樟脳

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ショウノウ (1R,4R)[1][2]
識別情報
CAS登録番号 76-22-2 チェック, 464-49-3 (R) チェック, 464-48-2 (S) チェック
PubChem 2537, 9543187 (R), 10050 (S)
ChemSpider 2441 チェック, 7822160 (R) チェック, 9655 (S) チェック
UNII 5TJD82A1ET チェック
EINECS 200-945-0
国連番号 2717
KEGG D00098
MeSH Camphor
ChEBI CHEBI:36773
ChEMBL CHEMBL15768 チェック
IUPHARリガンド 2422 チェック
RTECS番号 EX1225000
バイルシュタイン 1907611
Gmelin参照 83275
3DMet B04729
特性
化学式 C10H16O
モル質量 152.23 g mol−1
精密質量 152.120115134 g mol-1
外観 半透明の白色結晶
密度 0.990 g cm-3
融点

175-177 °C, 448-450 K, 347-351 °F

沸点

204 °C, 477 K, 399 °F

への溶解度 1.2 g dm-3
アセトンへの溶解度 ~2500 g dm-3
酢酸への溶解度 ~2000 g dm-3
ジエチルエーテルへの溶解度 ~2000 g dm-3
クロロホルムへの溶解度 ~1000 g dm-3
エタノールへの溶解度 ~1000 g dm-3
log POW 2.089
蒸気圧 4 mmHg (70 °C)
比旋光度 [α]D +44.1°
危険性
EU分類 強い可燃性 F有害 Xn
NFPA 704
NFPA 704.svg
2
2
0
Rフレーズ R11 R22 R36/37/38
Sフレーズ S16 S26
引火点 64 °C
爆発限界 3.5%
関連する物質
関連するケトン フェンコン英語版ツジョン
関連物質 仮リンクピネンボルネオール10-カンファースルホン酸
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

樟脳(しょうのう)とは分子式 C10H16Oで表される二環性モノテルペンケトンの一種。カンフル: camphre)あるいはカンファー: camphor)と呼ばれることもある。IUPAC命名法による系統名は 1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-オン、また、母骨格のボルナンが同命名法における許容慣用名であるため、そこからボルナン-2-オン(bornan-2-one)、2-ボルナノンなどの名称が誘導される。ほかの別名は、1,7,7-トリメチルノルカンファー、2-カンファノン、2-カンフォノン、またはカラドリル。

性質と存在[編集]

樟脳は融点 180°C沸点 208°Cの白色半透明のロウ状の昇華結晶であり、強い刺すような樹脂系の香りを持つ。クスノキ精油の主成分であり、他にも各種の精油から見出されている。クスノキはアジア、特にボルネオに産することから、樟脳の別名の起源となっている。

また初期の有機化学において、この化合物は精油から容易に得られる結晶性テルペノイド化合物の中でも代表的なものであったため、camphorは他の精油から得られた結晶性テルペノイドの総称としても用いられた。テルペノイド化合物の研究でノーベル化学賞を受賞したオットー・ヴァラッハは"Terpen und Camphor"という題名の書を著しているが、このCamphorはそういった結晶性テルペノイド化合物の総称として用いられている(一方、Terpenは液体テルペノイド化合物の総称として用いられている)。また、他の植物の精油から得られた結晶性テルペノイド化合物を植物名+camphorで命名することもしばしば行われた(この場合の camphor は「脳」と訳される)。代表的なものにmint camphor 薄荷脳(メントール)やborneo camphor 龍脳(ボルネオール)などがある。

製造[編集]

クスノキの葉や枝などのチップを水蒸気蒸留すると結晶として得ることができる[3]。クスノキの中に含まれている樟脳はd体である。

一方、化学合成品はマツ精油などから得られる α-ピネンより合成される。後述の通り1920年代に開発された。α-ピネンを塩化水素で処理すると、ワーグナー・メーヤワイン転位を起こして四員環が開裂し、ボルナン骨格へと骨格変換を起こしてからクロロ化されて塩化ボルニルとなる(この化合物も一時樟脳代替品として使用された)。塩化ボルニルを弱塩基で処理すると脱塩化水素を起こすが、その際に再び転位を起こして今度はカンフェンを与える。塩素原子とアンチペリプラナーの位置に水素原子が存在しないためにイレギュラーな脱離が起こる。α-ピネンを活性白土で処理することで直接カンフェンを得る方法も知られている。カンフェンをギ酸あるいは酢酸と反応させると、再びボルナン骨格への転位を起こしながらこれらのカルボン酸が付加し、イソボルニルエステルが得られる。このイソボルニルエステルを鹸化してイソボルネオールとした後、酸化することで樟脳が得られる。化学合成されたものはα-ピネンからの最初の反応の転位の段階でラセミ化が起こるため、ラセミ体となる。

用途[編集]

血行促進作用や鎮痛作用、消炎作用、清涼感をあたえる作用などがあるために、主にかゆみどめ、リップクリーム、湿布薬など外用医薬品の成分として使用されている。

かつては強心剤としても使用されていたため、それらの用途としてはほとんど用いられなくなった現在でも、「駄目になりかけた物事を復活させるために使用される手段」を比喩的に"カンフル剤"と例えて呼ぶことがある[4](現在ではアドレナリン作動薬が工業的に大量生産できるので、それらが用いられる)。

19世紀初頭では樟脳とアヘンを混ぜて子供の咳止めとして用いることもあったが、多くの子供はよりひどい状態になり、この処方をするくらいなら放っといたほうがましだと評価されていた。その他にも香料の成分としても使用されている。


また人形衣服防虫剤として、またゴキブリ・ムカデ・鼠などを避ける用に、また防腐剤花火の添加剤としても使用されている。


樟脳は皮膚から容易に吸収され、そのときにメントールと同じような清涼感をもたらし、わずかに局部麻酔のような働きがある。

しかし、飲み込んだ場合には有毒であり、発作精神錯乱炎症および神経筋肉の障害の原因になりうる。万一誤食があった場合は、病院に行くこと。

よく有毒物質を飲んだときには消化器保護のため牛乳を飲ませる応急処置をするが、樟脳の場合は牛乳を飲ませてはいけない。樟脳は脂溶性のため体内に吸収され易くなってしまい危険である(牛乳には乳脂肪が含まれている)。


歴史[編集]

かつてはセルロイド可塑剤として非常に大量に使用されていた。日本は当時植民地であった台湾においてクスノキのプランテーションを経営していたため、20世紀はじめには世界最大の生産国であった。「樟脳専売局集集出張所」は台湾南投集集にある。しかし1920年代に入ると化学合成品が開発されて押されるようになり、やがてセルロイドに代わるプラスチックが出現してこの用途はほとんど無くなった。

明治期、日本の事業家土倉龍治郎が、台湾で林業・電気事業と共に樟脳事業を展開、成功していた。

無煙火薬の原料としてノーベルも注目していた。

日本では1962年まで日本専売公社(現・日本たばこ産業)によって専売されていた。 現在は福岡・宮崎・鹿児島で小規模ながら製造されていることが確認できる。

応用品[編集]

樟脳舟
樟脳を小さくカットして船尾に付けた木製もしくはセルロイド製の小船を水面に浮かべると、後方の水面に樟脳の成分が拡がり、表面張力の差によって前方に引っ張られ船が進む。時としてカオス的な予測できない動きをする。1970年代中期位までは縁日の露店等でよく売られていたシンプルで安価な玩具であった。

出典[編集]

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  1. ^ The Merck Index, 7th edition, Merk & Co, Rahway, New Jersey, USA, 1960
  2. ^ Handbook of Chemistry and Physics, CRC Press, Ann Arbor, Michigan
  3. ^ 樹木由来ではあるが樟脳でない物質が、ときとして誤って樟脳として販売されていることがある。
  4. ^ 「新外国人選手は低迷する球団のカンフル剤となるか?」等。

関連項目[編集]

  • クスノキ
  • 水蒸気蒸留
  • 日本精化 - 元々は樟脳の精製業務から出発した会社。旧社名の「日本樟脳」にもその名残が見られる。
  • 藤沢薬品工業 - かつて存在した日本の製薬会社。1897年参照)に、前身の藤澤商店から「藤澤樟脳」を発売、同社の看板商品となる。2005年山之内製薬と合併して「アステラス製薬」が発足したために消滅した。「藤澤樟脳」は、山之内製薬と藤沢薬品工業の大衆薬部門が統合して発足した「ゼファーマ」からの販売になるが、2007年にゼファーマが第一三共に買収され、ゼファーマの商品は第一三共の大衆薬事業会社「第一三共ヘルスケア」からの販売に移管した。現在の「藤澤樟脳」は日本精化が製造、第一三共ヘルスケアが販売を行っている。市販されている現在の藤澤樟脳は、松根油から製造されている。