし、小林秀雄は「およそ続編というようなものがまったく考えられぬほど完璧な作品」と評している。 ちなみに続編に関しては、創作ノートなどの資料がほとんど残っておらず、友人知人に宛てた手紙に物語のわずかな断片が記されているのみである。ドストエフスキー本人は続編制作への意欲を手紙に書き表していたが、その3日後に病に倒れた。残された知人宛への手紙では、「アリョーシャがリーザとの愛に疲れ、やがてテロリストとなり、絞首台へのぼる」というようなあらすじが記されてあったらしいが、異説も出されている[1]。いずれにせよ、続編の真相は闇の中である。
哲学者ウィトゲンシュタインは「『カラマーゾフの兄弟』を最低でも50回は精読した」と言っている(第一次世界大戦従軍時の数少ない私物の一つが『カラマーゾフの兄弟』だったため)。
2006年から2007年にかけては、新訳(亀山郁夫訳)が古典文学としては異例のベストセラーになり話題となった。ただしこれについては、その後、国際ドストエフスキー学会副会長・木下豊房から、余りに誤訳が多いなどの批判がなされた[2]。また、東京大学の教員を対象に行われたアンケートでは、全ての分野の本の中で『カラマーゾフの兄弟』が「新入生に読ませたい本」の1位に選ばれた。
[編集] 登場人物
- フョードル
- カラマーゾフ家の家長。強欲で好色な成り上がり地主。モデルは、ドストエフスキー自身の父親である(彼の父親は、強欲好色というより、癇癪持ちの暴君だったという)。
- ドミートリイ(ミーチャ)
- フョードルの長男。27歳。フョードルと前妻の子。退役軍人。放埒で堕落した生活から抜けきれない、直情型の人物。フョードルの企みによって、自分の全財産がどれほどなのか知らぬままありったけの金を使い込み、それによってカテリーナに3000ルーブルの借金をしてしまう。さらにグルーシェンカをめぐってフョードルと醜悪な争いを繰り広げ、それが最悪の結果を呼び起こす。
- イヴァン(ワーニャ)
- フョードルの次男。24歳。フョードルと後妻の子。理科大を出た知識人。合理主義・無神論を気取っている。彼が語る『反逆』、『大審問官』、そしてその中の「神がいるのであれば、どうして虐待に苦しむ子供たちを神は救わないのか?」との現実性に迫る言葉は、この作品のテーマをもっとも如実に表したものとして有名。
- アレクセイ(アリョーシャ)
- フョードルの三男。フョードルと後妻の子。神の愛によって肉親を和解させようとする。純情で真面目な美青年。ゾシマ長老の命で、彼の死後は俗世に還俗する。
- スメルジャコフ
- カラマーゾフ家の料理番。フョードルの隠し子(とされる)。イヴァン独特の無神論に心酔している無神論者。てんかんの発作という持病を抱えている。
- アグラフェーナ(グルーシェンカ)
- 妖艶な美貌を持つ奔放な女性。ドミートリイとフョードルのどちらともが狙う妖艶な美女だが、どっちつかずの態度を崩さない。かつては清純な娘で、婚約者に捨てられた過去がある。
- カチェリーナ(カーチャ)
- ドミートリイの元上司の令嬢。ドミートリイの婚約者。高慢で自尊心が非常に高く、ドミートリイを愛するというよりは哀れな婚約者を一途に救う令嬢という自分の立場に酔っている節がある。後に裁判で、ドミートリイを救うため証人として出廷したが…。
- ゾシマ
- アリョーシャの修道院の長老。余命幾許もない。聖人君子とされ、修道院には彼のご利益にあやかろうとする人でいつもあふれている。だが、死後、彼の遺体によって、一つの事件が起こる。
[編集] あらすじ
注意:以降の記述で物語・作品・登場人物に関する核心部分が明かされています。
地主フョードル・カラマーゾフの息子たち、性格がお互いにまったく異なる3人の兄弟ドミートリー、イワン、アレクセイ(アリョーシャ)と、フョードルの使用人で、その息子であるとは認められていないスメルジャコフの物語である。フョードルの殺害、また、その事件をめぐる裁判を描く。
直情的な性格の長男ドミートリイは、借金に悩み、遺産の相続や、グルーシェンカという女をめぐって父親と激しくいがみ合う。グルーシェンカのことが原因で、気位の高いカチェリーナとの婚約も破棄される。皮肉屋で知的な次男のイワンは、カチェリーナのことを愛しており、カチェリーナを冷たくあしらう腹違いの兄ドミートリイに憤る。皆に愛される性格の敬虔な三男アレクセイは敬愛する老僧ゾシマに導かれ、修道院での生活を始める。
フョードルが死体で発見されたとき、真っ先に嫌疑がかけられたのはドミートリイであった。人々はドミートリィの父親殺しを信じて疑わない。だが、ドミートリィは一貫して無罪を主張する。判決の前日にはスメルジャコフが自殺、直後にイヴァンが危篤と、周辺では不穏な事態が絶えない。そんな中、ついに運命の判決が下る……。
[編集] 日本語訳
- 原卓也訳 新潮社〈新潮文庫〉
- 亀山郁夫訳 『カラマーゾフの兄弟』 光文社古典新訳文庫
- 米川正夫訳 岩波文庫版 河出書房新社
- 第1巻 ISBN 4003261496、第2巻 ISBN 400326150X、第3巻 ISBN 4003261518、第4巻 ISBN 4003261526
- 小沼文彦訳 (筑摩書房版全集)
- 池田健太郎訳 (中央公論社版世界文学全集)
- 江川卓訳 (集英社版世界文学全集)
[編集] 関連書籍
- 江川卓 《謎とき『カラマーゾフの兄弟』》 ISBN 4106004011。
[編集] 脚注
- ^ 当該の説を裏付ける要素として、ドストエフスキーが序文で、アリョーシャを本編から受ける印象とは全く異なる「奇人とも呼べる変わり者の活動家」と評していることが挙げられる。この評は1866年に起き、「ヴ・ナロード運動」の先駆となった皇帝暗殺未遂事件の犯人ドミトリイ・カラコーゾフ」に一致する。エピグラフで用いられている福音書の「一粒の麦」の喩えはカラコーゾフがロシア革命運動で果たした役割を暗示するとも読める。シベリア抑留による「改心」によってドストエフスキーに長く貼られて来た「反動的作家」という一方的なレッテルは、この点において一考察の余地があるかも知れない。革命家クロポトキンは拷問を受けた体で絞首台に上ろうとするカラコーゾフの凄惨な姿を、現場に居合わせた知人からの伝聞として回想録の中で強い印象をもって記している。(「ロシア革命運動の曙」、荒畑寒村著 ISBN 978-4004130314)
- ^ 『週刊新潮』2008年5月22日号の記事([1])
[編集] 外部リンク

