エニアグラム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

エニアグラム(enneagram)とは、円周を九等分して作図される特定の象徴図形である。円周上の九つの分割点に1から9までの番号を振り、3-6-9の点を結んで正三角形を描き、さらに1-4-2-8-5-7の点を直線で結んだ図形を描く。1-4-2-8-5-7は、1を7で割って得られる循環小数0.142857142857...に対応している。

厳密に言うならばエニアグラムという言葉はこの図形を指すが、昨今ではこのエニアグラムを利用した性格論との関係で使われることが多い。その場合には、人間の性格9種類に分類したエニアグラム、またはそれに基づく性格論を指す。本項目では主としてこれについて詳述する。

図形としてのエニアグラム[編集]

図形としてのエニアグラムは、ゲオルギイ・グルジエフ1910年代にこれを少数の弟子たちに教えたことが、のちに広く一般に知られることの最初のきっかけとなった。グルジエフによるエニアグラムの扱いは、性格論でのエニアグラムの扱いとは異なっていたように見える。

性格論との関係でエニアグラムが利用されるようになったのは1960年代以降である。これを最初に試みたのはオスカー・イチャーソだったと見られている。のちにイエズス会の賛同を背景に、ヘレン・パーマードン・リチャード・リソほか、主としてクリスチャン心理学者アメリカなどでこれを一般に広めた。ただし、オスカー・イチャーソの主宰する団体であるアリカ学院とヘレン・パーマーの間で起きた著作権がらみの訴訟を背景として、エニアグラム性格論の起源については必ずしも中立的なものと判断しがたい諸説があり、正確なところを知るのが難しい。日本に紹介されたのは1980年代末である。

図形としてのエニアグラムの起源についても、スーフィーに由来するもの、古代ギリシア哲学者が宇宙の原理を説明するために用いたもの、古代中国に発祥するものなどと、諸説があるが、いずれも確証を欠いている。

性格論としてのエニアグラムは俗に占いと比較されるが、エニアグラムを使った性格分析ではパーソナリティの核になる部分にスポットを当て、自己認識と他者の多様性受容のためのツールとして使われることが多い。9分類のカテゴリは、ステレオタイプとして捉えるというより、傾向を知る指針として利用するのが一般的である。

スタンフォード大学MBAにおいては、リーダーシップ授業で利用されているという。日本においても、コーチングの研修などで活用されている。

エニアグラム性格論[編集]

性格の主な九分類法[編集]

リソによる分類法
批評家 職人完全主義者。鑑識力が高い。神経質。融通が利かない。欲求不満。正義感が強い。生真面目な努力家。節度がある。文句が多い。
援助者 人助け。細かい気遣い。八方美人。押し付けがましい。世話好き。同情心がある。自己犠牲。人を操作したがる。
遂行者 成功。計画実行。行動的。計算高い。リーダー。仕事に熱心。マネジメントを重視。競争心が強い。能率重視。人を駒のように扱う。
芸術家 天才。孤高の志士。一番病。感受性が鋭い。ナルシスト。豊かな創造力。浪漫主義者
観察者 博士。学究肌。分析屋。内向的。皮肉屋。思慮深い。冷静沈着。探究心旺盛。有益性を重んじる。
忠実家 安全第一。石橋を叩いて壊す。新しい物事への拒絶。規則を厳守。責任感が強い。権威に弱い。疑い深い。
情熱家 楽天家。好奇心旺盛。自由人。飽きっぽい。情熱家。快楽主義。柔軟性がある。気分転換が上手。
挑戦者 唯我独尊理想主義者。自信家。他人に操られるのを嫌う。挑戦者。決断力がある。逆境に強い。統率力がある
調停者 平和主義者マイペース。器用な経営者。葛藤を嫌う。逃避。怠慢。友好的。無欲。器が大きい。

九罪(9種類の、倫理上の

  • 憤怒(怒)
  • 驕慢(驕)
  • 欺騙(騙)
  • 嫉妬(嫉)
  • 貪欲(貪)
  • 恐怖(恐)
  • 大食(肥)
  • 色欲(色)
  • 怠惰(怠)

今後の課題[編集]

エニアグラム性格論は、主としてカウンセリングの分野などでの実用性と妥当性の高さの点で評価されている。西洋心理学での既成の性格分類体系との関係についても研究が進められている。一方、九つの性格のエニアグラム上での配置は一見して恣意的であり、それを「古代からの叡智」として片付けるのではなく、その妥当性の根拠に関する十分な説明がなくては心理学上の理論として採用できないというのが、保守的な心理学者からの主要な批判である。心理的力学や発達論をエニアグラムの構造と結び付けた説得力のある研究が今後の課題として残されている。

参考図書[編集]

エニアグラム性格論:

  • ヘレン・パーマー『新エニアグラム』阪急コミュニケーションズ(1996年)
  • ドン・リチャード・リソ&ラス・ハドソン『エニアグラム あなたを知る9つのタイプ 基礎編』角川書店(2001年)
  • ウィリアム・パターソン『グルジェフを求めて/第四の道をめぐる狂騒』コスモス・ライブラリー(2003年)
  • 安村 明史『9タイプ・コーチング 部下は9つの人格に分けられる』PHP研究所(2006年)
  • ティム・マクリーン、高岡よし子『エニアグラム 自分のことが分かる本』マガジンハウス(2009年)

エニアグラム総論:

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

エニアグラム性格論関連団体:(五十音順)

エニアグラムの原理と理論: