超心理学

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超心理学ちょうしんりがく)とは、既知の自然の法則では説明できない現象[1]、いわゆる超能力超常現象の存在の有無や、有る場合はその仕組みを研究する学問のことである。

目次

[編集] 概要

超心理学は、心と物あるいは心同士の相互作用を研究する学問である[2][3]

超心理学とは、いわゆる超能力を研究対象とするものであり[4]、その存在の有無や仕組みを、科学的手法に基づいて、特に行動科学の手法を用いて明らかにしようと試みる分野である。

研究の対象をもう少し具体的に述べるならば、基本的にはESP(Extra-sensory perception) とサイコキネシス念力)である[5]、とされる。そこには、テレパシー予知透視などが含まれる(ただし、実際には、臨死体験体外離脱前世記憶、心霊現象も研究対象として含まれている[6]、ともされる)。

研究対象は超自然的なものであるが、方法論は完全に実験心理学の規範に準拠する。被験者の割付けやデータの統計学的検定といった研究計画については通常の実験心理学よりもかなり厳密に行われており、追試が可能な形で行うことを目指す、あるいは実際に行う。

ただし、この学問に対する評価には幅があり、科学と認められるとする者、科学的なものとしては認めるが心理学ではないとする者、研究対象となるべき現象(超感覚的知覚能力など)がそもそも存在しないとし、この学問は疑似科学に過ぎないとする者など、様々である。だがいずれにせよ、欧米の有名大学において博士号を授与されてきたという点で、超心理学というのは、心霊現象研究の中では最もアカデミックな色彩が強い分野である[7]、という。

ラインとその弟子たちら、超心理学の創成期の人々が残した華々しい研究成果は、その後に実験条件を厳しくされたことによって、後に次々と否定されるに至った[8]、ともされ、また、その後新しい手法が開発されると、偶然の期待値を上回る好結果が発表されるが、それがやがて否定される、ということが繰り返されており、超心理学者らは現在でも研究の対象がそもそも実在することを証明することにかなりの労力を費やしている[9]、とも言われる。

日本では、広い意味の超心理学が「サイ科学」と呼ばれることがあるが、サイ科学オカルト的な要素を多分に含んでおり、超心理学とは分けて考えるべきとする見解もある。

[編集] 歴史

歴史的にはジェームズフロイトユングアイゼンクといった者たちも超心理学に関わることもあった[10]

「超心理学」という言葉が造語されたのは1889年のことであり、ドイツの美学者[11]あるいは心理学者[12]マックス・デソアール(デソイル)によるものである[13]

一般に、超心理学という用語が広く使われるようになったのは、アメリカ合衆国ノースカロライナ州ダラムのデューク大学に超心理学研究室が設置され、1927年にスコットランド出身の心理学者ウィリアム・マクドゥーガルが教授として迎えられ、同年にJ・B・ラインとその妻ルイザも参加したことによる[14]、といい、ラインがこの「超心理学」という用語を広めた[15]、とされる。ラインは、「超心理学の父」[16]、ともされる。

1930年には、この超心理学の実験作業が本格的にスタートした。

J・B・ラインの計画は、千里眼テレパシー予知サイコキネシスなどの「霊能力」が、管理された研究室の条件下で、著名な演技者を使わなくても実演可能であることを示すことだった[17]、という。そこで、まず心霊調査を信頼できる学問とする作業に着手したといわれ、1934年に発行された著書『超感覚的知覚』は広く読者を獲得し、「ESP」という用語を一般に知られるものとした[18]、という。

ゼナー・カード。創成期の超心理学者らは、テレパシーの実験にこのゼナーカードを用いた。

ラインは統計学の見地からも難癖のつけようがない結果を出した[19]、ともされる。例えば、ゼナー・カードを用いて実験を実施し、実験対象者の一部は普通に予想される5回以上の的中率を反復的に実現することを示した[20]、ともされる。その一方で、ラインの実験結果のほとんどに批判が寄せられている[21]、ともされる。 ただし批判があるにせよ、「霊」の存在の介在を排した形での超能力研究を確立した意味で、ラインの功績は評価されるべきだ[22]、ともされる。

ラインの助手のベティ・ハンフリーは、テストの結果は、開始時が最も良く、次第に下降し、テストを続行すると再度上昇に転ずる、ということを発見した。これは「U曲線」「低下効果」「退屈要因」などと呼ばれるようになったといわれ、超心理学の分野では再現可能な最初の発見事項とされている[23]、という。

また、ニューヨークの超心理学者ガートルード・シュマイドラーは「山羊・羊効果」を発見した[24]、とされる。これは、ESPを信じる被験者は、信じない被験者に比較すると、良好な結果を出す傾向がある、という内容のものである。

1965年、ラインが退職し、この超心理学研究室は現在は大学からは独立した超心理学研究所として存在している[25]、というが、ラインが主導して1957年に設立された「超心理学協会」は、1969年に米国科学振興協会の下部機関に認定された。

J・B・ラインの後に、様々な手法が開発された。例えば、ラインが用いたゼナー・カードに代わって、「無作為事象生成装置」というものが超心理学研究室の標準的な装置になった[26]、という。

また、物理学者のヘルムート・シュミットが、放射性崩壊のような予測不能の物理現象に対するサイコキネシスの効果を検知する可能性を示し、これはプリンストン大学のロバート・ヤーンをチーフとする研究チームによって正しく再現された[27]、ともされる。

上記の米国や欧州とは文脈が大きく異なるが、日本では、福来友吉(1869-1952)が、心霊研究や超心理学の草分けとなった[28]、とされ、東京帝国大学の助教授時代に、御船千鶴子の存在を知り、またその後、長尾郁子の研究を行った、とされる[29]

[編集] 研究室や学部の設置状況 等

米国において超心理学の専門の学部を備えた大学は、カリフォルニア州オリンダのジョン・F・ケネディ大学1校である、という[30]。ただし心理学部の大学院課程で研究が継続できる大学が、J・F・ケネディ大学以外に数校ある[31]、という。

イギリスにおいては、(1983年以前には)エディンバラ大学サレー大学アストン大学の3大学において、個人ベースで超心理学の大学院教科研究が提供された[32]、とされ、数名の心理学部の学生が心霊現象の研究論文で博士号の学位を取得した[33]、とされる。そして、1983年にアーサー・ケストラーの遺書により、遺産70万ポンドが、イギリス初の超心理学部の創設のために寄託され、これに対してエディンバラ大学とカーディフ大学が名乗りを上げ、結局これをエディンバラ大学が引き受けることになった、という。この超心理学部は「ケストラー記念超心理学部」と名づけられ、1985年にロバート・L・モリスが初代の主任教授に任命された。 ヨーロッパでは、イギリス以外にオランダのユトレヒト大学でも超心理学研究室が設置されたが、同研究室が閉鎖された後では、エディンバラの超心理学部がヨーロッパでは唯一の専門学部だとされる[34]

日本の大学としては、現在、明治大学にメタ超心理学研究室が設置されており、教授の石川幹人によって研究が行われている。

[編集] 懐疑的研究

超心理学の研究分野の特徴は詐欺や欺瞞である。さらに、きちんと比較実験を立案して、統計データを解析する能力にも欠けているとする主張がある。[35][36][37]

スーザン・ブラックモアのように、何年たっても超常現象の有意に支持する結果が見つからず、研究をあきらめてしまった超心理学者もいる。[38]

米国の大学教授千百名の調査によると、ESPを確立した事実とか、可能性がありそうだと考えている心理学者は34%であった。一方心理学者以外の者でESPが不可能だと言った者はわずか2%であった。[39]

肯定的結果を得たと主張する超心理学者が、サイの存在を支持しない研究結果をわざと無視して自分の研究結果を正当化してしまうことも多い。ラインも自分の信念を支持しないデータは理由を付けて捨てている。[40]

[編集] 懐疑派の活動

ダグラス社の取締役会会長のジェームス・マクドネル(en:James McDonnell)により50万ドルの出資によって1979年に設立されたマクドネル超能力研究所(McDonnell Laboratory for Psychical Research)という、おそらく世界で一番資金のある超能力研究所があった。この研究所の所長であるピーター・フィリップス(en:Peter Phillips)博士に、超能力実験においていかにイカサマ師のトリックを見抜くか、マジシャンのジェームス・ランディが11ヶ条の助言を送り、また要請があれば無償で実験に立ち会うことも申し出た。ところが、ランディの申し出は断られ、助言も無視された。封も開けられず手紙は送り返されていたという。

これに怒ったジェームス・ランディはこの研究所に2人の若いマジシャンを送り込んだ。彼らは自分達に超能力があると、研究所スタッフに思い込ませることに成功した。彼らがマジシャンであることが暴露されるまで、研究は3年間続き、その間彼らは、金属を曲げたり念写やテレパシーなどの実験をやってみせたが、研究スタッフは誰一人それが手品であることを見抜けなかった。

これがプロジェクト・アルファである。彼らがマジシャンであることが暴露された2年後の1985年に研究所は閉鎖された。

また現在、上記のジェームス・ランディは超能力を目の前で実証することが出来たなら100万ドルを進呈すると宣言している。 ランディは「超能力の全てには、トリックがある」と発言している。彼によると、これまで300人もの自称「超能力者」と名乗るものたちが、100万ドルを求めてランディに挑戦してきたが、ことごとくそのトリックを暴かれいまだ誰ひとりとして自慢の超能力を実証したものはいない。

この宣言は日本のテレビ放送でも何度か放送されているが、超能力実験の実証に成功した者はいない。

ジェームス・ランディ以前には、本物の霊媒者を捜していたが、インチキが多すぎるために、アンチ心霊主義の急先鋒として活躍したマジシャンのハリー・フーディニの例がある。彼は自らを「心霊主義を叩きのめす鉄槌」を自任し、数々のイカサマを暴いた。有名なサイエンティフィック・アメリカンでの懸賞金を懸けた超能力者探しのエピソードは、日本のTVドラマ「TRICK」のモチーフにもなっている。

[編集] 信じる心の研究

一部の認知心理学者は、超能力や超自然現象をなぜ信じる人がいるのか?信じるその傾向は普遍的か、特別か?を明らかにしようとしている。彼らは超能力が実在するかどうかには立ち入らない。また、宗教的信念も同様に研究対象とすることがある。以下は著名な「信じる心」の研究者のリストである。

[編集] 出典

  1. ^ 超心理学の定義は、「既知の自然の法則では説明できない現象を研究する学問」である。(リン・ピクネット『超常現象の事典』青土社、1994年、ISBN 4791753070 p.486)
  2. ^ 「超心理学とは、未だに物理的には説明がつかない、心と物、あるいは心同士の相互作用を科学的な方法で探究する研究分野です。」(日本超心理学会HPでの定義文。http://wwwsoc.nii.ac.jp/jspp2/japanese/aboutpara/about_para.html 2009年1月確認)
  3. ^ 注. 「心と物の相互作用」といっても、当人の心と肉体の相互作用は、すでに知られているものであり、あえて超心理学で研究する対象ではない。例えば、イメージするとイメージをした当人の肉体が物理的に変化することがあることは、もともと知られている。例えば、「梅干」をイメージを思い浮かべると(心の変化)、当人の口の中に唾液が出る、ということ(具体的な物体が物理的に変化する現象)は、誰からも当たり前に認められており、この存在は疑われてはいない。また、プラセボ効果のような、人が何かを思うだけで、当人の代謝や体調には明らかな変化が起きる現象(物理的な変化が現れること)は、医学の領域において、それなりに研究されている。字義通りに分類すればこれも「心と物の相互作用」の一種ではあるが、これは特には超心理学の研究対象というわけではない。超心理学の定義文に含まれる「心と物の相互作用」とは、それを超えたもののことである
  4. ^ 羽仁礼『超常現象大事典』成甲書房、2001年、ISBN 4880861154、p.36
  5. ^ 『超常現象大事典』p.36
  6. ^ 『超常現象大事典』p.36
  7. ^ 『超常現象大事典』p.36
  8. ^ 『超常現象大事典』p.36
  9. ^ 『超常現象大事典』p.37
  10. ^ 注. フロイト、ユングらは、心理学を語る上で欠かせない人物らであるが、現在ではこれらの研究を、現代的な意味では心理学と認めない心理学者も多い。
  11. ^ リン・ピクネット『超常現象の事典』
  12. ^ 『超常現象大事典』p.36
  13. ^ 『超常現象の事典』p.486
  14. ^ 『超常現象の事典』p.486
  15. ^ 羽仁礼『超常現象大事典』p.57
  16. ^ 『超常現象大事典』p.57
  17. ^ 『超常現象の事典』p.486
  18. ^ 『超常現象の事典』p.486
  19. ^ 『超常現象の事典』p.486
  20. ^ 『超常現象の事典』p.486
  21. ^ 『超常現象大事典』p.57
  22. ^ 『超常現象大事典』p.36
  23. ^ 『超常現象の事典』p.486
  24. ^ 『超常現象の事典』p.486
  25. ^ 『超常現象の事典』p.487
  26. ^ 『超常現象の事典』p.487
  27. ^ 『超常現象の事典』p.487
  28. ^ 『超常現象大事典』p.53
  29. ^ 『超常現象大事典』p.53
  30. ^ 『超常現象の事典』p.488(元は1990年の原著の情報)
  31. ^ 『超常現象の事典』p.488
  32. ^ 『超常現象の事典』p.488
  33. ^ 同書p.488
  34. ^ 『超常現象の事典』p.488
  35. ^ Alcock,James E. 1990. Science and Supernature: A Critical Appraisal of Parapsychology Promerheus Books.
  36. ^ Gardner Martin. 1981. Science:Good,Bad and Bogus.Prometheus Books
  37. ^ n,Henry. 1987. Extrasensory Deception :ESP,Psychics, Shirley MacLaine, Ghosts, UFOs. Buffalo,N.Y.:Prometheus Books
  38. ^ 懐疑論者の辞典 下 p.61
  39. ^ Wagner,M.W., and M. Monnet. 1979 "Attitudes of College Professors Toward Extra Sensory Preception."Zetetic Scholar 5:7-16.
  40. ^ 懐疑論者の辞典 下 p.61

[編集] 関連項目

[編集] 参考文献

[編集] 外部リンク