保存食

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

保存食(ほぞんしょく)とは、比較的長期間(数か月から長いもので数年程度)にわたって貯蔵するため、腐敗を抑制する加工や処理がされた食品をいう。

概要[編集]

保存食の多くは、気候風土の関係で冬季乾季など、長期にわたり食料の確保に困難を抱える地方や、遠洋航海や戦争などの食料の確保や輸送、あるいは貯蔵・調理に大きな制約をうける状況下で、その代案として工夫されてきた生活の知恵である。また、災害飢饉の際の非常食としての役目もあり、現代社会においても備蓄用など需要がある。近年では、調理の不要なインスタント食品としての需要も大きい。

これらは長期間食べられる状態で保存する必要性から、腐敗はもちろん、昆虫カビなど他の動植物に消費され難くするための保管方法も求められた。人間が文明を獲得し発展させる段階で、安定的に食料を得ようという欲求があった訳だが、保存食もそういった必要性の中で発明され利用されてきた。

保存食は、原料や保存方法ともに多岐にわたる。海産物なら昆布、魚の干物燻製塩漬け酢漬けなどがあり、農産物なら野菜の漬物寒干しから、高野豆腐などの大豆加工食品、果物のジャムまで千差万別である。地域で得られる産品を、より遠隔地に輸送するためにも利用されており、名産品として広い地域で親しまれた食品の中にも、この保存食が見出せる。

保存の手法も様々であるが、容器による密閉(缶詰瓶詰め)をはじめ、いずれも腐敗菌の繁殖を抑え、長期間の保存を可能にする工夫がみられる。通常であれば食品に一定の加工を施すが、蜂蜜ナッツ類等、そのままで長期の保存性を持つ食品もある。保存食とは、通常、常温で長期保存ができる食品をいうが、広義では冷凍食品等も含める。

食品の多くは、常温で保管すると急速に鮮度が低下し腐敗する。冷凍冷蔵技術の発達により、近年では多くの生鮮食品が比較的長期間、新鮮な状態のまま貯蔵できるようになった。しかし、一般家庭に冷蔵庫が普及したのは1930-50年代であり、それ以前は生鮮食品を長期保存することは困難であった。

多くの食品(特に野菜、果物や魚介類)にはいわゆるがあり、決まった時期にしか手に入らなかった。季節を問わず野菜や果物類が手に入るようになったのは、最近のことである。このため生鮮食品を加工し、常温での保存性を高める工夫が行われてきた。

あり方の変化[編集]

保存食の歴史を考える場合、その発明から現代に至るまで少なくとも2つの大きな転換点がある。缶詰の発明と、冷蔵冷凍)技術の発達である。

保存食のはじめは、手作業・手作りの時代である。この時代の保存食は、天然の素材と自然界にある様々な現象を最大限に利用して、保存しやすくするような工夫がされていた。塩蔵糖蔵乾燥燻製発酵などである。保存のための技法により、良い意味でも悪い意味でも食品の性質は大きく変化してしまう。また、加工後の食品を食べるには特殊な調理が必要となる場合も多い。このため保存方法それぞれに特化した調理法や食文化を発生させており、後述の食品保存技術の発達した現在では、これらの伝統的保存食は保存目的よりも食文化の一環として存続している。

次は、缶詰の時代である。1804年フランスで広口ビンに食品を詰める「ビン詰め」が発明され、1810年金属容器が発明されて「缶詰」が生まれる。これらは軍用食という需要があって開発された技術だが、これの加熱殺菌と密封によって、食品の風味をあまり損なわない長期保存が可能となった。しかもこれらは調理済みであるため、容器を開ければ、そのまま食べることが出来る。当初は軍用食として開発された缶詰であったが、その有用性・利便性が知れ渡り19世紀の中頃より現在に至るまで、一般でも広く量産され続けている。

最後は、冷凍保存の時代である。低温で腐敗菌の繁殖を抑え長期の保存を可能にした。調理済みのもの、半調理済みの素材、生の素材(食品による)、いずれも冷凍により保存が可能である。缶詰よりも更に食品の性質変化は少なくなった。

この変化以降にも、缶詰の技術を応用し合成樹脂フィルムに密封したレトルト食品や、乾物凍結乾燥)の技術を発展させたフリーズドライも保存食の歴史を変える大きな技術革新であった。こういった変化は、人間の社会のありようが変化して行く中で、そこに生活する者の食料を保存・輸送し安定して供給する上で役立っており、一般から宇宙開発など先端の分野(宇宙食)まで、幅広い分野で利用されている。

保存方法[編集]

関連項目[編集]

参考文献[編集]