方言

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この項目では、自然言語における方言全般について説明しています。

方言(ほうげん)とは、あるひとつの言語における変種のことである。語彙発音(訛り・アクセントなど)・文法表記法のいずれかもしくはいくつかの面で差異が見られる。

目次

[編集] 方言と言語の関係

言語は変化しやすいものなので、地域ごと、話者の集団ごとに必然的に多様化していく傾向があり、発音語彙文法に相違が生じる。そのために、差異の程度が別の言語までには広がっておらず同じ言語の変種と認められるものの、部分的に他の地域の言葉と異なった特徴を持つようになったものを方言と呼ぶ。また、方言には同一地域内にあって、社会階層の違いによって異なる変種もある。(社会方言

しかし、言語学には「同語族・同語派・同語群の同系統の別の言語」なのか、「同一言語の中の方言」なのかを客観的に区別する方法はなく、言語と方言の違いは極めて曖昧である。国境の有無などのような政治的な条件や正書法の有無などを根拠に両者の区別が議論されることもあり、例外は多々存在する。

「言語」と「方言」に境界線を引くための指標としてしばしば引用される警句に「言語とは、陸軍海軍を持つ方言のことである」(イディッシュ語: "אַ שפּראַך איז אַ דיאַלעקט מיט אַן אַרמיי און פֿלאָט" "a shprakh iz a dialekt mit an armey un flot", 英語: A language is a dialect with an army and navy)というものがある。これは、自分たちが話す言葉がはたして「方言」であるか、それとも独立した「言語」であるかについての認識には、その言葉を使う共同体が独立国家を持つか否かといった政治的・軍事的要因に左右される面があることを示す。この警句はユダヤ人言語学者のマックス・ヴァインライヒの発言としてよく引用されるが、実際の発言者が誰であるかについては曖昧な部分が多い。

方言話者同士が会話する場合は、ある特定の方言そのもの、あるいはその方言を元にして新しく作られた標準語[1]を使用してきた。

[編集] 各国での方言の実例

「言語」と「方言」の境界が曖昧な事例は、世界中で見られる。

[編集] 近代(国民)国家と標準語政策

詳細は「国語国字問題」を参照

近代に至ってフランス型の標準語政策は国民形成、国民統合と国民国家建設に欠かせない要件として世界中の国々に受け入れられていく(後述する日本標準語政策も例外ではない)。

[編集] フランスの方言政策

絶対王政期のフランスでは、国家によってオイル語系の北フランスの方言を基にした標準語が定められ、それまで南部オクシタニアで話されるオック語系のプロヴァンス語などや、島嶼ケルト語系統のブルターニュ語など、標準フランス語とは系統の異なる地方言語を標準フランス語に対する方言と定義付けて、方言より標準語を優越させる政策が始められた。

例えば、学校教育において、方言を話した生徒に方言札を付けさせて見せしめにするということが行なわれた。この制度は日本にも取り入れられた。

なお、アルザス語もフランス東部で用いられるが、これは言語学的にはドイツ語の一方言アレマン語に属する。

[編集] 日本の方言政策

明治時代以降、日本では学校教育の中で標準語を押し進め、方言および日本で話されていた他の言語を廃する政策がとられた。方言を話す者が劣等感を持たされたり、または差別されるようになり、それまで当たり前であった方言の使用がはばかられる事になった。

現在では、テレビ・ラジオにおける標準語[1]使用の影響により殆どの者が標準語を話せるようになった一方、その土地の方言を話せる人口はかつてと比べて確実に減っている(例えば近畿方言のように比較的方言が保たれていても、さらに細分化された地域性が失われる傾向もある)。特に若者の間でその傾向が著しい。方言アクセントは、多くの地域で若者においても保持されているが、語彙は、世代を下るに従ってはっきり失われる傾向にある。

[編集] イタリアの方言政策

方言が様々で争いさえ起きたイタリアでは、ラジオテレビ放送が始まった当初多くの人々が驚いたと言われている。それは、「放送局RAIが、標準語を定義した」というイタリアで初めての試みであったからである。「テレビ放送が始まってから、初めて標準語を知った」農村地方の老人も多かったと言われている。

[編集] 標準語と方言

方言の中でも広く通用し標準的と見なされる変種を標準語[1]と呼ぶ。

標準語は教育や放送を通じて国民に広く知れ渡り、異なった方言をもつ者の意思の疎通を円滑にする。今日の日本では標準語[1]が広く知れ渡り、ほとんどの国民が解する。

標準語[1]は勢力の強い方言なので、他の方言に強い影響を与える。標準語とそれ以外の方言で同音衝突が起きた場合、通常標準語の語彙が残り、他方は使用されなくなる。例えば、名古屋弁においてはかつて「ちょう」という副詞が頻繁に使われていたが、若者言葉において「とても」という意味の「超」という同音の副詞が生まれ全国的に流行した結果、使われなくなった。播州弁岡山弁でも「ちょっと」という意味の「ちょう(ちょー)」があり、最近でも頻繁に使われている。

また、劣勢に置かれる標準語以外の方言は伝統的な文法・用法を保ちにくい。世代が下るにつれて方言の運用能力は低下する傾向にある。ただし、家庭や職場で方言をよく使う環境にある者は若い世代でも比較的伝統的な方言を保っている。また、新方言という、伝統的な方言とも標準語とも異なる方言が生まれることもある。

[編集] 脚注

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  1. ^ a b c d e f g 「標準語」と「共通語」について、ここでは次の意味で使用する。
    標準語:ある言語の中で、方言の差異による不便を解消するために、標準のことばを定め、コミュニケーションの基準としたもの。
    共通語:異なる言語の話者同士で、両者が共通して理解できる第3の言語。
    (これらの用語は、日本の国語学では次のような意味で定義されているので混乱されやすい。
    標準語:ある言語の中で、方言の差異による不便を解消するために、人為的に標準のことばを定め、コミュニケーションの基準としたもの。
    共通語:ある言語の中で、方言の差異による不便を解消するために、現実に使用されていることばで、コミュニケーションの基準となっているもの。
    この定義によれば「現在の日本には「共通語」はあるが「標準語」はない」となる)

[編集] 関連項目

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