グルコース

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

グルコース
IUPAC名 6-(ヒドロキシメチル)オキサン-2,3,4,5-テトロール
(2R,3R,4S,5R,6R)-6 -(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2,3,4,5-テトラオール
別名 デキストロース
識別情報
略称 Glc
CAS 50-99-7 (D-グルコース)
921-60-8 (L-グルコース)
SMILES C(C1C(C(C(C(O1)O)O)O)O)O
特性
化学式 C6H12O6
モル質量 180.16g mol−1
密度 1.54 g cm−3
融点

α-D-グルコース: 146℃
β-D-グルコース: 150℃

特記なき場合、データは常温(25 ℃)・常圧(100 kPa)におけるものである。

グルコース (glucose) は代表的な単糖のひとつ。デキストロース (dextrose)、ブドウ糖(葡萄糖)とも呼ばれる。Glcのほか、ドイツ語 Traubenzucker(Trauben ブドウ、Zucker 糖)から Tz とも略記される。ヘキソース(六炭糖)、アルドースに分類される(すなわち、アルドヘキソースである)。人間をはじめ動物植物の活動のエネルギーになる物質の一つである。光学活性物質であり、天然に大量に存在するのは D体である。

目次

[編集] 構造

水溶液中では、以下の 3 種類の構造が一定の割合で存在する平衡状態となっている。

グルコースの平衡

水中において平衡状態に達したとき、グルコースはほぼ α-グルコース(α-ピラノース、38%、上図左)と β-グルコース(β-ピラノース、62%、上図右)の形で存在しており、他の異性体フラノース、鎖状体(上図中央))は合わせても 1% に満たない(注:ピラノースは 6員環、フラノースは 5員環の環状ヘミアセタールである)。

α-ピラノース と β-ピラノース は、再結晶の溶媒や条件をきちんと選べば、それぞれの純品の結晶を作り分けることができる。その純品の結晶を水に溶かすと、平衡状態へ移行する過程で旋光度の変化がみられる。この現象は変旋光と呼ばれる。

[編集] 物理的性質

常温常圧で白色の粉末状の結晶。水に溶けやすい。甘味がある。

[編集] 化学的性質

D-グルコースのフィッシャー投影図

[編集] 還元性

グルコースは水溶液中ではごく一部が鎖状構造となっている。この構造の末端にはアルデヒド基が存在するため、グルコース水溶液は還元性を示す。水溶液中でアルデヒド基をもつ単糖はアルドースと呼ばれる。

[編集] 発酵

グルコースは、チマーゼと呼ばれる酵素群によりエタノール二酸化炭素に分解される。この反応をアルコール発酵という。

C6H12O6 → 2 C2H5OH + 2 CO2

[編集] 所在・製法

グルコースは果実・蜂蜜・体液中に遊離して存在している。

[編集] 利用

  • 医薬品として様々な濃度(5%, 20%, 50% など)のブドウ糖注射製剤が複数の製薬会社より製造・販売されている。日本薬局方にも記載され、ブランドとしてでなく「局方品」として調剤されることが多い。医療現場では、しばしば「5プロ糖」「ツッカー」(ドイツ語の「Zucker 糖」に由来)と呼ばれる。
  • 糖尿病治療薬の過量服用などで低血糖になった際などには、携帯したブドウ糖顆粒の経口摂取がしばしば行われる。ショ糖では血中のブドウ糖濃度は速やかに上昇しないため、ブドウ糖の摂取が好ましい。
  • 血液内のブドウ糖濃度(血糖値)は、健常なヒトの場合空腹時血糖値でおおよそ80-100mg/dl程度、食後は若干高い値を示す。血糖値の異常については糖尿病耐糖能異常を参照。

[編集] おもな誘導体

  • キノボース(6-デオキシグルコース)キナの樹皮の配糖体
  • パラトース(3,6-デオキシグルコース)サルモネラ菌のリポ多糖

誘導体ではないが、グルコースは以下のようなオリゴ糖多糖の構成単位である。グルコースを構成単位とする多糖の総称をグルカンと称する。

[編集] 関連項目