タイム (植物)

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イブキジャコウソウ属(タイム)
Thymian.jpg
タチジャコウソウ (Thymus vulgaris)
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: シソ目 Lamiales
: シソ科 Lamiaceae
: イブキジャコウソウ属 Thymus
学名
Thymus L.

他(約350種)

タイム (thyme) はシソ科イブキジャコウソウ属 (Thymus) の植物の総称で、およそ350種を数える。芳香を持つ多年生植物で、丈が低く草本にみえるが、茎が木化する木本である。

概要[編集]

樹高40センチメートルほどの小低木で、ハーブの一種として知られる。原産はヨーロッパ、北アフリカ、アジアである。多くの種がケモタイプを持つ。日本ではタチジャコウソウ(コモンタイム、T. vulgaris)のことを一般にタイムと呼ぶことが多い。

幹は一般的に細く、針金状のものもある。ほとんどの種は常緑で、4–20ミリメートルほどの卵形のは対をなして全体に並ぶ。は頂部末端に集中し、は不均一で、上端は3つに裂け、下部はくぼんでいる。管状で長さ4–10ミリメートルの白、ピンク、または紫の花冠を持つ。

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  • イブキジャコウソウ (T. quinquecostatus, Syn.T. serpyllum subsp. quinquecostatus) - 日本の低山から高山帯の日当たりの良い草地や岩礫地に自生する種で、日本に分布する唯一のタイムである。
  • タチジャコウソウ - 料理用のハーブとして良く用いられる地中海沿岸に分布し、水はけが良く日光の多い場所が生育に適する。
  • キャラウエイタイム (caraway thyme, T. herba-barona) — 料理用ハーブや地表植被に利用され、強いキャラウェイの香りを持つ。
  • シトラスタイム (citrus thyme, T. x citriodorus (T. pulegioides x T. vulgaris)) - 料理用ハーブとして一般的で、カンキツ様の香りを持つ様々な栽培品種が作られている。
  • ウーリータイム (woolly thyme, T. pseudolanuginosus) — 料理には使われないが、地表植被用途に人気がある。
  • ヨウシュイブキジャコウソウ (wild thyme, T. serpyllum)、別名クリーピングタイム (creeping thyme) - ミツバチや養蜂家にとって重要な蜜源植物である。イブキジャコウソウ属は全て花蜜を分泌するが、ヨウシュイブキジャコウソウは特にヨーロッパや北アフリカ、アメリカ合衆国のマサチューセッツ州バークシャー地方The Berkshires)やニューヨーク州キャッツキル山地Catskill Mountains)の乾いた岩石がちの地域に広く分布する。ヨウシュイブキジャコウソウの蜂蜜ギリシャをはじめとする地中海地方の名産品として良く知られる。地表植被にも良く用いられる。

歴史[編集]

ウーリータイム

古代エジプトではミイラを作成する際の防腐剤として使われていたとされる。ギリシャ人は入浴時や神殿で焚く香として使っていた。ヨーロッパへのタイムの浸透は、それらを部屋を清めるのに用いていたローマ人によるものと考えられている。古代ギリシャではタイムは勇気を鼓舞すると信じられており、また、中世には悪夢を防ぎ安眠を助けるようにと枕の下に敷かれた。

中世、持ち主に勇気をもたらすと信じられていたことから、しばしば女性は騎士や戦士にタイムの葉を添えた贈り物をした。香料としても用いられ、来世への旅路を確実なものとするために葬儀の際に棺に入れられた。

利用[編集]

肉類、スープシチューの香り付けにしばしば使われる。フランス料理ではブーケガルニエルブ・ド・プロヴァンスに欠かせない食材の1つである。ケイジャン料理カリブ料理にも広く用いられる。また、中東(マシュリク)の香味料「ザアタル」 (za'atar) の重要な成分である。

タイムは、生であれ加熱調理後であれ、α-アミラーゼα-グルコシダーゼのいずれに対して、顕著な阻害作用を示し、糖尿病予防への可能性が示唆された[1]

精油[編集]

タイムの精油の主成分はチモールカルバクロールであり、その他シモールシネオールリナロールモノテルペン、トリテルペン、フラボノイド、またローズマリー酸などのタンニンや、抗酸化剤としてはたらくビフェニルを含む。

昆虫の食草[編集]

タイムはキバガ科Chionodes distinctella(Zeller)や ツツミノガ科 Coleophora 属の C. lixella Zeller, C. niveicostella Zeller, C. serpylletorum Hering および C. struella Staudinger などのの幼虫の食草である。最後の3種はタイムのみしか摂食しない。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 市販香辛料のα-アミラーゼ活性およびα-グルコシダーゼ活性に及ぼす影響、三浦 理代、五明 紀春、日本食品科学工学会誌、Vol.43 (1996) No.2 P157-163

外部リンク[編集]