寿命
寿命(じゅみょう)とは、命がある間の長さのことであり、生まれてから死ぬまでの時間のことである。転じて、工業製品が使用できる期間、あるいは様々な物質・物体の発生・出現から消滅・破壊までの時間などを言うこともある。
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[編集] 一般的用法
一般には、人間が生まれてから死ぬまでの時間のことを寿命という。この長さには非常に個人差があり、生まれてすぐ死ぬ人間もいれば、100年以上生きる人間もいる。しかし、あまりに短い場合、大抵は事故であったり、病気であったりと不本意な理由があるから、「あれさえなければもっと生きていたろうに」というふうに考えるものである。したがって、人間は特に問題がなければ老人になって衰えて死ぬものだとの考えから、老衰で死ぬことを寿命と言うことが多い。100歳の人が死ねば、大抵は「寿命だからね」と言われる。
言葉としては、寿命が短いことを短命(たんみょう・たんめい)、長いことを長命(ちょうみょう・ちょうめい)という。もちろん相対的な概念であり、絶対的な区別はない。有名人が短命に終わった場合、夭折という。なお、短命に終わったものがその分野で大きな仕事を残した場合、往々にして天才と呼ばれる。
[編集] 人間の寿命
[編集] 平均寿命
詳細は「平均寿命」を参照
平均寿命はある集団に生まれた人間が平均して何年生きられるかの期待値であり、0歳児の平均余命であるとも言える。 具体的な計算法は、各年齢の人間の年間死亡率を求め、今年生まれた人間の人口がこの死亡率に従って毎年どれだけ死亡するかを求める。このシミュレーションでそれぞれの死亡した年齢を平均したものが平均寿命となる。
平均寿命は一般に先進国の方が開発途上国より長いが、これは発展途上国の新生児死亡率が先進国よりはるかに高いことが主な原因と考えられる。新生児死亡は死亡年齢の低さから平均値を大きく引き下げる働きがあるからである。また、戦争などで一時的に若者が多く死亡した場合、一時的に平均寿命が低くなる。若年層の死亡率がその時期だけ高くなり、同じく平均を強く引き下げることによる。
平均寿命の長さが長くなると同時に、肉体の老齢化の進み具合も小さくなっている。日本において、かつては50歳が定年であったが、それが55歳、60歳と延長され、さらには65歳まで延長される趨勢にあるのは、そのひとつの例である。[要出典]しかしながらそのスピードは平均寿命の伸びには届かず、労働人口の増加以上に非労働人口(高齢者)の増加が著しく、その生活を若年層が支えていくために負担が大きくなる傾向にある。平均寿命の延長は「老齢時代の長期化」に近い。
[編集] 国別平均寿命ランキング
以下、WHOの世界保健報告発表による。
- 2008年の統計のうち、平均寿命が80歳以上の国は日本、スイス、サンマリノ、オーストラリア、モナコ、アイスランド、イタリア、スウェーデン、スペイン、フランス、カナダ、アンドラ、イスラエル、シンガポール、ノルウェー、ニュージーランド、オーストリアの順で17か国。
- 日本の平均寿命は82.6歳で世界一。
- 女性の平均寿命は日本が85.99歳で世界一。2位香港85.4歳、3位フランス84.1歳と続く。
- 男性の平均寿命はアイスランドが79.4歳で世界一。2位香港79.3歳、3位日本79.19歳と続く。
- 平均寿命が最短なのは男性がシエラレオネ、女性がスワジランドで、それぞれ37歳。
「国の平均寿命順リスト」も参照
[編集] 最長寿命と寿命
最長の人間の寿命は、生没年月日が判明している者では、ジャンヌ・カルマンの122年164日が最長である。そのため、120年前後ではないかとする説もある。
[編集] 生物学的用法
生物学における寿命には2つの考え方がある。たとえばアユを海水で育てると2年以上生き延びることが知られている。そこで、アユの寿命は実は2年くらい、というのは確かに正しいのであるが、実際の河川では、アユはほぼすべて1年で死亡する。一年草も自然条件では1年で開花・結実枯死するが、開花条件を満たさなければ何年も生きるものが多い。つまり、アユや一年草の寿命は1年とも、2年(もしくはそれ以上)ともいうことができる。そこで、条件を整えてやった場合に実現する寿命を生理的寿命、その生物が実際に生活している場で見られる寿命を生態的寿命として区別する。
我々の見る一般的な動物の個体は老化して死に、人間と同じように生理的・生態的寿命を考えることができる。ただし、生物界全体を見渡した場合、生理的寿命があるものはむしろ少数派である。属する種の過半数に生理的寿命があるものは動物だけといってよく、動物の中でも海綿動物、腔腸動物や扁形動物では生理的寿命は認められていないものが多数を占める。
[編集] 細胞の分裂回数の限界
一般に単細胞生物には寿命の概念がない。ただし例外的に繊毛虫(ゾウリムシの仲間)では分裂後の隔離を繰り返して自家生殖・接合を行わせないと細胞分裂ができなくなる現象が起こる。同じく動物の正常な体細胞では一定回数以上分裂できない現象がある。これは細胞分裂時に短くなる染色体上のテロメアと呼ばれる配列をこれらの細胞では延長できず、ある程度以上テロメアが短くなれば分裂できなくなるからである。これをヘイフリック限界といい、生理的寿命の原因であろうとされている。原核細胞(細菌・古細菌)、多くの動物以外の真核細胞および動物の生殖細胞や癌細胞はこのヘイフリック限界をもたないため無限に分裂できる。よく誤解されるが細菌や多細胞種を含む植物細胞や菌(カビやキノコ)細胞、さらに動物の中でも上記の海綿動物、腔腸動物や扁形動物の細胞ではこのヘイフリック限界のような現象は認められていない。
[編集] 寿命の意義
動物などにおける寿命の意義は現在論争中で、充分に説得力のある仮説はない。しかし、以下の仮説がある。議論する上でよく有性生殖の意義との混同が起きるが、全く別のものである。有性生殖またはそれに当たる遺伝子交換は多くの生物で認められ、真核生物では認められないものの方が少数である点も寿命とは異なる。
1.個体使い捨て説
生理的寿命がある生物は体が複雑であるものが多い。動物でも体制が簡単な海綿と腔腸動物には生理的寿命が認められないものが多い。生理的寿命が認められるゾウリムシは単細胞生物としては異例の複雑かつ巨大な体を持っている。ここから、複雑な体はある程度以上壊れる(老化する)と再構築し直すほうがコストが少ないため、個体(ゾウリムシの場合は大核)を捨ててしまうという説。上記のゾウリムシにおける無限に分裂ができる系統では定期的に大核の廃棄および再構成がなされている。多くのゾウリムシ系統はこの廃棄と再構成が接合とリンクしているため接合がない場合は分裂能を失ってしまう。これは動物における単為生殖種と両性生殖種との関係と同じと見なせる。
2.子孫への配分説
個体を生き残らせるよりも、繁殖にエネルギーを使った方が有利なため寿命がある。例えば一年生草本などでは、不適期間(例えば夏草における冬)を休眠などで乗り切るのにコストをかけるよりも、不適期間直前に種子を大量生産した方が得な事が多い。つまり、その個体の維持エネルギーまでを子孫に回すことにより(周りの環境の悪化も伴って)結果的に死んでしまう。一年草や一年魚などで蕾を除去し続ける、もしくは手術などで不妊にすると生残することがある。ただし、これは生態的寿命を説明するものであっても生理的寿命を説明するものではない。
3.テロメア説
動物の生理的寿命だけに成り立つ論であるが、細胞分裂のたびに染色体の端にあるテロメアが短くなり、ある程度以下になると細胞分裂できなくなる現象から。しかし、これは(他の真核生物は保持している)テロメラーゼを失うことにより動物が生理的寿命を設定している、という方が正しい可能性があり、原因と結果をはき違えている、という意見がある。
4.偶然説
動物が(生殖細胞以外では)テロメラーゼが発現しないように、祖先種においてたまたま寿命があるものができ、それが特に(遺伝子の)生存に不利でなかったため、たまたま、寿命がある、という説。2で解説したように親が生き残るのが、(遺伝子の)生存に於いて誤差範囲以上の有利さが無かった、もしくは、むしろ不利だったため。
[編集] 心拍数説
脊椎動物全般では、心拍数によって決まるという説もある。これは心拍数に上限があり、その上限が哺乳類は20億回で、それに達すると寿命だという。ただ、この値は指数関数的な概数であり厳密に当てはまるものではない。例えば一分間の脈拍60 - 80回程度の人間(ヒト)を当てはめると45 - 65年程度の寿命になる。
[編集] 休眠がある場合
生物の中には、その生活史の中に非常に不活発で、生理作用も低レベルとなった状態である程度の時間を過ごす例がある。それを休眠と言うが、往々にして環境条件の悪化を耐え忍ぶために現れる。これは生活環の中で定期的、一定期間で行われるものもあるが、中には不定期に長期間をその形で過ごす例がある。その場合、この期間を含む寿命は非常に長くなる。例えば植物種子の中には条件が整えば半永久的な寿命を持つのではないかと考えられる例が存在する(植物種子は休眠個体であって決して卵ではない)。 同様にクマムシ、別名でチョウメイムシ(長命虫)は、この動物が特殊な休眠(クリプトビオシス)の状態で数十年にわたって生き延びることが知られている。同様の卵でない個体休眠はネムリユスリカやワムシでも知られている。
[編集] 寿命伸長の可能性
薬物摂取により、真に医学的に「寿命を延ばす」という事は、難しいと考えられてきた。しかし、2009年の研究で、抗生物質の一種であるラパマイシンにマウスの寿命を伸長させる作用があるとのデータが得られ、薬剤によって(既に高齢化している)動物個体の寿命を伸長させることができることがわかった。
また、低カロリーの摂食は多くの動物の平均寿命と最長寿命を延ばすと言われている[1]。栄養の不足は、細胞中でのDNA修復の増加した状態を引き起こし、休眠状態を維持し、新陳代謝を減少させ、ゲノムの不安定性を減少させて、寿命の延長を示すと言われている[2]。
[編集] 脚注
- ^ G. López-Lluch, N. Hunt, B. Jones, M. Zhu, H. Jamieson, S. Hilmer, M. V. Cascajo, J. Allard, D. K. Ingram, P. Navas, and R. de Cabo (2006). “Calorie restriction induces mitochondrial biogenesis and bioenergetic efficiency”. Proc Natl Acad Sci USA 103 (6): 1768–1773. doi:10.1073/pnas.0510452103. PMID 16446459. PMC 1413655.
- ^ DNA修復
[編集] 参考文献
- 樋渡宏一『ゾウリムシの性と遺伝』,(1982),UPバイオロジー・シリーズ(東京大学出版)