ヴィーガニズム

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ヴィーガン向け食事バランスガイド
The predictable increase in animal product proportions on the plates of people living in developing countries will bring new challenges to global agriculture. Source: FAO.
牛はしばしばこのようにフィードロットされて育つため、温室効果ガス増加の一因とされている。

ヴィーガニズム: veganism)は、動物製品の使用を行わない生活様式である。エシカル・ヴィーガニズムが動物の商品化を否定し、あらゆる目的での動物製品の使用を拒否するのに対し、ダイエタリー・ヴィーガニズム (純菜食主義) は食事から動物製品を排除するだけにとどまる。また、エンバイロメンタル・ヴィーガニズムと呼ばれる別の一派は、畜産業が環境を害しており、持続可能でないという根拠から動物製品の使用を拒否している[1]

目次

概要 [編集]

「ヴィーガン」という言葉は、「酪農製品を食べないベジタリアン」を表すために、1944年にイギリスにおいてヴィーガン協会の共同設立者であるドナルド・ワトソンによって作られた言葉であるが、ヴィーガン協会は卵の摂取にも反対していた。1951年、ヴィーガン協会は「ヴィーガニズム」の定義を拡大し、「人間は動物を搾取することなく生きるべきだという主義」の意味だとした。1961年、H・ジェイ・ディンシャー はアメリカ・ヴィーガン協会を設立し、ヴィーガニズムをジャイナ教アヒンサー(生物に対する非暴力)の概念に結びつけた[2]

ヴィーガニズムの運動は、規模は小さいが、年々拡大を遂げている。ヴィーガンのレストランも増加しており、アイアンマン・トライアスロンウルトラマラソン等の耐久競技のトップ選手の中にも、ローヴィーガニズムやヴィーガニズムを実践する者がいる[3]。アメリカ栄養士協会とカナダ栄養士協会は、栄養のバランスが充分考慮されたヴィーガン食は、ライフサイクルのどの段階においても適切な食事だとしている[4]。バランスを充分考慮したヴィーガン食は、心臓病等、数多くの変性疾患に対し予防効果があることが知られている[5]。ヴィーガン食は、食物繊維、マグネシウム、葉酸、ビタミンC、ビタミンE、鉄分、フィトケミカルの含有量が高く、カロリー、飽和脂肪、コレステロール、長鎖オメガ3脂肪酸、ビタミンD、カルシウム、亜鉛、ビタミンB12が低い傾向がある[6]。植物性の食物にはビタミンB12がほとんど含まれていないため、ヴィーガンはビタミンB12が強化された食品を摂取するか、日々サプリメントを取る必要があるというのが、研究者たちの一致した意見である[7]

このような生活様式を行う大きな理由としては、動物の権利を考えたから、というものや、倫理的な責任からきている、というものがある。また、純菜食主義者(ヴィーガン)の中には、工場式農場英語版動物実験畜産に必要な土地資源の使いすぎについて懸念している人々もいる。[要出典]

さまざまな研究によると、アメリカ合衆国の人口のうち1.4%[8]イギリスの人口のうち1.0 - 1.6%がヴィーガンであるとされている[9]

ヴィーガンは、心不全大腸癌高コレステロール血症高血圧前立腺癌脳梗塞になりにくいとされ[10] 、きちんとバランスが取れていれば、健康によく必要な栄養素をとることができるとされている[11]

問題点 [編集]

アメリカ栄養士協会は、充分考慮されたヴィーガンの食事は「妊娠期や授乳期を含む、ライフサイクルの全ての段階において適切」としているが、ヴィーガンの母親に対しては、鉄分、ビタミンD、ビタミンB12の摂取を補うことを推奨している.[12] [13]。ヴィーガン協会は、子供の免疫力を高め、アレルギーのリスクを減少させるため、ヴィーガンの母親に母乳育児を奨めているが[14]、授乳中の母親のビタミンB12欠乏症は、子供にも欠乏症や神経障害をもたらすとされている[15]。必須脂肪酸のω-3脂肪酸α-リノレン酸およびそれらの誘導体についても、これらの脂肪酸から変換されるドコサヘキサエン酸(DHA)が視神経中枢神経系の発達に必須であるが、ほとんどのヴィーガン食では含有量が非常に低いため、妊娠・授乳中のヴィーガンの母親は摂取を補う必要があるとする研究がある[16]

母親がヴィーガンであると、子供の出生時体重が軽くなる傾向がある[17]。また、ヴィーガンの母親から双子が生まれる確率は動物性食品を食べている人の5分の1であるとされるが、これを報告した論文では、ヴィーガンでない人たちが酪農製品を摂取することが、特に乳牛に成長ホルモンを与えている地域において双子妊娠の確率を増加させていると結論付けている。[18]。親に不適切なヴィーガン食を与えられた乳幼児が極度の栄養失調に陥り、脊柱奇形や骨折が発生したり、あるいは死に至った事例が何件か報道されている[19]。責任ある医学のための医師委員会の栄養部長であり、ある乳児死亡事件の検察側鑑定証人を務めたエイミー・ラヌー博士は、ヴィーガン食について「赤ん坊にとって安全であるだけでなく、動物性食品ベースの食事より健康的である」、「本当の問題は(その子供が)どんな種類の食べ物も十分に与えられなかったことにある」と書いている。[20]


脚注 [編集]

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  1. ^ エシカル・ヴィーガニズムとダイエタリー・ヴィーガニズムの違いについては、例えば以下のように説明される。
    • "Veganism", Vegetarian Times, January 1989: 「ウェブスター辞典は『ヴィーガン』という言葉に対して『動物食品や酪農製品を食べない人』という最も簡単で狭義の定義を与えている。この定義はダイエタリー・ヴィーガニズムを説明したものであるが、実際ヴィーガンの中でも多数派の、いわゆるエシカル・ヴィーガンはその哲学を更に押し進めている。」
    • "Vegan Diets Become More Popular, More Mainstream", Associated Press/CBS News, January 5, 2011: 「ヴィーガニズムとは本質的に徹底したベジタリアニズムであるが…ヴィーガンはあらゆる動物製品を拒否している…エシカル・ヴィーガンは、人間の消費のために動物を害することを道徳的に嫌悪する…しかし、ヴィーガンという言葉は、より広範な哲学を指すものとしてではなく、ヴィーガニズムの食習慣を実践する人々を指すものとして用いられることが多い。」
    • Gary Francione in Francione, Gary L. and Garner, Robert. The Animal Rights Debate: Abolition Or Regulation? Columbia University Press, 2010, p. 62: 「一部の人たちにとってヴィーガニズムは食習慣や生活様式の問題かもしれない。しかし、エシカル・ヴィーガニズムは個人のレベルにおける深い倫理的・政治的誓約であり、食物だけでなく衣料その他、一切の動物製品の不使用に及ぶ。エシカル・ヴィーガニズムは、人間以外の動物を商品として扱うことを個人として拒否することなのだ…」
    • Margaret Puskar-Pasewicz. Cultural Encyclopedia of Vegetarianism. ABC-Clio, 2010, p. 242: 「ヴィーガンはライフスタイル・ヴィーガンとダイエタリー・ヴィーガンの2種類に分けられる。ライフスタイル・ヴィーガンは、食事と生活すべてにおいて動物製品を忌避する…ダイエタリー・ヴィーガンは食事についてのみ動物製品を排除する。」
    • 「エンバイロメンタル・ヴィーガニズム」については、Torres, Bob and Torres, Jenna. Vegan Freak: Being Vegan in a Non-Vegan World. PM Press, 2009, pp. 100–102.を参照。
  2. ^ Berry, Rynn. "Veganism," The Oxford Companion to American Food and Drink. Oxford University Press, 2007, pp. 604–605.
    • 「ヴィーガン」という言葉の起源について: "Interview with Donald Watson", Vegetarians in Paradise, August 11, 2004: 「私は、初期の読者たちから『酪農製品を食べないベジタリアン』を簡潔に言い表す言葉のアイデアを募った。dairyban、vitan、 benevore、 sanivore、beaumangeurといった突飛な案も出たが、結局私が採用したのは私自身の案である『ヴィーガン』だった。それはベジタリアン(vegetarian)の最初の3文字と最後の2文字—つまり『ベジタリアンの初めと終わり』—で構成されている。この言葉はオックスフォード英語辞典に採録されたが、それよりもっと良い言葉を作ろうとはした人はいなかった。」
    • Watson, Donald. Vegan News, No. 1, November 1944: 「私たちのグループや雑誌、そして私たち自身がどのような名前で呼ばれるべきか、私たち全員でよく考えなければなりません。『ノン・デイリー(非酪農製品)』は一般に通じる口語表現として普及しましたが、「ノン・ラクト(非乳製品)」と同様、語感が否定的すぎます。しかも、我々が卵を食べることにも反対していることが表わされていません。」
    • ヴィーガン協会が1951年に「ヴィーガン」の定義を拡大したことについて: Cross, Leslie. "Veganism Defined", The Vegetarian World Forum, volume 5, issue 1, Spring 1951.
  3. ^ Berry, Rynn. "Veganism," The Oxford Companion to American Food and Drink. Oxford University Press, 2007, pp. 604–605:
    • 「純菜食を実践するのはいかにも大変そうだが、ヴィーガニズムの運動は、特にアメリカ人の若年層の間で急拡大している。アイロンマン・トライアスロンやウルトラマラソン等、いくつかの耐久競技では、トップ選手はヴィーガンで、純菜食をたいては調理しない状態で食べている。重量挙げやボディビルの若手選手たちでさえもヴィーガンに転向する者がおり、動物の肉こそがパワーとスタミナの素だという観念を覆す反証となっている。国際トライアスロン競技において3位以内入賞の常連であり、VEGAブランドで知られる植物性高機能食品の考案者でもあるブレンダン・ブレイジャーは、彼と同じヴィーガンの選手たちについて『我々は、あらゆる競技において強い存在感を築き始めている』と語った。」
    • ヴィーガンの人気について:"Vegan Diets Become More Popular, More Mainstream", Associated Press/CBS News (U.S.), January 5, 2011.
    • Nijjar, Raman. "From pro athletes to CEOs and doughnut cravers, the rise of the vegan diet", CBC News, June 4, 2011.
    • ヴィーガンのアイアンマン・トライアスロン選手の例について:David Scott and Ruth Heidrich. [1]
  4. ^ "Position of the American Dietetic Association and Dietitians of Canada: vegetarian diets", Canadian Journal of Dietetic Practice and Research. Summer 2003, 64(2):62-81; also available here [2], accessed January 31, 2011: 「充分に考慮されたヴィーガンやヴェジタリアンの食事は、妊娠期、授乳期、乳幼児期、学童期、思春期を含む、ライフサイクルの全ての段階において適切である。」
  5. ^ For T. Colin Campbell on cancer, heart disease and diabetes, see Kathy Freston. Veganist: Lose Weight, Get Healthy, Change the World. Weinstein Publishing, 2011, p. 41ff.
    • Ornish, Dean. Dean Ornish's Program for Reversing Heart Disease. Random House, 1990.
    • Campbell, T. Colin and Campbell, Thomas M. The China Study. BenBella Books, 2004.
    • Barnard, Neal. Dr. Neal Barnard's Program for Reversing Diabetes. Random House, 2007.
    • Esselstyn, Caldwell. Prevent and Reverse Heart Disease: The Revolutionary, Scientifically Proven, Nutrition-Based Cure . Avery, 2007.
    • Selection of articles:
  6. ^ Craig, Winston J. "Health effects of vegan diets", The American Journal of Clinical Nutrition, March 11, 2009.
  7. ^ Mangels, Reed. "Vitamin B12 in the Vegan Diet", Vegetarian Resource Group, accessed February 1, 2011.
    • Johnson, Larry E. "Vitamin B12 (cobalamin)", Merck Manual Home Edition, August 2007, accessed February 2, 2011.
    • Also see Norris, Jack. "Vitamin B12: Are you getting it?", Vegan Outreach, July 26, 2006, accessed February 4, 2011: 「B12は、一般的に全ての動物性食品に含まれているが(ハチミツを除く)、噂に反して、テンペ、海藻、有機農産物を含め、栄養強化されていない植物性食品は信頼できるビタミンB12の供給源にならない。栄養学界の主流派やヴィーガンの保健専門家の圧倒的コンセンサスは、植物性食品からはビタミンB12を摂れず、ヴィーガンには、そして多くの場合ヴェジタリアンにも、健康のために強化食品やサプリメントが必要だというものである。幸い、ビタミンDはバクテリアによる発酵で生成されるので、必ずしも動物製品から摂取する必要はない。」
  8. ^ Charles Stahler (2006年12月20日). “Vegetarian Journal 2006 Issue 4” (英語). The Vegetarian Resource Group. 2012年3月22日閲覧。
  9. ^ An ethical diet: The joy of being vegan - Reviews - Food & Drink -” (英語). The Independent (2006年3月15日). 2012年3月22日閲覧。
  10. ^ Key TJ, Thorogood M, Appleby PN, Burr ML (1996). “Dietary habits and mortality in 11,000 vegetarians and health conscious people: results of a 17 year follow up”. BMJ 313 (7060): 775–9. PMID 8842068. 
  11. ^ “Vegetarian Diets”. Journal of the American Dietetic Association 103 (6): 748–765. (2003). 
  12. ^ "Position of the American Dietetic Association and Dietitians of Canada: vegetarian diets", Canadian Journal of Dietetic Practice and Research. Summer 2003, 64(2):62-81; also available here [3], accessed January 31, 2011.
  13. ^ Kaiser, Lucia Lynn and Allen, Lindsay. "Nutrition and lifestyle for a healthy pregnancy outcome", American Dietetic Association, May 3, 2002, accessed February 14, 2007.
  14. ^ "Breastfeeding", Vegan Society.
  15. ^ Kuhne T, Bubl R, Baumgartner R (1991). “Maternal vegan diet causing a serious infantile neurological disorder due to vitamin B12 deficiency”. Eur J Pediatr 150 (3): 205–8. doi:10.1007/BF01963568. PMID 2044594. 
    • Weiss R, Fogelman Y, Bennett M (2004). “Severe vitamin B12 deficiency in an infant associated with a maternal deficiency and a strict vegetarian diet”. J Pediatr Hematol Oncol 26 (4): 270–1. doi:10.1097/00043426-200404000-00013. PMID 15087959. 
  16. ^ Sanders TA (1999). “Essential fatty acid requirements of vegetarians in pregnancy, lactation, and infancy”. Am. J. Clin. Nutr. 70 (3 Suppl): 555S–559S. PMID 10479231. http://www.ajcn.org/cgi/pmidlookup?view=long&pmid=10479231. 
  17. ^ Sanders TA (1999). “The nutritional adequacy of plant-based diets”. The Proceedings of the Nutrition Society 58 (2): 265–9. doi:10.1017/S0029665199000361. PMID 10466165. http://journals.cambridge.org/abstract_S0029665199000361. 
  18. ^ Steinman, G. (May 2006). “Mechanisms of twinning: VII. Effect of diet and heredity on the human twinning rate”. Journal of Reproductive Medicine 51 (5): 405–10. PMID 16779988. http://www.reproductivemedicine.com/online/2006/405.pdf 2007年2月25日閲覧。. 
  19. ^ Davies, Rob. "Couple face questioning after vegan daughter suffers bone disease", The Daily Telegraph, June 8, 2008.
  20. ^ Lanou, Amy Joy. "Just the facts: A vegan diet is safe, healthy for infants", Houston Chronicle, June 25, 2007.

関連項目 [編集]

外部リンク [編集]

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